次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第五十話 バトルプルーフ

 

「ヒロア!」

 

 寝台の上で目覚めた瞬間、セルアによってすぐに視界が塞がれ、頭を抱きしめられた。

 

「ふおっ、むごごご」

 

 息が、く、苦しい! セルア、ギブギブ! 俺はセルアの背中を叩く。

 

「あ、す、すまん」

 

 やっと俺の頭はセルアの豊満なバストから解放される。

 

「ぷはっ! ふう、セルア、大袈裟だぞ。いつもの代償だって」

「わ、わかってる。それはわかってる」

 

 セルアを安心させるように頭を撫でておく。

 

「起きたのね。糖分の補給を忘れちゃだめよ」

 

 イズミが食べ物を持って入ってきた。

 

「さんきゅ」

 

 イズミから盆を受け取り、すぐに口に入れる。

 

「意識ない時もね、経口で果実水を飲ませたから」

 

 昔は魔導を加減も分からずに使って、よく気を失ったものだ。その度にイズミが介抱してくれた。

 

「セルアちゃんが口移しでね」 

 

 ニヤケ顔でイズミが俺を覗き込む。

 

「えっ?!」

 

 セルアはサッと俯き、顔を赤らめた。イズミはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。

 

「そうか、セルア、ありがとうな」

「……」 

 

 無言のセルア。俺たち二人を交互に見やるとイズミは何やら納得した様子。

 

「ふぅ〜ん。ヒロアキ君?」

「なんだよ」

「別に」

 

 何やら言いたげなイズミを無視することにして、セルアに伝えておかないとな。

 

「あの尋問した特務部隊のやつとな、少しだけ交渉した」

「交渉?」

 

 俺は西大陸に住むヤツはこの惑星(ほし)を脅かすものだと説明したこと、また俺がイズミを抑えるからそっちを何とかするように伝えたことをセルアに聞かせた。

 

「帝国にとっては悪い取引ではない……のか」

「マルハスだけじゃなく、複数の都市でも襲撃があったと聞いたよ」

「……そうか。ことは思ったより切迫しているらしい」

 

 考え込むようにセルアは黙り込んだ。

 

「戦力としてセルアの手も借りたいぐらいだしな」

「帝国ってそうなってるの?」

 

 キョトンとした顔で聞いてくるイズミ。

 

「お前も通信で見てただろう?」

「マルハスでのこと?」

「そうだ。あの化け物は地球へ侵略を仕掛けている。そいつらによって黒瀬達はここへ飛ばされてきたんだぞ」

「帝国がなんとかするんじゃない?」

「……余裕だな、おい」

「帝国の国力を持ってすれば殲滅も難しい話じゃないわよ。その分、他国への侵攻も止まるだろうし」

 

 それはそれでまぁ周辺国にとってはありがたい話か。

 

「あの必死さを考えるとね、帝国は元々西大陸とことを構えるつもりだったんじゃない?」

「?」

「周辺の国々に侵攻しているけども、満遍なく戦線を広げるんじゃなくて、ピンポイントで攻めてるもの」

「……例えば?」

「東の王国、つまり私たちの国ね。なぜ私だけを狙ってたのかしら」

「そりゃあ、話によると皇帝の権威を唯一無二にする為にだろう」

「それなら国境から占領区域を増やして……面で攻め込む方が合理的。わざわざ私ひとりをターゲットに何年も、何十回も仕掛けてこなくても、さ」

 

 そういうもんだろうと漠然と思い込んでいたが、言われてみればその通りだ。

 

「本気で私をどうこうする気ならもっと大規模な軍を投入しそうなものなのに、毎度小規模な部隊なのよ。セルアちゃんの時のこと、覚えているでしょ?」

 

 ───俺は記憶を探る。そうだ。セルアに付き従っていたのは魔道士二人と騎兵が十人ばかり。イズミのまともにやり合えるのはセルアのみ。

 イズミが真剣な顔になった。

 

「思い出した? あの時はセルアちゃんの自爆特攻を試しに来たような感じだった。お供の兵がお粗末だったもの」

「それには同意する」

 

 それまで黙って話を聞いていたセルアが口を開いた。

 

「お祖父(じい)様の話を聞いた時、随分と部隊規模の差があるものだと思った」

 

 ダラド伯爵邸でのことか。帝国軍の編成なんか知らないが、ダラド伯爵の話を聞いた限りじゃ動員されたのは百名規模だ。

 

 兵器運用試験を兼ねた討伐作戦……。

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