バトルスピリッツ∼時空を超える魂の炎∼ 作:ハピエンすこすこ侍
申し訳ない。内容少し変わったので挙げ直しとります
形としては完成しました
これからも内容を濃密にすることはあるかもですが
第1話 記憶の地獄 動き出す歯車
バトルスピリッツ。通称バトスピ。
それは、様々なカードとすべての源であるコアを使って戦うカードゲームだ。
俺、烈火慶次と弟の幸村がバトスピを知り、始めたあの日から、毎日夢を見るようになった。俺達のいる世界とは違う世界の夢を。そしてこの世界に訪れるかもしれない未来の夢を。
『ガイアスラしかいない今、超覚醒はできない!アンタを守るスピリットは、もういない!!』
『俺を壊すか激突王!』
『そうだ!破壊されるのは、アンタだー!!』
焼けつくような熱気が肌を刺し、まるで本当にそこにいるかのような錯覚に陥る。
俺と同じ赤バトラーの馬神弾、通称ダンをはじめ、コアの光主と呼ばれるカードバトラーが異界グラン・ロロに召喚され、その後、異界王の策略でグラン・ロロと融合した地球でダンが異界王を倒すまでの記憶。
『バローネ…。ありがとうございました。いいバトルでした』
『馬神ダーーン!!』
『ダン!ダメッ!イヤ…。イヤァァーーー!!!』
耳をつんざく悲鳴が胸を締め付ける。目の前で起こる出来事が、ただの夢だと割り切れないほどリアルすぎる。
異界王を倒した後、ダン達が未来の時代へと召喚され、異界魔族との戦いや多くの陰謀を乗り越えて、当初対立していた魔族と人間が協力し、地球リセットを回避するための作戦を決行し。
結果的にリセットは回避され、数世紀の間争っていた魔族と人間は和平を結んだが、作戦のなかで神々の砲台の引き金となったダンは消滅してしまうという一連の記憶。
『そうだ。今の俺の力は、俺一人だけのモノじゃない。これは今まで俺達が培ってきたことの証!絆だ!』
『俺達のバトルは、世界を相手に戦ってきた信長の力にも負けちゃいない!俺はそう信じる!いくぞ!信長!!』
『うおぉー!燃えろ!俺の魂!!燃えろソウルドラゴーーン!!』
『フッ、見事だ幸村。強くなったな』
成長し、バトスピの舞台に戻ってきた幸村が、ムサシのバトラーと切磋琢磨し、俺達の世界で初となる全国大会。バトルスピリッツ戦國チャンピオンシップの決勝で、ノブ兄、いや、大六天魔王こと天魔信長と激突。大六天魔王がノブ兄だったという事実と、三種のゴッド・ゼクスに幸村は苦悩と苦戦を強いられながらも、最後はソウルドラゴンで勝利し、バトスピの天下を取るという未来の夢。
拳を握りしめると、爪が食い込む感触がある。痛みさえ感じるほど、俺はこの夢を現実のように体験している。
この他にも様々な世界のことを夢を通して見てきた。
そのどれもがあまりにリアルで、俺の妄想や想像が形になっただけだということにすることが、俺にはどうしてもできなかった。
そして今日も、目が覚めるまで記憶や未来の夢をみた。
******
「また夢か…。なんで毎日こんな夢を繰り返し見るんだ?俺、妄想癖とかないはずなんだけどな。」
ベッドから起き上がり、伸びをしながら天井を見つめる。昨夜の夢の余韻がまだ頭の中にこびりついていた。焼けつくような熱気、交差する視線、ぶつかり合う魂の鼓動。それらがあまりにもリアルすぎて、ただの夢だと思いたくても、心の奥でそれが本当の出来事だったのではないかと思い始めていた。
「これって、本当にただの夢か?」
自分に問いかけても、答えは出ない。夢があまりにも鮮明すぎて、それがどこから来たのか、どうして自分に与えられるのかが全く分からない。毎晩繰り返し見るその夢は、ただの夢じゃないような気がしてならない。
昨晩見た記憶の中で、何度も感じた痛みや心の動き、熱い戦いの中での感情の波。実際に戦っているわけでもないのに、心臓が高鳴り、手に汗を握り、スピリットの声が耳に響き、カードの効果が目の前で繰り広げられるのが感じられる。
(いや、そんなわけない。ただの夢だろ…?)
自分に言い聞かせようとするが、どうしても納得できない自分がいる。
夢の中で何も変えられない無力感が、どうしても消えない。それはただ見るだけの記憶であり、実際に自分がその場にいるわけではない。けれど、全ての感覚が自分のもののように感じられて、心が揺れ動く。夢の中で感じる痛みや感情が、現実の自分にフィードバックしてくる。
カードバトラーの友達や幸村に何気なく聞いてみても、みんな「そんな覚えはない」って言う。何度確かめても、俺以外に同じ夢を見ている人間はいないみたいだった。
(それなら、なんで俺だけ?)
