東方二次SS ふたつのいろ Lyric restriction 〜永〜   作:赤井せりか

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 Under the fake moon 〜異聞永夜抄〜 43

 

 己の胸を貫く銀の矢と、自分を見つめる蓬莱山輝夜の顔を見比べる。

 

 傷口からの出血は無い。だが、血液の代わりに霊力や魔力、妖力といった根源的な力が漏れ出ていくのを八雲紫は感じた。それらの力の散逸は、妖怪である彼女にとっては命が漏れ出ていくのと同義である。

 

 目の前の薄ら笑いを浮かべる月の姫を睨みつけつつ、胸に刺さった銀の矢を抜こうとするが―――、ビクともしない。

 ただの矢では無いことは最早明白で、自分に残された時間がそう長くない事も理解していた。

 

 そんな中で八雲紫は冷静に状況を整理しようとしていた。何処からとも無く飛来したこの矢。目の前の蓬莱山輝夜が何か行動を起こした素振りは全く見られなかった。否、素振りどころか魔力も霊力も、一切感じられなかった。無論、蓬莱山輝夜程の実力の持ち主ならば、或いは予備動作無しでこの程度の芸当を見せるかもしれない。

 

 だが八雲紫にはこの一撃を放ったのが蓬莱山輝夜だとは思えなかった。

 

 ―――不意に喉の奥から熱い塊が込み上げ、口の端から一筋の紅い血が溢れる。

 

 そんな八雲紫を見て蓬莱山輝夜は嗤う。

 

「―――天羽々矢(あめのはばや)。お前のような大妖怪には似合いの銀細工(アクセサリ)ね」

 

 天羽々矢、その名には聞き覚えがあった。神話において神が用いた魔を滅ぼす矢、文字通り伝説級の遺失武装(ロストアーティファクト)だ。

 

 ……とは言え、矢の正体はこの際どうでもよかった。八雲紫が気になったのはそこでは無い。

 

 どこから、どうやって―――。八雲紫の探知を掻い潜り、八雲紫の防御をすり抜け、八雲紫の胸を撃ち貫いたのか。

 

 わからない。だが、誰が放ったものかは推測が出来た。

 

「……八意永琳(貴方の従者)の仕業ね」

 

 忌々しげに呟き目の前の月の姫から視線を外す。

 

 視線をやや後方斜め下へと移すとその先には、地上から立ち昇った光の柱があった。蓬莱山輝夜が空へ上がるために創り出した道筋。

 

 その光の中いる、霧雨魔理沙との弾幕ごっこで傷付いた彼女―――、八意永琳だ。

 

 傷だらけの八意永琳が光の柱の中で目を閉じ、傷が癒えるのを待つためにそこで揺蕩(たゆた)っている。

 

 八意永琳が矢を放ったのは間違い無いと八雲紫は結論づけていた。しかし、未だあのような状態の八意永琳に果たして矢を放つ事が可能だろうか?

 

 こんな傷だらけの彼女に―――。

 

 そう考え、八雲紫はふと違和感を覚えた。

 

 霧雨魔理沙との弾幕ごっこからはもうだいぶ時間が経過している。

 八意永琳程の実力の持ち主であればもっと回復は進んでいてもおかしくはない。

 

 ―――それならば?

 

 内心首を傾げる八雲紫。

 

 受けた傷がそのままなのはおかしい。そもそもだ。吸血皇女との弾幕ごっこをスキマから覗き見た時に、八意永琳が瞬時に傷や怪我を直しているのを視ている。その能力を使わないのは何故なのか。そしてそれより何よりもだ。最もシンプルな違和感がもうひとつ。自分の主である蓬莱山輝夜が危険に晒されているというのに、八意永琳(この女)が何もせずにただそこでじっとしているだろうか?

