そのうちー1.0も観ようと思っています。勿論、「 新たなる帝国 」も。
それにしてもドハティのゴジラ信仰は恐れ入ります。
今回はそんなゴジラと関わりの深いあの怪獣のお話し。
ミレニアムサイエンススクール。学園都市キヴォトスの最先端を往く当校は、いつものように賑やかで少なくとも彼女たち生徒基準で平和だった。
ただ一つの報告を除いて。
「 怪獣を見た? 」
「 ええ。トレーニング部の子たちが区域の森林でみたみたいなの。角生えてたらしいわよ。 」
セミナー会計早瀬ユウカは、親友生塩ノアからそんな報告を受けていた。キヴォトス内外で巨大生物が頻繁に現れるようになったこのご時世、今さら怪獣一匹でこんなに騒ぐこともないだろうが、まぁ野放しにはしておけない。
「 なんでも大昔の生き物の生き残りかもしれないから、古生物研究会がユウカちゃんに確認ついでに調査に同行してほしいらしいですよ。 」
「 なんで私なのよ。C&Cはどうしたの? 」
「 別件で手がつけられないんですって。 」
「 はぁ・・・ 」
ユウカはため息をついた。ある事情から生徒会長が失踪してからというもの、現在のミレニアムは彼女がトップといって過言ではなかった。勿論、仕事も山積みであり、そんな忙しい中、怪獣がでたから一緒にしらべてほしいである。古生物研究会も、人遣いが荒いものだ。
とにかく要請を受けてしまった以上は、引き受ける他にない。件の怪獣も、不穏因子が多いのもたしかなのだから。
それから数十分後。ユウカはトレーニング部の部室を訪れ、怪獣を見たという部員、乙花スミレに聞き込みを行っていた。
「 怪獣を見たのは、いつ頃ですか? 」
「 午後の2時頃。丁度ランニングをしていた時です。走っていたところに、突然現れて。唸り声をあげていましたね。私たちを縄張りを荒らしに来た外敵か何かだと思ったのでしょう。 」
「 それでその後は? 」
「 銃ではまるで利き目が無く、火も吐いてきたので、そのまま逃げて、それでセミナーに報告するに至ります。全員ケガは無かったのが幸いです。 」
「 よく無事でかえってこれましたね。 」
「 鍛えてますから。先生の二の舞いには、なりたくないので。 」
「 ・・・ 」
ユウカの顔がまるで曇り空のように暗くなる。
つい最近起きた、不幸な出来事が、彼女たちの心に決して浅くないキズを負わせていたのだ。
その表情をみて、スミレは続けていった。
「 あの日から、私のトレーニングの意味合いが変わりました。それまではただ鍛えることや健康が鍛錬の意味でしたが、今は、災害から逃れる為、生きる為に我が身を追い込んでいます。
先生の不幸は残念でなりませんが、それでも私たちは前に進まなくてはなりません。
身構えていれば、死神は寄りつかないのですよ、ユウカ。 」
本人のそんな意図はないことは承知しているが、ユウカには、「 先生は鍛えていなかったから死んだ 」といっているように、聞こえてならなかった。
その晩、ユウカはミレニアム自治区内の博物館に脚を運んだ。古生物研究会からの説明は余りにも専門的すぎてついていけず、話しの意味が分からなかったので、ここでその生物について知ろうというのである。
目の前には、巨大な生物の再現された全身骨格が台座の上に立っている。
「 ゴメテウス・・・身長10〜40m、体重3万トン。
新生代、第三紀の大型哺乳類。
え、哺乳類?どう見たって恐竜じゃないの、あれ? 」
「 そう。恐竜じゃあない。 」
「 !? 」
ユウカは驚いた。いつの間にか、自分の隣にいた黒服の男が、ユウカの疑問に答えてくれたのだ。
「 マンモスとかからみてもわかるように新生代というのは哺乳類が隆盛した時代だ。恐竜はその殆どが絶滅してしまった。このゴメテウスは恐竜に近い外見に進化した生物なんだ。鎖骨をみてほしい。 」
「 鎖骨? 」
改めて、ユウカはゴメテウスの再現骨格を見てみた。その昔にみた人体骨格図のように、鎖骨二つの間に、胸骨が挟まり、繋がっている。
