バルタン星人の起こした怪人騒動の翌日。自治区内ではエイリアンの破壊した建物の瓦礫の撤去作業が進んでいた。ガタンゴトンと重機が音を鳴らして仕事をする様を他所に、少女が二人。
「 ここ、かしらね? 」
「 モモトークにある住所は、ここみたいですよ。 」
ユウカとノアは一軒の古い家屋のまえにたっていた。今の近代的な街並みの中でひっそりとそびえるその建物は、かつてミレニアムが創設された最初期の頃に、学童たちが使っていた居住施設の一つであり、いまでも区域の各地のこれらは残っている。
といっても、古い建物なので、並の生徒は好き好んでこういった施設に住みはしないが。
彼女たちがここに脚を運んだのは、ユウカに届いた、相沢のモモトークがきっかけである。
曰ふく、バルタン星人について、詳しい概要を教えたいらしいので、このボロ家に住んでいる彼の仲間に会ってほしいというものだった。
「 ノアはここで待ってて。なにかあったら伝えて。 」
「 気をつけてね、ユウカちゃん。 」
ノアに見送られながら、ユウカはその中に入っていく。
内部には複数の部屋があり、廊下にはドアがガラリと並んでいる。そして・・・
「 うわっ!? 」
急にドアが一つ開いたかと思うと、その中に誰かがユウカを引っ張って引きずり込んだ。
「 え・・・ 」
ユウカは驚いた様子をみせた。彼女を部屋に引き込んだのは、宇宙人だったからだ。
赤い上半身と、青い下半身。そして胸から腹に走る黄色い縁取りが発光していて、手はチューリップのような形状をしていた。
「 ようこそ早瀬ユウカ。我々はキミの来るのを待っていたのだ。 」
「 え? 」
「 相沢からキミのことは聞いている。まぁ、上がり給え。なんだったら、外にいる友だちも呼んでみたらどうだ? 」
今となっては大昔のような、畳にちゃぶ台の備えられた部屋の中、その宇宙人は胡座を組んで佇んでいた。
ユウカもその手前に座る。
「 先ず、自己紹介からだね。
私はメトロン星人ムシュカ。見ての通り、キミたち地球人とはまた別の星からお邪魔させてもらった者だよ。 」
「 なにか企んでるんじゃないの? 」
「 滅相もない。私はとある組織に属していてね。そこでは地球人や私のような他星から来たものたちが多く属している。
勿論、彼もその所属だ。 」
「 何のためにキヴォトスに来たの? 」
「 最近、この辺りに怪獣の出現件数が多くなってね。その原因を突き止める為、調査に来た。やましい真似はするつもりはないよ。 」
「 連邦生徒会はこれを知ってるの? 」
「 連邦生徒会?ハハハハ。あんな連中、話しを通すまでもないよ。それにキミたちは野蛮だからね。素直に話したら、次の瞬間には弾丸が飛んできそうだから言う気にもなれない。 」
「 なんですって!? 」
「 機嫌を損ねたなら申し訳ない。だが事実だと思うがね。片手に銃を持った連中と、落ち着いて仲良くお話しできると思うかい? 」
「 うぅ・・・ 」
ユウカは反論できなかった。このメトロン星人のいうことは的を得ていたからである。
時同じくして、ゲヘナ学園自治区。
「 死ね!薄汚いゲヘナの角付ども!! 」
顔を歪ませて、白い服に翼を持った、トリニティ総合学園の生徒たちが、角の生えたゲヘナ学園の少女たちと、銃激戦を繰り広げていた。
双方共に戦車や遮蔽物を盾にして、鉛玉の雨を凌いでいる。その様はまさしく戦地のそれだ。
しかし、我々が戦場と聞いて思い浮かべる光景と違うのは、銃を持ってる兵士が少女であることと、その戦車がM1エイブラムスとかではないことだろう。
一言で言えば、男のロマンだった。
肉食恐竜の上半身に、戦車のキャタピラをツギハギした、好きな人間には刺さる外見であり、実際怪獣使いやその手の専門家の間でも、人気な怪獣である。
名は、恐竜戦車。
シンプルだが、これ以上ないほどにグッとくる名前だ。
「 アイツら何しにきたんだよ。今度もアタシらなんかしたの!? 」
