宇宙帝国皇帝となった元地球人、魔法少女だらけの地球に帰還する 作:エーテラン
ミレニアム戦争。1000年に渡り続いた事でこの呼び名が生まれたこの戦争は何故始まったのか、それを知る者は最早いない。下らない国家間の小競り合いが発展したのか、大戦争は周辺に飛び火していった結果なのか、それとも他の理由か。
だが、そんなことは最早どうでもいい。
「陛下。今日を持ちましてミレニアム戦争終結10周年を迎えました。宇宙全土を巻き込んだ戦争が終結したのも陛下の力があってこそです」
「うん。ありがとうミドラ。戦争では幾度も助けられたね」
「いえ、陛下に忠誠を尽くすのは当然であります!」
宇宙統一帝国。その帝都が置かれた星にて俺は部下であるミドラに労いの言葉をかけると自信満々にそう返されてしまった。俺としては優秀な彼女がいてくれなければ今頃死んでいたかもしれないと思っているから普通に受け取ってほしいんだけどね。
さて、改めて自己紹介を。俺はカズキ・ローデン・ノヴォ・ヒュレッツェン。ミレニアム戦争初期から参戦し、ついに戦勝国となった宇宙統一帝国の皇帝だ。そして、前世の記憶を持つ転生者でもある。
今ではすっかり薄れ切ってしまったが地球の二ホンという国で普通の暮らしをしていた、と思う。そして気づいたら異星人、エーテランになっていた。エーテランとはエーテルとの親和性が高い種族であり、見た目は人間と変わらない姿をしている。
そして、エーテルについてだがこれは宇宙ではありふれた強大なエネルギーだ。地球における窒素と同じくらい大気中どころが宇宙に普通に存在する。星間航行が可能な国家はこのエネルギーを用いており、なくてはならないエネルギーだ。
エーテランはこのエーテルを唯一体内に取り込み、操る事の出来る種族であり、昔からエーテル研究が盛んにおこなわれてきたそうだ。戦争前はエーテランの技術がいくつもの国家で運用されるのが当たり前だったそうな。
だが、当然ながら戦争が始まればエーテランは狙われるわけで俺が生まれた頃にはエーテランの国家は消滅し、種族は散り散りに。凡そ6割が奴隷として酷使されていたと思う。
そんな中で生まれた俺は死にたくない一心でエーテルの操り方を学び、仲間を集めて故郷を奪還、建国に至ったわけだ。だけどまさかミレニアム戦争終結まで生き、戦勝国になるとは夢にも思わなかった。エーテランの平均寿命は500年程らしいが俺は特殊な個体らしく、エーテルを体内で循環させている間は寿命はないに等しいらしい。
「1000年。長い時間だった」
「戦争初期は幾度も危険な目に遭ったと聞きます。……私がその時に居られれば……!」
「そうであったらミドラ、今の平和を一緒に見る事は出来なかっただろう。初期には初期の、頼もしい仲間がいて、今は今の、ミドラのような頼もしい仲間がいた」
「陛下……」
「どちらがいなくともここまで勝ち残る事は出来なかっただろう」
いくら俺が特殊な個体でもそれで戦争を勝ち残れる程甘くはない。基本的に戦争は宇宙で行われる。流石の俺の能力も宇宙戦艦相手では無力に等しいからな。
「……失礼いたしました。それで陛下。統一後の目的は何かありますか?」
「……そうだな。実は一度訪れたいと思っている星があるんだ」
「探させている例の星ですね? 残念ですが今の所発見には至っておりません」
「仕方ない。この広大な宇宙でたった一つの星を見つけるのがそもそも無理な話だ。気長に待つとするさ」
戦争を終えた今、俺が望むのは魂の故郷である地球への帰還。この宇宙にあるのかは分からない。ミレニアム戦争でもそれらしき星を見つけられなかった。そもそも地球が存在するのかさえ分からないしそこが俺の知っている地球かも怪しい。
だが、それでもこの命が潰える前には一度は訪れてみたいと思うのは魂は地球人であることの証明だろうか。
「……陛下の望みは我ら帝国臣民の望みでもあります。必ずや発見して見せましょう!」
「ほどほどにね」
宇宙人と地球人の違いか。宇宙では弱肉強食が当たり前だ。弱きは食われ、強者は全てを得る。そんな事が当たり前に起こっている。それはエーテランも同じ。俺が皇帝ゆえか彼らの忠誠心は高く、俺が命じれば笑顔で自殺しそうな程だ。流石にそんな真似はしないがな。
だが、それでいてこちらの為に懸命になってくれるのはうれしくも思う。彼らの忠誠に報いるためにも今後もこの帝国を統治していかないといけないな。
「し、失礼します!」
ふと、兵士の一人が慌てたように部屋に入ってきた。現在、俺がいるのは政務室に定めた広めの部屋だが基本的に政治は側近たちが行ってくれるおかげで大きな事でもない限り俺が口出しをする事はない。しかし、一体何があったというのか? どっかの国が戦争を仕掛けて来たとか? でもどこも国力を使い果たして復興に力を入れている最中だし生半可な勢力がせめて来ても返り討ちにするだけだ。一体なんだというのか……。
「どうした?」
「はっ! へ、陛下が探しておられた惑星に類似した星を発見しました!」
「っ! 本当か?」
「勿論でございます! こちらがその映像になります!」
兵士がそういってホログラムの投影機を起動させた。ホログラムに移ったのは緑と青で構成された星。地球だ。間違いない。俺の記憶に残った地球と同じ地形をしている。間違いない!
