次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第三十七話 男同士の話

 黒瀬達と過ごす最後の夜、男女に分かれたくさんの話をした。

 

「ヒロア、本当に世話になった」 

「だからそれは言いっこなし。まずは無事に日本に帰ってからだ」

 

 黒瀬はかなり義理堅い性格だな。

 少し離れたところではセルアと優子、河野さん。優子が通訳をしている。大変そうだから後でお礼をしておこう。

 

「ヒロア君はこれからどうするの?」

「セルアにも話したんだが、ここで宿でもやろうかと思う」

「宿?」

 

 霧丘君に説明しておく。

 

「ここは霊峰と呼ばれている場所だけど、大昔に滅んだ帝国の遺跡があちこちにある。この建物もそう」

「へぇ、そうなんだ」

 

 霧丘君はぐるりと室内を見渡す。

 

「それで各国は何か使える遺物がないか調査隊を送ってくる」

「え、それはなんで?」

 

 ピンとこないようだな。

 

「ここから発掘される遺物は使い方さえ判明(わか)れば、それはもう便利というか有用なものなんだ。そうだな、あの怪獣が襲ってた戦艦があるだろう?」

「うん」

「あれって帆船でもないし人力で動かす船でもなかった。間違いなくエンジンを積んでいる。詳細は不明だけど」

 

 どの国も帆船しか持ってない。いくら帝国だからって、例外というわけにはいかない。

 

「それこそ帝国は昔からここでの発掘調査に必死だったらしくてね。色々と見つけては仕組みを解明して実用化してるんだ。ジェット戦闘機ぽいのもも見たぞ」

「えっ!」

 

 驚く霧丘君。

 

「プロペラ機どころかグライダー、気球すらない文明なのに、突然流線形の航空機が出来上がるわけないからね。ここで発掘したものと考えるのが当然さ」

「……帝国ってすごいんだね」

「ああ。色んな意味ですごい」

 

実際どうやって飛ばしてるんだろう、あれ。

 

「その帝国が出禁になったから、他の国々はチャンスとばかりに調査隊を派遣してるわけ」

「あ、それで宿屋なんだね」

「そうさ。霧丘君からしたら野宿、でもここではそれが普通だ。天幕を持ってこようとしたら、かなり大規模な調査隊でないと無理だ。そこまで国力がある国は無い」

「それは何故?」

「大陸全ての国と帝国が紛争をしててさ。戦争ってのは金がかかるから。それはわかる?」

「あー。なるほど」

 

 納得顔の霧丘君。

 

「宿屋かぁ……」

「まぁ、山小屋に毛が生えた感じになるだろうけど、それでも野営に比べたら随分と快適だし」

「そうだね」

「じゃヒロア、セルア皇女とここで夫婦になって宿屋の主人をしていくと?」

 

 黒瀬が変な方向に話を持っていく。

 

「……ま、先のことはわからないけどな」

「えっ? ヒロア君はセルアさんが好きじゃないの?」

 

 霧丘君、君も容赦ないな!

 

「あのさ、霧丘君、よく聞いてくれ。俺の中身は四十歳のおっさん、セルアは十五歳。つまり中年のおっさんが女子高生を相手にするなんて平成の世の中じゃ立派な犯罪なんだ」

「そ、そうかな? 少なくともヒロア君の見た目は僕達と変わらないから、気にしなくてもいいような気がするけど……」

「そうだぞヒロア。霧丘君の相手も二歳だしな」

「くっ、黒瀬君! ぼ、僕は河野のことは別に……」

 

 霧丘君の顔は赤く染まり、図星であることを自ら白状してる。二歳ってのも引っかかるけど、とりあえずは青春だなぁ。

 黒瀬が霧丘君に真剣な顔で語りかける。

 

「霧丘君は河野を受け入れてるんだろう?」

「え、あ、うん」

「それって誰もができることじゃないから、まずそこがすごいよ」

「霧丘君、俺も黒瀬と同じ意見だ。度量が大きいと思う。君は」

「そうかな……」

 

霧丘君は俯いてしまったが、これは俺の本音。霧丘君の人間的キャパが小さかったら、決して河野さんを受け入れることはなかったはず。

 

「俺さ、なんの因果か、この異界へ魂を呼ばれて、若い頃の肉体へインストール、つまり入れられてさ。それを数ヶ月前にいきなり教えられて、日本での人生を思い出して」

「た、大変だったね……」

 

 あの晩、霧丘君には簡単に俺のことを説明した。

 

「命が軽い世界の価値観、現代日本とは違いすぎる生活に慣れるのは少し大変だったかな」

 

 俺は自分が生まれ育った開拓村を思い出す。

 

簡単ではない開墾作業。大怪我をしたり病気になればすぐに死んでいく、特に子ども。

 だから子どもは早熟だ。十歳ぐらいで性行為を覚えて、十三歳で出産する子もいる。

 

 運良く大人になっても風邪で簡単に死ぬ。医者なんていない。

 

 そして貧しければ子どもは人買いか傭兵団に売られる。

 

 俺の場合は育ての親であるイズミに丁稚奉公よろしく預けられたが、初めて戦場で敵を殺したこと、その後娼館に連れられていったことは鮮明に覚えている。

 

これらの経験は記憶が戻る前のことだが、ちゃんと覚えている。それを受け入れるのは少々大変ではあった。

 

「……」

 

 霧丘君は無言で俺の話を聞いている。

 

「大変なのは黒瀬だぞ。ただの高校生だったのに、SF小説みたいなことに突然巻き込まれて」

「霧丘君、その辺は向こうに帰ったら詳しく説明するよ。あの晩は簡単に済ませたから」

「あ、う、うん」

「君が危険な目に合わないようにと強く言ったけど、学校やプライベートで河野と仲良くするのはむしろ歓迎する。あいつも人間社会に馴染んだ方がいいから」

「わ、わかったよ」

 

 頑張れよ少年! おじさんは応援するぞ。

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