ダイクン家の二女はアホの子   作:アキ山

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坊やことガルマ・ザビ、出陣!

はたして君は生き残ることが出来るか?


マチュ、北米に現る

「少佐、ご無事で何よりです」

 

「ああ」

 

 コムサイへ戻ってきたシャアは、ドレンの労いの言葉へ適当に応えると自分のシートへ腰を下ろす。

 

「あれだけの準備を整えて一機も落とせんとはな……」

 

 無理を言って回してもらった最新鋭機にザク五機を加えてもなお、連邦のMSに太刀打ちできなかった。

 

 パイルバンカーという砲撃型としては常軌を逸した装備を追加した赤いのもそうだが、何より厄介なのは機動性を大きく向上させた白い奴のほうだ。

 

 目算でしかないが、おそらくR-2型でも奴に追いつくことはできまい。

 

 試作機をこの短期間であれだけアップデートさせるとは、連邦の技術力恐るべしである。

 

「厄介なモノですな、連邦の新型は」

 

「まったくだ。木馬の降下予測地点は?」

 

「ジャブローから外れて北米、グランドキャニオンの辺りと思われます」

 

「なんとか我々の勢力圏内に引き寄せることができましたか。これも少佐の機転のお陰ですな」

 

「ただの悪あがきにすぎんよ。──無線が回復したら、北米大陸のガルマ大佐を呼び出せ」

 

 そうして大気との摩擦で赤く焼け付いていた窓の外が青空へと変わった頃、コムサイの無線は再び使えるようになった。

 

「シャア少佐、ガルマ大佐と通信が繋がりました」

 

「ああ」

 

 ドレンからの声掛けで通信機の前に行くと、そこには紫の前髪が特徴的な美青年が映っていた。

 

『よう、なんだい赤い彗星』

 

 彼こそが北米大陸を統べるジオンの地球方面軍司令官にして、ジオン公国の王族たるザビ家の末っ子ガルマ・ザビ大佐である。

 

「その呼び名は返上しなくちゃならんようだよ、ガルマ・ザビ大佐」

 

 士官学校の同期であったよしみか、気さくに話しかけてくるガルマにシャアは自分の顔に友好的な笑みを張り付ける。

 

「なんだ、随分と弱気じゃないか。君らしくもない」

 

「連邦のV作戦というのを聞いた事があるか? その正体が敵のMS製造計画であることを突き止めた」

 

『──なんだと?』

 

 シャアの口から出た連邦軍の重要機密に、モニターの向こうで前髪をいじくっていたガルマの眼が鋭くなる。

 

「奴等の新型はこちらの想定をはるかに上回る程に脅威だった。何度か襲撃を掛けたが、8機のザクを撃破される事になってしまった」

 

 自身の恥を晒すシャアにガルマの表情は強張る。

 

『酷いモノだな。そんなにすごいのか、連邦のMSは?』

 

「ああ。ドズル中将に無理を言ってザクの最新鋭試作機を回してもらったが、それでも奴等を討つことはできなかった」

 

『君がそこまでしても仕留められんとは……。たしかに我々の猿真似と侮るべきではないようだな』 

 

 そう頷くガルマにシャアは内心で感嘆の声を上げる。

 

 士官学校時代の彼なら、こんな報告を聞けば恐怖と不安からベソの一つを掻いてもおかしくは無かった。

 

【ふん、坊ちゃんが少しは司令官らしい面構えになったじゃないか】 

 

 仮面の奥で蒼い目を細めながら、シャアは報告すべき言葉を続ける。

 

「倒せはしなかったものの、そちらにおびき寄せはした。君の手柄にするんだな。後ほど私もそちらへ行く」

 

『わかった、君の好意はありがたくいただこう。ガウ攻撃空母で迎え撃つ』

 

「そうだ、よければ地上戦用のMSを一機用立ててくれないか。今こちらにあるのは宇宙戦用の試作機だけなのでね」

 

