次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第二十四話 侵略的外来生物

 邪神教団のトップ、そいつから指定された場所は街の外れにある巨大な倉庫だった。

 石造りの二階建て、ショッピングモールほどの高さと広さ。ガロウにそれとなく聞いたところ、ディーザの領主ディーザ侯爵が管理するものだそうだ。

 

 建物の入り口が見える場所へ転移して、フゥジィに探ってもらう。

 

『地下に集まってるわね。魔導封じの処理がされてるよ』

 

 まぁそうだろう。貴族の所有するものだ、セキュリティは万全にするはずだ。

 

 でもフゥジィには関係ないんだろう?

 

『そうね。私の力は魔導じゃないから』

 

 じゃよろしく。

 

 自分が使う転移魔導に似た感覚で目の前の景色が一瞬で変わる。

 

 やたら広い部屋、壁に沿って並ぶ篝火や蝋燭の灯りで、数十人、いや百人近い老若男女が集まっているのが見えた。

 

 いきなり高さ二メートルほどの空中に出現した俺(姿はフゥジィ)の方へ、全員が一糸乱れず揃った動きで頭を向けてきた。俺(姿はフゥジィ)だとわかると全員が平伏する。全く同じタイミングで。

 

 ベレタと同い年ぐらいの子どもから禿頭の爺さんまで。服装も役人ぽいのや、兵士、貴族の従者風の者、町娘や娼婦にしか見えないのまでバラエティに富んでいて、唯一の共通点が全員無表情な顔ということだ。

 

 ───教団の信者はどこにでもいるというのは嘘じゃなさそうだ。

 

「我を強制召喚した者の顔を見に来てやったぞ」

 

 俺は精一杯、人を見下した感じで言い放つ。

 

「生命を司るカテレル・コストロよ、どうか私どもに慈悲を。平にご容赦を」

「あなた様の顕現は我らの悲願ゆえ」

「私たちの希望をどうかお聞き届けくださいますよう、伏してお願い申し上げます」

 

 一人ずつ順番に語る彼ら。練習でもしたのか。芝居じみているようで気色悪い。

 

『へぇ。この子達、九十六人で一人の人格ね』

 

 は?

 

『全員で一つの生き物ってことよ』

 

 ……ん? 本人は別のところにいて、こいつらは傀儡ってことか?

 

『ううん。魂は確かにここにあるわぁ』

 

 考えるのは後にするか。

 

『ふむ。我は寛容でな。して、何用があって我を召喚したのだ?」

「古き書物にあります通り、あなた様は高位の神」 

「あなた様はかつてこの大陸に君臨し、ドラゴンを人の元に遣わし、様々な知恵を授けておられた」

「千年帝国よりずっと前に栄えた帝国が興った頃に、神の世界へと去っていかれました」

「その帝国はあらゆる技術を発展させ、星の海へすら足を伸ばすほどになりました」

 

 セリフを分割して一人ずつ話す……ほんと、何なんだよ。

 

「しかし戦火によってその文明は失われました」

「その核心となるものは霊峰にございます」

「しかし千年帝国は愚かな過ちにより、霊峰へ立ち入ることを禁じられました」

「私どもにそれは耐えられません」

「古代帝国が遺した素晴らしき文明の産物を求めてやみません」

「どうか、再び我ら人間の上に君臨なさること、伏してお願い申し上げます」

 

 彼らは順番に話していく。

 

 あんなこと言ってるけど、今の話に出てきた神ってフゥジィじゃないんだろう?

 

『そおよぅ。そういうことが好きなのもいるけど、私はそんな面倒なことしなーい』

 

「帝国の特務部隊があなた様に無礼を働いた件、我らの不手際でございます。ひらにご容赦を」

「気にしてない」

「それとあなた様の肉体を使っての茶番、我らは傍観するしかできなかったことも」

「それも私には関係のないこと。今はこの男を依代にしているからな」

「その男はドラゴンへ変化する皇女を伴い、霊峰を目指しているそうでございますな」

 

 一番小さな男の子が、まるで年寄りのような口調で言う。なるほど、“九十六人で一人”というのは間違いなさそうだ。

 

「そうだ。言っておくが、我は汝ら人間に干渉する気はない。好きにせよ。ただし我にも干渉するな」

 

 全員が全く同じ顔で驚く。

 

