次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第三十五話 あちらとこちら

【tips 現在地】

 千年帝国の北部にある霊峰。ヒロア達がいるのは古代遺跡のひとつ。

【tips 終わり】

 

 建物の外はすっかり暗くなっていて、俺たちは夕飯の準備に入る。ドラゴンは二頭とも眠ったままだ。

 

「大きいな……」

 

 霧丘君がドラゴンに恐る恐る触っている。彼は結構肝が据わってるね。

 

「とりあえず、このドラゴンが目覚めたら話をつけてみるよ。案外早く話が進みそうかもな」

 

 俺が話しかけると、きょとんとする霧丘君。

 

「君や河野さん、黒瀬達を地球に帰す段取りだよ」

「あっ、そうでした」

「ドラゴン達の協力が必要だからね」

 

【tips黒瀬達】

 黒瀬、優子、河野、霧丘。彼らは昭和の日本からヒロアのいる惑星(ほし)に敵対する存在によって転移させられた。

【tips 終わり】

 

 ドラゴンの助力さえあれば、次元を渡った転送が可能だと俺に取り憑いている邪神フゥジィは言った。

 

『その邪神て呼ぶの、そろそろ変えてほしいかも』

 

 年端も行かない子どもに過ぎた力を気まぐれに与えるなんて、まともな神のすることとは思えないが?

 

『人の善悪は私達には無関係かなぁ』

 

 ……そうだろうな。俺も小さな頃はアリの巣に熱湯流し込んだりしたもんな。そのアリに抗議されても『そんなこと言われても……』だ。

 

 わかってはいる。俺らより高次の世界に住む存在から見たら、人間なんてアリどころかウィルスやバクテリアみたいなモノだろうよ。わかっちゃいるんだが……そのちっぽけな存在である俺ものしては釈然としない。

 

『あの子達をちゃあんと戻すから。感謝してほしいわ』

 

 ───結果を確かめようがないが、それについてはその通りだな。

 

「ヒロア、何考え込んでる? 飯ができたぞ」

 

 黒瀬が声をかけてきた。干し肉やら豆類を固めて乾燥させたものを湯で戻したスープを差し出す。

 

「すまん。ちょっとフゥジィと交信してた」

「あ、そうか。こっちこそすまん」

 

【tipsフゥジィ】

 ヒロアの住む惑星(ほし)に宇宙から飛来した集合型生命体に誤って召喚され、受肉した高次元生命体。気まぐれに娼婦をしていたところ、帝国特務部隊に倒され、精神のみとなってヒロアに憑依している。ヒロアが使う魔導の代償を肩代わりする。

【tips 終わり】

 

 携帯用の木皿を黒瀬から受け取り、スプーンで口に運ぶ。ポトフっぽくて美味いんだよな、これ。

 

「それにしてもドラゴンさんにまで寄生して操るアレらは危険な存在ですねぇ」

 

 ドラゴンを横目で見つつ、河野さんが呟く。

 

「そうだね。地球には河野さんや黒瀬達のような存在がいるから安心してるよ」

「ヒロアさん、私達のこと、すごく信じてくれてますが……」

「俺が君達がいた昭和より未来からこっちへ来たって言ったよな?」

「あ」

 

 霧丘君が思い出したようだ。

 

「俺が生きてた日本は少なくとも変なことになってなかった。まぁ水面下で何か起きてたかもしれんが、昭和の頃と比べて不思議な事件が人知れず起きるってことが……言ってしまえば極端に少なくなったんだよ」

「はぁ」

 

 河野さんも霧丘君もピンと来てないような顔。

 

「誰もがスマートフォンという撮影できるツールを持っていて、それなりの数の防犯カメラ、車にはドライブレコーダーという録画装置が普及している。そしてそれを気軽に発信できるインターネットという情報伝達手段が世界中を網羅してるからな」

「前にも教えてもらったけど、その辺りが想像がつかないな」

 

 黒瀬が話に入る。

 

「そりゃそうかも。昭和時代の未来予想図とはかなり様子が違う。情報革命が起きたけども、交通手段や生活はそこまで激変してない。火星に有人探査機を送るってのもまだだし」

「そうなんだ……」

 

 ふとセルアを見やると少し不機嫌そうな顔。

 

「日本語ばかりですまんな」

「かまわん」

 

 謝る俺に対して横を向くセルア。

 

「それよりあの存在が蔓延っているここの方が大変ではないですか?」

 

 河野さんが心配そうな顔で話を振ってきた。

 

「私はあの大陸は完全に彼らの支配圏だと感じました」

 

 彼女はそこで経験したことを話してくれた。

 旅人を捕食する姉妹の姿をした化け物。

 

「なるほどな。俺の希望的な推測だけど帝国も奴らのことを把握してる気がするんだよなぁ」

 

 何せフゥジィのことを捕捉していたし。全員俺の言うことに注目。

 

「港湾都市マルハスで見た戦艦、あれもな、イージス艦っていうのにかなり似てたんだ。セルアに聞いたところ、あの戦艦はミサイルのようなものを発射する」

 

 黒瀬がハッとした顔をする。

 

「そうだ、黒瀬。迷宮都市ディーザで見たデルタ翼の戦闘機。あれもさ、周辺国との戦争に使うにしては大袈裟すぎないかってこと」

「言われてみれば……」

「あんなもんが戦場に出張ったら、優れた魔導士を数揃えていたとしても瞬殺だぞ。あの戦艦を襲った海蜘蛛みたいな怪獣を想定してると言われた方がすんなり納得がいく」

「怪獣……ぴったりな表現だ」

 

 感心したような黒瀬。

 

「最初はここ、霊峰へでも攻め込むつもりかと思っていたけど、アレを見ちゃったらな」

「救っていただき感謝します」

 

 背後から聞こえた声に全員が振り向く。そこには白い女が立っていた。

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