 

 ―――答えは(ノー)だ。

 

 

真逆(まさか)!」

 

 痛みに堪えながら八雲紫は一枚の攻撃符を光の中の八意永琳へと放つ。が、攻撃符は八意永琳の身体をすり抜け虚空へと落ちていった。

 

 顔を上げた八意永琳がニヤリと笑い―――、それを見て八雲紫は内心毒づく。否、心の中の言葉が思わず口をついて出てしまっていた。

 

「―――偽物(フェイク)?」

 

 

 そんな八雲紫の言葉に答えたのは―――、 

 

 

「いいや―――、偽物じゃあないんだな」

 

 

 蓬莱山輝夜でも八意永琳でも無い、別の声。

 

 同時に八意永琳の姿はまるで壊れた立体映像のようにノイズの嵐に包まれ消えていく。

 

 その消え様を見て、八雲紫はついに驚きの声を上げた。

 

「幻術!」

 

「―――正解だよ」

 

 それに呼応する様に、八意永琳がいた位置からふたりぶん横にズレたところにひとりの少女の姿が浮かび上がってきた。

 

「幻術がアンタだけのものだと思ったら大間違いさ」

 

 腰までの髪から生える一対の兎耳。ブレザーに短めのスカートを纏った、紅い瞳が印象的な少女。

 

 鈴仙・優曇華院・イナバだ。

 

 謀られていた事に気付いた八雲紫は歯噛みし、振り向きざまに蓬莱山輝夜へと攻撃符を放つ。

 

 が、

 

「残念だったね」

 

 鈴仙・優曇華院・イナバが嗤う。

 

 はたして攻撃符は先程同様に蓬莱山輝夜をすり抜け、彼女の姿もまたノイズに包まれた。

 

 

 ―――此方もか!

 

 

 グッと唇を噛み締め、声に出してしまいそうになるのを何とか抑える八雲紫。

 

 

 ―――この大妖怪、深層の大賢者とも呼ばれた八雲紫が、こんな小兎如きの幻術に惑わされるとは!

 

 

 屈辱に身体を強張らせる八雲紫に向かって人差し指を突き付け、鈴仙・優曇華院・イナバは言った。

 

 

「―――いつから? なんて陳腐な台詞は言ってくれるなよ?

 

 月の狂光(ひかり)は私の領域だ。

 

 狂光(ひかり)は貴様の視覚も感覚をもズラして幻を見せ、全てを狂わす。

 

 貴様はその領域内に踏み込んだ。

 

 つまり―――」

 

 

 蓬莱山輝夜は消え、()()()()()()()()()()()()()()()()()()に現れたのは―――、

 

 

 光り輝く小さな鐘と銀色の弓を手にした八意永琳だった。

 

 その美しい顔に微笑みを湛えながら、八意永琳は鈴仙・優曇華院・イナバの言葉の続きを、鈴の音の様な声で紡いだ。

 

 

「―――貴女がここへ来た、最初からよ」

 

 

 

 

 八雲紫と八意永琳、鈴仙・優曇華院・イナバ達を見下ろす位置に、蓬莱山輝夜は浮いていた。

 

 発動直前の永夜返しを保持したまま。

 

 ただ、何も言わずに三人のやりとりと、アリスと妹紅の弾幕ごっこを見つめている。

 

 しかしその表情は偽月からの逆光で見えず、何を考えているのかは測り知ることは出来なかった。

 

 

 

 

「最初から……ですって……?」

 

 肩で息をしながら八雲紫は苦しげに呻いた。

 

 予想以上に霊力の喪失が早い。あとどれくらい保つだろうか。

 

「私は今までずっと幻を見せられていたというの?」

 

 銀の矢に胸を貫かれ、満身創痍の八雲紫。だが、八意永琳も鈴仙・優曇華院・イナバも油断はしない。

 

 いつでも攻撃が出来るように。或いは八雲紫の反撃に反応出来るように。警戒は決して解くことはない。

 

「幻だけじゃあない。虚も実も、()()()()()()()()()()()()のだよ」

 

 鈴仙・優曇華院・イナバが言う。

 