「 恐竜はな、鎖骨がくっついてるんだ。三叉槍の叉と書いて叉骨っていう。これは今では鳥が持ってる特徴で、そこらの鶏やカラスが、恐竜の末裔である、確かな証拠なんだ。ゴメテウスのそれは叉骨ではない。
むしろ、我々人間に近い。なんなら出土する化石には、毛が生えていた痕跡があったものだってある。 」
「 へぇ~、お詳しいんですね。 」
「 少し、趣味で考古学を噛んでるだけだ。すまないなお嬢さん。急に話し始めて気味悪かったろ? 」
「 いえ、そんなことありませんよ。寧ろ分からないことが分かってスッキリしました。 」
「 そうか。それは良かった・・・ところでだがお嬢さん。なにか用事でもあるのか? 」
「 え? 」
「 オレ、ここにしょっちゅう来るからな。軽並来客の顔は覚えてしまってるんだ。お嬢さん、ここ来るの初めてだろ?どうにも考古学に興味を持つようには見えないからな。 」
「 ・・・ 」
ユウカは訝しんだ。が、悪い大人にも見えないので、少しこの男にわけを話してみることにした。
「 実は・・・ 」
ユウカは自身が請け負うこととなってしまった調査について話した。
「 なるほど。その研究会のいってることのわけが分からなかったから、ここに来たわけか。
自分の知ってる専門知識を、相手が知ってる前提で話してしまうのは、オタクの悪い癖だ。 」
「 でしょう?それでもう少し分かりやすくっていっても、難しい単語ばかりでてきてちんぷんかんぷんで・・・ 」
「 しかし、こんなお忙しい中、化け物騒動の調査とは、ご苦労さまだな。 」
「 そんな他人事みたいに。 」
「 実際他人事じゃない。が、上手くいくことを祈ってるよ。それと一つ。 」
「 まだなにか? 」
「 収斂進化って知ってるか? 」
「 収斂・・・ ? 」
「 例えば、鳥とプテラノドン。どっちも空を飛ぶ為の翼があるだろう。ああいう風に、違う種の生物が同じような環境に適応するために似通った進化をすることをそういう。このゴメテウスも、恐竜がいなくなった地上に適応するために似通った姿になったともいえる。 」
「 つまり・・・? 」
「 その火を吹いたという怪獣、ホントにゴメテウスなのか?
いずれにせよ、今は神のみぞ知るし、お前が明らかにすることだろうけどな。
それじゃ、縁があればまた。 」
「 ありがとうございました。 」
男は博物館から去っていった。
『 夜分遅くにすみません、スミレさん。 』
『 いえ。本来ならば、この時間帯はぐっすりと睡眠をとっておきたいところですが、例の件でしょう? 』
それから数時間後、ユウカはモモトークでスミレと連絡を取っていた。
『 ええ、そのことで一つ、聞きたいことがあったんです。 』
『 まだなにか? 』
『 実は・・・ 』
古生物研究会は、後頭部の一本角という特徴から、その怪獣がゴメテウスであると断定したが、ユウカはどうも、あの男の言葉が引っかかっていた。
その翌日。ユウカは古生物研究会の部員たちと共に、スミレらトレーニング部が怪獣を見たという森林に来ていた。
今はヘリに乗って、上空から森林の状態を視ている。
ミレニアムは最先端技術を好む、科学を追求する学び舎であるが、自治区にはこのようにキャンプなどに適する自然地帯も存在する。そういった人の手のついていない地域に怪獣が住み着いていても、可笑しくもなんともないが、それらしき形跡は見当たらない。
「 40mもあれば、どこかに暴れた形跡がある筈なんだけどな。 」
「 この辺りの面積は広大ですからね。もう少し奥かもしれません。 」
「 それよりも・・・なんでアンタたちも着いてきたの!? 」
ユウカは後ろにいた四人の生徒に目を向けた。日常的に関わることの多い、ゲーム開発部の四人だ。
「 だって、ゲームのネタになりそうじゃん。大きな怪獣。算術怪獣ユウカとかさ。 」
「 お姉ちゃん。 」
「 悪かったわね、算術怪獣で。 」
「 あぁ、すみません。モモイにそんな気はないんです! 」
