デレマス 短編集   作:柊真夜

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一ノ瀬志希③

 

 派手なあいさつをされてから3か月がたった。彼女は失踪癖というものがあるようで、授業中お花を摘み行くといって帰ってこないことがある。そういう時はいつも僕が探すのを任される。何も教えない大人が彼女と僕が親しいことを知っているからだ。

 彼女は何にも縛られていないように感じた。けれどその自由に振り回されているのは僕だ。自由に振り回される不自由なんて許されていいのかと思ったが、担任の大人が僕を彼女のお世話係に位置させている節がある。失踪して探しに行って連れて帰るのはいつも僕だ。彼女が怪しい実験をしてできた薬を飲むのも、僕だ。

 

 そんな彼女に付き合わされていた僕だが、最近気づいたことがある。

 

 だんだん彼女の雰囲気が重くなっているように感じた。それくらいのことは分かるようになっていた。

 

 

 今日もいつものように彼女を探しに来ていた。市街に。

 今回はいつもと違って中庭にも屋上にもいなかった。学校のどこを探してもいなかったため、こっそり学校を抜け出して、町に来ていた。担任の大人にどう説明するべきかを探るのと同様に、彼女はどこに行ったのか探索することをひたすら頭の中で考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 町の小高い丘に来た。日が良く当たり、公園のように休憩することができる場所がある。街を一望することができた。

 多分ここだろう。

 僕の直感がそういっていた。テストではあまり当たらない勘だが、今回ばかりは当たる気がした。

 

 彼女はベンチに横たわっていた。平日の日中ということもあり、人は僕たち以外、一人もいなかった。まさに昼寝には格好の場所だ。そう思っていたが、彼女は目を開けたまま、空を見上げていた。

 

「なにしてんだよ」

 

「あっ、悠馬君。今回も来てくれたんだね」

 

「ほんとになんでだろうな」

 

 なんで彼女を探すのにここまでするのか、自分でも不思議だった。

 

「今日は寝てないんだな。寝るのが好きって言ってたのに」

 

「にゃはは...。なんでだろうね...」

 

 彼女は少し悲しそうな声を出した。

 

「なんか悩んでんのか?」

 

「へ?」

 

 気が付けば声に出していた。

 

「重そうな雰囲気だし、悲しそうな声出してるからな」

 

 彼女が気になってしょうがなかった。この3か月の間彼女には振り回されていたというのに。

 

「なんで...なんでわかったの...?」

 

 彼女はうるんだ目で僕を射抜いていた。

 

「なんで泣いてんだよ」

 

 

「すごく...うれしくて...」

 

「そうかい」

 

 彼女が泣き止むまで、僕たちは一緒に空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このまま飽きられちゃうんじゃないかと思ってたんだ」

 

 泣き止んで泣いた理由、重い雰囲気の訳を話してもらった。どうやらそんなに重い理由ではなかった。否、彼女にとっては重い理由に入るのかもしれない。

 

「私、生まれてから一人の人から執着?愛情を注がれたって言ってもいいのかもしれないけど、そういうことがなかったんだよ」

 

「親は?」

 

「いろんなとこ飛び回る仕事だから、家にいたことが少ないの。しかもこういう頭と顔で生まれちゃったから、みんなそれにしか注目してくれない。初めて来たときに群がってきた人たちがそれだね」

 

「前から聞いてみたかったんだが、それでなんで僕のところに来たんだ?興味なさそうな人は以前にもいたはずだろ」

 

「君はいいにおいがしたから。私鼻には自信があるんだ~♪」

 

 彼女はやはりにおいで性格や人柄も分かるらしい。

 

「なんで飽きられると思ったんだ?」

 

「それは...いつも君を強引に関わらせてるから。人とのかかわり方も分からないし。学校を抜け出してここに来た時、君が来てくれなきゃ、もう学校に行くのもやめようと思ってた。だって君目当てにいつも行ってるんだもん。嫌いになったら、行く意味ないでしょ?」

 

 だったらもうちょっと大事に使ってほしいものだ。

 とどのつまり、彼女は一人をこじらせすぎていて人との距離感がバグってるらしい。それで僕を依り代にして、学校にかろうじて通っていたらしい。

 いい迷惑だ。

 

「それで来ないと思ってら、来たからうれしくて泣いちゃったんだな?」

 

「何、そのバカにした言い方?私君以外にののしられたことないんだけど」

 

 志希は頬を膨らませながら言った。

 

「ほら戻るぞ。担任がお冠だ。一緒に怒られてやるから」

 

「そういうとこも優しいね」

 

 彼女がそう言うと、僕は顔が熱くなったような気がした。

 

「ねえ」

 

「なんだ?」

 

 

 

「君が好き」

 

 

 

「そうか、じゃあ一緒に戻ってくれ。一人で怒られるのは寂しいからな」

 

「うん」

 

 二人は丘を降り始めた。




あと一話投稿します

正直満足はしてないです。
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