「よくやった! ミドラ、緊急会議を開く。側近たちとの映像をつないでくれ」
「既に準備は出来ております。幹部陣への通達も終わり、いつでも始められます」
「良いぞミドラ」
流石は俺のそばに置いた最も信頼する側近の一人だ。準備万端だな。
俺はミドラに映像をつなげさせ、側近たちとの緊急会議に入った。
側近とはいえ宇宙全土に広がる帝国を統治する者達の数は軽く1000人を超える。流石にそれだけの者達を映像に写すことは出来ない為発言している者の映像が前に出てくる仕組みになっている。
「諸君、急に会議を開いて申し訳ないな」
『構いませんわ陛下。それよりも緊急との事ですが何かございましたか?』
俺の言葉に最初に発言したのはエーテランのマリーナだ。確か水が豊富な星々を担当している側近だ。
「ああ。とはいえ国家に支障をきたす様な事ではない。完全な私用だ」
『私用、という事はついに探していた星を発見されたのですね!』
「その通りだ」
流石は側近。こちらの意図を簡単に読み取ってくれる。その言葉を皮切りに側近たちはおめでとうございますとお祝いの言葉をくれるが本題はそこではない。
「諸君ありがとう。だが、本題はそこではない。俺は見つけた以上その星に訪れたいと考えている」
『陛下が探しておられた星なら当然でしょう。つまり、軍を動かしたいというわけですね』
「それだけではない。万が一に備えて側近から何人か連れていきたい」
瞬間、ざわりと側近たちの空気が変わるのが分かった。ぶっちゃけ誰か一緒に行かない? という連絡で緊急には思えないかもしれないが側近相手なら緊急になってしまう。そもそも、側近たちの忠誠心は高い。つまり……
『ならば私がお供します!』
『いいや儂が!』
『オイラがお供します!』
『某を!』
『俺を!』
『ミーを!』
こうなるわけだ。皆同行したいと言い出して収集がつかなくなる。だが、そんなことはこちらも理解している。当然ながら対策済みだ。何度もあった事だしな。
「静粛に。同行する者は10名。ミドラ、エヴォン、ヴァレルコーフォ、マリーナの4名は連れていきたい。異論はあるか?」
『ありませんわ』
『ありがたき幸せ』
『……』
呼ばれたもののうち、映像に3名が映る。これでミドラも入れて4人だが残りの6人は……。
「残り6人はいつも通りに決める。全員覚悟は良いな?」
『『『『『もちろんです!』』』』』
「行くぞ……!」
そして、俺は……。
「101番!」
『よっしゃぁぁぁぁっ!!!!』
『うわぁぁぁぁぁぁぁっ!』
『外れたぁぁぁぁっ!!!』
『102! 102だったのにぃぃぃぃっ!!!』
手元にランダムに表示された番号を読み上げると一人の雄たけびとそれ以外の悲鳴が響き渡る。そう、くじ引きだ。こういう場合によく使う手法だが皆決定に関しては受け入れるためずっとこれを採用している。
そうして残りの6人をランダムで決めた俺は出発時間を伝え、緊急会議を終了した。側近との会議を終えた俺は椅子に深々と座り、深く息をつく。そうして、そこまでして漸く興奮が出てきた。
ついに、ついに見つかったのだ。何百年と探し続けてきた魂の故郷がついに見つかった。ああ、これはダメだな。暫くは興奮が収まらないだろう。
「ミドラ。すまないが暫く一人にさせてくれ」
「かしこまりました。出発の準備はこちらでしておきますのでごゆっくりどうぞ」
「ありがとう」
本当にミドラは素晴らしい側近だ。俺はそう感じながらミドラが部屋から退室すると内から湧き出る興奮に身を任せ、黒歴史確定なレベルではしゃぐのだった。
読み飛ばしても問題ない設定とか
宇宙統一帝国
カズキが統治する国家であり、現状における宇宙の覇権国家。ミレニアム戦争初期から存在し、勝利を重ねる事で強大化していった。
カズキが建国した国家であり、側近たちは初期からついてきた者の多くで構成されている。
皇帝を頂点とし、その補佐で構成される絶対王政的政治体制をしているが宇宙人の大半は弱肉強食を是とする者ばかりであり、宇宙においては当たり前の政治体制となっているため不満は少ない。
滅ぼした国の者も雇い入れる方針のため、国としては異例な多種族連合体となっている(普通の国は自分たちと同じ種族以外雇わない為、ミレニアム戦争が発生、混沌とする原因となった)。
エーテル研究が盛んであり、エーテル技術の先進国となっており、それがミレニアム戦争を勝ち抜く要因となっている。
ミレニアム戦争
1000年に渡り続いた宇宙のほぼ全域を巻き込んで発生した戦争。兆を超える国家が勝利と敗北を繰り返しており、戦死者は数えきれないほどとなっている。
大戦初期からカズキは参戦しており、彼の名とその国は中期の時点で誰もが一度は耳にする大国とその長となっていた。最終的に100年前の時点で二大国による決戦となり、カズキはその勝者となった。
戦争終結後は生き残った国々は復興に力を入れており、小競り合い以上の戦闘は発生していない。そもそも、決戦の時点でそれ以外の国家は国力を使い果たしており、戦闘の継続が困難なところばかりであった。
エーテラン
カズキ含め宇宙統一帝国の側近の大半の種族。エーテルに対する融和性が高い種族であり、体内にエーテルをため込める唯一の知的生命体である。そのため、エーテルに対する研究が最も盛んであり、ミレニアム戦争前では彼らが発明した技術を用いるのが一般的だった。ミレニアム戦争後は当然ながらその技術を狙われ様々な国家から襲撃を受け種族としては散り散りとなり六割を超える者達が奴隷となった。そんな中で立ち上がったのがカズキであり、彼の手によってエーテランは再び合流、建国へと至り、ミレニアム戦争を勝ち抜いていくことになった。