才羽モモイの無礼を部長の花岡ユズが謝罪した。
「 いいわよ。そんないつものことだし・・・ 」
「 あ、あれじゃない?その怪獣がでたってとこ。 」
モモイが指さした地点、側に道路があり、土が捲れたように盛り上がっている。
「 あそこ、降ろして! 」
ユウカは運転手に指示し、その場に降りた。
その場には余りにも大きすぎる大穴ができていた。それは深く、地底にでも繋がっていそうだった。
「 凄い盛り上がりよう。何かが掘り起こしたみたいね。 」
「 確かになにかいそうだよね。 」
「 ボス敵ですか!? 」
「 さあね。でも、その怪獣、この中にいるんでしょ。このままでてくるまで待つ? 」
「 そんなこともあろうかと! 」
研究会の会員があるものを取り出した。六本のダイナマイトである。
「 これを穴に放り込んで、怪獣を誘き出します! 」
「 それ効くの? 」
「 効きますとも!いくら巨体といえどもダイナマイトの爆発には驚きますよ。生きたゴメテウスをこの目で見れるんですから、このまま待つなんてできません。 」
会員は早速ライターを取り出し、ダイナマイトの導火線に火をつけ、大穴に放り込んだ。
「 耳塞いで。爆発きますよ! 」
一行は一斉に耳を塞いだ。
バァァァアンと轟音が暗い穴の中から響き渡り、目論見通り中にいたなにかがそれに驚いたかゴゴゴと地面が揺れる。
「 な、何?地震? 」
「 いえ、これはボスエンカウントです! 」
天童アリスに続いて、ユウカは銃を構えた。
「 ・・・来るわよ! 」
一瞬、揺れが収まったかと思うと、大穴から土を巻き上げて、それは現れた。
土煙の中にそびえるそれは、その恐ろしい眼光でもって、ユウカたちを睨んでいた。
「 ねぇ、あれがそのゴメテウス? 」
「 まさか、実物を見れるだなんて・・・ 」
ゲーム開発部も古生物研究会も、感動していた。
遥か昔に、この地球上から喪われた生命。それが今、自分たちの前にいる。
古生物に興味のないものでも、仮に目の前にティラノサウルスやマンモスが現れれば、来るものがあるだろう。彼女たちは、それと同じ物を感じていた。しかし、ユウカだけは違った。
昨夜、スミレとのモモトークで、こんな証言を得た。
『 大きな恐竜のような見た目で、毛はなかった。 』
と。そして、博物館での男とのやりとりから、ユウカはゴメテウスが毛のある生き物だと知っていた。だが、目の前のこれはどうだ。
後頭部の角。鋭い牙。そして、黒いゴツゴツした肌。体毛は見受けられない。
「 違う・・・アレはゴメテウスじゃない! 」
『 バウアウゥゥ!! 』
その怪獣は報告通り口から炎を吐き、ユウカたちを攻撃する。
「 危ない! 」
なんとか躱したが、ヘリに直撃し、炎が鋼を焼き焦がす。
「 ヘリが!? 」
「 逃げるわよ! 」
一行は一目散に走り出し、怪獣はそんな少女たちを追い始める。
「 どうするのこれ!ていうかなんで追いかけてくるの!? 」
モモイは汚く泣きわめき、
「 ダイナマイトなんで投げ込まれたら、誰だって怒るよ! 」
その双子の妹ミドリはそれにツッコミをいれる。
「 落ち着きなさい!なんとかあの怪獣に対処しないと・・・ 」
『 バウワウゥゥ!! 』
ユウカがそれらを宥めようとする中、怪獣は木々を薙ぎ倒し、口から炎を吐いて森林を焼け野原としながら執拗に追い立てる。
このままでは全員やられてしまう。
その為ユウカは応援を要請することにした。
『 ノア!例の怪獣に追われてるから、武装ヘリ3台くらいだして! 』
『 ユウカちゃん、怪獣さんと追いかけっこしてるんですか? 』
『 そんなこといってないで早くして! 』
「 アリスが光の剣で、あのモンスターを・・・ 」
「 アリスぅ!やめなって!今足止めたらあの火炎放射で黒焦げにされちゃうよ! 」
得物のレールガンで怪獣に挑もうとするアリスをモモイが諌めた。
一行の体力は減るばかり。全滅するのも、時間の問題か。
「 やっぱりな。可笑しいと思った。 」