毎回、同じ夢を繰り返し見る。その中で感じる感情や痛み、光景が、まるで自分がその場にいたかのようにリアルだ。戦争の悲惨さや、喜び、絶望、希望、全部が鮮明に頭の中に残る。見ているだけのはずなのに、まるで自分がその中にいるかのような気がして、体が引きずられている感じになる。
(でも、これは…夢だよな?)
手を握りしめる。胸が苦しくなる。その苦しみは夢の中だけでなく、起きている時にも引きずってくる。それが、日に日に強くなっていく気がしてならない。
この感じを、どうして自分だけが感じているのか、どうして他の誰もが同じように感じていないのか、その理由を知りたくてたまらない。でも、答えが見つからない。結局のところ、これはただの夢、そう自分に言い聞かせていた。
あの熱いバトルの記憶、そして仲間たちとの絆。それらの感情は、時には胸を締め付けるほど強く、またある時は、燃えるような喜びが込み上げてきて、心が温かくなる。けど、その裏側に潜む痛みがあまりにもリアルすぎて、無意識にそれを感じると、胸が痛くなるんだ。
自分がその場にいたわけじゃないのに、どうしてこんなに強く感じるんだろう。何度目の夢だろうか。起きるたびにその余韻が消えることなく、むしろ強くなっていく気がする。
そのうち、眠るたびにまた次の夢が待っていて、その中で起こる出来事がリアルすぎて、現実と何が違うのか分からなくなる時がある。夢の中で感じたこと、見たこと、触れたものすべてが、まるで自分が本当にその場所にいたかのように、強く残る。そこでの痛みも、悲しみも、そして喜びも。
(この感覚が、ただの夢だなんて信じられない。)
やっぱり、これは夢じゃないのかもしれないと、ふと思う。だけど、どうしてこんなものが俺に…?
「でも、もしこれが記憶だとしても…俺はどうすればいいんだ?」
心の中で自問自答する。あれが、ただの妄想や想像だと自分に言い聞かせても、何かが納得できない。あの感覚、あの熱さ、痛み、喜び。すべてが現実のように感じられる。でも、現実ではないんだと強く言い聞かせて、無理にでもその思考を押し込めようとする自分がいる。
でも、それでもやっぱり、どうしても心の中の違和感が拭えないんだ。
「いや、これは…夢だ。手掛かりがない以上、そう思うしかねぇよ。」
感情が流れ込み、感覚がリンクする夢がただの夢なわけない。俺に何かを伝えようとしているようにしか思えなかったけど、キリがないから、無理やり考えるのをやめようとしても疑問は尽きない。
「…どうして、こんなにリアルなんだ?」
頭の中でぐるぐる回る感情に、少しずつ押しつぶされそうになる。その瞬間、ふと階下から母さんの声が響いた。
「慶次~!今日も大会あるんでしょ?早くご飯食べなさ~い!」
ああ、そうだ。今日は大会があるんだった。頭を整理する暇もなく、無意識に身体が動いて、床に足をつける。その瞬間、夢の感覚が一瞬で遠のき、現実が一気に迫ってきた。
「気合い入れ直さねえとな」
今の自分にできることは、今目の前にある試合を全力で戦うことだ。それが、今の自分にできる唯一のことだ。
気持ちを切り替え、動き出す。しかし、胸の奥に残るあの夢の感覚が、まだ完全には消えていない。
それをなんとか振り払い、あいつの様子を見に行く。
「おはよう、幸村!今日、決勝あるからさ。幸村も来てくれよ。」
隣の部屋のドアを軽くノックし、ゆっくりと開ける。声をかけても、しばらく返事はなかった。ドアの向こうに見える布団に包まっている幸村は、どこか遠くを見ているようで、目が悲しみと迷い、そして喪失感に満ちていた。
「おはよう、ケイ兄…。でも、俺は…」
その声は沈んでいた。まるで、どこかを見つめているだけのように、ぼんやりとした眼差しが俺を見た。
(やっぱり今日もダメか…)
ノブ兄が俺達の目の前から姿を消してから、幸村は日を追うごとに元気と熱意を失くしていった。当然だろう。俺達はノブ兄のことを兄のように慕い、幸村はノブ兄との大会での勝負を楽しみにしていた。だからこそ、ノブ兄が何も言わずにいなくなったことに悲しみや喪失感を覚えるのはすごくわかる。
「幸村、お前さ…今のままで本当にいいのか?」
俺はベッドの横に腰を下ろし、布団越しに問いかける。幸村の目が一瞬だけ俺を見たけれど、すぐにまた視線を外した。
「…俺は…」
幸村の口から出た言葉は、弱々しく、そして小さかった。俺はその一言だけで、すべてを感じ取った。
(幸村…)
