ホグワーツ解決クラブ!   作:@sorano1214

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ふくろう便

・フウア

何気ないいつもの慌ただしい日常。

皿に残っているハムエッグを最後に誰が食べるかで今朝も食卓は大賑わいだった。

何気ない日常であることに変わりはないのだが、フウアには気がかりなことが一つだけあった。その気がかりなことのせいで、いつもならハムエッグ争奪戦に参加しているのに、今日はしなかったのだ。

フウアは取り合いを繰り広げる兄弟たちをよそ目に窓に視線を向けていた。

 

「まだかなー……。」

 

ついに、フウアが気にしていたそれは食卓の真ん中へポトリと落ちた。

兄弟たちは皆落とされたそれへと注目したが、窓の外を見ていたフウアだけは気づかなかった。

 

「フウア!ホグワーツから手紙!」

 

それ、とはホグワーツ魔法魔術学校からの入学許可証であった。

手紙を運んできたフクロウはフウアの見ていた窓とは反対方向から入ってきたようだ。

兄弟から手紙を受け取ったフウアは、(受けとったと言うよりもひったくった、と言っていいほどの勢いで)すぐさま封を切った。

 

__________________

 

ホグワーツ魔法魔術学校

校長  ミネルバ・マクゴナガル

マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、 最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会員

 

  親愛なるマクミラン殿

 

このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。

教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。

新学期は九月一日に始まります。

七月三十一日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。

 

敬具

 

副校長 フィリウス・フリットウィック

 

__________________

 

「お父さん!お母さん!入学許可証!届いたよー!!!」

 

フウアの家は皆魔法使いだ。ホグワーツで学び、卒業後は家業である魔法道具の仲介業を手伝うのがお決まり。

兄弟も、父と母も、そのおじいちゃんおばあちゃんも、みーんな例に漏れずそう。

フウアは自分だけそうじゃなかったらどうしようかと、この頃気が気ではなかった。

自分だけ魔法使いじゃなかったら…………

だけどホグワーツから手紙が届いた。もうそんなことを心配する必要は無い。

フウアの脳内は新生活への期待でいっぱいになった。

 

「そうか、フウアももうホグワーツか。」

 

「お店の開店準備が出来たらお金を渡すから、学用品を買いに行ってらっしゃい。ついて行く必要は無いわね?」

 

「うん!」

 

フウアの実家はダイアゴン横丁にある魔法道具の雑貨店だ。学用品だって1人で買いに行けるのだ。フウアは毎日様々な客と魔法で賑わうダイアゴン横丁が大好きだ。

だから、店の手伝いだって嫌がることはない。むしろ楽しいくらいなのだ。

 

・マル

 

静かな朝、家の中にはぬくもりが広がっていた。広い庭に面した大きな窓の外には、風に揺れる薬草が見える。マルはそんな景色を眺めながら、植物の手入れをしていた。彼女の家族は代々薬草を育てる名家であり、彼女もその仕事に誇りを持っていた。

フクロウの羽ばたきと共に、1枚の手紙がひらりとマルの床の近くへと着地した。

マルは傍に落ちた手紙を拾い上げ、じっと見つめた。そこには綺麗なエメラルド色のインクで、獅子、蛇、アナグマ、鷹のデザインがあしらわれた紋章が描かれてあった。__ホグワーツの紋章だ。

マルは心臓がいつもよりも早く鼓動を打っていることに気づいた。

 

「入学許可証だ……」

 

思わず声を漏らす。妹が亡くなってから、寂しい日々を送っていたマルに取って、これほど嬉しい知らせはなかった。

そして、決意する。妹が亡くなってから、内気になっていたのをなんとかしなきゃ。と。両親はマルのことをとてもよく可愛がっていた。妹が死んでしまい、大事な一人娘だという気持ちからだ。だけど、前までさせてもらっていた植物の世話や家の手伝いなどを頼まれなくなった。危ないから、と。両親はマルに対して過保護気味だったのだ。それも、マルの内気の原因だった。

 

マルは両親に報告し、家族は喜びを共有しあった。

 

