次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第五十四話 ノルマンディーじゃなくて良かった

 二日後、海蜘蛛の再襲撃もなく、俺たちは無事に西大陸へ着いた。

 

 陸戦隊の中に転移魔導が使える兵士がいて、五隻の軍艦に乗っていた陸戦隊全員が一瞬で広い砂浜へ転移する。上陸はあっさりと成功した。

 

 数百名の兵士、装甲に身を包んだ軍用バボに騎乗する兵士も向こうに見える。

 バボはサイに似た大型の草食獣で帝国では馬代わりに重宝されている。

 飼育コストが高いバボを大量に用意できるのは帝国だからだ。

 

 砂浜の向こうには草原、さらに遠くには鬱蒼とした森が茂っている。

 

 帝国兵士達は指揮官達のハンドシグナルに従い、無言で行進していく。話す者は誰もいない沈黙の軍隊だ。

 

 俺とセルア、そして侍女の三人は遊撃を命じられていた。その場その場で判断し、最適な行動を選択するという、言い換えると『好きにしろ』だ。

 

 部隊での連携が一朝一夕で身につくことはないとの判断からで、俺もそれは正解だと思う。

 

 兵士達は常に訓練しているが、俺たちはつい最近合流したばかりの傭兵と皇女と侍女。まず傭兵と正規軍じゃ戦術が全く違うし、セルアが以前所属していた部隊もイズミ討伐に特化した、いわゆる特殊部隊。

 

 俺たちは陸戦隊にとっていわば異物で、それを混ぜたら部隊も機能不全に陥るのは目に見えてる。

 

 上陸前の打ち合わせ通り、俺たち三人は展開する兵士達から少し距離を取り進んでいく。

 

「あ」

 

 思わず声が出た。

 

「ヒロア?」

 

 すっかり船酔いから回復したセルアが怪訝な顔で聞いてきた。

 

「あれ」

 

 俺は沖に停泊している軍艦の一隻を指差す。甲板から垂直にデルタ翼戦闘機が発艦する場面だ。

 

「ディーザで見た空飛ぶ兵器か」

「そうだよ。へぇ、格納していたんだ」

 

 迷宮都市ディーザの上空を編隊飛行していたデルタ翼戦闘機は、水平飛行に移ると音もなく森の方へ飛んでいった。

 

「あれって何の動力で飛んでるんだろう」

「ニホンにもあったのだろう?」

「あっちのは、ジェットエンジン、つまり圧縮した空気に燃料を混ぜ込んでそれを後ろへ噴き出して飛ぶんだ。あれとは全く別だよ」

 

 セルアには今ひとつ伝わらなかったようで、思案顔になる。

 

「偵察だろうね。お、まただ」

 

 もう一機、別の方向へ飛び去っていった。

 

「向こうにももう一機飛んでいったか」

 

 もしかしたら地上攻撃の武装を搭載しているかも。大物相手はあれに任せる形になるのかな。だとしたら随分楽になる。

 負担を減らせるのはこの上なくありがたい。

 これから陸戦隊と俺たちがこなしていく泥沼の戦い、それを思うとちょっとゲンナリする。

 

 ベトナム戦争で米軍が苦労したように俺たちも終わることのない掃討任務に就くわけだ。ま、出会うのは全て敵だから、米軍よりはマシかな。

 

 ここ西大陸に転移させられた霧丘君と河野さんの話も帝国軍にも説明済みだ。

 

 見た目は人間でも怪物化する少女達。

 いきなり武器で攻撃してくる蛮族。

 

 見かけ次第、すぐに殲滅するしかない。悠長なことしていたら敵に殺される。

 

 しばらく草原を歩く。陸戦隊は五人単位となり、五十メートルほどの距離を保ちつつ進んでいく。

 俺も辺りを警戒しながら干し芋を齧る。いつでも魔導が使えるようにだ。

 草原と森の境界線が近づいてきた。広葉樹が密集して生えていて、奥の方は昼でも暗くて見えない深い森。

 鳥や動物の鳴き声は一切聞こえない。これが地球の森とかなり違う点。

 

「セルア、小銃を」

 

 小声でセルアに指示、侍女も素早く構える。感知魔導に反応するたくさんの敵意ある存在。

 どうやら歓迎パーティーを開いてくれるようだ。

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