俺の弟は、誰よりもバトスピを愛していた。それなのに、今はこうして布団の中で目をそらし、俺からも世界からも逃げるように、現実を拒絶している。
「俺はお前じゃないから、ノブ兄がいなくなって、お前が何を思ったのか、全部理解してやれるわけじゃない。でもさ、俺には分かるんだ。幸村、お前はバトスピが嫌いになったんじゃない。」
俺の言葉に、幸村はピクリと肩を震わせて、息を呑む。その小さな反応に、胸が痛くなる。
「お前はバトスピが好きだ。でもどうすりゃいいかわからない。だからやめるって言ってるんだろ?」
俺の言葉が、幸村の心に何かを引き起こしたようだ。幸村の肩が震える。見ているだけで、胸が締めつけられる。
「……俺は、強くなれない。」
その言葉が、突き刺さるように胸に響いた。俺は反射的に口を開くが、言葉が出てこない。いや、出せなかった。
「は?」
「俺は……もう、ノブ兄を超えられない。だから、戦う意味がないんだ…。」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなる。幸村はソウルドラゴンをノブ兄から託された時の想いや、ノブ兄の言葉、表情をおしこめて、いなくなった悲しみにばかり目が行っているように見えたからだ。
「バカか、お前。」
思わず呆れたように笑ったけど、その笑いには本当の意味がなかった。嬉しいわけでも、安心するわけでもなく、ただただ苛立ちを抑えるために、笑っているだけだった。
「お前、そんなこと言ってるけどな…俺は、お前がいつかノブ兄を超えると信じてるんだよ。」
幸村の目が驚いたように俺を見た。その視線を受け止めながら、俺はしっかりと前を見据えた。
「俺がバトスピを続けてる理由の一つは、お前だよ、幸村。お前と、また本気でバトルできる日を待ってるんだ。」
静寂が訪れる。その瞬間、部屋の空気が一瞬重くなった。幸村の顔にあまり変化はなかったけど、俺の心には光が差し込んだ気がした。
「なぁ、幸村…。俺じゃ、お前の魂に炎を灯すことはできないのか…?」
静かな部屋の中で呟いたその言葉が、幸村に届いているのか、それとも届いていないのか――それは、俺には分からなかった。でも、少なくとも、俺の言葉が幸村の心に何かを触れることを願っていた。
場所と時が変わり、バトルスピリッツチャンピオンシップ大会会場。
多くのバトラーたちが集まり、白熱したバトルが繰り広げられるこの会場。すでに数時間の戦いが続き、観客たちの熱気は最高潮に達していた。俺はステージの上で、改めて心を決める。今、目の前にいる相手に勝たなければならない。どんなに強くても、どんなに辛くても、全力を出し切らなきゃ、次に進めない。
「いよいよ決勝戦か…。どうなったって、全力で戦うだけだ。」
周囲の歓声を耳にしながら、ステージに立つ。これまで数えきれないほどの大会で戦ってきたけど、決勝戦に臨むときの緊張感だけは、何度経験しても変わらない。それでも、俺は戦う準備ができている。
目の前の対戦相手は、これまでのバトルの中で一番手ごわい相手だ。だが、俺の赤属性デッキもまた、どんな相手にも対応できる力を持っている。カードの力を信じて戦う。それが俺のスタイルだ。
「さあ、行くぜ!」
対戦相手が決まり、バトルが始まる。相手の構築も強力だが、赤属性を駆使した俺のデッキも負けていない。カードの力を存分に引き出すために、俺は相手の動きを見極め、カードを慎重に選んでいく。
「きめろ!センゴク・グレンドラゴン!!ウスバカゲロウの効果と激龍フレイム、そしてセンゴク・グレンドラゴンの効果で、お前の残りライフを全て焼き尽くす!」
その瞬間、センゴク・グレンドラゴンのカードの上に置かれたソウルコアが、一瞬だけ赤く輝いた。
目の前に広がる戦場と、俺の心の中に浮かぶ疑念が交錯する。まるでソウルコアが紅いオーラを放ち、炎が灯るように感じる。その感覚が一瞬、俺の心を揺さぶったが、すぐに冷静になる。今はバトルに集中しろ。相手に失礼だろ。
「うっ、俺の負けだ…」
相手の英雄巨人タイタスが倒れ、俺のカードの効果が次々と発動する。相手選手の残りライフを一気に削り、バトルは決着を迎えた。
「お~っとぉ、ここで勝負あったぁ~!今大会の優勝者が決まったぞー!なんとIBSA主催の公式大会、無敗の10連覇を達成!彼の連勝はどこまで続くのか~!」
会場全体が歓声で包まれる。俺は優勝を実感する。でも、それと同時に、胸の中には不安と疑問が残る。あの瞬間のソウルコアの赤い輝き、一体何だったんだ?