「おめでとう、マル。準備するものがたくさんね……。授業で怪我なんて絶対しないようにしなきゃ。」

 

「そうだね、ドラゴン皮の手袋は最高級のものにしよう。」

 

自分をよそに、新学期の話を進める両親にマルは少しだけ寂しさを覚えた。

両親のことは優しくて大好きだが、その行き過ぎた優しさに悩むことも少なくなかった。マルだって、もう11才なのに本人をよそにして新学期の準備を勝手に進めようとしていたりとか。

だけど、今までみたいに傍観するのはもうやめよう。思い切って両親の話の中に入っていった。

 

「あのね……私、3人で学用品買いに行きたい!」

 

両親はピタリと話し合いをやめて、マルの方へ顔を向けた。

 

「あら、珍しいことを言うわね。学用品くらい、仕事道具を買う時に一緒に買ってくるわよ?」

 

「でも……せっかく入学するんだから……ダメ、かな?」

 

「最近3人で出かけることもなかったもんな。7年間も使うものだし本人に選ばせた方がいいだろう。」

 

マルの両親は話せば伝わる人だ。

思い切って良かったと、マルは喜んだ。

 

「ありがとう、お父さん!お母さん!みんなで買いに行くのすごく楽しみ!」

 

・シノ

 

「は?!」

 

突然聞かされた衝撃の告白に、手に持っていたスマホを落としてしまった。

 

「あ、あーーー!画面割れた……最悪!」

 

「ねぇ!話聞いてる?」

 

そんなことはどうでもいいと言わんばかりに口槍を挟む人物が1人。

シノの母親だ。

シノは母親の顔をジッと見つめる。冗談を言っている顔ではなく、真剣そのものだった。

 

「__あなたは魔女なの、シノ。」

 

母親は改めて内容を伝えるが、シノの反応は変わらなかった。

 

「……え、何。なんかの比喩?あなたが存在してること自体がファンタスティック!まるで魔法_とか、魔性の女とか、そんなんじゃなくて?」

 

「そんなんじゃなくて!バリバリ魔法使える系の、魔女。」

 

「えぇ………お母さん、ついにクスリでもヤったの?」

 

「ヤってない!!!!」

 

そう言いながら母親は机の上に1枚の封筒をバンッ!と叩きつけた。

そこには見たことない繊細なエンブレムと『ホグワーツ魔法魔術学校』の文字。

 

「ほら、これがその証拠。」

 

シノは半信半疑……一信九疑で封筒を手に取った。紙質はとても重厚でご丁寧にロウで封をしてある。それっぽい感じは、する。

 

「いやいや、こんなの詐欺かやばめのカルトでしょ……。」

 

「ちゃんとホ・ン・モ・ノ!__シノ、実はね、お母さんも魔女なの。」

 

シノがいつまでたっても信じる様子がないので、母親は無理矢理話を通すことに。

この際好きなだけ喋らせてから後で病院に連れていこうと、シノは一旦聞く体制を取る事にした。

 

「わかった、とりあえずそういうことにしとく。続けて?」

 

「私は……魔法界でも純血の一族に生まれた。やれ血筋がどうだの、どちらの一族が優秀だの……そういうのが嫌でマグルの世界へ飛び出してきた。」

 

「マ、マグル……?」

 

「あー、魔法が使えない人の事。それで、お父さんと出会って、あなたを産んだ。ある日魔女であることがバレちゃってね。それが原因で離婚して今に至るって訳。」

 

母親の話はひとまず終わったようだ。

今まで不明だった離婚の理由はこんな所にあったのか……と、シノは1人で納得していた。

母親の話を整理してみる。筋は通っているがやはり信じられる訳が無い。かと言って母親がここまで手の込んだいたずらをするだろうか……?

