ミレニアム自治区自然保護区域。以前アーストロンが這い出た大穴へのダイブが決行されようとしていた。
穴の周囲には、ヘリ数台が待機しており、その前には改造HEAVEこと、ビートル二機が今正に飛び込もうとしていた。
一号機には、操縦士は白石ウタハが担当し、
早瀬ユウカ、小鉤ハレ、そして熱中症から回復した角楯カリン。
二号機には、RABBIT小隊の面々が搭乗しており、操縦するのは、RABBIT3風倉モエである。
前日にはタイタンの一体、海魔獣スキュラの襲来という思わぬハプニングがあったものの、こうして役者を誰一人欠かす事なく地底探索に踏み切ることが出来ることに、ユウカは安堵していたが、やはり不安因子がちらついた。
急速に発展し、ゲヘナとトリニティという2代校に肩を並べるほどの規模を誇るミレニアムであるが、それ故に敵も多い。先生の死を受けバトルナイザーの流通に制限を設けたことに不服な両校をはじめとする他学園の勢力を警戒せねばならない。また頼りにもならない連邦生徒会も信用ならない。
その為ユウカは、散開するヘリのパイロットたちにこう告げた。
「 なにかあったら無線で伝えなさい!他学園の連中、それこそ小うるさいトリニティやゲヘナが来たら、死ぬ気で迎撃すること。ないと思うけど殺しても構わないわ!連邦生徒会とヴァルキューレも通しちゃ駄目よ! 」
『 わかりました。ご武運を! 』
「 それじゃ、エンジン起動するよ。 」
「 ようし、こっちも。 」
ウタハとモエは車のキーを差し込むがごとく、ビートルを動かし始める。いくつものメーターが光り、機体の状態を教えてくれていた。
「 出力安定、いけそうだ。 」
どうやらマシンの調子は良好なようだ。銀色に銀の赤の挿し色の機体が浮かぶ。いよいよ本番、地底への突入である。
「 出発! 」
二機のビートルが、大口を開けた穴の中へと潜っていく。土に覆われた暗闇の中で、そこらがスパークしており、いかにもヤバいなにかがあるようだった。いや、実際にこの先には、人類が発見してから、5%しか調べられていない、未開の地、怪獣たちの故郷があるのだ。
「 グヘヘ、楽しみ。 」
「 地下空洞がですか? 」
「 違うよ、自由落下。そのまま落ちちゃったら、どうなるだろうねぇ。 」
「 モエ、本気でいってるのか? 」
「 冗談だよ。安心して。死ぬ気で舵とっから。 」
「 うぅ、不安・・・ 」
RABBIT小隊が破滅願望持ちのモエのジョークに冷や汗をかく中、一号機内のユウカはウタハと話し始めた。
「 ウタハ先輩。 」
「 なんだい? 」
「 一つ気になることがあって。 」
「 今か?いってみろ。 」
「 ノアの様子が可笑しいんですよ。地下空洞に行くっていい出したら、引き留めようとしてきて。これまで怪獣騒ぎに駆り出すときはなんも心配してなかった癖に。 」
「 ある種必然だ。これまでとは危険度がダンチだからね。でも、彼女に不穏な気配がするのは、同意する。 」
ウタハもどうやら、最近の生塩ノアの動きに違和感を覚えているようだが、それについて談義する余裕は、皆無に等しかった。
ビートルの前方に、青白い門のような光。発生要因は磁場や磁力の作用によるものか、何らかのエネルギーが働いているのかは不明だが、その様まさしく異世界への入り口といったところか。
「 さぁ、ここが正念場! 」
二機のビートルが、ゲートを通り、さらに奥に進んでいく。その先に一筋の光明が。
どうやら終点が近いようだ。
「 身構えて。反転が来るぞ! 」
穴を抜けたビートルたちは、まるで地面に吸い寄せられるように、落下していく。これが、重力の反転現象であるようだ。
「 うわぁぁぁぁぁぉあ!! 」
思わずユウカやハレそれに二号機のミユやミヤコは叫んだ。このままでは一貫の終わりであるが、それはそこらのビークルに限る。この機体はそれらとは一味違う、重力エンジン搭載機である。
「 しっかりつかまって! 」