「そ、それは」

「我は望んで降りてきたわけではない。粛正されないだけ、ありがたく思え」

 

 全員が全く同じタイミング、同じ動作で項垂れる……シンクロナイズドスイミングみたいだよ。

 

「お待ちください、カテレル・コストロよ。あなたの血を引く我らに、帝国を退けるのに必要な祝福を。どうか」

 

 霊峰にある古代帝国の遺産が欲しいのは本当のようだが……何か隠してるようにも感じる。

 こいつらの企みはどうでもいい。俺としてはこいつらにテロを起こさせないようにしたいだけ。なら命じておくか。

 

「ならば約束せよ。今後百年は人の命を尊重することを。他者の命も含めてだぞ」

「そ、それは」

「汝らは命を創り出せるのか?」

「……い、いいえ」

「我がこの惑星(ほし)に蒔いた種、それを粗末に扱うことは決して許さぬ。心得よ。汝らがこの禁を犯す時、全ては無に帰すことになる」

「……」

「百年待てば汝らの望みを叶えてやろう」

「あっ、ありがたき幸せ」

 

 まただ。一糸乱れず全員が顔を上げたかと思うと、物真似大会みたいに同じ顔と動作で喜んでいる。本当に気持ち悪い。

 

 ちょっと視覚的にも脅しておくか。

 おいフゥジィ、身体を……そうだな十メートルぐらいにしてくれ。できるだろう?

 

『簡単よぉ』

 

 俺の視点は急激に高くなり、身体が拡大するのを感じる。

 

 ついでに、瞳を金色にしてくれ。

 

『いいわよ』

 

 そして全員を睨みつけたまま、一歩前に踏み出す。おーおービビってる。

 

「我、カテレル・コストロが命ずる。百年待つが良い。その間、汝、何人も殺すなかれ」

「確かに! お約束いたします」

 

 全員が合唱する。

 

 そうして転移して倉庫の屋根に着地した俺は、フゥジィと打ち合わせをする。

 

 あいつら、何か隠してるよな。

 

『そう? 私にはわからないわぁ。人間なんてみんな同じだしぃ。あ、でもあそこにいたのは人間とは言えないかなぁ』

 

 どういうことだ?

 

『あれは集合型生命体ね。あの九十六人で一つの生き物なの』

 

 はあっ?! 何じゃそりゃ!

 

『たまぁにいるわよ。他の生き物のDNAを自分に取り込んで同化する。その後に擬態して、取り込んだ生き物のコミュニティに紛れるの。あれがその気になればこの惑星(ほし)を埋め尽くすのも簡単』

 

 そういう化け物か! もしかして他の惑星(ほし)から来たとか?

 

『そうね。この惑星(ほし)に同種は見当たらないから』

 

 なんてこった。とんでもない化け物じゃねぇか! それが邪神教団を支配してるわけか。弾圧なんて無理だ。

 

 ん? 待てよ。この惑星(ほし)を覆い尽くすのが簡単にできるなら、なんで実行しない?

 

『さぁ? ここは住みにくいんじゃないかなぁ』

 

 そうか。あ、もしかしてこの惑星(ほし)を脱出して他へ行きたいのか? それなら古代帝国のテクノロジーに拘るのもわかる。宇宙船を作りたいんだろう。

 

 フゥジィを召喚するのに二百人の生贄を捧げたってのも、要は自分の一部を使ったと考えていいのか?

 

『そうねぇ。あなたで例えたら、髪の毛や爪を捧げるような感じ?』

 

 なるほど。あそこにいたのが全部ってわけじゃないかもしれないな。あちこちに自分がいるわけか。情報収集も、テロ行為も思いのまま。

 まいったな、エイリアンまでいるのかよ、帝国。

 

 あれを殺す……のは不可能だろうな。一人でも残ったらそこからまた増える。とことん性質(たち)悪い化け物だぞ。

 

『生物の生態は多種多様だからね? 単体生殖のもいれば、分裂して増えていくのもいるし』

 

 宇宙は広大だ。想像もつかない奴も当然いるということか。

 俺がカテレルなんとかという神を騙って命じたから、百年間は大人しくしているだろう。好戦的な性質でもなさそうだし。

 奴が何かするにしても未来の人間が何とかする……よな? 

 

 俺はそこまで生きちゃいないが、気にしないことにした。俺がどうこうできる範囲を遥かに超えた問題だ。なるようにしかならん。

 

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