次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第四十五話 遊星からのあいつと会話する

 バシトゥンサーマダル王子一行を見送った俺は客室の清掃に取り掛かる。布団を担いでロビーへと降りると、洗濯屋が既に待っていた。

 

「ヒロア様」

 

 丁寧にお辞儀する二人組。

 

「おう、早いな」

 

 体格の良い男と華奢な女の二人組。彼等は例の集合型エイリアンだ。

 

「しばらく客の予定は無いからいつも通りで頼む」

「承りました」

「頼むぞエックス」

 

 彼らに名前を尋ねたところ、固有名詞は無いというので俺はエックスと名付けた。由来はカルト的人気を誇るあの映画。

 

「ヒロア様、“エックス”とはどういう意味でしょうか」

「よろしければ教えてください」

 

 俺はその映画に登場する怪物のことを話してやる。 

 

「なるほど。生物としての有り様が驚くほど私に似ていますね」

「俺も最初は驚いたさ。ま、お前が凶悪な性格でなくて良かったよ」

「私が取り込めるのは死んだ生き物だけですから」

 

 エックスが言うには『わざわざ殺戮を行なってまで数を増やす必要がない』そうだ。男女を組み合わせて生殖するだけで増えていく。そうやって数を地道に増やしていけばこの惑星(ほし)を乗っ取ることも可能だろう。

 でもこいつはそれをしない。

 

 ついでだ。

 エックスの望み、訊いてみよう。

 

「フウジィに『帝国を退ける力を』って頼んでたよな」

「あの夜のことですね。その通りです」

 

 男も女も全く同じ表情で俺を見る。

 

「取り返しがつかない事態にならぬよう、私はこの惑星(ほし)から魔導を消し去りたいのです」

「魔導を?」

「私はこの惑星(ほし)(いびつ)に見えます」

(いびつ)……」

「あなたの魂が元いた惑星(ほし)に、魔導はありましたか?」

「……ないよ」

「魔導に似た力を持つ生物はこの宇宙には無数に存在します。しかしこの惑星(ほし)の人間が使う魔導とは(ことわり)を異にするもの」

 

 超能力とか、そんなものか?

 

「この惑星(ほし)の人間は生態系の多様性を犠牲に魔導を使っているのです。あなたは気づいていますか? この惑星(ほし)の貧相な生態系に」

 

 !

 なんとなく感じていた違和感。

 それの正体。

 ああ、俺もこの惑星(ほし)全てを見て回ったわけじゃないが、似たような環境にも関わらず地球に比べて動植物の数も種類も少ない。

 

「……確かに少ないな」

「そうでしょう? 生物の多様性と引き換えにこの星の人間は高次元存在の力を引き出して使っています」

 

 女の方が俺の顔を覗き込む。何の感情も見えない瞳で俺を見つめている。

 

「この星の人間がもう少しだけ世の(ことわり)を解き明かした時、何が起こると思います?」

「それは……」

「あなたがいた惑星(ほし)でも到達していた数々の技術。例えば核融合」

「っ!」

「魔導ならば重力特異点を作り出すことも容易いことです」

「ブラックホールか!」

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