ウタハとモエは舵を切って、ビートルの上体を起こし、なんとか自由落下を防いだのだった。
「 はぁ、はぁ・・・話しには聞いてたけど、いざ体感するとね・・・ 」
「 来るものがあるわ。死ぬかと思った。 」
ハレとユウカは過呼吸になりながらも、機体内部から、外の風景を見渡した。
一言でいえば、壮観である。おおよそ見たことがない木々が生い茂り、同じくみたことがない、翼竜。ラドンのようなプテラノドンというより、それよりも遥かに小型なディモルフォドンに近いそれが飛んでいる。
「 凄い・・・ 」
「 見て!あれ! 」
ユウカが指差した方向に、早速巨大生物を見ることとなった。
ケロイド状の肌に、後頭部の角。彼女もよく知る、それどころか追い回された怪獣だ。
「 アーストロン・・・ 」
この地下空洞こそ、彼らの生まれ故郷であると知らしめるようだった。普段はそこまで積極的に外敵を襲わないのかそれとも、前の個体より落ち着いているのか、凶暴怪獣の別名に反しアーストロンは目にしたビートルにこれといって攻撃を仕掛けては来なかった。
勿論、顔を出しているのはアーストロンだけではない。
膝をついた四足歩行で歩く怪獣『 パゴス 』。
背中に黄色いウロコを背負った怪獣『 ネロンガ 』。
二体の巨躯が、森林の中からその姿を現していた。彼らは自分たちを視ている気配に気づき、その後をついてくるではないか。RABBIT小隊はその様子を訝しんでいた。
「 な、なんでしょうか? 」
「 好奇心だな。敵意がない。ここで暮らしてる彼らにとってHEAVは珍しいんだろう。 」
「 へへ、可愛いもんじゃない。 」
「 で、でも、怪獣は怪獣だよ? 」
「 確かにそうだな。モエ、もう少しスピード上げれないか? 」
「 はいはい〜。 」
ビートルは速度をあげて、二大怪獣を追い上げていった。
パゴスとネロンガはだんだん遠くなっていくビートル二機に「 ? 」となり、互いの顔を見合わせるのった。
「 じゃあの。縁があれば、また。 」
モエはそういいつつ、操縦桿を握りより一層操縦に意識を向けた。
一方の一号機では、ユウカやハレが周囲を見回していた。その様子をカリンは不思議がっていた。
「 何を探してる? 」
「 こないだでた怪獣、覚えてる? 」
「 覚えてる。暑くて死にそうだった。 」
「 なんでもその怪獣、地下で暮らしてたらしいんだけど、人間に追いやられたんだって。 」
「 なるほど。で、その痕跡を探してる。 」
「 そう。聴くところだとカイザーの連中らしいから、何処かに奴らの張ったテントの残骸かなにかあるんじゃないかって思って。 」
「 それが怪獣災害頻発の原因? 」
「 それだけとはいえないけど、関係してると私は思ってる。 」
「 ユウカ、アレを見ろ! 」
ウタハの前方では、二体の怪獣が鎬を削っていた。
片方はコブラのフードがコウモリのような膜に置き換わったような空飛ぶ大蛇。
もう片方はオーソドックスな体格に、三日月状の頭をした、三本角の恐竜といった風貌だ。大蛇が恐竜の胴を締め付け、首にも巻き付こうとするが、そちらと負けじと暴れ抵抗している。
地下空洞ではこのような生存競争が日夜繰り広げられているのだろう。
「 ワーバット・・・ 」
「 地下空洞有数の危険生物だったな。あっちの恐竜のほうが体格差で負けてる。 」
『 キシャャヤオオォン!! 』
古代怪獣ゴモラ。この恐竜のような怪獣の名前だ。学名をゴモラザウルスといい、絶滅したかと思われていたが、近年、発見されるケースが増え、各国によって保護活動が行われている。そんな事もあって現代の人々とっては、ゴジラと同じ位身近な怪獣である。
必死に身体を揺らし、ワーバットに首を取られまいと足掻いたゴモラであるが、とうとう疲れ力尽きたのか、その勢いがどんどん弱まっていく。
ワーバットはようやく首に巻き付き、その巨大な皮膜で、ゴモラの顔に蓋をしてしまった。