『いいだろう。とはいえ、そこまでの敵が相手では並のザクだと歯が立つまい。ちょうど地上戦での機動力を高めた試作機がある。それを回そう』

 

「すまない、恩にきる」

 

『水臭い事を言うなよ、君と私の仲だろう。おい、緊急出動だ! 今動かせる部隊は全て出す!!』

 

『はっ!』

 

 その言葉を最後に、シャアは慌ただしくなり始めたガルマとの通信を切った。

 

 そして再びコムサイの席に座ると、周りに聞こえない様に小さく呟く。

 

「さて、お手並み拝見だ。ガルマ、貴様が坊やでないところを見せてみろ」

 

 そんな彼の口元に浮かんでいたのは、友に向けるモノではない嘲笑めいた笑みだった。

 

 

 

 

「おかえり。無事に帰ってきてくれて、なによりだ」

 

「ただいま、おっちゃん」

 

 格納庫に帰ってきたあたし達を迎えてくれたのはテムおじさんだ。

 

 おじさんはまだあたし達が戦う事に納得していないんだろうけど、こうして出迎えてくれるのは正直嬉しい。

 

「それで改修した機体の感想はどうだ? 使いづらいとかはないか」

 

「大丈夫だよ、父さん。思った通りに動いてくれている」

 

「あたしの方もOKだよ。欲を言うなら、キャノンの砲弾を散弾と普通のモノの二つあればいいかなって感じ」

 

 実際、足止めとかバンカーが外れた時のフォローなんかに使えそうだし。

 

「用意しておこう。あと、アムロ。ガンダムの高機動装備は重力下だと、どうしても機動性が落ちる。その辺の調整があるから手伝ってくれるか?」

 

「わかった」

 

「マリーちゃんとマスさんは体を休めてくれ。地球への侵入角度が変わったから、敵の勢力圏内に飛び込んだ可能性もある。パイロットは交代で休息を取ることになりそうだ」

 

「わかりました。いきましょう、マチュ」

 

「うん」

 

 そうして避難民がいる部屋へ戻ろうとしていると、皿や食器を積んだカートを押して三人の子供達が廊下を走ってきた。

 

「ねぇ! アムロはどこ? それともう一人のパイロットも!」

 

「アンちゃんならテムのおっちゃんとガンダムの整備をしているよ」

 

「もう一人のパイロットは私達の事よ。何か御用かしら?」

 

 金髪の4歳くらいの女の子が先頭に立って、私達へ元気よく問いかけてくる。

 

「姉ちゃんはわかるけど、その子も乗ってるの?」

 

「だったら、俺達もロボットに乗って戦えるかもな!!」

 

 姉ちゃんの言葉に6歳くらいとあたしより少し年下の男の子が不穏な事を言いだした。

 

「あたしはお手伝いだよ。ほら、列車や宇宙船だって何人も大人が一緒に乗って動かすでしょ? あたしは機械を弄るの好きだし、姉ちゃん一人だと大変だから」

 

「そっか……」 

 

「ちぇっ……オレもジオンやっつけたかったなぁ」

 

 本当は立場は逆なんだけど、妙な考えを持たれても困る。

 

 これ以上、子供が戦場に出たらテムおじさんが倒れちゃうよ。

 

「それで、あなた達はどうしてアムロに用があるのかしら?」

 

「あのね! あたしたち、おいわいにパイをつくったの!!」

 

「おねえちゃん達にもあげる!」

 

 そう言われてカートの中を見ると、たしかにいい焼け具合のパイが乗っかっていた。

 

「そう。なら、いただこうかしら」

 

「ありがとう」

 

 一切れ分けてもらった分を口に入れると、普通においしいミートパイだった。

 

「ふふ……、美味しいわ」

 

「格納庫に持って行ってあげなよ。テムおじさんやアムロのアンちゃんも喜ぶと思うよ」

 

「うんっ!」

 

 あたしが促すと、子供達はまた賑やかな音を立てて廊下を走っていく。

 

「いい子達ね」

 

