ブルアカQ   作:ニコラス―NICORUTH―

5 / 7
 コング出してほしいといってた方、申し訳ない。モンスターバースを絡ませるには避けては通れませんが、すぐには出せないんです。
だって地下で王様やってからさ・・・
個人的にゴジラ側をメインにしたいというのもあると思うけども。絶対だしたいですね。


蟲の叫び

 ある日の昼。トリニティ総合学園にて。

 

「 アズサちゃん急ぎますよ!早くしないとペロロ様限定グッズが売り切れちゃう!! 」

 

「 ま、待ってくれヒフミ! 」

 

 友人である白洲アズサの腕を引っ張って、阿慈谷ヒフミは人の賑わう街中を駆けていた。

彼女が大好きなモモフレンズであるペロロのグッズを漁るのは、いつものことだ。

そんな楽しい日常を友だちと過ごせるのがどれほど幸せなことかは、そんな日々が脅かされたときに痛いほどわかるものだ。

 

「 ・・・! 」

 

「 コハルちゃん? 」

 

「 ねぇ、あれ、なに? 」

 

「 え・・・!? 」

 

 下江コハルが震えながら指さした方向をみた浦和ハナコらは言葉を失くした。空を覆い尽くさんばかりのなにかが、こちら側に飛来してきているからだ。

 

「 何処かに身を隠せ! 」

 

 アズサの一声と共に周囲の群衆たちは一目散に逃げ出した。その中の一部は銃を発砲して立ち向かうが、群を構成する以上、一体一体銃弾をぶち当てても焼け石に水だ。補習授業部らは弾を受けて死んだそれを目撃することとなった。

我々には、そしておそらく彼女らにもお馴染みの昆虫である。長く発達した四肢に、黒い身体。

 

「 ば、バッタ・・・? 」

 

 トリニティは、未曽有の蝗害に見舞われていた。

 

 

 

「 何ということでしょう・・・ 」

 

 所変わってシスターフッドの教会。ここに所属するシスターたちは、ティーパーティー発足以前にトリニティを統べていた、ユスティナ聖徒会の後裔たちである。複数の学園が統合して成り立ったトリニティ総合学園の最初期のころ、厳格にその戒律を守り続けてきた、「 戒律の守護者 」たち。

異端への過剰な弾圧と凄惨な拷問の記録が残るが故に、現在でもその名残として一定の武力と発言力を有するが、そんな過去がある為に幾人かの生徒から不審がられることもままある。

 

「 サクラコ様、これは・・・ 」

 

「 群生相イナゴの群れ。それも通常のものより大きい。ヨハネの黙示録そのものの光景ですね。 」

 

 サクラコが表情を曇らせる要因はやはり、外を飛び交う、巨大イナゴたちである。

彼女のいうように聖書の一場面の世紀末のように、道行く人々を襲っている。

打ち鳴らされる撃鉄はやはり無力で、次から次へと蟲たちが押し寄せてくる。

 

「 う、うわぁぁぁあ!! 」

 

 イナゴたちが生徒の一人に群がり、もう一人が助けようと火炎放射器で、イナゴたちを焼き払った。

窓から外の様子を覗いていたサクラコはこれを見て、あることを悟った。

本来、イナゴは植物食であり、稲などを主に食う。それは餌が乏しく複数個体が一箇所に集約されることで群生相へと転じても変わらない。それが人間を襲ったということはつまり・・・

 

「 マリーさん、急いで彼女たちを中に! 」

 

「 は、はい! 」

 

 サクラコは今回も、先日のラドン襲来についでのっぴきならない事態であるとし、スマホを取り出してある人物たちと連絡を取ることとした。

 

 

 

 

 

 一方、ミレニアム自治区。ある宿泊施設の中。

 

「 サクラコからだ。教会に集まれか・・・ 」

 

「 それだけヤバいことになってんでしょ。 」

 

「 まったく何食えばこうなるのか。 」

 

 相沢とカヨコは外で無数のイナゴが群れを成して飛び交い、生徒たちの散布した殺虫剤もまるで効かぬ様を見て、今回もまた一大事なのだと察した。

 