こうしてより窒素させやすくするわけである。恐ろしいながらも一同は感心させられた。
その皮膜はレザーウィングデスマスクといい、この相手に巻き付く技はボーンクラッシャーと名付けられている。
見るもの誰もがワーバットの勝利を確信していたが、思わぬ光景が次の瞬間に広がることとなる。
ワーバットの上半身が吹っ飛んだのだ。
なにが起こったのか分からず唖然とする一行の前に、あの恐竜が勝利を雄叫びを上げ、元気な姿を見せた。
窒息し、息絶えたかに思えたゴモラであったが、実のところはこれを狙い、あえて弱ったフリをしていたようだ。しかし、あの現象は一体何だったのか。ひとりでにああなる筈などない。ゴモラがなにかしたらしいことは怪獣の知識に乏しいユウカにもわかった。
「 あれは? 」
「 超振動波。 」
「 え? 」
「 ゴモラは角から振動波をだして穴を掘る。そしてこれを応用すれば、尻尾に並ぶ、強力な武器になる。 」
その疑問に答えてくれたのは、丁度真後ろの席に座っていたハレだ。彼女が知っていたのを意外に思っていたが、実のところはなにもおかしなところはなかった。彼女たちヴェリタスはハッカー集団であり、ハッキングの他にはゲームやネットサーフィンもする。それでゴモラの生態を知ったのならば、合点がいくのだ。
ユウカはこれを聞いて、ハレが何処まで怪獣のことを知っているのかを把握しておくことにした。
「 ネットで知ったんでしょ。何処まで知ってる? 」
「 こないだのアーストロンから芋づる式に。
アーストロン→デマーガ→ゴメス→リトラ→ラドン→ゴジラ→モスラ→地下空洞→ゴモラって感じ。他にもある程度は知ってる。 」
なるほど。何かを検索していると、そこからだんだん脱線していく感じかとユウカは納得した。
では一つ質問をしてみることとした。
「 こないだバルタンをやっつけてくれた、白黒の怪獣。あれなんていうの? 」
「 エレキング。別名宇宙怪獣。ピット星って星の生まれだって。 」
「 不味いぞ。お話してる場合じゃないかもしれない。 」
ウタハは焦っていた。彼女らを乗せたビートルがいうことを聞かなくなり始めていたのだ。最終チェックはした。警備もユウカにもいつもより多く付けさせた。勿論あの怪しいセミナーの秘書も入れていない。だが、なぜかこのエンジントラブルが起こってしまっている。いや、これは機械の不調ではない。なにかに引き寄せられている。
「 あれは!? 」
一号機の四人はそれを見た。黒く硬そうな甲殻の二足歩行をしたクワガタのような怪獣。ビートルがまるで磁石に引っ付くかのように引かれている。
「 アントラー! 」
「 どんな怪獣? 」
「 なんでも引き寄せるパワー型。このままじゃみんなやられる! 」
『 キシャアァァウ!! 』
「 クソぉ!! 」
ウタハはなんとか振り切ろうと前進させるが、アントラーの発する磁力から逃れることが出来ず、どんどん距離が狭まっていく。
「 ミサイル積んでるんでしょ!? 」
「 前方に回らなきゃロックオンできない上、あちらに向くにはいちど舵を後ろに向けなきゃならない。そうしたらアイツに捕まってしまう! 」
「 そんな! 」
このままいけば、あの大顎の餌食となって四人まとめて死ぬだろう。ウタハはそれを回避すべく二号機に連絡を取った。
「 モエ!どうにかならないか!? 」
「 したいにはしたいけどさ・・・ 」
モエも必死に逃れようと同じくスティックを前面に押し出してるが、二号機も引き寄せられてしまっているようだ。
「 どういった原理ですか!? 」
「 知るわけないだろそんなこと! 」
「 うぅ、引っ張られる。私たち、みんな食べられたゃうんだ・・・ 」
「 うへへ、どんな風にいただかれるんだ〜? 」
「 頼むから今は真面目にしてくれ! 」
『 キシャアァァウ! 』
ビートルとその乗組員たちに、アントラーの顎が迫る。このままいけば、逃れること敵わず、八人の少女たちは、この怪獣の糧として、血となり肉となるだろう。