「うん。ちょうど小腹も空いてたから助かっちゃった」

 

 そう二人で笑い合ったあと、私達は普段着に着替えて避難民がいる大部屋に戻った。

 

 ブライト少尉からは個室を用意するって言われたんだけど、あたし達はあくまで民間人だからね。

 

 特別扱いはダメだって、お断りさせてもらったのだ。

 

「おかえり、マチュ。大丈夫だった?」

 

「ただいま、アンナ。姉ちゃんと一緒だから問題なし!」

 

 あたしが部屋に戻ってくると、アンナが心配してきてくれた。

 

「でも、何時までマチュが乗らないといけないのかな? 普通は軍人さんが動かすものだよね」 

 

「むこうも人手不足みたいだよ。だから、ジャブローに着くまでは交代は難しんじゃないかな」

 

「マチュ、死なないよね?」 

 

「大丈夫、大丈夫! あたしはサイド7のゲームクイーンだよ、ジオン兵なんかに負けないって!」

 

 不安そうなアンナの頭を撫でながら、あたしはニカッと笑ってみせる。

 

「そうだね。マチュは今から寝るの?」

 

「うん、体を休めるのもパイロットの仕事だって、テムのおっちゃんが言ってたから」

 

「そっか。それじゃ、おやすみなさい」

 

「ありがと、アンナ」

 

 そうしてアンナが親元に戻ると、姉ちゃんが声を掛けてくる。

 

「マチュ、いらっしゃい」

 

「うん」

 

 促されるままに簡易ベッドに入ると、姉ちゃんがぎゅっとこっちを抱きしめてくる。

 

 姉ちゃん、気丈な風に装っていたけど、やせ我慢していたみたいだなぁ。

 

 こうして姉ちゃんがあたしを抱き枕にするのは、精神的に参っている証拠だ。

 

 地球で難民から襲撃を受けた時、兄ちゃんが消えた時、父ちゃんが死んだ時、飼い猫のルシファが死んだ時、そして多分サイド3から逃げてきた時も。

 

 姉ちゃんは精神的に落ち着くまで、何時もあたしと一緒に寝ていた。

 

「マチュ、ずっと一緒よ……」

 

 聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声だけど、姉ちゃんの呟きが耳に届く。

 

 思えば今まで姉ちゃんは身内において行かれてばかりだった。

 

 本当の親もマスの父ちゃんも兄ちゃんもいなくなって、結局残ったのはあたしだけ。

 

 だから妹なら自分の前から消えないだろうって縋って、同時にあたしも失うかもしれないって不安に思っている。

 

 こうして寝ている時もしっかり抱きしめるのは、きっと手放したくないって思いの表れなんだろう。

 

「心配かけてごめんね、姉ちゃん」

 

 姉ちゃんの気持ちが伝わってくると、今までの無茶が申し訳ない気持ちがわいてくる。

 

 けど、あそこで動かないと船が沈んであの世逝きになりかねなかったし…本当にままならないなぁ。

 

「ふぁ……」

 

 そんな事を考えながらも、人肌の温かさと姉ちゃんのいい匂いは眠気を誘う。

 

 赤ん坊の時からの習慣だから、この感覚に包まれると一人寝の時より眠気に抗えないのだ。

 

 休憩はアンちゃんと交代って言ってたけど、うまく起きられるかなぁ……

 

 

 

 

 シャアの通信から数時間後、ガルマ・ザビは空を行くガウ攻撃空母のブリッジにいた。

 

 腕を組み、厳しい視線を向けるその先には、モニターに映った白い連邦の新型艦の姿がある。

 

「シャアの言う通りかもしれん。今までの連邦の船とはケタが違うようだ」

 

 この襲撃でガルマが動かせたのは、ガウの他にドップという名の戦闘機多数に地上で待ち伏せをしているマゼラアタックというジオン軍の戦車部隊のみ。

 

 モビルスーツはガウに積み込んだ1機しかない。

 