「 あの殺虫剤、ミレニアムの開発した新薬だよね? 」

 

「 そうだろうな。最先端を往く学園だ。一番新しいものを使いたがるだろうし。実際あれは一定の成果を見せていて、百鬼夜行でも害虫の被害を劇的に減らしてみせたそうだ。しかし、それが効かぬとなれば・・・ 」

 

「 突然変異、かな? 」

 

「 だろうな。でなきゃこのサイズはあり得ない。それにしても。 」

 

「 ん? 」

 

「 どうやら苦戦しているようだ。どれ、一つ手を貸してやろう。 」

 

 相沢はバトルナイザーを取り出し、怪獣を召喚する。普段はあまり呼ぶことの少ない、彼にとって四体目の仲間である。

 

「 来い、ギガザウルス! 」

 

 この怪獣を始めてみたとき、古生物学を嗜んでいる相沢は感動を覚えたのだという。絶滅したものとばかり思っていたその竜は、身体を巨大に、そしてより強靭に変化させながらも、氷河の中で生きながらえ続けていた。それが今こうしてこの学園都市の大地を震わせ降り立った。

その青白く長い首を擡げる姿は、かつて中生代に生きていた生命の逞しさを感じさせる。

 

「 虫どもを氷漬けにしろ! 」

 

『 グオォォォォォォン!! 』

 

 ギガザウルスの口から放出された冷凍ガスがイナゴの群れを、その黒い外殻や翅ごと凍てつかせる。如何に凶暴性を増したといえど所詮は昆虫。冷気にはやはり弱いのだ。そんなギガザウルスの姿を目の当たりにした生徒たちは、驚きを隠せずにいた。

 

「 恐竜だ。恐竜が、イナゴを凍らせてる。 」

 

「 凄い。あれ竜脚類だよね。なんて名前の恐竜? 」

 

 人目を他所に、最早飛ぶこともできず凍りつき息絶えたイナゴたちを見て、ギガザウルスは雄叫びをあげた。

 

「 戻れ。 」

 

 相沢がバトルナイザーを掲げると、ギガザウルスは光になって、その中に収納された。

 

「 片付いたね。 」

 

「 規模が小さいからどうにかなった。しかし、ことが収まったわけじゃない。第二波が直に来るだろう。 」

 

「 サクラコと合流しなきゃ。 」

 

「 だな。 」

 

 二人は部屋を後にした。

 

 

 

「 んで、出来たのがこれだ。冷凍食品イナゴ。 」

 

「 食欲は、そそりませんね。 」

 

「 こうしてみると、大きさが際立ちますね。 」

 

 それより数十分後、シスターフッド教会は、普段ならば来ることのない客人を迎えていた。

相沢とカヨコ、そして救護騎士団団長、蒼森ミネだ。

 

「 見たところ、体長四十センチメーターといったところでしょうか。 」

 

「 やはりあり得ないサイズだな。イナゴはよくて五、六十ミリが精々だ。それに人を襲ったということは、食性が変わっているということ。 」

 

 本堂に折りたたみテーブルが設置され、その上には、ギガザウルスが凍らせたイナゴ数匹が置かれている。ミネはそれにメスを入れ、このイナゴの身体になにが起こったのかを早速調べ始めていた。

 

「 大まかな身体構造は通常との相違は殆どない。巨大化に伴い、各器官が大型化。筋肉やマルピギー器官は勿論、特に生殖能力に特化しているのか、卵巣や、産卵器が発達しています。それと、受精のうが退化している?それでは本末転倒では・・・?他のイナゴも見てみないと・・・ 」

 

「 こんなとき、頼りになるよね、ミネ隊長。 」

 

「 あぁ、本当にな。ところでだがサクラコ。 」

 

「 はい。 」

 

「 このトリニティ区画に、デカい農場があったりしないか? 」

 

 相沢はサクラコになにか思い当たる節があるのかそう尋ねた。

 