「貴様が何を見ていたかは私は知らないがね。ただただ、全てがズレていたのさ」

 

 その言葉を聞いているのかいないのか。八雲紫は虚ろな視線を兎娘から天女へと移す。

 

 八意永琳が持つ銀の弓―――、八雲紫を貫いた銀の矢はあれから放たれたものだろう。考えるまでも無いし、今やどうでも良いことだった。それよりも八雲紫の気を引いたのはもうひとつ。

 八意永琳が持つ小さな鐘。その鐘に八雲紫は心当たりがあった。熱に浮かされるようにその鐘の名を呼ぶ。

 

「ヒヒイロオモイカネ………」 

 

「……………」

 

 八意永琳は無言で微笑むだけで、否定はしない。それこそが答えだった。

 

「…………そんなものが現存していたとはね」

 

 八雲紫の記憶、ヒヒイロオモイカネは月にあるとばかり思っていた。だが考えてみればそうから月にあったヒヒイロオモイカネをこの月の天女がこちらへと持ち込んでいた、ただそれだけの話だ。

 

 しかし、矢張り明確な回答は示さず、八意永琳はただただ微笑む。

 

「あら、ここは幻想郷よ? あり得ないなんてことはあり得ない」

 

「確かに。()()()るくらいだものねぇ」

 

 自らの胸を指して笑う。先程の言葉が真実であれば八雲紫を貫いている矢―――天羽々矢と同様、八意永琳の持つ(ヒヒイロオモイカネ)は魔力や妖力を増幅する能力を持つ神話クラスの遺失武装(ロストアーティファクト)だ。

 

 

 ―――成程、小兎の幻術を鐘の力で増幅したのねぇ。

 

 

 八雲紫は胸中で分析する。それならば例え小兎程度の能力であっても完全に術中に嵌ってしまうのも納得だった。

 

「……すごいわねぇ、そうまでしてこんなか弱い幻想的な少女を虐めたいの?」 

 

「そうね」

 

 八雲紫の軽口に、しかし八意永琳は真剣に答える。

 

「そうでもしなければ、幻想郷(ここ)で貴方には勝てないもの」

 

「あらぁ……そんな、買い被りよぉ……?」

 

「貴方が月で我らに勝てなかったのと同様に、幻想郷では貴方には勝てない。普通に戦ったのではね」

 

「なんの……話をしているの、かしら?」

 

「……どこまでもとぼけるのね。まあ良いわ」

 

 ため息混じりに吐き出す八意永琳。右手に持っていた鐘を消すと、次の瞬間、その手には代わりに矢が握られていた。

 

「あの偽月は、確かに私が呼び出した。ただ、今宵一晩の間だけ、月から幻想郷を隠す為のものに過ぎなかった。」

 

「それで、あんなに狂気に満ちた太古の月を喚び出したのかしらぁ?」

 

「……今宵は月が真なる円を描き、幻想郷を真っ直ぐ照らす位置に来る、千年に一度の夜だった。月の魔力は例年とは比べ物にならない。そのままでは我らが月から見つかってしまう」

 

「……それでぇ? 博麗大結界の内側にもう一重、結界を敷き、更に太古の月を喚び出して幻想郷を月から隠した、と」

 

「そういうことね。ただ、誤算があった。それが―――」

 

 弓に矢を番え、八雲紫に狙いを定める八意永琳。

 

「八雲紫、貴方が夜を止めた。夜明けと共に消えるはずだった太古の月は空に留まり続け、その結果狂気を孕んだ光が幻想郷に振り注いだ。しかも二重に敷かれた結界のせいでその狂気が幻想郷内に留まり続け、蔓延して行く」

 

「…………」

 

「貴方……一体何を企んでいたの? 幻想郷の守り手である筈の、深層の大賢者ともあろう貴方が、何故?」

 

 

 大賢者を真っ直ぐ見つめる八意永琳。天才、と呼ばれた月の天女も、今回、八雲紫が何を企んでいたのかは最後まで分からなかった。

 