まさに絶体絶命である。そんな中、ユウカはなにかを思い出した。そして弄る懐の中。
彼女には、心強い味方がいる。
こうして取り出したるは、青と白の端末。
『 ピィィイギャォォォォオン! 』
中の怪獣は待ちわびたぞとばかりに吠える。意を決したユウカはこの窮地を脱するべく、彼の退屈を紛らわせる事とした。
「 行きなさい! 」
『 バトルナイザー、モンスロード! 』
少女の掲げたバトルナイザーから、光が飛び出し、巨大な怪獣となってアントラーを蹴り倒す。
不意討ちを喰らったことで、磁力がなくなり、自由になったビートルが距離をとって着陸する。
ユウカは咄嗟にベルトを外して、外にでた。
彼女の呼び出した怪獣は、蟻地獄怪獣と相対していた。
その身はクリーム色の蛇腹状のウロコに覆われ、その顔はさながら髑髏を思わせる。
彼の闘志に呼応するように、ユウカは叫んだ。
「 戦えレッドキング! 」
『 ピィィイギャォォォォオン!! 』
雄叫びをあげ、怪獣はアントラーへと接近し、パンチを浴びせ、さらにそこからタックルを喰らわせる。怯んだところをハサミを掴んだ。アントラーもなんとか最大の武器を失うという事態を防ごうと足掻くが、その頑張り虚しく、バキバキと音を立てて、無惨にへし折られる。
髑髏怪獣レッドキング。
恐竜に近い生物群、髑髏竜の末裔。その一番の武器はこの怪力である。喪失感と苦痛に苛まれるアントラーに、その剛腕による打撃のラッシュをお見舞いし、ダウンしたところに首筋に腕を回して持ち上げると、仰向けにドロップし、顔面から地面に叩きつけた。
プロレスの技の一つ、ブレーンバスターである。
何故これを一介の怪獣、それもお世辞にもオツムがよろしくない筈のレッドキングが知ってるのかは不明だが、とにかく彼はここからフィニッシュに入ることとなる。
「 トドメよ! 」
ユウカの叫びも聞き、丁度よくその場に転がっていた大岩を両手で持ち上げ、悶絶するアントラーに叩きつける。
何度も何度も、息の根が止まるまで、レッドキングはその甲殻を潰し続けた。
「 あ、あぁ・・・ 」
「 む、惨い・・・ 」
一同は目の前に広がる残虐な展開に、背筋が凍っていた。レッドキングと繋がっているユウカ唯一人を除いて。
やがて、アントラーは息絶え、動かなくなった。
『 ピィィイギャォォォォオン!! 』
血に塗れたレッドキングは勝利の雄叫びをあげた。ユウカは凄惨に殺されたアントラーを見て、脅威は去ったことを確信する、が。
『 バウワウゥゥ!! 』
喜ぶ暇などない。この地下空洞に、安全な場所などないのだから。次なる脅威は早くも姿を現した。彼女にとっては、先ほども顔を合わせた、因縁の相手だ。相沢と会ったきっかけも、この怪獣だ。
「 アーストロン! 」
「 こっちに向かってくる! 」
「 レッドキング!岩を投げつけなさい! 」
『 ピィィイギャォォォォオン!! 』
ユウカはレッドキングに指示を出した。彼女はアーストロンがマグマ光線を放てることを知っているので、このまま接近すればその餌食になると考え、アントラーのすぐそばに置いてあった岩を投げることを思いついたのである。
かくしてレッドキングはその姿をよく知るものにはお馴染みの岩投げ攻撃を繰り出し、案の定アーストロンはマグマ光線を放ったが、岩に命中し、それが細かい小岩や土煙になって視界をふさいだ。前が見えず怯んだアーストロンの隙を逃さず、レッドキングは全体重をかけてドロップキックで、アーストロンを地面に倒す。その様はまるで、テキサスの空を翔けるコンドルを思わせた。
立ち上がったアーストロンはレッドキングに殴りつけるが、大したダメージにならない。
カウンターに腹部に強烈な一撃を二発程貰い、うずくまったところを、首を両腕で掴まれ、圧迫される。
レッドキングの全力のパンチはダイナマイト一万トンに匹敵する。それほどの威力を生む腕力で締められれば、ひとたまりもない。
