女子は簡易シェルターの中で寝てもらい、俺達男は焚き火の周りでごろ寝となる。
「わぁセルアさん大きい!」
「や、やめろ! 触るでない! 優子! この
シェルターの中から女子達、特にセルアと河野さんが交流している声が聞こえてくる。
「河野さん、皇女殿下に失礼よ……くすくすくす」
「ウエストが細いですね」
「やめっ、あひっ、やめよ! 何をする!」
「河野さん、それぐらいにしなさい」
「はぁい」
「優子、ニホンの
「いえ。殿下の美しさに興味を惹かれたようです」
彼女達の会話は筒抜けである。黒瀬はアチャーって感じで頭を抱え、霧丘君は顔を赤くして俯いている。うん。河野さん、面白いね。
「河野は生まれて二年だから、まだまだ子どもなんだ」
「えっ!」
黒瀬の言葉に霧丘君がいち早く驚きの声をあげた。いや俺もだが。
「遺伝子は人間ベースだけど。ちょっと特殊な方法で生まれたんだ。高度な科学技術でね」
「ほう。人造人間みたいなものか?」
「それとは違うよ。ちゃんと魂を持った、そう言う意味では人間だよ」
「黒瀬を取り巻く周囲もえらく非現実的だよな」
「俺もそう思う」
「河野が……二歳……」
横で霧丘君が何やら呟いている。わかるぞ少年。でも君はロリコンじゃないぞ。多分。
クッションになるよう木の枝やら落ち葉を敷き詰めた上に寝そべって、俺と黒瀬は交代で寝ずの番をすることにした。
「これ……思ったより暖かいですね」
「さっき焚き火で熱した石を埋めたろう? 床暖房だよ」
「ヒロアはキャンプの達人だな」
「んあ? ああ。週末とか、とにかく俺は気が向いたらあちこちキャンプに行ってたぞ? どこででも」
つい黒瀬と霧丘君にちよっとキャンプのことをあれこれ語ってしまった。
土地管理者のOKが出たらあとは変な奴(とにかくイチャモンつけたくて仕方ない精神的田舎者)に気をつければ、野営できる場所はたくさんあった。
『キャンプはキャンプ場でしかやってはいけない』という固定概念の持ち主には近づかないようにして。彼らは河川法や森林法すら調べたこともない。
「それとな、黒瀬や霧丘君が林間学校で使ったようなテントは過去のものとなってだな」
……と、こうして俺のオタ語りとともに夜は更けていった。最初の見張り番である俺を残して全員眠りについたようだ。
焚き火を見つめながら俺はフウジィに問いかける。
黒瀬達と河野さん達、ここへ飛ばされたのは偶然か?
『違うわよ。あの霧丘って子以外にはDNAに仕込まれているモノのせいよ。転移に指向性を持たせてる』
それ、外したり消したりできるもの?
『無理ね。強引にやろうとしたらDNAが崩壊しちゃう』
なんとまぁ、悪辣な罠ってわけか。仕掛けたのはやっぱり、黒瀬達が始末して回ってる奴らの親玉?
『そうよ。アレはねぇ、全てを溶かして混ぜていくモノなのよ』
まさに邪神か。俺達には迷惑な話だ。他の次元にまで出張るなっての。
『その道筋を整えられたから、そっちに行こうとしてるだけ。君のいた世界へ転生したのが呼んだんでしょう?』
黒瀬の話にあった異界の巫女とやらか。
『その巫女ってのが次元を超えて転生したのも、誰かの意思かもね』
なに! かーっ! 俺達じゃ手の届かない存在か?
『何事もね、有り得るのよ。それが世界の
うーむ。俺達人間てのは嵐で荒れ狂う太平洋に浮かぶ小さな葉っぱ、いやプランクトンみたいな存在か。いいさ。精々抗ってやるさ。
途中黒瀬が起きて見張りを交代し、俺は眠りについた。
顔に当たる冷たいものに起こされた。空は薄暗く小雨が降っている。
「くあっ、ふあぁ」
「起きたかヒロア」
既に黒瀬が焚き火を大きくして、霧丘君が寝ぼけた顔して暖をとっていた。
「おおう。よく寝たわ」
ポンチョがしっとり濡れているが、ウール製なのでそこまで冷たくはない。
「さーて。朝飯の準備するか……?」
「どうしたヒロア……ん」
遠くで聞こえる───複数の管楽器を奏でるような音。
例えるなら、あれだ! 吹奏楽部がてんでバラバラにクラリネットやトランペット、ユーフォニアムを吹いている感じ!
そんな曲とはメロディーとも言えない不協和音が、風に乗ってかすかに聞こえてきている。
「港の方か?」
立ち上がり、俺の目に映った光景。
港に停泊している帝国の最新鋭艦が襲われている!