戦闘描写と攻略戦の推移が難しすぎるなり……。
ガンダムの二次創作書いている人たち、ア・バオア・クーの戦いをよく書き切れるなぁ。
心の底から尊敬します。
随分と涼しくなった秋の夜長、お暇なら見てください。
ア・バオア・クー要塞攻略戦。
連邦とジオンの実質的な最終決戦であるこの戦いは、時間が経つごとに苛烈さを増していく。
「行くぞぉ! ジオンの腐れ共の首を一つ残らず狩り取れぇぇぇぇぇぇっ!!」
連邦の艦隊を背後に、日本刀を模した刀身の刃の部分にビームを発生させた巨大な刀やメガ粒子の穂先を形成した槍を手に突撃を掛けるジム・スパルタン達。
「総員、ここが正念場だ! 我々に退路はない! 国を! ジオンの栄光を護る為に戦え!!」
それを迎え討つのは不退転の決意を胸に、横一列に並んでバズーカを構えるリックドムの群だ。
「撃てぇぇぇぇぇっ!!」
部隊長の合図によって隊列を揃えたリックドムが一斉にバズーカを放つ。
物凄い勢いで迫ってくるジム達は変態機動をブチかます一部の例外を除いて、出会い頭に迫る砲弾を躱すことはできない。
「やった!」
「よし! 第二射構え!!」
宇宙の黒を彩る爆発と硝煙の中、敵の先鋒を挫いたことに安堵の声を上げるドムのパイロット達。
彼等の約半数が訓練校で優秀な成績を収めたとはいえ、学徒動員された年若い者達だ。
これが初陣という事も相まって気を抜いてしまうのは仕方がない。
だが、彼等にとって不幸だったのは敵がこの程度でくたばってくれるほど甘くなかったことだ。
「馬鹿め! ソイツは本体だッ!!」
「ふはははははははっ! クロスアウッ!!」
炎が消えて未だ残る硝煙を切り裂いて現れたのは、体を覆う武骨な装甲を脱ぎ捨てて身軽となったジム・スパルタン達。
何故彼等が直撃を受けても元気いっぱいで動けるのか?
それは砕かれ、破片となって機体から零れ落ちる装甲に秘密があった。
先ほどまでジム達が纏っていたのは、リアクティブ・アーマーという耐弾性能に優れた外部装甲。
そして乗っているパイロットも『肉を斬らせて骨を断つ! ただしビームは勘弁な!』という信条で、絆民からゾンビ野郎と嫌がられた被弾上等な接近戦のエキスパート達である。
彼等にとって何のひねりもない砲弾など、着弾の瞬間にアーマーパージでダメージをゼロにするくらい朝飯前なのだ。
「な…なんてインチキ!?」
「当たったのに何で撃墜されないんだよ!?」
もちろん、この結果にジオン軍の防衛部隊は度胆を抜かれた。
当然だ。
『わざと敵の弾に当たって、撃墜された風に装った死んだふり』なんてイカレた戦法など、彼等のМS教本には一文字たりとも記載されていなかったのだから。
これはビームの光刃や鋼の刃鳴に脳を焼かれた彼等が、戦火の絆に生息する射撃ガチ勢を相手に『如何にして間合いを詰めるか?』を突き詰めた積み重ねた己の屍(連コインで日々増殖中)と狂気の産物なのだ。
「くっ、クソォっ!!」
「ど…どうすればいいんだ!?」
仕留めたと思った筈の敵機が牙を剥く異常事態に浮足立つ若手のジオン兵達。
しかし、その心理的な混乱は歴戦の突撃野郎共にとっては致命的な隙となる。
「そ…総員、バズーカを捨てろ! 来…がぁぁっ!?」
「そりゃあああああああっ! 一槍馳走してやるわぁぁぁぁぁっ!!」
「隊長ぉぉっ!?」
歴戦の古強者だった隊長が指示を出そうとした最中、恐ろしい程の速度で突貫してきたジム・スパルタンの一機が彼のリックドムのコクピットを手にした槍で貫いた。
「よし! 部隊長の
鬨の声と共に隊長機の胴から槍を引き抜くと、ジム・スパルタンはビームの穂先を一閃させてそのリックドムの頭部を切断。
