東方二次SS ふたつのいろ Lyric restriction 〜永〜 作:赤井せりか
全員の視線が
両目を閉じてお茶をすすっていた彼女はフンと鼻を鳴らすと気怠げに左目を開いた。
紅い瞳が偽りの月明かりの下、鈍く光る。
「下らない茶番だ。
―――結局、我らは踊らされていたということだな、咲夜」
「心外ながら。そうなりますわ」
傍らに控える
「蓬莱人の勝手に、でございますね」
「ああ、それと―――」
レミリア・スカーレットは手にした茶碗を突きつけた。
「そこで嗤っている女狐らに、だ」
言って、右の瞼もゆっくりと持ち上げる。
紅の双眸が射抜いたのは、ひとり縁側に腰掛ける古の大妖怪だった。
レミリア・スカーレットは小さく溜息をつくと、
「
「左様でございますお嬢様」
咲夜が大きく大きく頷いて主の言葉を肯定する。
そのやり取りにアリスは首を傾げ、
「ノーカウント?」
西行寺幽々子と魂魄妖夢は何事かヒソヒソと言い合い、
「あっ、ねえ妖夢きっと彼女は……」
「シッ、幽々子さま、本当の事を言っては失礼ですよ!」
蓬莱山輝夜と
「流石ね永琳」
「流石お師匠」
「―――あら?」
口の端を吊り上げた。
「あなたたち、あの薬師に負けたのね?」
不機嫌そうに溜息をつくレミリア・スカーレット。
「だからあれはノーコンテストだ。弾幕ごっこのつもりが反則技を使われたからな」
「反則技?」
アリスはそれ以上首を傾げたら頭がゴロンと落ちるのではないかと言うほどに首を傾げる。
レミリア・スカーレットは牽制するようにアリスをジロリと睨め付けた。
「倒しても倒されない。殺すつもりで放ったスペルカードでも死なせられない。常時回復と自動蘇生。あんな能力をノーコストで発動だなんて」
「文字通り、不死身でしたわね」
「そう、まさに不死身。しかも生半可な不死身じゃない。正真正銘、完璧な不死身だ。言い換えるなら、あれはもはや不老不死だ」
腕組みをして唸るレミリア・スカーレット。そんな彼女に
「あら、不老不死は吸血鬼の専売特許なのではなくて?」
フン、と鼻を鳴らして吸血皇女はそっぽを向く
「……私とアイツでは不死性が全く異なるのだよ」
「何がそこに違いがあるというのかしら」
「全く全てだ。だがそれを教えてやるほど私はお人好しではない。なんせ私は
「流石ですお嬢様。もう一枚クッションをお持ちいたしてます」
表情を変えずにパチパチと拍手をする十六夜咲夜。
「よし、咲夜これで通算9枚だな?」
「ハイ。あと1枚でドキドキ・ワクワクの幻想郷ツアーへご招待ですわ」
「フッフッフ。と、いうことだ」
誇らしげな吸血皇女。そんな主の様子に側に控えるメイドもまたどこか誇らしげだ。
紅魔館の住人以外は皆、怪訝そうな表情を見せる。
「……何が、と、いうことだなのよ」
アリスの呆れ声。
かちり。
時計の音が聞こえた次の瞬間、咲夜は何処から取り出したのかその手には1枚のクッションを持っていた。
「僭越ながら。
恭しくクッションを差し出すと、主はおもむろに立ち上がる。
「知らんのか?」
従者が丁寧に重ねたクッションに再び尊大な態度で座る吸血皇女。
「紅魔館で今流行りの、なあ?」
「ハイ。瀟洒な受け答えをした方に、クッション一1枚。それを10枚貯めるとドキドキ・ワクワクのご褒美をレミリア様より頂戴出来るのです。それこそが
「なんなのよそれ……」
わかったようなわからないような説明をされ、アリスは目が点になる。そんな空気を感じ取ったのか、レミリア・スカーレットは咳払いをする。と、いつの間にかレミリア・スカーレットの手にはワイングラスがあり、赤ワインが半分ほど注がれていた。
「ま、まあ紅魔館の住人以外には関係の無い話であったな」
レミリア・スカーレットは再び両目を閉じワインの香りを愉しむと、伏し目がちな表情でワイングラスをくるくると回す。一見すると優雅な振る舞いであったが、その頬に一筋の汗が流れていたのを、アリスは見逃さなかった。
「話を戻そう―――。
アリスも、西行寺幽々子も、魂魄妖夢も、生温い視線を大妖怪へと向けて頷いた。
予想通りの反応に小さく苦笑し、レミリア・スカーレットはワイングラスに浮かべた偽りの月ごとワインを飲み干す。そうして、空になったワイングラスを弄びながら言葉を続ける。
「まあ、細かくは聞かんよ。だから、それらも含めて、だ。それらも含めた全て、そして、我々が此処へと誘われた事。それら全てが
そこで一旦言葉を切ると、
バリィン!!
手にしたワイングラスを握り潰した。そのままガシャガシャと掌の中で粉々に砕けたグラスをさらに揉み潰す。
レミリア・スカーレットの小さな掌から真っ赤な血が滴った。
そのまま手を開くと、血混じりのガラスの破片が音を立てて地に落ちた。
「―――
さして慌てた様子も見せず、十六夜咲夜がハンケチを主へと差し出す。そのハンケチを手に取り軽く拭き取ると、先程までワイングラスだったガラスの破片に被せる。
ボッ!
紅く染まったハンケチは炎に包まれ、瞬時に燃え尽きて灰となる。
「全てがバラバラではあるが、そこの
灰の中からレミリア・スカーレットは、元通りになったワイングラスを拾い上げた。
「―――
その様子をアリスは目を丸くして見ていた。
(今のはどういう魔法!? それとも吸血鬼の特殊能力!?)
驚きを隠せないアリスに気づき、レミリア・スカーレットは口元が僅かに緩む。が、直ぐに表情を引き締めた。
「―――さて、
「ふふふ……」
妖しげに嗤う古の大妖怪。
「
立ち上がると、ゆっくりと歩き始める。
「
音も無く。滑るように。舞うように。
偽りの月の下、大妖怪はいつの間にか手にしていた日傘を開くと肩にかけてくるくると回す。
ステップを踏み、くるくると舞う。傘と同じようにスカートもくるくると舞った。
「
ぴたり、傘も、ステップも止める。
スカートもふわりと落ち着く。
レミリア・スカーレットは不機嫌に鼻を鳴らす。
「不本意な話だな」
レミリア・スカーレットの反応に、古の大妖怪は両腕を左右に大きく広げ、口を笑みの形に歪めた。
「全ては同じ事なのよ
貴女が
腕を組み、大きく息をつくレミリア・スカーレット。
「―――成程な。我らの能力では、あの薬師を完全に殺し切ることは難しいと」
「それは実際に弾幕ごっこを交わした貴女になら、理解できるでしょう?」
「まあ、それは良い。
そこな人形遣いも、亡霊の姫も、そして私も永遠を願ったというのなら
―――では、もう一度問うぞ古の大妖怪よ」
幼き
「
この
言って、指した指をパチンと弾く。
魔力が弾ける。
その指先には―――、
「―――獄符」
―――紅いスペルカード。
「 『 千本の針の山 』 」
宣言の瞬間。
大量のナイフ弾が、
続。