次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第一話 後編 採用!

 俺たちはソファーに座って待つことしばし。職員に呼ばれ、案内された二階の部屋へ入ると、手配した傭兵、男女二人組がすでに待っていた。

 

 お? おお? 日本人? 

 ……いやそんなバカな。

 でも彼らの顔、この大陸じゃほぼ見かけないモンゴロイドの特徴がある。高校生ぐらいの年齢だな。

 もっとも俺も同系統の顔なので、向こうも少しだけ驚いた気配がする。

 

「座ってくれ」

 

 セルアが声をかけると、二人は腰を下ろす。

 男の方は平凡な顔つきだが、傭兵らしく肝が座った目つきで、俺たちを観察している。

 女の方は色が白くて、時代劇に出てくる姫様みたいな美少女。セルアがスラブ系なのに対し、この子は着物が似合いそうな和風美人って感じ。

 

 セルアはしばらく二人と見つめ合った後、俺の方を向いた。

 

「どう?」

「信用出来る」

 

 一目見ただけで判断する彼女の技能に俺は感心するしかない。日本にいたら色んな企業の人事部から引っ張りだこかもな。

 

「さすがだな。依頼は俺が話そうか?」

「そうしてくれ。前に言った通りこの建物の中で依頼内容に虚偽は許されないし、向こうの守秘義務は絶対だ」

 

 傭兵協会内は契約魔導の効果範囲なので何人も嘘が言えないし書けない。またここでの会話や契約内容が外に漏れることは絶対にないのはお墨付きだ。だからこそ王族や貴族も利用する。

 

「わかった。まずは自己紹介してくれるかな?」

 

 俺はにこやかに言う。面接するのなんて何年ぶりだろう。

 

「俺はクローセ、彼女はユウコ」

 

 目の前の若い男は訛りのない大陸公用語で自己紹介した。クローセはともかく、ユウコか……まんま日本人みたい。

 

「連携のことがあるから、君らのできることを教えてほしい」

「俺は剣を使う。傭兵協会の顧問に手ほどきを一年受けた」

 

 そう答えたクローセだが、彼らは剣を携えてない。ここは帯刀が許されているはずだけど、面談には不要だと判断したか?

 

「私は体術と魔導を少し」

 

 ユウコはその華奢な体つきにふさわしくないことを口にした。体術ねぇ。何かの武術か。

 

「じゃ俺たちの素性と依頼内容を伝えるよ。俺はヒロア。ここから西にあるウエスニ王国から来た、魔導士だ。で、こっちがセルア・ハリトー・ダラド、千年帝国の皇女さまだ」

 

 同時にセルアがフードをめくる。クローセがセルアの髪に注目する。当然の反応だろう。

 

 光が当たると真珠のように輝く白い髪。そこにいくらか混ざる紅。これこそ誰もが知る皇族の証だ。

 

「俺たちは帝国領土内の都市を何ヶ所か経由して、最終的には霊峰へ行く。で、そこまでの護衛を依頼したい」

 

 クローセもユウコも首肯する。

 

「帝国の皇女さまが従者を一人しか連れていない理由を聞いても?」

 

 侍女や従者をぞろぞろ連れ歩くのが普通だもんな、予想された質問だ。

 

「順番に話していく。皇帝の血を引く者は例外なく高位の魔導を使えるのは知ってるよな?」

 

 二人は頷く。

 

「彼女はさ、ドラゴンに変身する魔導が使えるんだ」

 

 これは隠しても仕方ない。クローセは驚きの表情を見せるが、ユウコの方は変わらず。肝の座った女の子だな。

 

「知っての通り世界最強クラスの魔導だ。で、俺の地元でね、ドラゴンになったこの子を倒しちゃったのよ、俺が」

 

 クローセが平静を装おうとしてるのはわかる。ま、普通ありえないからな。

 

「……なぜ帝国がそんな僻地のウエスニ王国に?」

「あーそれな、俺の育ての親、通り名が“殲滅の魔女”なんだ」

「“殲滅の魔女”……」 

 

 クローセの眉が跳ね上がり、口が引き締まる。そうだろう。この大陸では知らぬ者なしの超有名人だ。

 

「びっくりするだろ? 俺も驚いたよ。帝国が攻めてくるまでそんなこと知らなかったんだから」

 