「 それほど大規模のものはありません。紅茶やオリーブの栽培こそ盛んなのですが。 」

 

「 うーん、そうか。んじゃカヨコ、ゲヘナではどうだ? 」

 

「 あるにはあるけど、前ラドンがでてきたせいで軽並吹っ飛んだし、復旧作業に忙しくて、みんな農業やってる場合じゃないらしいよ。それがどうかしたの? 」

 

「 それがな、今回のこのイナゴなんだが、前に似たようなことがオーストラリアであったんだ。 」

 

 相沢はカヨコとサクラコに過去にあったある事件を語り始めた。

 

 

 

 一昔前、オーストラリアである農薬が話題になった。

オルガノPCBと呼ばれるそれの効き目は凄まじく、サトウキビやフルーツに群がる害虫を駆逐し、一時的に作物の出荷量が大幅に増加したそうだ。しかし、余りにも毒が強すぎて甚大な土壌汚染を引き起こし、人体へも影響が懸念されたことから、政府はこの農薬の使用量や散布する畑の面積に制限を設けていった。ところがだ。

人間というのは、やはり便利なものを覚えれば中々手放せないらしい。

お上のお達しを無視して、オルガノPCBを過剰にばら撒いたバカな農家がいたそうだ。

度を超えた環境汚染と破壊によってイナゴが巨大化、オルガノPCBへの耐性を持つに至った。

そう、今のように。

巨大イナゴたちはオーストラリアを荒らし回り、遂には身長70メーター弱にまで至った特異個体すら現れた。

そいつらは、「 マジャバ 」と呼ばれ、軍や怪獣使いの尽力によって、撃破された。卵まで産んでいたんだが、これもきっちり破壊され、巨大イナゴは、マジャバは根絶された。

 

 

 

 

 

 

「 これを受けて、オーストラリア政府はオルガノPCBの規制を強化。全面的にその使用を禁じた。

他国でもその脅威が知れ渡り、その多くが同じく  規制を掛けた。我が国でも勿論、禁止だ。 」

 

「 そんなことが、あったのですね。 」

 

「 大きくなったイナゴ。確かにそのまんまだね。でもさ・・・ 」

 

「 なんだ? 」

 

「 なんか引っかかるよね。他国の連中が怪獣使いやバトルナイザーを知ったのは、つい最近でしょ?そんな昔話に語るくらいの頃に、誰がマジャバと戦ったの? 」

 

 カヨコの疑問はもっともだった。前にこの場にいないユウカがメトロン星人と話したとき、彼もバトルナイザーの存在が知れ渡ったのは、最近だといっている。つまり当時、他国はバトルナイザーを有していないので、その頃怪獣使いを抱えていないはずなのだ。オーストラリアも、例外ではない。

 

「 それは・・・ 」

 

「 私ですよ、カヨコさん。 」

 

「 隊長。 」

 

 口をつぐむ相沢に代わって、イナゴの解剖をしているミネが応えた。

 

「 イツク、私に気を遣う必要はありませんよ。あの頃はまだ彼女やサクラコさんが加入する前です。知らないのも無理はありません。 」

 

「 え、マジで? 」

 

「 ええ、本当ですよ。 」

 

 ミネは、そのまま当時を語り始めた。

 

 

 

 

 

 その頃、私たちは今の組織の前身となるグループを結成し、日本のみならず世界各地で活動し、怪獣駆除の依頼を受けていました。特にアジアでの案件が多く、オーストラリアでのマジャバの一件もその一つです。

軍は巨大イナゴを根絶するために、オルガノPCBの中和剤を散布しましたが、マジャバにだけはこれが効かなかったそうです。蓄積した毒の量が多すぎて、中和剤が足りなかったのだとか。

それで、私とイツクが彼らの対処にあたる事となったのです。

その時発生したマジャバは四体、そのうち二体は番であり、先ほど話していた通り、卵すら産んでいました。さらに私は、信じられないものを目の当たりにもしました。メスのマジャバが、卵を守ろうとしていたのです。