「 なにかしたか。決まってるじゃない。シャーレの先生を殺したのはお前たちだろう!? 」
「 だから知らないって言ってるだろ! 」
「 とぼけるな! 」
元来、ゲヘナ学園とトリニティ総合学園は対立している関係にある。互いが互いを疎み合い、いがみ合う状態が長年に渡って続いており、それがミレニアムサイエンススクールの開発、流通した怪獣携帯デバイス、「 バトルナイザー 」と、シャーレの先生の死によってより一層激しさを増していた。いつもならば、ゲヘナ側がトリニティの自治区でなにか事件を巻き起こし、トリニティ側がそれに防御の姿勢を取るというながれだが、今回はその逆となった。シャーレの先生死亡事件。その犯人がゲヘナだと勝手に決めつけたトリニティの一部の過激派が、こうしてゲヘナの自治区で暴動を起こしたのである。が、実際のところ、先生を殺したのが、ゲヘナ生だという証拠など、どこにもない。連邦生徒会は、今に至るまで真相を明かせていないのだ。
故に今、トリニティの過激派たちは、己のゲヘナへの敵対心を正当なものとして、邪魔者、気に入らぬ異端者どもを排除する口実として、先生を利用しているだけであった。
この陰湿さは、もはや誰にも救いがたかった。
「 人間とはいつもこうだ。便利なものを一つ覚えれば、それにとことん依存して、どんどん退化していく。銃を持てば、大半は自分の気に入らないことがあれば、なにも考えず引き金を弾き、周りを巻き込む。そして今度はキミたちは怪獣に依存し始めた。 」
ムシュカはひらひらのついた左手を動かしながら、ユウカにそういった。
「 バトルナイザー。アレはもともと私が今身を置いている国で開発されたものだ。怪獣を収納、使役することを可能とする。その危険性故に国外にその存在がバレたら不味いと長いこと国家の重要機密として秘匿し続けてきた。他国がそれを知ったのも、つい最近のことだ。ところがだ。 」
「 ・・・ 」
「 どういうわけか、情報がこのキヴォトスに漏れ、キミたち若者がその新しいおもちゃに飛びつき、お遊び半分で使い始めた。 」
「 お遊びですって? 」
「 そう、お遊びだ。他学園同士のいがみ合い。喧嘩の道具に銃を使うキミたちだ。本当の命のやりとりというものを知らないだろう? 」
一方、再び所変わってゲヘナ自治区。
攻め入ってきたトリニティ生たちは、風紀委員会によって制圧されていた。周囲は力なく倒れた少女たちと、屑鉄になった恐竜戦車たち。
そして、そのど真ん中には、大きな翼をはためかせた白髪の少女と、カミキリムシのような、黒い怪獣。黄色い発光体の光るその顔からは、感情をうかがい知ることはできず、威圧感を感じさせた。
「 汚らわしい。そんな目で私を見て。勝ち誇っているの? 」
「 そうかもね。それに憐れんでいるわ。 」
空崎ヒナはキヴォトスの現状を誰よりも憂いている生徒の一人だ。自由を校風とするゲヘナ学園に身を置く彼女は、これまで生徒たちの度を超えたテロ行為を幾度となく目にしてきた。だが、目に見えて酷くなったのは、怪獣が流通し始めた辺りからだ。
さらに彼女が慕っていた先生の死も手伝って、敵対関係にあったトリニティ総合学園の生徒がゲヘナ自治区に侵入してくる事案も多くなりつつあった。
「 こんな事をして、ただで済むと・・・ 」
「 人様の敷地に勝手に入って荒してる貴女たちにいわれたくないわ。 」
「 貴女なんかにいわれたくないわ。角つき! 」
「 なんとでもいいなさい、鳥頭。でも今回は貴女たちが悪いわ。その分の報いは、受けてもらうから。 」
ヒナが目をやると、彼女の相棒は、両手を構え、エネルギーを溜め始めた。
それをみたトリニティ生たちは慌て始める。
「 ま、待ちなさい! 」
「 待たないわ。より痛めつける必要があるもの。 」
「 こんなことしたって、先生は喜ばな・・・ 」
「 黙れ。 」
ヒナのその口調には、静かながらに怒気が含まれていた。
「 やりなさい、ゼットン。 」