そして宙に浮いた首を下から槍で突き刺すと、まるで串に刺した団子のように束にぶら下げたまま次の標的に向かって襲い掛かる。
「う…うわぁぁぁぁぁっ!?」
その悍ましい姿に学徒兵が怯えるのは当然だ。
恐慌状態に陥って隊列を乱して逃げようとする一機のリックドム。
しかし、群から逸れた草食獣の末路は得てして悲惨なモノだ。
「チェストォォォォォ!!」
「ぎゃああああああっ!?」
その証拠に件のリックドムは別方向から間合いを踏破してきたジム・スパルタンによって、МS用斬馬刀で頭から両断されてしまった。
そこからは酷いモノだ。
促成栽培で育てられた急ごしらえの兵と、魔境と化したシミュレーターネットワークの中で日々一刀に命を掛ける修羅達では踏んだ場数が違い過ぎる。
隊列を崩されたリックドムは斬られ、突かれ、時には変わり者がばら撒いたガトリング砲でハチの巣にされ、次々に撃破されていく。
しかし、そんな虐殺に一石を投じる一つの影が現れた。
「チィッ! やはり数合わせの学徒兵など役に立たんか! だが俺がいる限り、ここから先には一歩も進ませんぞ!!」
高速でジムの群へと近づくビグロの中で気炎を吐く男、その名をグレニス・エスコットといった。
彼はМS撃墜数87機、艦艇に至っては8隻も沈めているジオンが誇るエースパイロットの一人だ。
グレニスはジム・スパルタンの群に向かってメガ粒子砲を撃ち込むと、それに反応して散開した敵機の中で反応が鈍い獲物に狙いを付ける。
「まずは一つ!」
「ぐおわぁぁっ!?」
「次は纏めて逝けぃっ!!」
「ぬがぁぁぁっ!?」
ビグロの前腕に着いたアイアンネイルでジムの胴を貫くと、その屍を敵の一団に投げつけ、諸共に4機をメガ粒子砲で消し飛ばした。
「一瞬で5機やられただと!?」
「気を付けろ! あの野郎、エースだ!!」
楽勝ムードのところで釘を刺され、快進撃を続けていた連邦軍の猛者達に緊張の色が戻る。
「今更警戒したところで! このまま削り殺してやる!!」
巨大な近接武器を手にしたジム達に射撃武器が無いと見て取ったグレニスは、ビグロの高機動性を活かしヒット&アウェイで部隊を削ぎ落すつもりだった。
だが、そんな彼の思惑を覆すモノがいた。
「ちぃっ!?」
コクピット内でけたたましく鳴り響くロックオン・アラート。
それに舌打ちをしながら左にバレルロールすれば、ビグロのモニターは機体のギリギリ横を通り過ぎる紫電を纏った弾丸を映しだす。
余波だけでビグロの装甲を抉り取る超高速の質量弾。
それを放ったのはグレニスを追う一つの影、濃紺を基調としたカラーリングのジオンにとって忌むべき機体であるガンダムだ。
「はっはぁっ! ザコばかりの退屈な空域かと思ったら、いるじゃないか掘り出し物が!」
弾切れでパージした大型レールガンを後方へ投げ捨て、コクピットの中で『白狼殺し』ことヤザン・ゲーブル中尉は獰猛な笑みを浮かべる。
「この俺に付いてこれる人間がいるとは!」
思わぬ敵の出現にグレニスは宇宙空間をターンして向かってくるフルアーマーガンダムspecⅡと対峙する。
「だが、これ以上はやらせん!!」
そして背面の大型ブースターの推力を担保に加速しながら連続でミサイルを放つ。
これで相手が足を止めたところでメガ粒子砲とアイアンネイル、状況に応じて刈り取る為の鎌を変えて相手の首を刈るつもりだった。
「はっ! 見え透いた手を!!」
しかしフルアーマーガンダムの足が止まる事はない。
ヤザンは迫りくるミサイルの群を、両肩に備わったガトリングスマッシャーで真正面から迎撃したのだ。
秒間数百発と言う猛烈な勢いで吐き出される鉛弾に撃ち抜かれ、次々に誘爆するミサイルたち。
「味な真似を! だが、俺から逃げられると思うな!!」