大会の興奮がまだ残る会場。MC小太郎の声が響き渡る中、俺はふと周囲の視線を感じて一瞬足を止める。どこかで意識が引っ張られた気がしたが、そのまま顔を上げると、目の前には優勝トロフィーとともに、今度は別の物が差し出されていた。
「さて、優勝した慶次には、優勝トロフィーと、この世界に一枚しかない幻のXレアカードを贈呈するぞ!」
MC小太郎の声に合わせて、スタッフの一人が両手で大事そうにカードを持って俺に差し出す。観客たちの期待の眼差しが一斉に俺に注がれ、その瞬間だけ、世界が静止したような気がした。
(Xレアカード?)
その言葉に、一瞬何を言われているのか分からなかった。確かこの大会での優勝賞品はトロフィーだけだったはずだろ?カードが贈呈されるなんてしらねえぞ?一体どういうことだ?
目の前に現れたカード。間違いなく俺が見たことのある、見覚えのあるデザインだ。
「え!? あ、ありがとうございます。」
反射的にその言葉を口にするが、手はうまく動かない。
目の前に差し出されたカードは、あのエグゼシードそのものだった。
(まさか、エグゼシードが、ここに…!?)
頭が混乱していく。心臓が一瞬早く鼓動を打つのを感じるが、その後すぐに冷静になろうとする。
エグゼシードは、スピリッツワールドと繋がりがある別世界*1のカードだ。夢の中で何度も見た世界のもの。
(…いや、でも、どうしてこれが…?)
その不安は次第に膨らんでいき、どうしてもその場で冷静でいられなかった。周囲の歓声が聞こえる中、俺は目の前のカードを受け取る。カードの表面は光を反射し、まるでそれ自体が生きているかのように煌めいている。
(いや、おかしいだろ…!)
そもそも、新カードってことにしたって封印に関する能力を持つカードは、この世界ではまだほとんど流通していないはずだ。それに、このエグゼシードのようなカードが、この大会の景品として与えられる理由が全く理解できない。
その困惑を隠しながら、俺は静かにカードを受け取る。会場中が歓声に包まれる中、俺だけがその場に取り残されたような感覚だった。
会場の熱気の中で、俺だけがそのカードに異様なほどの重みを感じていた。
大会の興奮がまだ残る会場。勝者である俺には、今までにないほどの注目が集まっている。それでも、心中では一つの疑問が消えない。エグゼシード、あのカードが現実に存在することに対する違和感が、胸の中でずっとうねり続けていた。
俺はそのまま会場を後にしようと歩き出す。周りの歓声が遠くなるにつれて、その疑問がさらに強くなる。思考がまとまらず、何かに取り憑かれたような気分だ。
(このカード、やっぱりおかしい…。)
ふと足を止め、手にしたエグゼシードをもう一度見つめる。あの輝き、デザイン、どこをどう見ても、これは夢で見たものだ。自分が見た世界のものが、現実に存在している――その事実に対して、俺はどう向き合えばいいのか分からない。
「信長様の海外視察って、本当にやってるのか?最近全然見ないよな…。」
その言葉に、俺の足が止まった。
「バカ!こんなところであの方の名前を出すな!」
「うっ、す、すまん…。」
耳に入った会話に、心臓が大きく跳ねた。信長――ノブ兄の名前だ。夢の中でも聞いたことがある、あの言葉。それが、今ここで現実に耳に入ってくるなんて…。
(信長様…海外視察…?)
その言葉が頭の中でぐるぐると回る。思わず振り向き、話していた二人を探したが、すでに彼らは去っていった。
(ノブ兄が、海外視察…?)
ノブ兄が突然姿を消してから、もうかなりの月日が経っている。その後も大会やイベントで一度も見かけることはなかった。バトスピの大会の裏で何か別のことをしていたのかもしれないが、それが今、ここで話題になっているなんて…。
(もしかして、あの夢の中の話が、現実と繋がってるのか…?)
夢で見た海外視察の話が、今、現実でも語られている。こんなことがあるだろうか?ただの偶然か、それとも何か――何かが繋がっているのだろうか?
俺はその場で立ち尽くし、頭の中で夢と現実の境界が少しずつ崩れていく感覚を覚える。