『 ゼットーン・・・ 』
その怪獣、ゼットンの放った光線が、少女たちに降りかかる。
彼女たちがどうなったかは、ヒナのみぞ知る。
「 さて、本題に移ろうか。キミを呼び立てたのは、先のバルタン星人の件について、色々と補完をしておきたかったからだ。 」
「 そういえば・・・ 」
ユウカには、思い当たる節が多かった。何故相沢があの場に現れたのか、そして彼の弾丸がバルタン星人に効いたのも気になるところだった。
「 まず彼にバルタン星人の情報を教えたのは私だ。 」
「 やっぱりそうだったんですか。 」
「 そうだとも。これでも宇宙の情勢にはそこそこ詳しいからね。情報は力なり、だ。 」
メトロン星人はそういって、何かを取り出してユウカに差し出した。
彼のカラーパターンと同じ色合いをした缶飲料のようだ。
「 なんですか、それ。 」
「 眼兎龍茶だよ。毒など入っていない健全な飲み物だ。ぐいっといっていいよ。 」
ユウカは神妙な顔を浮かべながらタブを開けて、口をつけ、その中身をゴクリと飲んだ。
「 それでだ。バルタン星人がどこまで自分たちの事を話していたか覚えてるかい? 」
ユウカはバルタンとの会話をムシュカに伝えた。
「 そうか。星が荒れ果てたというのは素直に話したわけだな。 」
「 バルタン星ってホントにそうなっちゃったんですか? 」
「 そうだとも。これはバルタンに限った話しではなく、この宇宙ではよくあることなんだ。科学技術の発展の対価に母星が荒廃していく。
バルタンもそうなってしまった一例さ。
彼らの場合、特に発達したのは、クローン技術さ。 」
「 クローン・・・ 」
「 そう。自分の身体を無数に作り出して、意識を共有する。例え殺されてしまっても、別の身体に意識を移して復活する。厄介な技術だよ。彼らが生命を理解できないのは、これの所為だ。 」
彼女はこのメトロン星人の話しに納得がいっていた。クローン技術が発達した宇宙人。それならば、あの時の「 他者を殺さなければ、居住を許す 」というユウカの提案に疑問を抱くのも頷けるというもの。いくつも身体をとっかえひっかえして生きながられるのなら、死とは如何なるものかを実感することすらなくなるのだろう。
「 さらに困ったことに、彼らは欲張ってしまった。 」
「 欲張った? 」
「 クローン技術の極みに達したと過言ではないバルタンだが、軍事力がおざなりになり気味だったんだな。外宇宙からの侵略に備えて、今度は兵器開発に注力した。その結果、星が荒れてしまったんだそうだ。 」
「 なるほど。で、どうしてあのバルタンが悪いやつだってわかったんです? 」
「 その後に彼らは二派閥に分かれた紛争状態に突入したからだ。星の再生に尽力したいという穏健派と、他星に移住すべきといった過激派。
両者が争った末、穏健派が勝利した。
彼らは今、母星や他の星人のいない近隣惑星のテラフォーミングに励んでいる。
一方の過激派は星を追放され、他の惑星にちょっかいをかけているのさ。
キミがでくわしたのは、そんな輩だ。 」
「 失礼します。 」
「 珍しいですね、貴女がここに来るなんて。 」
その頃、トリニティ総合学園。正義実現委員会副委員長、羽川ハスミはある人物に謁見していた。
当学園の生徒会であるティーパーティー現ホスト、桐藤ナギサである。
「 ご要件は概ね想像がつきますよ。 」
「 でしたら・・・ 」
「 残念ながら、彼女らの退学処分を取り消すことはできません。 」
「 何故です!? 」
「 調和を乱すからですよ。他所の家に入って暴れ散らかすなど、あってはなりません。
例え相手がゲヘナでも・・・ 」
このごろ、トリニティは荒れていた。バトルナイザーの流通により、怪獣という新しい戦力を得たが為に、他校、特にゲヘナ学園へ攻撃する生徒が激増したのだ。
ティーパーティーであるナギサは必然的にそれらへの対処に追われ、問題児たちをトリニティから追放していた。