アーストロンは口から泡を吹くほどに衰弱し、やがて事切れた。レッドキングが手を離すと、その身体は力なく地面に伏すのだった。
「 凄い・・・ 」
アントラーとアーストロン。連続して二体の怪獣を特に苦戦もせずに下した事実に、レッドキングを操るユウカは驚きを隠せなかった。
それだけ、この怪獣、自身の相棒が強いのだ。
そんな彼女たちの元に、また新たな怪獣が現れた。
『 ヴァアアアァ!! 』
その姿を一言で表せば、「 オッサンヅラのエビ 」だ。なんともいえぬ表情をしたシャチホコを思わせる体形に、鞭のような尾がしなる。
その怪獣を、サキはこう呼んだ。
「 ツインテールだ・・・! 」
「 ツインテール・・・? 」
ユウカは思わず、自身の髪に触れた。彼女の髪型も丁度、二つに結ったツインテールだ。それを見てカリンはサキに尋ねた。
「 そっちの元ネタ? 」
「 そうらしい。 」
「 ふ~ん・・・!もう一体来た。 」
『 ヴァヴゥグゥゥウ!! 』
ツインテールに続き、さらなる怪獣が吠える。岩石のような体表に、赤い瞳を覗かせ、両腕はムチのようになっていた。
「 グドンだ。ツインテールを食いに来たのか! 」
サキの言う通り、その怪獣はレッドキングを横目にツインテールに向かい、そのムチを振るい攻撃し始めた。
ツインテールも負けじと尾の先の毒針で迎撃する。
地底怪獣グドン。
中生代ジュラ紀に生息していた怪獣であり、同じ時代に生きていたらしいツインテールを主な捕食対象の一つとしている。地底怪獣という名前にしては地面を掘り進むのに適していない腕をしているように見えるが、これを振動させて大岩を砕き、生じた砂の中を泳ぐのだという。
先のゴモラに比べると、あまり合理的に見えないが、このような進化もまた、生物多様性から来る、生命の神秘の一端であろう。
どうあれ、この二大怪獣を放っておけば、探索チームが危険に晒されることに変わりない。
故にユウカは、この二体も排除することとした。
「 やるわよ、レッドキング! 」
『 ピィィイギャォォォォオン!! 』
勢いよくレッドキングは二体に向かって走り、その途中で拳を作った両腕を開いた。
ダブルラリアットだ。ものの見事にグドンの首元ととツインテールの尾の根元に命中し、両者をダウンさせた。その時、ユウカとレッドキングはツインテールを見て、なにかを思いついた。
「 アンタもやられてばかりは嫌でしょ? 」
ツインテールはそのクリーム色の両腕に尾を掴まれ、持ち上がられ、グドンに叩きつけられる。
『 ヴァアアアァ!? 』
『 ヴァヴゥ!? 』
『 ギャォォォォオン! 』
こん棒の如く叩き下ろされたツインテールは痛みに悲鳴をあげるが、レッドキングは「 我慢しろ 」とばかりに低く吠えて、さらに何度もグドンに叩きつける。
程よいところでツインテールを投げ捨てて、うつ伏せになっているグドンに馬乗りになった。その両角を掴み、引っ張り始めた。グドンは察する。自身の背骨を折りにかかっていると。
キャメルクラッチ。
やはりプロレス技だ。必死に堪えるグドンであるが、どんどん意識が遠のいていく。
やがて血反吐を吐いて、その目は生気を失った。
レッドキングはそれを見てグドンを解放する。
ツインテールはというと、ダメージを押して、その場をなんとか逃走していた。
今度こそ脅威が取り除かれたことを確認したユウカは、レッドキングをバトルナイザーに戻す。
「 可哀想・・・ 」
「 え? 」
残虐なレッドキングの戦闘スタイルに思わず自身の隣にいた仲間の一人がこぼした一言に、ミヤコは驚愕した。目の前に起こった怪獣たちとレッドキングの戦いは、自分たちの身を守る為のものである為、誰一人として相手になった怪獣を気の毒に思うものはいたが、憐れむものはいなかった。そう、彼女、RABBIT4霞沢ミユを除いて。
「 私たちの命が脅かされていたのですよ?