再び封筒を見つめる。やっぱり、信じられない。かと言って嘘ひとつのためにここまでするとも思えない。

シノはこの曖昧な考えを振り払うために、母親に提案した。

 

「じゃあ、魔法が使えるって証拠見せてよ。」

 

「そうね……じゃあ、そこに立って。」

 

言われるがままに立ち上がる。すると、母親はニヤリと笑い_____

 

「ウィンガーディアム・レビオーサ!」

 

「うわあああ!?」

 

気づけば、シノの体は部屋中の家具と共に浮き上がっていた。

 

「ちょっ!えええ!?」

 

「ね?本当でしょう?」

 

「わかった!わかったから!降ろして!」

 

母親が杖を一振すると、途端に机や椅子などが元の場所へと戻された。一方、シノはじたばたと空中で動いたせいで___

 

ドタッ!

 

「いったぁ!な、何がどうなってんの……」

 

「だから言ったでしょ?あんたは魔女なの!」

 

母親は満足気に頷くと、シノに手紙を押し付けた。

 

「さ!本物と証明できた事だし!ホグワーツへ行く準備して!」

 

「いや、それとこれとは話違うから。」

 

ノリノリな母親に対して、シノは冷たい態度を取っている。

これまでの生活の何もかもが変わることになるし、魔法学校に行くとなれば将来の進路にも関わってくる。

それに_____

 

「友達と同じセカンダリースクールに行くって約束してるから無理。友達にどう言い訳すればいいの!?」

 

「素直に魔法学校に行かなきゃだから、ごめんねー!でいいじゃん。」

 

「良くない!」

 

シノは素早くツッコミを入れた。あまりにもノリが軽すぎる。

強情なシノに母親は呆れたようにため息をつき……そしてシノに対して切り札を突き出した。

 

「ホグワーツに行けば、さっきみたいな魔法、使いたい放題だけど?」

 

「……ん?」

 

母親の発言に、シノの目の色が変わった。母親はシノの変わり具合を見逃さなかった。

 

「魔法で掃除一瞬で終わるし」

 

「…………」

 

「宿題も1発だし?」

 

「…………………………」

 

「朝の寝癖もワンタッチ!さらにさらに!校舎はお城!箒で空も飛べちゃうし!城中にある絵画は動いて喋るし!秘密の部屋なんかもあるし!」

 

「そんじょそこらの学校よりも100億倍面白いと思うけど?」

 

「……………………………………行きます!!!」

 

こうして、ほぼ言いくるめられる形でシノはホグワーツ行きをその場で決めてしまうのであった。

 

・ソロア

 

ソロアは静かに机に向かっていた。

 

リビングの方から家族の話し声が聞こえてくる。笑い声も混じっていた。けれど、それは彼女に向けられたものではなかった。

 

「……」

 

鉛筆を握る指に、自然と力がこもる。

彼女の手元には分厚い科学の参考書。理数系の問題を解いているときだけ、ソロアはほんの少しだけ安心できた。数字や公式は、誰にも忌避されることなく、ただ正しく存在するものだから。

 

——ソロアには「不思議な力」があった。

 

ソロアが何かに集中すると、たまに奇妙なことが起こった。床に置いたグラスが勝手に倒れたり、本棚の本が落ちたり。幼い頃はそれを家族に話していたが、母は困った顔をし、父はただ沈黙した。そして姉は怯えたような目でソロアを見た。

 

いつしか、ソロアはそれを口にすることをやめた。

 

それでも、家族の中で「ソロアは変だ」という空気は消えなかった。

 

「……ま、別にいいけど」

 

そう、別にいい。私はただ、静かに本を読んでいればいいのだから。

 

ページをめくろうとした、そのとき——

 

バサバサッ!

 

「!?」

 

窓の外から、何かがバタバタと飛び込んできた。

 

「……何……?」

 

突然の騒音に驚き、ソロアは椅子ごと後ろにのけぞった。部屋の中を羽ばたきながら飛び回るのは——

 

「フクロウ……?」

 

茶色の羽根を持つ大きなフクロウが、バタバタと部屋を旋回し、机の上にそっと降り立った。

 

「え、なんでフクロウ……?」

 

混乱するソロアをよそに、フクロウはくちばしで器用に封筒を落とした。机の上には、見慣れない分厚い封筒。ワックスの封蝋には見知らぬ紋章が刻まれている。

 

恐る恐る拾い上げ、表面を読む。

 