「 だからといって、なにも退学までさせなくとも・・・ 」
「 させる必要があるからしているのです。私たちはゲヘナの生徒ではありません。
彼女らのようにあってはならないのです。 」
かつて、トリニティ総合学園が敵対関係にあるゲヘナ学園との確執を解消すべく、締結しようとした条約があった。
エデン条約と呼ばれたそれは、アリウス分校とゲヘナの生徒会長のせいでものの見事に台無しになった。さらにそれを口実としたゲヘナへの攻撃の加担を拒否した親友、美園ミカへの必要以上の迫害、暴行までも起こる始末。故にナギサはそんなゲヘナと同じ無頼の輩に自分たちがなってはならないと、同胞にも厳しい処罰を下す事とした。
あの一件から、彼女は最大の敵はゲヘナでもアリウスでもなく、より身近に潜んでいるのだと学んだのだ。それが、バトルナイザーにより鮮明に浮きでるようになったのだった。
「 彼女たちは仇を討とうとしただけです。先生の・・・ 」
「 彼を暴力の口実にしないでください。 」
そういったのは、新たに部屋に入ってきた、桃髪の少女だった。
いつもならば、変質的な彼女であるが、今回は何処か目が死んでいるように冷たく、恐ろしく聡明であった。
「 浦和ハナコ。 」
「 なんのようです? 」
「 廊下から話し声が聞こえたので、失礼します。いいたいことをいえば、すぐにでていきます。羽川先輩、貴女さっき、仇を討とうとしたといいましたね。いったい誰のですか? 」
「 決まっています、先生の仇です。 」
「 ではゲヘナ生が先生を殺したという証拠はあるのですか? 」
「 ・・・! 」
ハナコは冷淡にハスミの目を見据えていた。
「 先生が殺されたのは、D.U区画にある、シャーレの部室内です。当時は深夜でどこの学校の生徒も大半が寝ていて、ましてその時間帯にわざわざ出向くとも考えられないような時刻です。
気分屋が多いゲヘナが、わざわざその時間まで待って殺しにいくと思えますか?
まして先生を殺したいほど憎んでいるものなど、あちらにだっていないはずです。 」
「 ・・・ 」
「 彼女たちは他者への攻撃に彼の死という事実を利用しているにすぎません。あれだけ私たちを思ってくれた先生への、何よりの冒涜です。
羽川先輩、貴女はそんなことをしでかす連中を擁護するというのですか?
それが貴女のいう、正義なのですか!? 」
「 ・・・! 」
「 失礼しました。 」
そういって、ハナコは部屋からでていった。
「 ハナコ・・・ 」
廊下を歩くハナコを呼び止める声。
彼女の友だちだ。
「 コハルちゃん、お見苦しい姿をお見せしますが、肩を貸してもらえますか? 」
再び変わって、メトロンとユウカのいる部屋。
「 そうそう、相沢の使ってた弾丸にも、触れておかなきゃいけないな。 」
「 弾丸? 」
ユウカにも思い当たるところがあった。そういえば、彼は自分を助ける為に、バルタン星人を狙撃していたが、かなり効いていた。
「 あれは、スペシウムの入った特殊弾さ。 」
「 スペシウム? 」
「 彼奴等の嫌いな物質さ。この地球上にはなく、火星で採れる物質なんだ。火星に住みたがらなかったのも、そういうことだ。 」
「 それがなかったら、地球はどうなってたんですか? 」
「 うーん、被害は多からず増えるだろうが、どうにかなったんじゃないかな。奴等は核爆弾にすら耐えるほど頑丈ではあるんだが・・・ 」
「 あるんだが? 」
「 奴らの台頭は、間違いなくこの星の環境を悪化させる。そんなことは、彼らが許さないよ。 」
「 彼ら?外の世界の人間のことですか? 」
「 まぁ、それもあるんだが、怪獣だよ。 」
「 怪獣、ですか? 」
ユウカは頭がこんがらがりそうになったが、すぐに納得した。
言われてみればそうだ。この地球は人間だけのものではない。外部からの侵略は、人間の街や国のみならず、怪獣の生息域も、危険に晒す。ならばこないだのアーストロンのような怪獣たちがそれに抗おうとするのも、想像がつく。
