次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第二十三話 スター誕生

 眠そうな顔になったベレタを俺が、ルサを優子がおんぶして宿へ帰る途中、街角にある官報掲示板が目についた。夜だというのに人集りが囲んでいる。

 

 『邪神教団の襲撃を東の王国から来た英雄が自らの命と引き換えに討滅』

 

 一際大きい文字で書かれた見出し。一方通行の発信で情報操作。昭和時代のテレビ以上の影響力だろうな。

 

 すっかり寝入ったベレタとルサをガロウに渡す。

 

「いつも面倒見てもらってすまない」

「俺らもこの子達に癒されてるから礼には及ばないよ」

「ヒロアには弟や妹がいるのか?」

「いないよ。故郷の開拓村で子守りしてたんだよ」

 

 これは事実だ。イズミは村で託児所をやっていて、俺は手伝わされてたからな。

 

「そうか。宿代を少しばかり勉強させてもらう」

「え……それは」

 

 断ろうとして、やめた。こういう場合は素直に好意を受け取るもんだ。

 

「ベレタもルサも毎日お前達のことを話すようになって、随分と明るくなった。母親がいないから寂しい思いをさせてたからな」

「……それはよかった」

 

 部屋へ戻ると三人ともニヤニヤしながら、俺を見る。

 

「な、なんだよ」

「ヒロアの中身はやはり“お父さん”てのがピッタリだと思ってな」

 

 黒瀬が感心したような顔で言うと優子も続く。

 

「ヒロアさん、こっちの世界でも良いお父さんになるわね」

 

 優子はセルアに視線を送る。セルアは頬を赤らめこう言った。

 

「子どもは何人欲しい?」

「ばっ、気が早すぎるぞ。恋愛脳皇女!」

 

 俺は仕切り直す。

 

「今夜の作戦の最終チェックに付き合ってくれ。邪神フゥジィのデザインを見てもらう。特にこっちの世界の住人であるセルアの意見が聞きたい」

 

 よし、フゥジィ、始めてくれ。

 

『ほんと、悪趣味というか理解不能だわぁ』

 

 いいんだよ、奴らも邪神とご対面するのは初めてなんだろう? それなら目一杯威圧して言うこと聞かせなきゃならないからな。

 

『始めるわよ。服脱いでね』

 

 フゥジィの言う通りに上着を脱ぎ捨てると、俺の体は変化を始めた。

 まず背が少し高くなる。俺の指定は身長二メートルぐらい。視点が高くなるのは新鮮な感覚だな。同時に髪が伸びて、肩や背中に触れる。くすぐったい。

 

 股間に違和感が生じると同時に、胸が膨らみ始め、背中から羽根が、腰から尻尾が生えてくるのを感じて、頭から生えた角を手で触って確かめる。

 

 セルアがポカンとした顔になった。初めて見る表情だ。

 

 仕上げは両肩から生えてくるドラゴンの頭。こっちの世界にいる哺乳類っぽいのじゃなくて、地球でイメージされてる怪獣顔のドラゴンにした。

 

 最後に額に第三の目を出現させて完成。

 まずは両手を広げ、顎を引く。そしてニヤリと笑うと、フゥジィの声で話す。

 

「妾はドラゴン族の頂点、龍神フゥジィであるぞ。フハハハハハ! 下賤で下等な人類ども、頭が高い」

 

 しばらく時が止まったような静寂が場を支配した。

 

「ブーッ」

 

 黒瀬が噴き出して腹を抱えて笑い出したかと思えば、優子は肩をプルプルさせて下を向く。セルアは焦点の定まらない目で口をあんぐりと開けたまま。

 

 あれ?

 

 滑った?

 

「はっ、はっ、はっ、腹が痛えぇー」

 

 遂に黒瀬は床に転んで笑い出した。

 

「不敬な者どもめ。妾を何と心得る!」

「ヒロアさんっ、くっ、さ、左右の瞳の色が」

 

 優子も真っ赤な顔をして笑いを堪えている。

 

「優子よ、良き質問じゃ。これはオッドアイと言ってな、この手のキャラにはつきものの記号なのじゃ」

「ヒッ、ヒロア、それ悪の組織の女幹部だよ、ひーっひっひっひ」

「その通りだ黒瀬。イメージはそれじゃ。両肩のドラゴンヘッドは別々に動くし、ビームも撃つぞ」

 

 耳元であの有名な金色三首竜怪獣の電子音的な鳴き声が再現される。

 

「セルア、どうした。そちも感想を述べよ」

「……」

「セルア?」

「……あ、すまぬ。我を忘れていた……」

「どうじゃ。これぞ邪神て感じだろう?」

「……」

「何か言ってくれよ、セルア」

 

 セルアが俺の腕を取る。

 

「肌の色が」

「邪神らしく、緑にした」

「なんと言っていいかわからん。想像していた邪神とはかなり趣が違うが……」

「え? そうなのか?」

 

 黒瀬が挙手。

 

「はい、黒瀬くん」

「なぁヒロア、その肩のドラゴンヘッドはやめとこう」

「え? これがキモなのに」

「ギャグにしか見えないぞ」

「マジか……」

 

 フゥジィ、引っ込めてくれ。

 

「ほら、少しは良くなったよ」

「そうね」

 

 黒瀬に優子が同意する。

 

「いいアイデアだと思ったんだけどなぁ」

「……ふざけてないのが余計に性質(たち)悪いよな……」

 

 黒瀬、その可哀想な人を見る目をやめてくれ。

 

「それとなんでビキニブラ?」

「これもダメ出しか」

「スケベなアニメキャラみたいね」

 

 優子! 容赦ないな!

 

 うーむ。仕方ない。フゥジィ、イメージするからこんな服にしてくれ。

 あっという間に、体に布を巻きつけただけのような衣装に変わった。

 

「あら、女神っぽい」

「あぁ、良い感じだ」

 

 優子とセルア、女子には好評な様子。

 

「その羽根と角、尻尾はいるのか?」

「おい黒瀬、いよいよ邪神としてのアイデンティティが無くなるんだが?」

「仮装っぽく見えるんだよ」

「……な、なんだとー」

 

 小声になってしまう俺。フゥジィに頼んで消してもらった。

 

「その顔、どこかで見たような……映画?」

「黒瀬、よく気づいたな。昔の特撮映画で俺が一番好きな女優さんをモデルにした」

「あ!」

「ある時は侵略宇宙人、別の役では美少女アンドロイド、または吸血鬼も演じていたぞ」

「やっぱりヒロアさんは黒瀬君と同類ね」

「セルア、どうだ?」

「……あ、ああ、かなり女神らしくなったな」

 

 ガチで考えた邪神デザインはこうして大幅に修正された。俺としては納得いかないが、客観的な意見が重要だ。ちっ。

 

『君のセンスは面白いねぇ』

 

 フゥジィっての、本名か?

 

『私達に個体名はないよ』

 

 そうか。でも名乗らないとカッコつかないな。

 

『彼らが勝手につけた名前で呼んでくれるわよ』

 

 あっ、そうか。

 

「協力に感謝する。教団がどう出るか、不明な部分もあるけど、一発ぶちかましてくるわ」

「ヒロア、ノリノリじゃねぇか」

「大学では演劇部の助っ人やってたからな」

「“妾”より“我”の方が良くないか?」

「お、さすが黒瀬。よし採用」

 

 こうして俺は転移で教団トップのいる場所近くへと転移した。まぁ見てろ。邪神を演じ切ってやるさ。

 

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