そんな彼女らの様子を、双眼鏡で目にするものがいた。
ユウカから話しを聞いて、興味を抱いて怪獣を見に来た、あの男だ。
「 アレはアーストロンだ。ゴメスは火を吐かない。全体的にフォルムと特徴が似通ってるから、ゴメスと思ったんだろう。しかしどうあれ、あれは不味い。あの子たちが危ういな。 」
男は、懐からあるものを取り出した。
「 あまり、目立ちたくないが、バレなきゃいいか。 」
四角い青白に、3つのスロットを備えた何かのデバイスである。
男はそれを前にかざし、高らかに叫んだ。
「 行け、エレキング!! 」
『 バトルナイザー、モンスロード! 』
そして今、とうとう彼女たちは体力が限界に達しかけていた。
「 ハァ、ハァ、もう、駄目。日頃の、運動不足が・・・ 」
「 しょっちゅう食ってるからだよぉ・・・ 」
「 なんですってモモイィ!? 」
「 今それどころじゃないですよ! 」
『 バウアウゥゥ!! 』
古生物研究会員の言う通り、もう走れないくらいの疲労を負った一行にも、怪獣ことアーストロンは容赦なく押し寄せてきていた。
「 あぁ、もう駄目だ、おしまいだぁ・・・ 」
モモイはその絶望感からその場に倒れ込み。
「 モモイ、何を寝言をいっているんです。 」
アリスはモモイの前髪を掴んで持ち上げた。
「 不貞腐れる暇があったら、あのモンスターと戦う準備をしましょう。 」
「 だからアリスぅ、駄目なんだって。アイツを殺しきる前に全員焼き殺されるか食べられちゃうよぉ・・・ 」
珍しくモモイは絶望していた。彼女もユウカからスミレらトレーニング部の弾丸が通用しなかったことを聞いていたのだ。
アリスのレールガンしか効き目のありそうな武器がない以上、アーストロンを倒し切ることはできないのである。
「 モモイちゃん大丈夫よ。今ノアに応援寄越させたから、そのうち・・・ 」
『 バウアウゥゥ!! 』
「 やっぱ駄目かも・・・ 」
凶暴怪獣アーストロンがすぐそこまで迫っていた。その時である。
『 バウアウゥゥ!? 』
なにかがその巨体に縛り付き、猛烈なスパークを放った。
アーストロンはその電流に苦しんでいる。
「 な、なに!? 」
突然のことに困惑するユウカであるが、怪獣に巻き付いた物体をよく見てみた。
白黒の模様のついた、尻尾のようだ。
その尻尾を辿ってみると、
『 キイィィィイン!! 』
アーストロンとは別の怪獣が、尻尾を伸ばしている。目のある部分には代わりに角が生えていて、それがくるくると回転しており、手先に指がなく、口が発光している。
地球の生物と思えない見た目だ。
その怪獣、エレキングがあの博物館で出会った男が、自分たちを助ける為に繰り出したものだとは、ユウカは知らない。
彼女たちを巻き込むまいと、エレキングはアーストロンを引っ張って引き離す。
電流にとうとう耐えられなくなり、アーストロンが腕をぐったりとさせたのをみて、エレキングは巻かれていた尻尾を解き、トドメとばかりに三日月状の光線3発を口から放つ。
アーストロンは力なくその場に倒れ伏した。
『 キイィィィイン! 』
エレキングは勝鬨を上げると、光となってどこかに去っていった。
「 いました!そこです! 」
「 ユウカちゃん! 」
ヘリに乗せられ、駆けつけたノアが見たのは、なにかが起きて唖然とするユウカやゲーム開発部、古生物研究会の面々と、その眼前に死に絶えた巨大生物であった。
ということで、今回の怪獣はゴメスと見せかけて、アーストロンでございました。
どっちも某怪獣王との繋がりからのチョイスです。
ゴメス→モスラ対ゴジラ時のスーツの改造。
アーストロン→デザインが似通っている他、後にデザイナーが平成シリーズに繋がる84年版ゴジラにおいて、デザインを担当。
あとゴメスはウルトラQ記念すべき第一話のメイン怪獣というのもあります。
あとサラッといっていますが、先生はあることをきっかけに死んでおります。これは後に深掘りしていきたい。
ご意見ご感想、励みになります。お待ちしております。