 

「最後に教えて頂戴。そうすれば消滅だけは許してあげるわ。

 

 ―――八雲紫、貴方は何を望んでいたの?」 

 

 

 

 

 

 

 竹林の中、仰向けに横たわるひとりの金髪の少女。

 白いフリルを設えたエプロンに黒いスカート姿。

 

 魔理沙だ。

 

 月明かりに照らされている頬は生気なく、まるで死んでいるかのようだった。

 だがその青白い頬に、徐々に朱が差していく。

 

 生が、溢れ出した。

 

 やがて指先が、瞼がピクピクと動き―――、

 

 ぱちり。

 

 両の目をカッと見開き、勢いよく起き上がる。

 

 そのまま誰かを探すように周囲を見回す。そうして何かを言いかけて口を開くが―――、やめた。

 

 肩を落とし、ふうっ、と息を吐く。

 

 帽子を目深に被ろうと頭に手をやるが、その手は何も掴めず空を切る。

 

 見れば、トレードマークの帽子と箒も、少し離れた所に転がっていた。

 

 他には、無い。

 

 霊夢の姿も無い。

 

 帽子を拾い上げ、いつものように頭に被ると頭を持ち上げ空を見上げた。

 

 空にはまだ偽月(つき)が浮かんでいる。

 

 ―――アリスはまだ空の上で戦っているんだな。

 

 魔力感知するまでもない。複数の光点が目まぐるしく交錯しているのが視える。

 

 間違い無い、あれはアリスだ。そして相手はあの不死鳥を名乗る少女だろう。

 

 今のアリスは、どうやっているかは分からないがあの埒外の不死鳥と互角以上に渡り合っている。

 

「……流石はアリスだぜ」

 

 アリスは強い。魔理沙はその事実を知っている。だからこそ任せた。しかしアリスが本気をなかなか出さないこともまた知っていた。()()が懸念材料ではあったが―――、

 

「いらぬ心配だったぜ」

 

 フッ、と小さく息を吐く。

 

 結果はどうあれ藤原妹紅をアリスに押し付け、魔理沙は霊夢を誘き寄せる為に空を離脱した。

 

 そうして挑んだ霊夢との弾幕ごっこ。

 

 ふたりの弾幕ごっこは、魔理沙のアースライトレイによる相打ち判定で終了していた。

 

「……霊夢のやつ」

 

 少し前まで一緒にいたはずの霊夢の事を考える。

 

 さっきまでふたりは確かに冥界にいた。

 しかもあの場所は見覚えがある。あれは白玉楼へと続く石段だ。

 

 そこから霊夢の反魂術と思われる謎の(あやしげな)術札で魔理沙だけここへ戻ってきたというわけだ。

 

 魔理沙(わたし)だけ。

 

 ―――霊夢は確かに言った。まだやる事がある、と。

 

 どこか寂しげではあったが、あの時の霊夢はいつもと変わらない霊夢だった。

 

 偽月(つき)の光に狂わされていたとしか思えない霊夢の不調も、霊夢自身が仕掛けた二重結界による断絶作用か、或いは魔理沙のアースライトレイの光の影響か。白玉楼の階段で言葉を交わした時の霊夢は、魔理沙の目にはすっかり元に戻っていたように見えた。

 

 戻ってはいたが―――。

 

 平気な顔をして、何だって何時だってひとりで抱え込んで、その癖に心の中で自分を押し殺している。そんなところまでいつも通りになっていた。

 

 魔理沙は右手を空に翳す。

 

 空に浮かぶ偽月(つき)に手を伸ばしグッと握りしめるが、その掌は何も掴めていない。

 

 それはまるで魔理沙と霊夢の距離のように感じられた。

 

 

 ―――すぐ傍にいた。

 

 相対していた。

 

 霊夢のか細い躰を強く抱きしめていた。

 

 それなのに。

 

 今はまた、ふたりは遠く離れている―――。

 

