次から次へと! 少年魔導士の受難は続く   作:はるゆめ

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第六十一話 ここには人間なんていないよ!

  前回のあらすじ。偵察部隊に混ざって俺とセルアは人里を目指す。

 

「あれか」

 

 五百メートルほど向こうに粗末な作りの小屋が数十棟。それなりの規模の村だ。人の姿は見えない。

 

 先頭を歩く兵士が立ち止まり、ハンドシグナルで伝える。『止まれ』、続いて『散開』。

 

 俺達は左右に散らばり、村の様子を伺いつつ次の指示を待つ。

 

『二人』『先行』

 

 俺とヨジロが指名された。うん。そんな気はしてた。小隊長達は明言しないが、俺とセルアは臨時雇いの軍属だからなぁ。

 

 ヨジロと二人並んで警戒しつつ村の方へ歩いて行く。 

 

「心配はいらないさ。ダメだと思ったら俺が転移魔導で逃げよう」

「それは助かる」

 

 ヨジロは少し緊張が解けたようだ。白猿達の歓迎を受けたばかりだからな。

 足を踏み入れた者は全て捕食のためじゃなく同化目的で襲われる───それがここ西大陸なんだろうよ。

 

 緩めの感知魔導を放つと村全体に生物の反応がそれなりにある。ま、人間とは限らないがな。 

 

 一軒目の小屋に近づいたところ、中から姉妹らしき少女が出てきた。歳の頃から反射的にベレタとルサを思い出す。あの子ら、元気してるかな。

 

 二人は笑顔で話しかけてきたが、言葉がさっぱりわからない。ヨジロも首を横に振った。

 大陸で一般的に使われている共通言語、それから俺がここで生まれて聞いたことある各国の言葉とも全く違う。直感的に鳥の囀りみたいだと思った。そう何かの鳴き声みたいな。

 

 仕方ないから身振り手振りで意思疎通を試みるも、少女達はニコニコするばかりで伝わっている手応えが全然しない。

 

 次第に俺の中で違和感がどんどん膨らんでいく。

 まずこの二人、俺達になんの警戒心も見せてないんだよなぁ。

 俺達は余所者でしかも武装した兵士だぞ?

 近所のおっさんやお兄さんじゃないわけで。

 そんなことあるか?

 

 次に変なのは目の前の家というか小屋だ。どんなボロ家でも人が住んでいる限りはそれなりに体裁を保っているもんだ。

 しかし住む人間がいなくなり、空き家になると次第に端々から朽ちていく。例えるなら『家が死んでいく』みたいな。これに例外はない。

 見渡す限り他の家も同じだ。

 そう、ここはまるで廃村って言葉がピッタリなんだよ。

 そりゃあ戦争で難民になって逃げてきて、ここで廃村を見つけて住み着いたのかもしれない。それでも人が住む場所ってのは、もうちょっと生活感が感じられるものさ。

 目の前の少女二人、果たして見た目通りなのかねぇ。

 

 彼女達は俺の手を引いて家の中へ招き入れようとし始めた、笑顔で。その手は……冷たいってほどじゃないが体温をあまり感じさせない。

 いよいよ怪しさMAXだ。

 ヨジロも俺と同じことを感じてるらしく、渋面で俺の方を見る。俺も頷いておく。

 俺は他の家を指さして、他の人はいないかとジェスチャーで伝える。

 

 すると少女達は他の家に向かって声をかけた。するとどうだ。全ての家から少女達が顔を出し、こっちへやって来るじゃないか。各家から二人ずつ、全員とも満面の笑顔で。

 

「ヨジロ、多分何か仕掛けてくるぞ」

「奇遇だな。俺もそう思うよ、ヒロア」

 

 俺達を囲むように集まった少女達。

 無表情になったかと思うと、頭がパックリ割れて四つに展開、首から上が花のような形になった。内側は毒々しい赤と黒。気色悪っ!

 同時に舞い上がる大量の粉、まるで煙。

 間違いなく毒霧の類いだろ。

 

「ヨジロ! 息を吸うな」

 

 そう声をかけ、俺はナイフで一番近くにいた少女の首を切り飛ばす。撤退する前に少しでも情報を掴んでやる!

 切り口からは黄色とオレンジの液体が流れ出たが、少女は倒れもせず俺に近寄ろうとする。

 すぐにヨジロと二人、二十メートルほど後ろへ転移。背中の小銃を構え、少女の一団へ連射する。ヨジロもそれに従った。

 狙うなら腰と足。命中して弾け飛ぶとその場へ倒れる化け物少女達。

 おっとさらに他の小屋からも続々と出てきてる。 

 俺は次に雷撃魔導で狙う。

 おおー。効果は抜群だ!

 コスパがいい攻撃は雷撃魔導だな。そのうち腹減るけど。

 そしたら奴ら、後ろ向いて逃げ始めやがった。 

 

「援護する!」

 

 五人の兵士が転移してきた。 

 

「あの煙は吸うなよ! 誰か雷撃魔導使える? 一番効果的だ!」

「自分が使える!」

 

 スリムな体型の兵士が前に出て雷撃魔導を放ち、他は射撃を始めた。

 バタバタと倒れていく化け物少女達。

 全部を仕留めたところで別の兵士が風魔導を使い、花粉みたいな煙を散らした。風魔導か、こんな時便利だな。 

 残りの偵察隊も駆けつけ全員で全ての小屋を検分した結果、いずれも中は荒れ果てて、床には複数の人骨が散乱していた。おそらく本来ここに住んでいた村人の変わり果てた姿だろう。

 

「ヒロア、無事か」 

 

 セルアが心配そうに声をかけてきたので安心させておく。

 

「大丈夫さ」

 

 そんなやり取りをしていると、突然小屋のひとつが爆破されたみたいに宙へ舞い上がる。

 

「何だありゃ!」

 

 地面から巨大な花の化け物が生えていた。

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