 連邦の船を取り逃がさぬようにスクランブルをかけた結果だが、やはり打撃力的には若干の不安がある。

 

「ガルマ大佐! コムサイが降下してきました!」

 

「収容しろ!」

 

 ガルマが指示を出して少しすると、ブリッジに仮面と兜を付けた赤い軍服の男が入ってくる。

 

 赤い彗星のシャアだ。

 

「お疲れ様だ、シャア。地球までの旅は楽しめたか?」

 

「快適とは言えんが興味深い旅だったよ、ガルマ。いや、地球方面軍司令官ガルマ・ザビ大佐とお呼びすべきか」

 

「君と私の仲だ、士官学校時代と同じガルマでいい」

 

 互いに旧交を温めるように握手をするガルマとシャア。

 

 手を離すと二人の視線はモニターに映るホワイトベースへ向く。

 

「あれが木馬だ」

 

「うむ。こうして見れば、赤い彗星と言われた君が仕留められなかったのも何処か分かる気がする。あの船にはそういう威圧感のような物がある」

 

「わざわざ君が出てくるだけの甲斐はあったと言ったところか?」

 

「ああ。そうでなくても友人として君を迎えに来ただけでもいいさ」

 

 ガルマの柔らかい笑みから目を背けると、シャアは再び木馬へ視線を戻す。

 

「あの船はともかく、搭載されているMSは実に厄介だ。そのパイロットの腕もな」

 

「分かっているつもりだ。だからこそ、数で押して包囲殲滅で行く。たとえMSが脅威でも、母艦を沈められては長く戦えないからな」

 

「なるほどな。ところで、頼んでいたMSは工面できたか?」

 

「ああ、付いてきてくれ」

 

 シャアの問いかけにガルマはブリッジの出口へ向けて歩き出す。

 

 そうして向かった格納庫、そこにはシャアのパーソナルカラーへの塗装が終わっている一機のザクがあった。

 

「これは……」

 

「陸戦高機動型ザク。地上仕様のJ型に新型の陸戦機グフのポテンシャルを移入することで、運動性と機動力を向上させた機体だ」

 

「ほう、こんな物が開発されていたとはな」

 

「地上の次世代量産機はグフに決まったんでね、コイツは50機程度しか作られていないレアものさ。最初はグフにしようかと思っていたんだが、乗り慣れたザクの方がいいと思ってコイツを用意した」

 

「すまんな、気を使わせてしまった」

 

「いいさ。それでどうする?」

 

「試運転は無理だろうから、シミュレーターで慣らしておきたい。今回の作戦でも、私が手伝えることがあるかもしれんしな」

 

「わかった。木馬を狩場まで追い込むにはまだ時間がある、じっくり仕上げてくれ」 

 

 ガルマの言葉を背に受けると、シャアは早速自分の機体に向けてキャットウォークを駆け下りていく。

 

 その顔はどこか新しい玩具をもらった子供のようだった。

 

 

 

 

 あたしが姉ちゃんと眠りについて、どのくらい経ったのだろう。

 

 ゆるゆるとした夢心地を破ったのは、艦内に響き渡る警告音だった。

 

「なにっ!?」

 

「マチュ! ジオンが来たんだ!」

 

 ガバッと体を起こすのと、アンちゃんが大部屋に駆け込んでくるのは同時だった。

 

「敵の種類は? ザク?」

 

「大型空母と戦闘機だよ。ホワイトベースが引き離そうとしているけど、難しいみたいだ」

 

 テムおじさんが敵の勢力圏に落ちたって言ってたけど、悪い予感は当たったって事か。

 

 姉ちゃんはまだ起きる気配はない。

 

 やっぱり疲れているんだろう。

 

「パイロットは機体で待機だっけ? 行こう、アンちゃん!」

 

「うん!」

 

「というか、アンちゃん休憩した?」

 

「僕の場合は父さんと機械いじりをするのが休憩みたいなものだよ」

 

 なるほど、あたしにとっての木人君組手と同じようなもんか。

 

