前回のあらすじ。
「セルア、小銃を」
小声でセルアに指示、侍女も素早く構える。感知魔導に反応するたくさんの敵意ある存在。
どうやら歓迎パーティーを開いてくれるようだ。
帝国の兵士達も敵を察知した様で、小銃を森の方へ向けつつ散開、交戦体制をとる。
俺は一番近くの分隊――五人の部隊――に駆け寄り問いただす。
「敵意を持った存在が少なくとも二、三十はいる」
「了解した。おい伝言だ」
「はっ」
分隊長は敵の情報を少し離れた位置にいる小隊長へと伝えるよう部下に命じた。
この分隊長は髭がやたら似合うおっさん。俺は心の中で『クロトワ』と呼んでいる。
小隊長は伝言を聞くと部隊の半分を後ろに下げた。上から見ると二列横隊。そして前列の部隊に前進を命じる。
俺とセルアは前進する部隊を追う形で進む。列は森の入り口へと足を踏み入れた。
『静かに進め』
『上下左右を警戒』
兵士達はハンドシグナルで会話する。
森の中は背の高い広葉樹が空を覆う形になっていて、昼だというのに薄暗い。
俺は敵意を感じる方向を凝視。横に広がっていた分隊は木々に阻まれ、徐々に隊列が乱れていく。
森の奥に進むに連れて暗くなり視界の確保が難しくなった。兵士達も枝をそっと避けながら足元を気にしつつ進んでいく。
突然目に入る光。
前方に木洩れ陽がスポットライトのように差し込み、まるでステージのような一角が見えてきた。
周囲の闇から浮かび上がったそれは幻想的な光景だ。
ゆっくりと近づいていくに連れて、明るさに目が慣れた頃、人が立っていることに気がつく。
『敵発見 数は三』
『囲め』
三日月状に広がる部隊。俺は後ろを振り返る。
「セルアっ!」
セルアと侍女の後ろから何か変なヤツが飛びつこうとしている瞬間だった。白い腕と足、顔まで白い裸の子ども。
セルアの頭に白い腕が絡みついた。俺はシースからナイフを抜くとそれを斬る。
「ゲァァ!」
妙な感触、流れない血、奇妙な悲鳴。
続いてセルアの腹に絡みつく足を二本とも切断。
「ゲアッ!」
セルアの腕を引くと同時にそいつの顔へ拳を叩きつけ、そのまま力任せに振り抜く。
「セルア! 伏せて」
抱きかかえる形のセルアをそっと寝かせる。
侍女もナイフで応戦したようだ。飛びついてきた白いヤツの首は胴体から離れて転がっていった。
「小銃は使うな!」
分隊長の指示が響いた。兵士達もナイフを抜いて戦っている。
こんな森の中、乱戦で小銃を使うのは
「ゲアッ」
「うぐっ」
「ゲアッ」
「このお!」
兵士の声とヤツらの鳴き声で騒がしくなった。
「枝の上だ!」
「上から来てる!」
誰かが叫ぶ。何人かが樹上へ向けて小銃を撃ち、こっちへ降りてこようとする白いヤツらを撃ち落としていく。
俺は木洩れ陽が照らすスポットへと振り返る。
そこに立っていたのは、ニヤニヤしながら俺たちを見ている、全身が白い裸の子どもだった。