 ホグワーツ魔法魔術学校

 

「…はぁ。」

 

封筒をひっくり返してみる。間違いなく自分宛ての手紙だった。

 

「魔法……学校?」

 

現実味のない言葉に、思わず笑いがこみ上げる。

 

「そんなの、あるわけ…」

 

そのとき、フクロウが「ホウッ」と鳴いて、ソロアをじっと見つめた。

まるで、「お前は知っているだろう」とでも言いたげに。ソロアの胸の奥に、小さな違和感がよみがえる。

自分だけに起こる、不思議な現象。

家族が避ける、自分の「変なところ」。

 

もしかして——

 

「……私、本当に魔法が使える?」

 

手紙を握りしめながら、ソロアは誰にも聞こえない声でそう呟いた。

ソロアはじっと封筒を見つめた。

 

ホグワーツ魔法魔術学校。

 

それは、現実離れした言葉。けれど、自分の身に起きた不可解な出来事を思い出すと、全くの嘘とも言い切れなかった。

 

「……こんなの、夢みたいだけど。」

 

封を切ろうとしたその時——

 

ピンポーン!

 

玄関のチャイムが鳴った。

こんな時間に来客? 家族は誰も出る気配がない。ため息をついて立ち上がると、ソロアがドアを開けた。

そこに立っていたのは、一人の老婦人だった。灰色の髪をきっちりまとめ、四角い眼鏡をかけた女性。黒いローブを羽織っていて、ただの普通の人には見えない。彼女は冷静な目でソロアを見つめると、口を開いた。

 

「失礼、ソロア・クラークさんですね?」

 

「……はい。」

 

ソロアが戸惑っていると、母親の声が後ろから飛んできた。

 

「誰なの?」

 

母親と父親が、面倒くさそうな顔で顔を出す。老婦人——ミネルバ・マクゴナガルは、落ち着いた声で名乗った。

 

「私はミネルバ・マクゴナガル。ホグワーツ魔法魔術学校の校長を務めています。」

 

両親が顔を見合わせる。

 

「……魔法? あぁ、あの手紙の?」

 

「ええ。あなたの娘さんには、魔法の才能があります。」

 

「……そうですか。」

 

母親は興味なさげに肩をすくめる。父親も腕を組んだまま、深くため息をついた。

 

「で、それが何の役に立つのでしょうか。」

 

マクゴナガルは微かに眉をひそめたが、淡々と続ける。

 

「彼女はホグワーツに入学する資格を持っています。魔法界での教育を受けることができます。」

 

「……それ、行ったらどうなるんですか?」

 

ソロアが恐る恐る尋ねると、マクゴナガルは少し柔らかい表情になった。

 

「ホグワーツでは、魔法力の扱い方を学び、魔法を使いこなせるようになります。彼女は立派な魔女になる素質があります。」

 

ソロアは「魔法を使いこなせる」という言葉に少し心を揺さぶられた。しかし——

 

「7年間も?」

 

母親が口を挟む。

 

「ほぼ家に帰らないんでしょ? それは別に構わないけど……。」

 

「……金は?」

 

父親がすぐに言った。

 

「そんな訳の分からないものに、金を出す気はない。」

 

マクゴナガルは微かにため息をつき、冷静に返す。

 

「ご心配なく。ホグワーツには奨学金制度がございます。」

 

「なら、構いません。」

 

母親はあっさりと言い放つ。父親も興味を失ったようにそっぽを向いた。

 

ソロアは自分の親が、あまりにも簡単に「行けば?」と言ったことに驚いた。

 

(……どうせ、私が家にいなくても困らないってことか。)

 

そんな考えが胸をよぎる。

マクゴナガルは静かにソロアの方を向いた。

 

「ソロア、あなたが決めなさい。」

 

——決める?

 

そんなの、もう決まってる。

ここにいても、私はずっと家族の中で浮いたまま。

 

「……行きます。」

 

その言葉に、マクゴナガルは満足げに頷いた。

 

「では、準備をしましょう。」

 

こうして、それぞれのホグワーツへの道が始まるのだった。

 

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