宇宙に広がる爆炎と煙を睨みながらグレニスは目を凝らす。
大きく広がった硝煙、敵がどんなアクションを取るにせよ、位置関係から確実のあの煙を介する必要がある。
それはグレニスにとって、相手の動きを知らせる鏑矢となる。
取るならば後の先だ、と。
果たして、グレニスの思惑通り一つの影が濃密な煙を突き破って飛び出してきた。
「出てきたな! これで終わりだ!!」
それを目にしたグレニスは好機とばかりにビグロの嘴のような機首を左右に開いてメガ粒子砲をチャージする。
しかし次の瞬間、グレニスの目とビグロのモニターを強烈な光が焼いた。
「ぐわっ!?」
ヤザンが機体に先んじて煙の外へ放ったのは、МS用の閃光手りゅう弾。
それによって焼かれた網膜が放つ刺すような激しい痛みは、グレニスの意識に一瞬の空白を産んだ。
「うおおっ!?」
そして我に返った彼を襲ったのはМAの巨体を揺るがす強烈な振動だった。
霞む目に鞭を打ってレーダーに目を凝らしたグレニスは背筋が凍った。
何故ならそこに現れた結果は、敵機にビグロの機体上部を取られている事を示していたからだ。
「ぐっ!? しまった!!」
機体を強引にバレルロールで振り回して何とか敵機を引き離そうとするグレニス。
しかし彼に取りついた野獣はその程度で獲物を放すほど優しくはない。
「へっ、足掻きやがる。だがこれまでだ!」
重装甲の突貫機であるフルアーマーガンダムの各関節に備わる特注のフィールドモーターは、掴んだビグロの装甲がひしゃげる程のパワーを発揮する。
そのパワーを担保として放たれるのは野獣が誇る必殺の牙、パイルバンカーだ。
「ぐおおおおおっ!?」
炸薬によって押し出されたルナチタニウム合金の杭は三発目でビグロのコクピットを撃ち抜き、ビグロを爆散させた。
「さて、この空域はもう楽しめそうにないな。さて、次は何処に……うん?」
まるで返り血のようにバンカーの先端にこびり付いたオイルを振り払っていたヤザンは、レーダーが示す警告にモニターへ視線を向ける。
そこに映っていたのは、ア・バオア・クー要塞付近で発生した爆発が生み出した巨大な火球だった。
「あそこはたしか、例の大砲があった場所か。どうやら派手な火遊びをやったらしいな!」
不敵な笑みを顔に貼り付けると、ヤザンは思い切りフットペダルを踏み込む。
野獣の嗅覚は鉄火場の匂いを違えることは無いのだ。
◆
「う……」
佐藤康夫ことロックオン・ストラトス(笑)は全身を襲う鈍い痛みで目を覚ました。
最初は霞がかって思考が働かなかったが、それも網膜がコクピットの情景を映せば一気に晴れてくる。
「くそっ! 何が起こった?」
頭を左右に振って脳内の靄を振り払いながら、ロックオンはシートに預けた体を起こす。
そしてレバーの横にあるキーボードを操作すればサブモニターに機体のコンディションが映し出される。
「機体に致命的損傷無し。多少動きは悪くなったけど、手足もしっかり付いてる。吹っ飛んだのはGNシールドだけか」
整備班の同胞が付けてくれた装備に命を救われた事を感謝しながら、ロックオンは数瞬前の事を思い出す。
あの時、道中で多くの犠牲を出しながらも進撃を続けたコロニー・レーザー攻撃隊は漸く目標が見える位置まで来た。
『あれがジオンご自慢の逸物かよ!』
『はっ! 縮こまっちまって、まるでポークビッツだぜ!!』
ア・バオア・クー要塞の岸壁から突き出た砲身、それを下品な言葉で揶揄しながらも攻撃隊は誰一人油断などしていない。
あれはジオンの切り札、敵の防衛隊も死にもの狂いで護りに来るだろう事は容易に想像できたからだ。
『よし! ジオン野郎をEDにしてやるぞ! スナイパー部隊、狙撃用意!!』