可哀想なんていってられないのでは? 」
「 そうだミユ!甘いことなんていってられないんだぞ!? 」
「 わかっているけども・・・あそこまで酷くやる必要あったのかな?私たちは余所者なんだよ。怪獣だって、自分たちの住処に勝手に入ってきた私たちに怒ってでてきたんだと思う。
私たちが街にでてきた怪獣を倒してるのと、なにが違うのかな。 」
ミユのこの一言は一理あった。これまでキヴォトスには、幾度となく怪獣が現れ、それを各自地区が撃退、駆除していた。それらはすべて、自分たちの暮らしを守るためであった。それがこの地下空洞では逆の立場となるのである。
人間は、余所者。外来種。それは事実だ。そんな後ろめたさもあってミユにはレッドキングの残虐ファイトが、より酷く見えたのだ。
「 じゃあアイツは?私たちじゃなくてツインテールに向かってったろ。 」
「 でもツインテールは私たちを狙ってたでしょ? 」
「 ならお前は、怪獣に食われていいっていうのか!? 」
「 逃げるって手段もあるでしょ? 」
「 逃げても、そこにもいるだろ。ここは怪獣無法地帯なんだぞ!? 」
「 それでも無用な殺生は慎むべきじゃない? 」
「 ミユ!いい加減にしてください! 」
「 殺しを正当化したら、先生と殺した奴らと同じだよ!? 」
「 お前ギドラみたいなのにも同じこと言えるの!? 」
瀕死のグドンを指さして抗議するサキ、ミヤコ、モエに、ミユも反論する。口論になり始めたRABBIT小隊にウタハとカリンは危機感を覚えた。
「 不味いぞ。このままじゃ仲間割れだ。 」
「 死亡フラグ・・・ 」
このまま意見の違いでRABBIT小隊が仲違いを起こし、連携を取れなくなって全滅するという最悪の事態が、ウタハの脳裏に浮かぶ。
それをなんとか避けるべく四人の間に割って入ろうとした時、ユウカが彼女の前に立ってこういった。
「 郷に入っては郷に従え。私の好きな言葉よ。 」
「 え? 」
突然のこの一言に、RABBIT小隊一同唖然とする。
「 この地下空洞は独自の生態系が広がってる。そうよね? 」
「 う、うん。 」
「 だから幾つか人類が発見しても、どんな怪獣がいるのか把握しきれていない。つまり私たちはほかの誰も知り得ない生き物と遭遇する可能性があるし、それが友好的かどうかなんて知らなくて当たり前よ。だからこそ、私たちは降りかかる火の粉を防がねばならない。サキの言う通りこれは避けては通れない。ここが弱肉強食の世界なら、自分たちもこれに従いましょう。だからといって、無益な殺生もしない。
でいいわね? 」
その場の全員、ユウカの言葉に静かに頷く。ミユも納得せざるを得なかった。
冷静さが戻ってきていた彼女は、心の中で自分を殴りたくなっていた。
あの凄惨な光景を目の当たりにしたから忘れていたが、怪獣とは基本的に、性質の善し悪しに問わず、人間に危害を加える存在だ。奴らにキヴォトスでならまだしも、この地下空洞で憐れみなど向けていられる余裕はないだろう。
仲間に口喧嘩になりかけた自分の行為は部隊を死に追いやりかねないものだとミユは自覚した。
「 ミユ。 」
そんな彼女が自責の念に囚われかけていることに気づいたミヤコは彼女をフォローするようこういった。
「 誰かを思い、命を尊ぶ考えを捨てろとは言わない。それはきっと私たちが私たちである為に必要なものなのですから。 」
SRT特殊学園閉鎖後、彼女たちRABBIT小隊は母校の復興を目指して活動している。その為自分たちの正義を曲げることなど、あってはならないとミヤコは思っていた。ミユの優しさも必要なものだと感じていた。自分たちは、心なき道具ではないのだから。
ユウカは、力なく呼吸をするばかりのグドンに語りかけた。
「 ごめんね。ご飯食べたかっただけなのに。こんな目に合わせて・・・ 」
『 ヴァヴゥ・・・ 』
「 一緒に来ない? 」
『 ヴゥ・・・ 』
答えは、イエスであるらしい。グドンの身体が光り、バトルナイザーに収まった。
ユウカの2体目の怪獣だ。
それを見ていたウタハは、辛気臭くなった空気を変えるべく、こう切り出した。
「 じゃあ、発進しようか。 」
こうして一同はビートルに乗り、その場を後にした。
一方、ミレニアムサイエンススクール。
「 はい。いってしまいました。すいません、止められませんでした。 」
生塩ノアは、スマホで誰かに連絡を取っていた。相手はユウカたちの地下空洞探索を快く思っていないようだ。
「 はい・・・はい。わかりました。逐一連絡します。 」
ノアは通信を切った。その時である。
「 誰と話していたんだ? 」
「 ・・・! 」
低く、男性的な声。振り向くと、そこにはミレニアム生でないはずの銀髪に黒いメッシュの角の生えた女、そして見慣れぬ男が立っており、その狂気を宿したような目でジッと刃物を突きつけるようにノアを見つめていた。
次回、未定!でも書きたい。なに書こうか?顔芸の凄い『 娘を愛している 』イブキのご家族の話でも書くか、それとも素直にミレニアムの話しを描くべきか。