猛毒に耐えるため、劇的な進化、変化を遂げざるを得なかった彼女は、いつの間にか人に似た母性すらも獲得していたのです。割られ、炎に焼かれる卵に駆け寄るマジャバを見た時、稲を食う一介の昆虫に過ぎなかった彼女を、あれ程までに変えてしまった私たちの業を思い知らされたようでした。

それでも私は、蝗害に苦しむ人々と、歪められてしまったマジャバを救護するために、彼女を葬りました。良い仕事だったと軍の高官から褒められましたが、後味は良いものとは決していえなかった。

 

 

「 あのときは大変だった。イナゴに驚いてエアーズロックで休眠してたタイタンが目覚めかけたりな。 」

 

 

「 その時と今、大分状況が似ています。このイナゴの体液に超高濃度のカーバメート系成分が含まれている。これはマメ科植物のカラバルの毒を元に作られたもので、農薬に使われるものの一種です。有機塩酸、硫黄系も入ってますね。それにこの配分、より毒素を強めている。それも過剰な程に。

間違いありません。オルガノPCB、或いはそれに類する農薬です。 」

 

「 やはりですか。しかし確か・・・ 」

 

「 そうですサクラコさん。オルガノPCBは、このキヴォトスにおいても禁止されています。無論ティーパーティーがこれを知らないはずがないので、このイナゴはトリニティ内で発生したのではありません。ゲヘナも先の一件でそのような余裕はありません。 」

 

「 ミレニアムはそもそも、技術の虫の集まり。土いじりをしていそうではあるんだが、その線は薄い。実際にそこが出どころなら、もっとイナゴは多かったはず。 」

 

 相沢はそういって、脳裏にユウカの顔が思い浮かんだ。実質トップの彼女が、オルガノPCBを知らないとは思えない。蝗害を引き起こしたことのある農薬を、使わせたがるとも思えないのだ。

 

「 オデュッセイア海洋学園も、海産物が主流ですから、農薬とは無縁。となれば、考えられるのは百鬼夜行や、山海経。 」

 

「 いや、他にあるじゃないですか。人目につかず、農耕をするに最適とはいえませんが、選択肢に入る区画。あそこなら、トリニティからそう離れていません。砂漠でも、やろうと思えば、稲やトウモロコシを育てる事ができます。 」

 

 砂漠。そう聞いたカヨコはハッとなった顔を見せた。彼女も行ったことのある場所だからだ。

 

「 ま、まさか・・・ 」

 

「 そう、アビドス自治区。あそこは最早人では殆どいません。アビドス高等学校が事実上の廃校となりましたからね。カイザーもいなくなった以上、後ろめたいことは、あそこならできる。 」

 

 

 

 

 アビドス自治区。かつては栄華を極めたが、天変地異により、その多くが砂に埋まり、荒廃した区画。砂漠の中には、人工物の残骸が散見され、確かにそこは街であったことを物語っていた。

生徒たちで賑わった世界は、最早過去のものと成り果てていたが、そんな砂漠はひょんなことから緑化し始め、緑豊かな地に変わりつつあった。このままけば、数年後にはかつてのアビドスの面影はなくなるともされている。そして、そのど真ん中に、肥沃な土の耕された畑。それも、それなりの規模である。

この畑ではトウモロコシや小麦が植えられていて、少女たちが農薬を撒いていた。

そこを牛耳るのは、ヘルメット団と呼ばれる無法者の少女たち。文字通り、ヘルメットを着けて、顔を隠している。

そんな中に、長身の一際目立つ少女が一人。周りの者たちと同じくヘルメットを被り、へそ出しのノースリーブインナー。正直顔より、服装に目がいく者が多いだろう。

 

「 このグズ!ちょっちゃと撒かないか・・・ん!? 」

 

「 どうかしたか? 」

 

 彼女、錠前サオリに激をいれたヘルメット団員が、空を見て、何かに驚いている。その方向を同じく振り向いてみると、巨大な何かが、無数の小さいなにかとともにこの畑に迫ってくるではないか。

