東方二次SS ふたつのいろ Lyric restriction 〜永〜 作:赤井せりか
Under the fake moon 〜異聞永夜抄〜 幕間
「〜♪」
月を見上げながらミスティア・ローレライが歌う。
ミスティア・ローレライは夜雀の妖怪。
歌で人を狂わせる程度の能力を持っている。
本人には狂わせている自覚があるのか無いのか。
まあ、深い事は考えていないのかもしれない。
いつもと同じ満月。
いつもと違う満月。
今宵はなぜだかいつもより楽しかった。
だから歌う。
……まあ、ミスティア・ローレライはいつだって楽しく歌っているのだけれども。
晴れの夜も、曇りの夜も、雨の夜も。
「ラララ〜今夜は〜♪ いつーもーよりーもー♪ 歌が、歌が響いてる〜♪ 気がする〜♪」
陽気だけれども、どこか調子っ外れのメロディライン。
月の夜も、星の夜も、闇の夜も。
悲しい歌は歌わない。
「さてと〜♪ 今夜はお客さんが少ないわ〜♪」
歌いながら傍らの屋台を見る。
ミスティア・ローレライが夜毎引いているおでんの屋台だ。
八目鰻の蒲焼きも扱っている。
その味は調子外れの歌とは違い、文々◯新聞のお墨付きを頂いた程。
紅白巫女や黒白魔法使いが呑み食いに来たこともあった。
紅魔館の瀟洒なメイドがおでんをお持ち帰りしたこともあった。
食いしん坊の亡霊姫がふらりと現れて全てを平らげられた事もあった(その日は開店と同時に閉店になってしまったのでお付きの半霊半人の庭師から何度も謝られたが、ミスティア・ローレライにとってはたまにはそういうこともあるかな、程度だった)。
最近は、新しく常連になった大きなリボンを付けた白髪の少女が、涙と焔と愚痴を散らしながらひとりで呑みにくることが多かったが―――、
「今夜は来ないな、あの子〜♪」
客が来ないなら来ないでミスティア・ローレライは歌っていれば幸せなので別段気にはしないのだが、
「どこか人の集まるところにでも行こうかな〜♪」
そんなことを
―――そう言えば、いつもだったら夜明けが来ていてもおかしくない。
空には、満月。
「……?」
屋台のおでんはグツグツと煮えている。
だいぶ、煮詰まっている気もする。
違和感を覚えるミスティア・ローレライ。
おかしいな?
うーん。
「ま、いっか〜♪」
3歩歩いたら、気にならなくなった。
「さてさて〜♪♪」
気を取り直してメロディラインを変えると、鼻歌交じりに屋台を引き始める。
前方に竹林が見える。
なんだか賑やかな雰囲気がある。
お祭りかな?
夏祭り?
そう言えばあの竹林にはあんまり近付いたこと無かったなぁ?
ふんふーん♪ と鼻歌交じりで思案するミスティア・ローレライ。
たまにはあっちの方にいってみようかな―――。