上官の戦死で役職が降りてきた3人目の司令官の指示によって、狙撃班はスナイパーライフルを構える。
距離があってもあれだけの的だ、外すわけがない。
ロックオンは狙撃スコープにまだ小さく映っているコロニー・レーザーを見ながら唇を舌で潤した。
「総員、撃ち方はじめぇ!」
「連邦のクソ野郎どもを歓迎してやれ!!」
しかし、ジオン側も易々と攻撃を許すわけがない。
コロニー・レーザーを背後に多数のモビルスーツが隊列を組んで一斉射撃を放ってきたのだ。
「ちぃっ!? 前衛、前に出ろ! 応戦するんだ!!」
「スナイパーを落とされるなよ! 狙撃班は隙が見えたら容赦なくブチ抜いちまえ!!」
降り注ぐ銃弾やビームの雨にジムはルナチタニウム合金製の盾を掲げて立ち向かい、とその背後でガンキャノンも肩部の砲を放つ。
「クソッ! こうもドンパチされちゃあ照準なんて……!!」
時々前衛を抜けてくる流れ弾に内心冷や汗を掻きながら、それでもコロニー・レーザーを射程に捉えたロックオン。
そして引き金を引こうとした時だ。
「な…なんだ!?」
突如コロニーレーザーの砲身が生えた岸壁から爆炎が噴き出したのだ。
その炎を皮切りにして連鎖的に発生した爆発は、まるで砲身がある区画を切り取るように長方形の形をなぞっていく。
「分隊長! コロニー・レーザーで爆発だ!」
「こちらでも見えている! 奴等、事故でも起こしたか!?」
ロックオンが通信機に叫べば、焦った様子の部隊指揮官の声が返ってくる。
突如として起こった変事に動揺した連邦兵は多く、中にはその所為で敵の攻撃を被弾する者もいた。
そして要塞から切り離されるコロニー・レーザー。
岩壁の破片を伴って宇宙に浮かぶ巨大な砲身という光景には、連邦軍の精鋭達とて度胆を抜かれるのは仕方がない事だ。
だからこそ気づけなかった。
先ほどまで砲身が焼け付くかと思うほどの攻勢を行っていたジオンの守備隊が、我先にと要塞内へと逃げ込んでいた事に。
そして破滅は連邦兵へと牙を剝いた。
コロニー・レーザーだったモノがまばゆい光を放つと、要塞宙域の全てから観測出来る程の巨大な火球に化けたのだ。
艦隊を消し飛ばせるほどの膨大なエネルギーを担保とした壮大な自爆、その威力は凄まじいモノだった。
衝撃波だけでも周辺にいた連邦の部隊を薙ぎ払い、自陣の要であるア・バオア・クー要塞の岩盤を大きく削って、そこにあった迎撃設備を悉くスクラップにしたほどだ。
「くそっ!」
我が身に起こった事を思い返し、ロックオンは怒りと共にアームレイカーを叩く。
奴等は最初から第二射など考えていなかった。
いや、もしかしたら考えていたのかもしれない。
しかし、同時にジオンの司令部は巧妙な罠を張っていたのだ。
大量破壊兵器が撃たれる前に破壊しようとする精鋭達を一網打尽にするカラクリを。
「コロニーレーザーを狙わなかったら第二射が飛んできて、どうにかしようとしたら爆弾に変えて攻撃部隊を一気に潰す。エゲツねえ真似しやがる……!」
今の一撃で攻略を担っていた精鋭部隊の大半が宇宙の塵に消えた。
自分が生き残ったのは距離が離れていた事、そしてガノタの整備班がGNシールドに仕込んでくれた緊急避難プログラムのお陰だ。
「スナイパー連中は撃墜こそされていないものの、ほとんどの奴が手足を失って戦闘不能。デュナメスも一歩間違えていたら、ああなってたって事か」
なんとか機体の姿勢を整えて舌打ちをするロックオン。
自身の周辺に漂っているのは、爆発によって装備や手足を失い、各坐したジムスナイパーたちだ。
接近する高熱源を感知した時点で自動的に機体を覆う形で展開するGNシールド、それが無ければ自分も彼等の仲間入りを果たしていただろう。