「今回は地上戦だけど、大丈夫?」

 

「ああ。ゲームじゃ300回はやってるんだ、宇宙と感覚を切り替えるのは慣れているよ。だろ?」

 

「うん。とりあえず、重力負荷と推進剤の減りには気を付けよう」

 

 アンちゃんと軽口を叩き合いながらキャノンに乗り込むと、あたしはコックピットの中でパイロットスーツに着替える。

 

 そうして機体を立ち上げていると、ガンダムの他にスタンバイしている二つの影に気が付いた。

 

「キャノンってもう一機あったんだ。それにあのガチタンはなに?」 

 

『ガンキャノンは分解していたパーツを組み上げたモノらしい。タンクの方はガンタンクっていう砲撃支援機だ』

 

 アムロのアンちゃんに聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

 

「タンクって誰が乗るの? ガチタンって使いこなすのに慣れと腕がいるけど大丈夫かな」

 

『あれにはリュウさんと、ハヤトっていう僕の友達が乗る事になってる』

 

「じゃあ、もう一機のキャノンは?」

 

『カイさんっていう避難民から志願した人だよ。リュウさんはともかく、ハヤトたちは素人だから僕達がフォローしてあげよう』

 

「ニュービーか。ロボゲーだと最後は狩る為に育てるんだけどね」

 

『こっちだとその必要はないさ。指導しながら相手の癖を覚えなくていい分、まだ楽だろ』

 

「そだね。けど、フォローする時は癖を知ってた方がやりやすいよ」

 

 ちなみにロボゲーでは、今まで師匠役としてコンビを組んでいた先達が突然対戦相手になるのはよくある話だったりする。

 

 熟練者の間だとこの行為は『収穫』と呼ばれていて、師匠にベコベコにされて一勝を捧げる事がニュービー卒業の試験だなんて言う輩もいる。

 

 タマに師匠に勝っちゃう逸材もいるんだけど、そういうナイスガイはSNSで拡散されるから、上位ランカーに貪られて結局はヘコまされちゃうのだ。

 

 そこから悔しさをバネにゲームにのめり込むか、心を完全に折られて人間不信で引退するかはプレイヤーの適性次第。

 

 あたしやアンちゃんも何度か『収穫』やってるんだけど、弟子がランキングに顔を出すのは見た事ないんだよねぇ。

 

 そんな事を考えていると、ググっと身体が押さえつけられるような感覚が襲ってきた。

 

「これって……」

 

『ホワイトベースが上昇している?』

 

 アンちゃんの言葉に続いて、あたしの頭に閃くモノがあった。

 

 こちらに向けて悪意が近づいてきている。

 

 それも一つじゃない、かなりの数だ。 

 

 あたしはすぐに通信をホワイトベースのブリッジへつなげる。

 

『あら、マリーちゃん。どうしたの?』

 

 通信に出たのはアンちゃんの幼馴染っていうフラウ・ボウさんだ。

 

「フラウおねえさん、敵の攻撃が来る。ガンキャノン出るよ」

 

『ちょっと待って。ブライト少尉、マリーちゃんが出撃するって!』

 

『どういうつもりだ、マリー?』

 

「攻撃が来るよ! 先手取らないと拙いって!」

 

『だが現在の高度では──『子供だと!? どうして子供がMSに乗っている!』』

 

 フラウお姉さんに代わってブライト少尉が通信に出たんだけど、その後ろから怒鳴り声がした。

 

 たしかこの声って、大気圏で拾った突入艇から聞こえていたモノだ。

 

『リード中尉、彼女にガンキャノンを任せるというのはジャブローの指示です。でなければ、誰が子供を戦場に出すモノですか!』

 

『クッ! いったい将軍たちは何を考えているんだ!?』

 

「いや、そんな今更な事はいいから。さっさと出してよ!……わあっ!?」

 

 あたしが文句を言おうとしたら船が大きく揺れた。 

 

『ドップの編隊です! 敵戦闘機がこちらへ攻撃を仕掛けてきました!!』

 

 ああもう! 言わんこっちゃない!!

