次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第三十一話 霊峰へ

 千年帝国の軍港に突如として現れた触手怪獣。どうやらこいつはこっちの世界から地球へ良からぬモノを送り込んでるらしい。

 それを特撮ヒーローみたいに巨大化した河野さんが海中から引っ張り出し、俺が雷撃魔導を喰らわして、そこへ黒瀬が光る刀を長く伸ばしてトドメを刺した。

 

 こうやって文章にすると安っぽいラノベみたいじゃないか。

 けどこれは現実だ。

 

「さて。早いとこ霊峰へ行くとしよう。いいよな?」

 

 セルア、黒瀬、優子、河野さん、霧丘君。全員と目を合わせ確認を取り、首肯をもって彼らも答えた。

 俺に取り憑いた邪神フウジィが魔導の代償をある程度(体感だと九割以上)肩代わりしてくれるので、数千キロ離れた霊峰へ一瞬で転移できる。

 

「あと食料やら身の回りの品を調達したいな。セルア、どこがいい?」

「霊峰の麓、周辺の都市には軍が駐留しているから近づかない方が良い。そこより手前にある都市……そうだな、モリミあたりか」

 

 全員で転移。

 まずは山の中へ降り立つ。いきなり人目のあるところじゃまずいからな。

 

 遠くには冠雪した山脈が見え、その中で一際異彩を放つ山。あれが霊峰だろう。

 北方だからか、カサカサした土地に痩せ細った針葉樹が転々と立ち尽くし寒々とした風景だ。空気も乾燥していて、生き物の気配が一段と少ない印象を受ける。

 

「まずは全員の着るものだな。霊峰に立ち入りを禁じられているのは帝国民だけであって、他国の人間は普通にいる。彼らからすると間違いなく俺たちの格好は怪しい。『そんな遠くから何をしに来たのか?』ってな。黒瀬、行くぞ」

 

 そう言って黒瀬とともに街へ跳ぶ。

 

「ほぉー」 

「変な建物……」

 

 黒瀬もキョロキョロ見回しながら感想を述べる。

 

 今まで暮らしていた王国や帝国の都市とは全く趣の違う街並み。

 例えるなら───土筆(つくし)だ。細く伸びた塔みたいなシルエットの建物が並ぶ。

 

「おおかた、雪に潰されないようにってとこだろう」

「あー雪下ろしをしなくていいわけか」

「そういうこった。さて店へ行こう」

 

大通りに面した大きな店へと足を踏み入れる。

 行き交う人々の装いもかなり他とは違っていて、男女とも丈が長い、中央アジアあたりの民族衣装、カミースみたいなのを着ている。あれって薄くてペラペラなのに暑さにも寒さにも強いんだよな。

 

 目立っていいことは何一つない。全員分の現地服、軍への供給用である携行食、天幕などを買い揃えた後、皆が待つ山へと戻った。

 

 準備は整った。

 霊峰へ向けて転移する。

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