それは、イナゴだった。

一際巨大な、身長50〜70メーターにも及ぶイナゴ二体が、同じく通常より大きな仲間を引き連れ、こちらに向かってくるではないか。

 

「 バッタだ!バケモノバッタだ!! 」

 

「 畑を守れ! 」

 

 ヘルメット団たちは、銃を構えて応戦した。しかし、周囲のイナゴを撃ち落としても、また次が来て、彼女らに飛びかかる。

当然、バケモノバッタことマジャバにも、あまり有効打になり得ない。

口から吐く毒ガスにより、反撃を受け、視界を潰された少女たちに、イナゴが襲いかかる。

 

「 うわぁぁぁぁぁあ! 」

 

「 助けてくれぇぇ! 」

 

 

「 この世の終わりか・・・! 」

 

 阿鼻叫喚のこ地獄。サオリはこの光景を、かつて読んだ聖書の一節のように思えてならなかった。

世界の終わりの日、神の遣わした天使の放った無数のイナゴが、毒針を以て救世主を信じない者たちを襲うというものだ。

死ぬことはないが、死より苦しい激痛を受けるのだという。

まさしくこのイナゴの群れ、そしてそれを従えるマジャバは黙示録に語られる「 アバドン 」そのものであった。

しかし、そんなヨハネの予言とは決定的に違うものがあった。

金色の円盤が飛来し、マジャバに光線を放って攻撃したことだ。

 

「 あれは!? 」

 

 サオリはわけがわからなかった。バッタの群れが襲ってきたと思えば、今度はUFOだ。

 

 ナースの内部では相沢とカヨコが、外の惨状を目の当たりにしていた。

 

「 これはいかん。このままでは被害が増える一方だ! 」

 

「 隊長は確か、前と違ってイナゴが単為生殖できるようになってるっていってたね。 」

 

「 あぁ。だから隊長や山海経のネズミちゃんが中和剤を完成させるまでに、マジャバを叩かないと。ナース! 」

 

『 ギィィクゥアァァ!! 』

 

 ナースが破壊光線を発射し、小さい方のマジャバを狙い撃つ。

マジャバは痛がりながらも、ナースに向かって威嚇する。

 

「 アナタもいって。レイキュバス!! 」

 

「 ギガザウルス、もう一回頼む! 」

 

『 バトルナイザー、モンスロード! 』

 

『 キエェェエン! 』

 

『 グォォォォォオン!! 』

 

 二人のバトルナイザーから、二体の怪獣が飛び出し、大地を震わせる。

現代に甦った古代竜、ギガザウルスと、宇宙からやってきた海獣レイキュバスだ。

ギガザウルスがアイスガスを放ち、周囲のイナゴの大半を凍てつかせる。

レイキュバスは火球を放ってマジャバを攻撃。ギガザウルスがアイスガスを吐き出していた影響で、周囲の温度が少しだけ下がりマジャバもこれを受けていたことで、より一層効き目があるようだった。

そしてギガザウルスが小さい方を、レイキュバスが大きい方に接近する。

マジャバの吐く毒ガスに苦しむギガザウルスであるが、その氷河の中でも生き続ける生命力故か、あまり効いていない。それを見たマジャバは接近戦に持ち込もうとするが、ギガザウルスはその長い首で殴りつけて地面に叩き落とし、アイスガスを放って、砂ごとマジャバを凍てつかせる。

 

そして、前足を持ち上げたかと思うと、全体重をかけて踏みつけ、粉々に打ち砕いた。

それをみていたサオリは呆然としていた。急に円盤から恐竜とカニのバケモノがでてきて、巨大バッタと大怪獣バトルを繰り広げているのだから。つい最近まで外の世界を知らなかったサオリは、奇妙な感覚を覚えていた。その時だ。

 

「 錠前サオリさん、ですよね? 」

 

 声のした方向を振り向くと、シスター服のネコのような耳をしたオレンジ色の髪の少女がそこにいた。サオリはヘルメットを外して相対した。

 

「 その格好、シスターフッドか。 」

 

