エックスが何をしたいのか?
――魔導を、正確には『人が魔導を使うこと』そのものを消してしまいたい――
さらに驚くべきことが告げられる。
「霊峰の遺跡のどこかにそれを可能とする技術が残っていると確信しています」
「そうなのか?」
「今は古代帝国と呼ばれている古の帝国、そこで私は見ていましたから」
「長生きだな……おい」
「この
「三千年……」
体を次々と新しいものに変えることができるから、ある程度は長命だと予想していたが、まさかそこまでとは。
彼の話によると宇宙進出まで果たしていた古代帝国は、魔導が原因で滅びたらしい。
「当時の私は帝国の学者集団に属していました。研究対象はカテレル・コストロの召喚手法。解明が間に合わず、帝国は滅びてしまいましたが……。千年帝国は同じ道を歩むことでしょう」
エックスは布団を担いで帰っていった。
あいつとは良い関係を築いて味方としておきたい。フウジィのことにしたって、あれは私利私欲じゃなくて、この
『魔導が存在する限り、滅びは我々のすぐ隣に控えていて、いつでも未来を刈り取ることができるのです』
魔導によって滅びる様をその目で見たエックスの言葉は重い。
さてどうしたものか。
エックスはフウジィのことをカテレル・コストロだと思い込んでいるが、実際は別人だ。それを告げてよいものかどうか。
「ヒロア、何している?」
セルアが食堂から出てきてそばにやってきた。
「ん、ああちょっとな。エックスと話し込んでいた」
「生活する上での名前はデヤルとツコだったか」
「そうそう」
「ヒロアは奴に対して随分と好意的だが?」
セルアはあの時、彼に助けてもらったにもかかわらず嫌悪感を隠そうともしない。
「うーんと……俺のお気に入りの映画にあいつと同じ生態の怪物が登場するんだが、それを知ってたからというのが大きいかな」
「他者を複製し乗っ取っていく生き物か……。ヒロアがいた世界の人間は本当に想像力豊かだ」
「まぁな。文明が発達していくと文化も大衆により深く浸透して熟成されていくものさ。それと」
「それと?」
「フウジィを召喚する時に無辜の人々を生贄にしたと思ってたら、そうじゃなくてあいつ自身の体、俺たちにとっては髪の毛とか爪を捧げるようなものだと知ったし」
「……そうだったな」
「それに悪い奴ってわけでもないしな。セルア」
「なんだ?」
俺はセルアの肩を掴み、覗き込むように顔を近づける。
「何度も言うが魔導を封じられた俺達には有能な味方が必要だ。それはわかるな?」
「あ、ああ」
「その為にはあいつと相互理解を進めておくことが大切なのはわかるな?」
「……わかる」
「仲良くしろとは言わない。が、無理解を貫くのはそろそろやめろ」
セルアの目をじっと見つめる。その瞳は少しだけ不安の色を見せている。
「わかった」
セルアの頭をそっと腕の中におさめ、髪の毛を撫でる。
「よーしよし。いい子だ」
「……ヒロア、どうにも私を幼子扱いをしている気がするんだが」
「そ、そうか?」
俺自身の記憶が戻る前、肉体年齢に引っ張られていたせいか、セルアを愛おしく思い始めていたが、あれ以降その感情は家族に対する愛情のようなものに変化した。
娘としか思えないのだ。その俺の感情変化をセルアは見透かしているんだろう。
セルアの肩をポンポンと軽く叩いて手を引く。
「明日には霊峰へ入った方のエックスが下山してくる予定だ。その準備をしておこう」