次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第三十三話 ゴングは鳴った!

 霊峰へ転移して、遺跡へ入った俺達。突然現れた白い女。ドラゴンのアバター、分身だ。

 

「そこに同胞の気配を纏う帝国の人間がいますが、理由を聞きましょうか」

 

 白い女はすっとセルアを指さして冷たく言い放った。人を指さすのは行儀悪いぞ。

 

「帝国はいつから我々との約定を違えることにしたのですか? 返答如何では私があなた達を排除せねばなりません」

 

 同時に息が詰まりそうなほどの圧迫感が増す。

 

 ───んん? 待てよ。

 

 俺たちが唯一出会ったドラゴン、ミィタ。

 彼女は遺跡に長いこと閉じ込められていたが、俺たちが解放した。そして別れ際にミィタが言ったこと。

 

『皆さん、お世話になりました。この恩は決して忘れません。霊峰にいる同胞にも皆さんのことを伝えましたから、向こうへ着いたら歓迎されると思います』

 

 ───確かにミィタはこう言ったぞ。どういうことだ。

 

 考えられる可能性は三つ。

 一つ、ミィタが嘘をついた?

 ……いや、それはない。

 二つ、ミィタの話がうまく伝わっていない?

 これも違う。意思疎通はできると言っていた。

 三つ、目の前のドラゴンだけが知らない?

 ───おそらく、これ

 

 なら穏便に解決しよう

 俺は白い女に頭を下げる。

 

「魔導士のヒロアと申します。ミィタさんから連絡があったと思いますが、我々のことは伝わっていませんか?」

 

 営業マンモードでにこやかに歩み寄る。

 

「そんなこと、知りません」

 

 ずっと目を細める白い女。

 

「ほう? それは変ですね。彼女は『霊峰の同胞に伝えた』と教えてくれたのですが?」

「そもそもあなたの言う“ミィタ”を名乗るドラゴンに心当たりがありません。あなたが嘘を言っていないのはわかりますが、騙されているのではありませんか?」

 

 気の毒な人を見る目つきだ。腹立つな、あの目つき。

 ……もしかしてドラゴンにも派閥とか部族があって、情報共有がされてないとか? それなら一から説明するか。

 

「こちらの彼女は確かに帝国の皇女です。名はセルア・ハリトー・ダラド。ですが彼女がここに来た目的は遺跡の調査や発掘ではありませ……」

『あらら』

 

 フウジィの声がしたかと思うと、大地の感触が消えた。俺の身体は何かに引っ張られたように後ろへすっ飛び、さっきまで俺が立っていた場所が爆発した。

 

 現れたのはドラゴン。本体のお出ましだ。

 白い毛並みに薄紫が混じり、赤く長い角が後ろ向けに伸びていて、馬のように細長い顔に、鼻先には白い髭が揺れていた

 

 フウジィが咄嗟に助けてくれたようだ。

 すまん、助かった。

 周囲に目をやる。

 セルアは飛び退き、黒瀬と優子はドラゴンの背後に回ってる。離れたところに河野さんが霧丘君をお姫様抱っこで立っている。

 

『うふ。魔導がいつものように使えないわよ。気をつけてね』

 

 セルアのもとへ転移しようとしたら、まるで水中にいるような抵抗感があり、思った距離の半分も移動できない。

 雷撃魔導も静電気程度しか発現せず、使い物にならず。魔導にデバフかける能力か?

 

「セルアっ!」

 

 走り寄るとセルアの手を引き、走り出す。背後に嫌な気配。

 

「危ないっ!」

 

 耳元で優子の声。

 瞬時にドラゴンの背中が見える位置に立っている。優子が助けてくれた。彼女の吸血鬼としての能力に魔導を妨害する力は通じない。

 ヤツ(ドラゴン)の角が光り、レーザーを撃ってやがる。完全に殺す気か!

 

「優子、助かった」

「もう一回。きゃっ」

 

 ドラゴンの尻尾に打ち据えられ、吹き飛ぶ優子。

 

「優子!」

 

 回り込んだ黒瀬が受け止めるようとしたが、間に合わない。

 

「河野さん、霧丘君を連れて逃げろ!」

「はいっ」

 

 霧丘君を抱いたまま、河野さんは建物の奥へ。

 

「黒瀬! やれるか?」

「ああ!」

 

 黒瀬が優子を抱き起こし、そして虚空から光る刀を抜いた。こっちへ向きを変えつつあるドラゴンの下腹部へ向け俺は誘導加速魔導を使って短剣を投擲。

 俺は知っているんだぞ。

 ドラゴンの弱点を。

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