「 はい。伊落マリーと申します。身構える必要はありません。貴女を捕まえに来たんじゃないんです。 」

 

「 あのバッタか? 」

 

「 はい。こちらの農場の農薬が原因であそこまで大きくなり、キヴォトス中で暴れまわっています。事態の解決にどうか、ご協力お願いできませんか? 」

 

「 そうか・・・ならば話しが早い。 」

 

「 え? 」

 

 サオリは倒れているヘルメット団員から、グレネードランチャーを奪い取って、マリーの目を見た。

 

「 奴らの卵らしきものがある場所を知ってる。一緒に来てほしい。 」

 

 

 

 

 

「 嘘でしょ? 」

 

 カヨコを驚きを隠せなかった。マジャバが、その場で脱皮を始めたからだ。そのずんぐりむっくりとしたバッタとカマキリが混ざった皮を脱ぎ、新たな姿へと、変貌する。

 

「 信じられん・・・! 」

 

 相沢も目を疑っていた。現れたその怪獣は、それまでのマジャバとはまるで違った。細い体格、発達した四肢と翅。

胸部の膨らみや、シュッとウエストに、昆虫らしい有機的な外殻。

紫色の瞳を覗かせる頭部もより小顔になっていた。

 

「 人間? 」

 

「 似ている。農薬がそこまでの変化を齎したというのか!? 」

 

『 キエェェエン! 』

 

 レイキュバスが火球を放ったその瞬間、マジャバの姿が消えた。

突然のことにレイキュバスは辺りを見渡すが見つけられない。後ろから腕甲の鎌での斬撃を受け、前のめりに倒れ込む。

 

『 グォォォォォオン! 』

 

 ギガザウルスも、アイスガスで凍らせようとしたが、即座に懐に詰め寄られ、回し蹴りを受ける。反撃に首で殴ろうとするが、マジャバは跳躍してそれを躱す。こうして後ろに回り込まれ、尾を掴まれて投げ飛ばされた。

 

「 なにアイツ。急に動き良くなってない!? 」

 

「 人間に近づいたか!? 」

 

「 え? 」

 

「 隊長が、前のマジャバに母性が芽生えていたといったろう。アイツはあの時のやつより、ヒトに近づいてる。 」

 

「 それってつまり・・・ 」

 

「 ほっとけば他のイナゴも、コイツのように、いやそれ以上に進化しかねない! 」

 

『 キエェェエン! 』

 

 レイキュバスはハサミを振り下ろしてマジャバに殴りかかる。しかし、それは容易く躱され、パンチを二発受けて、腕を掴まれて、投げられてしまう。

そのすぐに立ち上がるものの、目にも止まらぬ速さで連撃を受けてしまう。

 

「 レイキュバスを下げろ!このままじゃやられる! 」

 

「 戻って、レイキュバス! 」

 

「 ギガザウルス、お前もだ! 」

 

 二人はバトルナイザーにそれぞれの怪獣を戻した。

 

「 アイツ、あんなに素早くなるなんて・・・ 」

 

「 だが攻略法がないわけでは・・・あれは! 」

 

 相沢は、地面を揺さぶるほどの音を耳にした。なにかが迫ってくるとだんだん大きくなるその足音のする方位をみると、それはいた。

マジャバを見下ろす巨躯。ゴリラのようなナックルウォークで歩むそれは、その体毛と立派な二本の牙から、氷河期を代表する古生物、マンモスを思わせ、その気迫たるや、まさに威風堂々という言葉が形になったかのようだった。

外では同族が、アマゾンの環境回復に貢献している。

 

『 パオォォォォォォォオオオオ!! 』

 

 タイタヌス・ベヒモス。相沢やカヨコの組織のつけた二つ名は、『 巨神獣 』。

三月ほど前に覚醒し、アビドスを緑化し始めた彼は、今自身の領地を脅かす、異形の怪物と対峙していた。

 

 

 

「 ここだ。これはおそらくヤツのだ。 」

 