 自分の育ての親が大陸中に名を知られた伝説級の魔導士だなんて冗談としか思えないよ。

 

「セルアはその討伐部隊の主力だった」

 

 “殲滅の魔女”は大陸で、帝国よりも恐れられている存在だ。彼女によって滅ぼされた国は幾つもあるし、地形そのものが変わってしまった土地は数え切れないほどある。

 

「俺は任務に失敗したセルアと一緒に身を隠せってイズミに言われたんだ」

 

 セルアが俺の話を引き継ぐ。

 

「霊峰に行く、というのは私の望みだ。このヒロアと一緒に、というのもな」

 

 そう言いながら俺の腕に絡みつくセルア。やめろ。当たる。当たってる。クローセがさらに変な顔になってるぞ。

 

「帝国はセルアが“殲滅の魔女”に敗北した場合の保険をかけてた。彼女の体内に埋め込まれていた自爆魔導器具を俺が解除したわけ」

 

 反物質爆弾なんてオーパーツだろ。物騒なもん仕掛けやがって、帝国め。

 

「元々、私を排除したかった派閥がこれ幸いと私を抹殺対象のお尋ね者にしたことになる」

 

 帝国に命を狙われる身になったというのに、セルアは凜としている。

 

「帝国のセルア排除派だけでなく、帝国も敵前逃亡したセルアを生かしておきたくない。

 

 クローセとユウコは首肯する。

 

「刺客からセルアを守るという依頼だ。正直、俺一人じゃ難しくなってきた」

 

 クローセは腕組みをして、遠くを見る目つきになった。

 

「帝国が相手か……。霊峰が安全地帯と言う根拠は?」

 

 クローセの質問にセルアが答える。

 

「霊峰には古代帝国の遺跡が点在していて、ドラゴンがそれをを守護している。これは知ってるよな?」

「ああ有名な話だ」

 

 クローセが首肯。

 

「帝国も他の国と同じように発掘調査をしていたが……現皇帝が即位した年に何かあったらしくてな。今に至るまで帝国の人間は霊峰へ入れない」

「それは知らなかったわ。でもそうなるとセルア殿下は……」

 

 初めてユウコが口を開く。

 

「ユウコ、私はもう皇女ではない。セルアで良い」

「じゃ改めて。セルアさんは霊峰へ入れるの?」

「“殲滅の魔女”たるイズミが断言したんだが、ドラゴンは同胞を拒まない種族なので問題なく立ち入ることができるとのことだ」

 

 俺もそう願いたい。もし門前払いされたら俺とセルアはずっと逃避行を続けることになる。それは遠慮したい。

 

「わかったわ。忙しい護衛任務になりそうね?」

 

 これには俺が答えておく。

 

「国を出てからここへ着くまで、二ヶ月かかって二つの国を横断したけど、その間に十回以上の襲撃を受けた」

 

 ほんと休む暇もないとはこのこと。

 

「今までは、帝国支配下にある国に潜伏している特務部隊が相手だったけど、国境を越えて帝国領内に入ったら、もっと面倒な相手が出てくる可能性が高い。セルア、何だっけ?」

「例えば帝国軍の特務部隊とか、皇帝お抱えの暗殺部隊が相手となる公算が高い」

 

 実際のところ、セルアも知らない部隊はあるだろうとのこと。

 

「クローセ、ユウコ、なかなか厳しい依頼だと思うけど、受けてくれるか?」

 

 俺はクローセの目を真っ直ぐに見る。

 

「わかった。護衛として二人を守り抜くよ」

「よろしく頼むよ」

 

 俺はクローセと握手を交わす。ちらっとユウコを見たら、笑顔を返された。可愛い笑顔だなって思っていると、セルアに腰のあたりをつねられる。痛い。

 

「ク、クローセ、すぐにでも出発したいけど、そっちの準備はどうだ?」

「構わない」

「感知魔導に引っかかる存在が四人いる。この建物を囲むように、な」

 

 ほんとに鬱陶しい。おっと、目の前ではクローセがユウコと視線で会話してる。すげぇ。夫婦かよ。

 軽くユウコが頷き、クローセが俺の方へ向き直る。

 

「ユウコも確認した。で、どうする」

 

 ほぅ。索敵魔導が使えるんだな、ユウコ。

 

「街を出たとこでサクッと片付けよう」

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