次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第三十六話 語り合おう

「救っていただき感謝します」

 

 背後から聞こえた声に全員が振り向く。そこには白い女が立っていた。髪も肌も着ているものも全てが白い女、ドラゴンの化身。

 

「意識が戻られたようで。良かったです」

 

 俺は笑顔で声をかける。何せドラゴンには頼み事をする立場だ。丁寧語と敬語、謙譲語をフル活用しておこう。

 

「あなた方には囚われていた幼い同胞をも救ってくれました。重ねて感謝を」

「我々はドラゴンの皆さんには頼み事あってここを訪れた身ですので、当然のことをしたまでです」

「頼み事ですか?」

 

 俺は白い女に対して、黒瀬達の事情を話した。

 

「そうですか。私の中へ入り込んでいた存在が次元を渡って……」

「彼らに聞いた話だと、星々どころか星雲すら支配していくタイプの生き物みたいです」

「わかりました。異界よりこの地へ転移させられたとは気の毒です。あなたの中にいる高位存在へ喜んで力を貸すことにしましょう」

「そうですか! ありがとうございます!」

 

 俺が頭を下げると、全員がそれに倣った。

 

「あら。あなた達は昔、捕えられた同胞をも救ってくれたのですね?」

 

 どうやらミィタのことが伝わったようだ。

 

「あ、はい。これも成り行きでしたが……」

「深く感謝します。あなたの名は?」

「ヒロアと言います。そして」

 

 俺は順にセルア達を紹介した。

 

「あの、セルアは確かに帝国の皇女ですが、皇帝からは命を狙われる立場ですので……」

「私達がここへ帝国の立ち入りを禁じたのは現皇帝並びにそれにつき従う者達。問題ありませんよ」

「そうですか」

 

 俺は内心胸を撫でおろす。良かった。これで懸念がひとつ減ったわけだ。

 

「同胞達にも伝えました。もう日も暮れていますので、彼らの送還は明日でもよろしくて?」

「あっはい。それでお願いします。ありがとうございます」

 

 また頭を下げると、白い女の姿は消え、ドラゴンは小さい方と一緒に建物の外へと姿を消した。

 

「ふぅ……緊張した」

「ヒロア君、まるで大人みたいだったよ」

「霧丘君、俺の中身はおっさんだって説明したろう? 社会人やってたんだよ」

「あ、そ、そうだったね」

 

 霧丘君にはサムズアップしておく。すると黒瀬と優子が頭を下げてきた。

 

「ヒロア、俺達も感謝するよ。こうもすんなり向こうへ帰れることになったのは、お前のおかげだ」

「それはことが終わってからでいい」

「でも向こうへ帰ったら伝える手段が……」

「瑛子ちゃんがやってくれるわよ」

 

 優子がさも当然と言わんばかりに黒瀬に告げる。

 

「河野さん達を捕捉したのも彼女の権能だから」

「そうだよな。瑛子には帰ったらご褒美がいるなこりゃ……」

「私のお母さんにもお願いします!」

 

 河野さんが黒瀬に詰め寄る。なんだ? ま、盛り上がってるようだし、後で聞くか。俺はセルアに向き直る。

 

「俺達はこれからのことを考えておかないとな」

「まずは私と婚姻の儀を」

「だからそれはずっと先だっての。ここでの生活をどうしていくかを考えておかないと」

「ヒロアは何か考えがあるのか」

「とりあえず考えてたのは、各国の調査隊や巡礼者を相手の宿屋。そこで日用品やら食料の販売もしようかなと」

「ほう」

「その手の連中は野営だからな。毛布にくるまって簡易シェルターで夜を明かすより、ちゃんとした部屋で過ごしたいという需要はあると思うんだけどなぁ」

「やってみないと確かなことは言えんが、可能性は高いと思う。帝国は遺跡探索に一個師団を派遣していたが、他の国がそこまでするとは思えない」

 

 ここ、霊峰に眠る古代遺跡。そこで発掘される古代文明の遺した物に関して、周辺各国も関心がないわけではない。

 だがそういった学術的なことに潤沢な予算を回せるほど余裕がないのも事実だ。俺がいた王国も距離があるからその手のことはやっていなかったはず。

 

 帝国傘下の国以外は帝国との国境紛争に明け暮れてるからな。

 

「ヒロア、こっちの話は済んだぞ。明日でお別れなんだ、話をしておこう」

 

 黒瀬に声をかけられる。

 

「おう。了解だ。まずは優子と黒瀬の馴れ初めから教えてもらおうか」

 

 俺達は深夜まで色々な話で盛り上がった。

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