しかしロックオンには安堵する暇も、自分達の間抜けさに憤る暇もなかった。
「このタイミングで仕掛けてくるかよ!? 当然と言えば当然だが……クソォっ!!」
レーダーが発するアラートに悪態を付きながら、ロックオンは両の腰に付けたサブ装備であるビームガンを引き抜く。
襲い掛かってくるのは先ほど退避したジオンの守備隊だ。
「うおおおおおおおおっ!!」
向かってくるドムやゲルググの群に両手に構えたビームガンを乱射するロックオン。
「ぐわっっ!?」
「くそっ!? まだ動ける奴が…ぎゃあっ!?」
「警戒しろ! 手負いとはいえ、かなりの腕だ!!」
狙撃手なだけあって、牽制の意味も含んだ連続射撃は次々と敵機にダメージを与え、中には胴を撃ち抜かれて爆散するザクやゲルググもいる。
「総員、射撃を継続しつつ突貫! 阿呆な連邦兵に無駄な足掻きだという事を教えてやれ!!」
しかし状況は多勢に無勢。
ロックオンは主武装である狙撃ライフルを失ったうえに、彼の背後には動けない狙撃部隊の仲間がいる。
満足な回避運動も取れない彼のデュナメスは降り注ぐ砲火によって、左足が、右腕が、そして特徴的なガンダムフェイスも半分が削り取られる。
「俺は逃げねえぞ! ロックオンのコードネームは命懸けで仲間を護る男が名乗るもんだ! そうだろう、ニール・ディランディ!!」
それでも彼は退くことはない。
最後に残された武器を手に必死になって大軍に抗った。
しかしロックオンの抵抗は長く続かなった。
「もらったぁ!」
「ぐぅっ!?」
ベテランであろうザクの一機が薄くなった弾幕を搔い潜ってロックオンの機体に接近してきたのだ。
白兵戦に持ち込まれては今の彼に勝ち目はない。
モニターに映る振り上げられたヒートホークを睨みながら、ロックオンは歯を食いしばる。
しかし、彼に断頭の刃が降り注ぐことはなかった。
「な…なにっ!? ぐああああああっ!?」
横合いから飛んできた鉛の弾雨を浴びて、件のザクは死の舞踏を踊り終えると爆散したからだ。
「な…なんだ……?」
「こちらガルム1。イェーガー隊、生存者は?」
ノイズ交じりの通信と共に生き残った右側のモニターに映るのは、吼え終わったガトリング砲が硝煙を棚引かせるコア・ブースター・プラン004だ。
「ガルム1!? エスコンねきか!!」
脳内掲示板で知ったタックネームに思わず叫ぶロックオン
「ロックオン(笑)か。しぶとく生き残って何よりだ。酷い有様だが、まだ動けるか?」
「ああ、なんとかな。」
「なら、生存者たちを連れて下がれ。もうすぐシーマ艦隊が来る」
「だが、敵の迎撃部隊は!?」
「なに、時間稼ぎくらいはできるさ!」
そう告げるとコア・ブースターは大きく弧を描いてジオンの迎撃部隊へと機首を向けた。
背面の大型ブースターが吼えれば、ガルム1はМSが追い付けない戦闘機特有の加速へ入る。
「戦闘機が生意気な! 撃て! 撃ち落とせぇ!!」
突っ込んでくる戦闘機に、高機動型ザクに乗った隊長の号令で部隊は一斉に手に持った武器の引き金を引く。
「甘い!」
ガルム1はキャノピー越しに見える弾幕に不敵な笑みを浮かべると、バレルロールやブースター部分に備わったアポジモーターによる側面移動を駆使して、次々に襲い来る敵弾を躱す。
「なんだと!?」
これに驚いたのは高機動型ザクを駆るジオン側の部隊長だ。
ルウム戦役から連邦軍の戦闘機はずっと彼等のカモだった。
だからこそ、当時よりも性能が上がった新型で編成された部隊の攻撃を躱せるとは思っていなかったのだ。
そうして弾幕どころか、迎撃部隊の脇まですり抜けるガルム1。
加速という一点では未だ戦闘機に適わないМSは誰も彼女の動きに追い付けない。