「 キミが今、怪獣と聞いて頭に浮かべたのはアーストロンかな? 」
「 その話しも、聞いてるんですか? 」
「 勿論さ。確かにアーストロンは別名にある通り、凶暴な怪獣だ。生息域を脅かされれば、如何なる敵にも向かっていくだろう。
だがね・・・ 」
「 ん? 」
「 この地球にはね、いるんだよ。アーストロンなんかよりも、ずっと強い怪獣が。彼らが動けば、バルタンはなすすべなく滅ぼされるだろうが、被害は甚大なものになっていただろうね。 」
その頃、キヴォトスにある氷海地帯にて。
「 何、あれ? 」
あるものの調査に出向いていた特異現象調査部の和泉元エイミ、C&Cの04、飛鳥馬トキ、そして離れた地点から観測している明星ヒマリは、それを目撃した。
調査対象であったデカグラマトンと呼ばれる巨大な人工知能搭載巨大機械、その一体が何かと交戦している。それに背部の砲塔から火炎弾を放つが、まるで効いていないのか、接近を許し、その巨躯からくるタックルを受け、吹っ飛ばされる。
それは、怪獣である。白い神々しさを感じさせ、頭上に天輪を戴く機械的なデカグラマトンと対象的な、黒いケロイド状の体表に背鰭を有した巨大な恐竜のようなフォルムは、ユウカが出くわしたアーストロンに酷似しているが、それとは比べ物にならない程の圧倒的な巨躯。そして体格。それが再びデカグラマトン、コクマーに近づくにつれ、その背鰭は、尾から赤紫に光を帯びる。
ヴォン、ヴォン、ヴォン、ヴォン、ヴォンヴォン
とまるでカウントするが如く、光が背鰭を伝って後頭部に迫ってくるその様をみた三人は、なにか大技が来ると予感する。
コクマーはそれを抗うが如く、口内から火炎を放つが、やはり交換が薄い。
そして、放たれる、赤紫の熱線。
あっさりとコクマーの火炎を押し返して、その口内を直撃、あっさりと破壊せしめてしまった。
メトロンはいう。
「 キミたちが、そしておそらく私たちが生まれる遥か昔から、この地球を守り続けてきた、怪獣の王。その名は・・・ 」
『 エオォォォォォォォォォオオン!! 』
怪獣王、ゴジラ。その雄たけびは聴くものすべての魂を震わせた。
神にならんと奢る鉄の怪物を地に這いつくばらせ、そびえるその勇姿はまさしく、王者。
エイミもトキも、その姿を見て、何一つ言葉を交わすことができない。
彼女たちのみていた世界は、所詮狭い庭の中でしかなかったことを、嫌でも思い知らされたのだった。
「 あれが、ゴジラ。 」
ヒマリはモニターをジッと見つめていた。以前、MONARCHという組織に属している友人から、彼のことを聞いていた彼女は、その存在に人一倍、興味を惹かれていた。
「 リオの言う通りならば、彼にとってデカグラマトン、というより、コクマーは自然環境によろしくない存在だということですか。 」
所変わってゲヘナ自治区ヒノム火山。
火口の中で眠りについていたそれは、王の雄叫びに呼応したか、それとも己の縄張りを荒らす小さき賊どもに苛立ったか、突如として目覚めた。
『 キシャオォアァァァァンン!! 』
その咆哮と共に、火山が噴火し、溶岩が噴き出た。
「 な、なんだ!? 」
温泉開発部、鬼怒川カスミは驚いていた。急に火山が活性化し、怪獣らしき鳴き声も聞こえてきたからである。まさかヒノム火山に怪獣がいるとは思いもよらなかったようだ。
そして、火口より噴き出る黒煙の中から、それがジッとカスミを、メグを、部員たちを睨んでいる。
一言でいえば、プテラノドンがそのまま大きくなったような、灼熱の溶岩を纏ったようなそれは、カスミら温泉開発部をみるなり、翼をはためかせ、その上空を飛翔する。
凄まじいソニックブームが少女たちを襲い、木々をなぎ倒し、機材を破壊し、部員たちは何処へと吹き飛ばされた。
その様はまさに、炎の悪魔と呼ぶに相応しいものであった。
ということで次回は相沢がブチギレたラドンを対処する回であります。
ご期待ください。