 サオリとマリーは大きななにかの巣の前にいた。巣には複数の卵があり、どれもかなり大きいサイズだ。その証拠に卵を守るように、イナゴたちが飛び交っている。

マリーは早速写真を撮って、モモトークでミネに送った。

 

『 間違いありません。マジャバの卵です。今回のマジャバはより高度に進化しているとカヨコさんから効いています。世代を経てより知能が上がったらそれこそ手がつけられません。 』

 

『 では・・・ 』

 

『 早急に破壊してください。私の方もようやく準備が整いました。 』

 

「 破壊してください。お願いします。 」

 

「 了解。 」

 

 サオリはグレネードランチャーを構え、引き金を引いた。

 

 ポンッ!

 

 という、いい音をならして、曲線を描いて飛んだ弾が巣を爆破した。

その瞬間、巣から毒ガスが噴き上がる。

サオリはマリーに離れているよういい、ヘルメットをかぶって、次の巣を爆破する。

次、また次と、歪んだ命の根が絶たれていった。

 

 一方、ベヒモスは苦戦を強いられていた。体格とパワーで勝るが、スピードにおいて、マジャバは圧倒的であった。ヒットアンドアウェイの戦法を取るマジャバに殆どの攻撃が命中せず、さらにイナゴが飛び交っていることで、視界も悪い。殴られ、投げられ、顔にキックを受けて、倒れ込む。ついでに畑が土を巻き上げ、崩れた。

 

「 ベヒモスを援護しろ、ナース! 」

 

『 ギィィクゥアァァ! 』

 

 ナースは破壊光線を発射してマジャバを攻撃した。不意打ちを喰らったマジャバはナースに目を向け、飛翔しようと翅をカサカサと震わせ始めるが、その瞬間、視線に離れた場所から煙と毒ガスが混ざり合って立ち込めているのがわかった。

卵になにかあったことを悟ったマジャバはすぐさま駆けつけようとしたが、グサリとその身をなにかが貫いた。

鋭く尖った巨木のように巨大なそれはベヒモスの牙だった。深々と突き刺さったそれは彼女を絶命するまで離しはしなかった。

 

『 ギィィ!ギィィイ!ギィィイイ!! 』

 

 まるで我が子を守ろうと足掻くかのように傷口から血を流しながらマジャバは暴れるが、やがて力尽きた。さらに追い打ちをかけるがごとく、イナゴたちにもその命に引導を渡される時が来た。

 

相沢の個体とは別のナースが飛来する。その頭部には、ヘルメスの杖をモチーフにした天輪のマークが刻まれている。平和や医学の象徴だ。

 

「 隊長! 」

 

「 お待たせしました。中和剤の散布を開始します! 」

 

 ミネのナースの下から、白い粉のようなものがばら撒かれると、それを浴びたイナゴたちは力を失い、バッタなだけにバタバタと倒れていった。

 

「 既に他の自治区にもお配りしております。蝗害は、直に収まるでしょう。 」

 

「 やったね。 」

 

「 一時はどうなるかと思った。 」

 

『 パオォォォォォォオオオ!! 』

 

 イナゴたちが倒れていく様をみて、ベヒモスは自身の勝利を確信し、勇ましく雄叫びをあげた。

そして、ミネのいっていた通り、ミレニアムやトリニティは、中和剤の散布を開始して、イナゴの群れを駆逐。事態は丸く収まる事となった。

 

 

 それから一時間ほど経ったころ。

 

「 やはり、良い気はしませんね。 」

 

 夕焼けが差す中、ミネは動かなくなったマジャバを見つめていた。相沢は、彼女の隣に立ち、サクラコやマリー、カヨコはそれを見守っている。

 

「 勝手にばら撒いた猛毒から生きながらえようとしただけなのにな。 」

 

「 あの時と同じですね。いえ、あれよりも酷い。 」

 

「 この姿が、ですか? 」

 

「 ええ。彼女は人間の撒いた毒によって、こんな姿に成り果てた。似ていますよね。彼女たちを唯のイナゴではなくした人間に。卵を割られた時、またしても彼女はそれに駆け寄ろうとした。あの、オーストラリアの時のように。 」