その間にガルム1は少しの上昇から背面飛行でUターンする高等技術『インメルマンターン』で、部隊の背後を取る。
「もらった!」
本来ならすぐに戻す筈の機体姿勢を背面飛行そのままに、トリガーを引くガルム1。
それによって放たれた大型ミサイルはある程度飛行すると分解し、中から大量の小型のミサイルを吐き出す
「し…しまった!? 退避ぃっ!」
部隊長の戦慄した声によって、慌てて散らばり始める迎撃部隊。
しかしその殆どは続けて放たれたガトリング砲の牽制射撃によって動きを阻害され、次々に火球となってこの世から消える。
「く…くそぉぉぉっ!? ぐわぁっ!?」
唯一回避行動を取れた隊長機も、追いかけてくるミサイルをバックパックに受けた事による推進剤の誘爆で塵となった。
しかし、さすがにコアブースターに搭載するサイズのクラスターミサイルでは、МSの部隊全てを全滅させるのは火力が足りない。
「よくも皆をぉぉぉぉっ!!」
「チッ!」
爆煙の中から左腕を肘から失ったザクがヒートホークを振り上げて向かってくる。
ガルム1がそれを舌打ちと共に回避しようとした時だ。
「ぐわぁっ!?」
超高速で向かってきた影がザクの胴を薙いだのだ。
「そこのコアブースター、大丈夫か?」
上半身と下半身が泣き別れになったザクの爆発を背後にビームサーベルの血振りをしたのは、燈色を基調とした高機動仕様のジーラインだ。
「ええ、助かりました。私はエメラダ・ナリス中尉です」
「ブラン・ブルターク大尉だ。亡命艦隊に腕の立つ戦闘機乗りがいると聞いていたが、まさかこんな美人さんだったとはな」
「……不満ですか?」
「むしろ、好都合だ。この戦争のラストステージだってのに、俺の速さについてこられるパートナがいなくて困っていたんだ」
ムッとするガルム1に、ブランは男臭い笑みを浮かべる。
「
「
ブランの誘いの裏にある意味を悟ったガルム1は、獰猛な笑みと共にスロットルを開く。
コアブースターの離脱に応じて弾かれるようにその場から飛んだジーラインとコアブースターがいた場所を、一瞬遅れてバズーカの砲弾とビームが通り過ぎる。
「ぐわぁっ!?」
「ごあっ!?」
それを放った下手人であるジオン防衛隊のリックドムとゲルググは、返礼とばかりに突き刺さった連装ビームガンの光弾とガトリング砲による弾雨を浴びて火球と化した。
「うお! はえぇ……」
後方へ下がりながら二機の機動に感嘆の声をあげるロックオン
「感心してる場合じゃねえぞ、ロックオン(笑)!」
「俺らが牽制している内にリリーマルレーンへ戻れ!!」
「もうお前は戦えないんだからな!!」
そんな彼等の前に出てヘヴィマシンガン(と本人達が言い張っているザクマシンガンの改造品)で守備隊の増援をけん制しているのは、スコタコこと改造ザクを駆るスガイ衆だ。
「なんでお前等が海兵隊と一緒に来てんだよ!」
「俺達だってシイコさんと一緒にいたかったさ! けど、スコタコだとアドリアネに追い付けなかったんだよ!!」
「だから仕方なくこっちに来たんだ! そういうわけだから早く行け!!」
「こっちです! 俺に捕まって!」
バーニィの操縦するザクに牽引されてシーマ海兵隊のムサイへと牽引されるデュナメス。
そんな彼等と入れ替わるように現れたのは、シーマを先頭としたゲルググの一団だ。
「お前達、この戦争も実質的にこれが最後だ! こんなところでおっ死ぬんじゃないよ! 私達の未来は明るいんだからね!!」
「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」」」」
コロニー・レーザーが失われても戦いはまだ終わらない。
否、要塞攻略はこれからが本番だ。
果たして、勝負の天秤はどちらへ傾くか?