 

()()()()()()

 

 

 本当なら今すぐ追いかけて助けてやりたい。

 

 だが、

 

 戻ってきたのは私だけ―――。

 

 魔理沙は俯き、帽子を目深に被る。

 

 

「つまり、私がやるべきは、こっちということだな」

 

 

 魔理沙がアリスにそうしたように。霊夢もまた魔理沙にこの場を任せたのだ、と。

 

 

()()()()()()―――、か」

 

 

 呟き、空を見上げる。

 

 どれほどの夜を越えてあの偽月(つき)天上(そこ)に揺蕩うのだろうか。

 

 終わらない夜に、偽りの月。

 

 幻想郷に狂気を振り撒く、今回の事変の元凶は未だそこにある。

 

 蓬莱山輝夜の永夜返しはまだ発動していないようだった。

  

 

「やっばり、()()か」

 

 

 人差し指で帽子の鍔を持ち上げながら、魔理沙は偽月を睨みつける。

 忌々しげな視線とは裏腹に、口元はどこか愉快そうに笑っていた。

 

 

偽月(つき)は私がどうにかしろ、と」

 

 

 足元を確かめながらゆっくりと立ち上がる。

 

「ん?」

 

 何かに気付いた魔理沙。

 よくよく見れば、右足のすぐ隣に土筆が生えている。

もう半歩ズレていれば踏み潰すところだ。

 

 ホッと肩を撫で降ろす。

 

「危ない危ない―――」

 

 呟き、魔理沙は違和感を覚える。

 

 林の中だから土筆が生えているのは、決しておかしい事ではない。

 

 しかし今、季節は夏だ。

 

 

 ―――夏に土筆なんてあったか?

 

 

 頭を疑問符が過る。

 

 さらに魔理沙の視線の先、月明かりに照らされ咲き乱れている花が目に入った。

 

 

「あれは―――」

 

 

 魔理沙の中で警鐘が音を立てて鳴り始めた。

 

 矢張り。可怪(おか)しい。

 

 確認の為にその花に近付きながら魔理沙は白玉楼への石段での記憶を呼び起こす。

 

 あの時。

 

 白玉楼の石段。

 

 その脇の桜は―――、

 

 

 

 『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。』

 

 『()()()。』

 

 『()()()()()()()()()()()()()()()。』

 

 『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。』

 

 

 

 

「……悪い冗談だぜ」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、魔理沙は掠れた声で独りごちた。

 

 秋桜は秋の、水仙は冬の花だ。

 桜は言わずもがな、土筆の季節も春だ。

 

 全ての季節の花が、植物が芽吹いて咲いている。

 

 ただ咲いているだけじゃない。目の前の秋桜にも水仙にも、禍々しいまでの美しさがあった。

 

 

「偽月の光が、狂気を孕んだ光が幻想郷そのものを狂わせている。……だとしたら、

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 帽子を目深に被り、魔理沙は溜息を吐いた。

 

 

霊夢(アイツ)が私だけをここへ戻した――、

 

 否、

 

 ()()()()()()()()()()、その理由も合点がいったぜ。

 

 だとしたら、()()も狂っていると。

 

 そういうことなんだな、霊夢」

 

 

 人差し指で帽子を跳ね上げる。

 

 

「くっくっく、コイツは燃えてきたぜ?」

 

 

 肩を震わせ笑う魔理沙の双眸には光があった。だが、狂気の光では無い。己のやるべき事を確信し、真っ直ぐと未来(まえ)を見つめる瞳に宿る、力ある光。

 

 もう迷いは無い。

  

 覚悟は決まった。

 

 天を仰ぎ、両腕を大きく広げ、魔理沙は誰にともなく大声で語りかけた。

 

 

「さあ刮目せよ幻想郷!

 

 この狂った夜も遂にクライマックスだぜ!」

 

 

 ―――そして、その口元には自信に溢れた笑みが浮かんでいた。

 

 

 続。

 

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