 

「 ある意味で、人間に近づいた、命だったのかもしれませんね。 」

 

「 それ故に、許されない命でもあります。だから排除せざるを得なかった。 」

 

 マリーも、何処か寂しげにそういった。

 

「 許してください。私たちも、生きねばならないのです。 」

 

『 バトルナイザー、モンスロード! 』

 

 ミネはバトルナイザーから怪獣を召喚した。

マジャバを挟んで向かい合うように立っているそれは、複数の怪獣が合体したような風貌をしていた。

ミネにとっては、長年の相棒だ。

数々の戦場を共に戦い抜いてきた。

そう、あのオーストラリアでも。

 

「 タイラント、弔ってあげてください。 」

 

『 フィィイイイ!! 』

 

 暴君怪獣タイラントの口から放たれた火炎が、マジャバを包んでいく。その毒で満たされた呪われた身体を、紅蓮の焔が浄化していく。

 

「 イツク。 」

 

「 なんだ、カヨコ。 」

 

「 マジャバは、悪かったのかな? 」

 

 カヨコのこの質問に、相沢は重々しげにこういった。

 

「 悪くはないさ。唯生きようとしたんだ。どんな生物にも許されたただ一つの特権だ。

悪いのは、自分たちの都合で生物や自然環境を振り回す、人間だろうよ。 」

 

 相沢は、人類の哀れな被害者を冥福を祈りながら、その身を焼き焦がす焔を見つめていた。

 

 

 

 

 

 怪獣紹介

 

巨神獣 ベヒモスⅡ

 

身長 115m

 

体重 9万3千トン

 

 ブラジルで目覚めたタイタンの同族。アビドス砂漠で覚醒して以来、そこを住処として緑化し始めた。

性格は同族のベヒモス同様温厚であるが、外敵には持ち前のパワーと巨大な二本の牙を武器に立ち向かう。ちなみにオス。

 

 

昆虫怪獣 マジャバ

 

身長 55〜78m

 

体重 5万5千〜7万5トン

 

 禁止農薬オルガノPCBにより、イナゴが突然変異を起こして巨大化した怪獣。両腕に鎌を備えたりカマキリに近いフォルムをしており、口から毒ガスも吐く。

突然変異によって食性が変わっており、肉食性になっていて、オルガノPCBも摂取する。

以前、オーストラリアにも現れたが蒼森ミネを中心としたチームにより駆除された。キヴォトスに現れたマジャバはより性質が変化しており、オスのいらない単為生殖となっている。そのため、一体でも残っていると、どんどん増えていく。

 

 

昆虫怪獣 シンマジャバ

 

身長 60m

 

体重 5万8千トン

 

 マジャバが脱皮し、さらなる変化、基進化を遂げた姿。四肢が発達し、より洗練され、ヒトの女性に近い、グロテスクながらどこか美しさを感じさせる外見となった。

マジャバの時のように毒ガスを吐く他、発達した手足や翅を使った高速戦闘を得意とする。

その姿はまさに、人間の業そのものか。しかし、その存在は間違いなく、自然環境に悪影響を及ぼし、王の目にとまれば、駆逐されるばかりだろう。

 




 ということで、今回はウルトラマングレートに登場した、マジャバをメインにした回。
ついでにベヒモスも登場させました。せっかくなんでね。シンマジャバはオリジナルです。これくらいやったほうが、
「 人の業! 」な感じがするので。
察してると思いますが、カヨコやミネは実はかなり歳いってます。
あとアビドスとカイザーが壊滅した理由は、後々。
次回は多分、ユウカの話しになるかな。一応、主役なんでね。
ちなみにマジャバの単為生殖の設定もオリジナルです。
元ネタは「 セーヌ川の水面の下に 」というサメ映画。
突然変異で単為生殖になったサメが増えに増えまくってオリンピックでお祭り騒ぎの人間たちを喰い殺しまくるという映画です。
面白いからオススメします。何分サメ映画な上、ホラーテイストなんで人は選びますが。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。