◆
時は少し巻き戻り、場面をア・バオア・クー要塞の司令室へ移す。
そこでは険しい顔で仁王立ちするドズル・ザビを中心に、戦場を飛び交う膨大な情報を処理すべく多くの職員が奮闘していた。
「コンスコン! ソーラ・レイの自爆、効果はどうか!?」
「効果は大なり! 要塞近くに来ていた攻略隊の多数が爆発に巻き込まれて消滅しました! 生き残っているのは砲身を狙撃しようとしていたスナイパーが少数! それも中破や大破した者が殆どで動けるものはごく僅かのようです!」
怒号にも似た問いかけに、通信モニターに映るコンスコンが表情を引き締めながら返す。
これこそが要塞に取りつかんとする部隊に対するドズルが用意した罠だった。
コロニーレーザーを撃つと見せかけて敵の精鋭を懐までおびき寄せ、頃合いを見てレーザー砲を区画ごと切り離す事で群がってきた連邦兵を殲滅する爆弾に変える。
こんな無茶が出来たのも、万が一の事態を想定してレーザー区画をパージできるように設計させたギレンの指示あっての事だ。
(アレが撃てるのは乱戦になっていない序盤のみ。ならば敵の手で無様に潰されるより、華々しく散らせてやるのが武人の情けというものよ)
ドズルは敵が上手くハマった事に釣り上がりそうになる口角を押さえる。
まだだ。
まだジオンの劣勢は覆せてはいない。
「よし! では要塞内に退避している守備隊を再配備し、敵部隊に止めを刺せ! それが終わったらコンスコン、貴様は艦を率いて防衛線を再び押し上げるのだ!!」
「防衛隊なら私が指示を出すまでもなく、襲い掛かっています。そして連邦の第二陣も迫ってきているようですな。まったく、奴等も層が厚い!」
「先制攻撃だ! 艦砲掃射で足を止めろ! こちらからも支援砲撃を出す!!」
空元気か、それとも武者震いか。
不敵な笑みを浮かべるコンスコンに指示を出すと、それを聞いたオペレーターが命令を受ける前に艦砲の操作を始める。
部下の優秀さに満足しながらも、ドズルの心の中では冷たい事実が首をもたげていた。
(……やはり勝てんか。一射目でティアンムを取れなかった事が痛かった。 ソーラレイの情報さえ漏れていなければ……!)
優秀な指揮官であるドズルは、ここから自分達が連邦軍を押し返すのは不可能に近いと確信していた。
彼我の物量差も然るものながら、何より戦局に影響を及ぼしているのは連邦軍のパイロットが優秀である事だ。
ブリティッシュ作戦、ルウムでの会戦、そしてオデッサにソロモン。
思い返せばこの戦争、開戦当初から勝敗を分ける大きな要因は常にМSだった。
それはア・バオア・クーの戦いでも変わらない。
だが現在のジオン軍は人材が乏しく、不足しているパイロットの穴埋めの為に士官学校を促成栽培した新兵や、学徒動員でかき集めた子供まで前線に出している。
彼等には最新鋭機であるゲルググが与えられているが、これとて優遇や生存性を高める等と言った仏心から来るモノではない。
ジオンのモビルスーツ開発には複数の会社が関わっているため、コクピット内のレイアウトや操作方法などが統一されていない。
それ故に一部の例外を除いて経験豊富な古強者は乗り慣れたザクを選ぶことが多く、その為に乗り手がいないゲルググが与えられただけだ。
結果、それが悪い方向へ結びついた。
たとえパイロットの腕が拮抗しても、ザクでは連邦の新型に敵わない。
仮にゲルググが連邦のМSに負けない性能でも、乗っているのが実戦経験がほぼ無い新兵ではパイロットの差で負ける。
リックドムに関してはパイロットの腕はピンキリなうえに、性能も連邦のМSには一歩届かない。
数で負け、機体の質で後れを取り、そしてパイロットでも差をつけられる。
そこへエースと呼ばれる者達が加わるのだ。
これを押し返すのがどれほど困難かが、よくわかるだろう。
「すまんが用を足してくる」
「了解しました!!」
自身の副官を務める佐官へそう告げるとドズルは指令室を後にする。
彼が向かったのはトイレではなく自分の部屋だった。
「ミネバ、ゼナ……」
誰もいない部屋でドズルは写真立てを手に取る。
「頼む、俺に力を貸してくれ」
気持ちよさそうに眠るミネバと、彼女を抱き上げて幸せそうに微笑む妻。
そんな二人へドズルは縋るように呟いた。
司令官の重責と国防を担う者として、もう後がない事へのプレッシャー。
そして迫りくる二人を遺して死ぬという非情な現実。
それが屈強な司令官を家族に恐怖を吐露する普通の男へ変えていた。
どれほどの時間、写真を見ていただろうか?