 

『迎撃! 弾幕を密に! 敵を近づけさせるな!! マリー、高度は少しあるが出られるな?』

 

「うん。だから出してってば!」

 

『よし、マリー機発進だ! 続いてガンダムも出るからスタンバっておけ!』 

 

 そうしてメンテナンスベッドから機体を起こそうとすると、モニターの端にこちらへ来る人影があった。

 

「待ちなさい、マチュ!」

 

「姉ちゃん!?」

 

 息を切らせて走る姉ちゃんは、その勢いのままコクピットの中へ飛び込んでくる。

 

「ちょっ!? ハッチが閉まってたらどうするのさ!」

 

「あなた一人を行かせないって言ったでしょう。戦場に出るなら私も一緒よ」

 

「う…うん……」

 

 文句を言おうとしたんだけど、姉ちゃんの並々ならぬ気迫にあたしの怒りは萎んでしまった。

 

 その間に姉ちゃんは後ろのサブシートに座って手慣れた感じで計器を立ち上げていく。

 

「おい嬢ちゃん、大丈夫か?」

 

 ハッチの前に顔を出して問いかけてくるのは、テムおじさんと一緒に助けた整備の人だ。

 

「大丈夫、今から出るよ! 整備の人はハッチとあたしのキャノンから離れといて」

 

「どういうことだ?」

 

「多分、格納庫のハッチを開けたら戦闘機が攻撃してくる。それを迎撃しないといけないでしょ」 

 

「わ…わかった!」

 

 そう答えると、整備の人はすぐに後ろへ離れていく。

 

 それから1拍子置くと、格納庫のハッチが上下に開いていく。

 

『カタパルトスタンバイ。ガンキャノン1号機、発進どうぞ!』 

 

「ごめん、カタパルトは使わないよ!」

 

 通信機先のフラウお姉さんにそう言うと、あたしは左手のガトリングを前に向ける。

 

 その次の瞬間にはこっちへ飛んでくる妙な形をした飛行機の姿が!

 

「はじめまして、つまらないものですが!」

 

『う…うわぁぁぁぁぁっ!?』

 

 引き金を引くと吐き出された鉛玉は、飛行機をあっと言う間に穴だらけにする。

 

「はい、ここで爆発しない!」

 

 そしてハッチに向けて墜落しようとする敵戦闘機を、飛び出すついでに前へ蹴りだす。

 

 蒼い空へと飛び出せば、周りは敵戦闘機だらけ。

 

「姉ちゃん、しっかり掴まってて!」

 

「ええ!」

 

「先手必勝! 全弾発射ぁぁっ!!」

 

 両肩のキャノン、頭のバルカン、そして左手のガトリングが一気に火を噴くと、前方にいた敵機は対応できずに次々と火球へ化ける。

 

 これだけいるなら、狙いを付けなくても適当にバラまくだけで十分に効果がある!

 

 そして前方の空間を確保したあたしは、ペダルを思い切り踏み込んでスロットルを一気に開ける!

 

 途端に身体を襲うのは浮くような浮遊感と、椅子に押し付けられるくらいの圧力だ。

 

「ば…バカな!?」

 

「モビルスーツが飛んでいる!?」

 

 そう、とっつきの踏み込み用に強化したスラスターを全開にすれば、重めなキャノンでも短期間なら空に浮かせることが出来るのだ。

 

「よいしょっ!」 

 

「うわぁあっ!?」

 

 そうして上昇したあたしは、右手のパイルバンカーを横薙ぎに振るって一機の戦闘機を叩き落とすと──

 

「君は踏み台、よろしく!」 

 

「ごわぁっ!?」

 

 今度は足元を飛んでいた他の戦闘機を蹴りつけて、さらに空へと飛ぶ!

 

「見せてあげよう! なんちゃってジークンドーで育んだあたしの軽功術をっ!!」

 

 狙うは一番奥にある大型空母だ!

 

 

 

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