背後に気配を感じてドズルが振り返ると、開きっぱなしのドアの向こうに2人の整備兵の姿があった。
「貴様等は……」
彼は二人の顔を憶えていた。
ギレンがソーラレイ運用の為に送ってくれた技師達だ。
「ふぅ……今見た物は忘れろ」
情けない姿を見られたが、それに関しては自分の迂闊さ故だ。
部下を責めるのは筋が違う。
そう考えたドズルは気恥ずかしさが出ないようにしかめっ面で部屋を出ようとした。
しかし、その足は止まる事となる。
「貴様……!」
何故なら技師達が彼に拳銃を向けていたからだ。
「申し訳ありません、ドズル閣下」
感情の籠らない謝罪とともに、サイレンサーの空気が抜けるような発射音がドズルの部屋に鳴り響いた。
【ネタ】もしもマチュがセイラとアムロの娘(小説版機動戦士ガンダムの設定)だったら。
私はマリー・マス、13歳。
家族はママことセイラ・マスと、ママを子供の時から世話していたルシア婆ちゃん。
父親については何も知らない。
ママがシングルマザーを選んだって事は、子供が首を突っ込んじゃいけない訳があるんだろう。
さて、ウチのママは意味不明なくらいにお金を持っている。
お爺ちゃんの遺産を元手に投資で大勝ちしたんだそうで、その額はアストライア財団なる慈善団体を立ち上げてもたっぷり余るほどらしい。
その恩恵と言うか影響と言うべき物はあたしの方にも届いていて、お陰で通う学校は超が付くほどのお嬢様学校だ。
なので、私も普段はネコを被ってお嬢様チックに過ごしている。
まあ、裏ではロボゲーにハマった挙句、『戦火の絆』では地球圏チャンピオンにも輝いた『対あり』娘なんだけどさ。
そんなあたしが中学に上がった宇宙世紀93年、林間学校でサイド1ロンデ二オンへ行く事になった。
2日目の昼頃に自由時間でプラプラ歩いていると、郊外の牧場でマジ喧嘩しているおっさんがいるじゃないですか。
一人は青いスーツを着た茶髪のテンパ、もう一人が金髪をオールバックにしたスーツ姿の胡散臭いおっさん。
『大の大人がこんなところでリアルファイトとかナイワー』と引き気味で見ていたら、直感がひらめきを放ってしまった。
え、あのテンパが私の父親? そして巴投げで空飛んでるのがママのお兄ちゃん?
ウッソだろ、お前!?
「娘!」
「姪っ子!」
「人違いです!!」
しまった!? 奴等も勘のいい人間だった!
完全にロックオンされてる! 早く逃げないと!!
チクショウ、本当に追っかけてきた!!
「伯父さんに名前を教えてくれないか。 あと私と一緒に来るかい?」
「No! 絶対にNOぉぉぉ!!」
「シャア! 俺の娘に手を出すな!!」
父親も大概だけど、伯父の方の圧がエグい!!
並走しながら横から手を伸ばしてこないで!!
た…助けて、ママぁ!!