宇宙帝国皇帝となった元地球人、魔法少女だらけの地球に帰還する   作:エーテラン

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第三話「情報収集の話」

 地球。それはまさに俺の魂の故郷。1000年に渡り、帰りたいと望んでいた星!

 それが今、俺の目の前にある!

 

「陛下、空間跳躍が完了しました。宇宙戦艦全200隻、1隻の脱落もなく健在です」

「跳躍後すぐにステルス機能を展開。これで地球側から見つかる事はないでしょう」

 

 俺が興奮している中、ミドラ達側近は粛々と行動をしてくれたようだ。

 今回、俺が連れてきたのは宇宙統一帝国において標準的な宇宙戦艦だ。ミレニアム戦争末期、決戦において投入した我が国の最新鋭艦であり、勝利の決め手ともなった艦艇だ。見た感じ地球はまだ宇宙航行技術を持っていないようだし、1隻でも地球を滅亡させることはたやすいだろう。

 俺としてはただ地球を見てみたいだけなのだが皇帝という役職についている以上最低でもこのくらいの護衛は必要だろう。いつの間にか皇帝としての役回りが当たり前になっているなぁ。転生直後の俺が見ればびっくりするだろう。

 

「陛下。これからはどうしますか?」

「まずは情報収集だ。無人偵察機を出し、決してバレないようにあらゆる情報を集めてくれ。下らないと思った事でもなんでもいい。頼むぞ」

「かしこまりました」

 

 ミドラに指示を出す。情報収集は大事だ。前世の俺なら何の準備もなく乗り込んでいたかもしれないが皇帝としてミレニアム戦争を切り抜けてきた俺は情報収集の大切さをいやという程身に染みて分かっている。

 あれは何時だったか……。多分初期の頃だと思うが情報収集をしないでとある敵対国家の星に降り立った俺はその星が毒で覆われている事に気づかず、危うく死にかけた事がある。他にも下調べをせずに通った道に仕掛けられた爆弾が起爆したり、よく知りもしないで道案内を頼んだ現地民に騙されて殺されそうになったりしたことがあり、以降情報収集を徹底して行うようにしている。

 

「それにしても前から思っていましたが陛下にとってこの星は何なんですか? 見つけられていなかったという事は来たことがある星ではないのでしょう?」

「それに関しては秘密だ」

 

 前世の故郷ですと言っても信じてはもらえないだろう。前世という価値観すらエーテラン含めた宇宙生命体には存在しないものだからな。言った結果気狂いだと思われても困るからな。曖昧にしておくので十分だ。

 

「陛下、無人偵察機100機がまもなく地表に到達します」

「分かった。さて、地上はどうなっているのやら……」

 

 そうして、俺の前面に出現したモニターに視線を向ける。100機分の映像が流れており、その中で一機の映像をメインに据える。そこには荒廃した町、が……。

 

 はぇ?

 

「随分と発展途上な世界ですね」

「荒れているしここの奴らは酷いな」

「この様子では宇宙航行も出来なさそうですね」

 

 側近たちが映像を見てそれぞれの感想を言うがそこではない。映像に映る問題はそこではないのだ。

 映像に映る町は確かにあれているが見た感じそれなりに栄えていたと思われる町だ。普通にビルが建っているしな。だが、明らかに人が住んでいない上にボロボロだ。まさに廃墟と呼ぶにふさわしい景観だ。一体何故こんなことになっているのか……。

 

「……もう少し周囲を確認したい。広範囲で索敵を開始してくれ」

「かしこまりました」

 

 本当は細部もわかるように重点的に調べる予定だったがまずがこの原因を大まかに調べる事が先決だ。そう思い、偵察機を広範囲に向かわせた結果、俺は予想外の者を見る事となった。

 

「これは……エーテル・ビーストですか? ですが、それにしては……」

「エーテル・ビーストって知的生命体を襲わないよな?」

「ああ。それに、この原住民も……」

 

 そこに映っていたのはエーテル・ビーストというエーテルで構成される獣と戦う()()()()()()()()()()()()()()()だった。はい、明らかに魔法少女って感じの服装ですねぇぇぇぇぇっ!!??

 

 え? 何? どういうこと? 魔法少女? なんで!?

 

 ……いや、落ち着け。よく考えるんだ。俺が転生したからと言ってこの世界が俺のいた世界とは限らない。たとえそうだったとしても俺の死後にこうなっているのかもしれないんだ。予想していなかったとはいえ混乱する程の事ではない。この程度の予想外の事態等ミレニアム戦争では頻繁に起こっていた事だ。そう、昨日まで雑魚だった敵が翌日にはこちらを圧倒する戦力を出してきた時に比べれば屁でもない。

 しかし、これはいったいどういう事だ? エーテル・ビーストが人を襲うなど。エーテル・ビーストはその名の通りエーテルで構成される生命体だ。だが、基本的に無害で大人しい上にきちんと調教すれば犬のように従順になる生物だ。それがこんな風に人を押そうなんて聞いたことがない。

 

「まさかとは思いますがこの星の住人はエーテルとの相性が悪いのではないでしょうか?」

「エーテルと? 確かにそういう研究結果でも出ていたがあり得るのか?」

「エーテルは全ての知的生命体と親和性が高い。エーテルとの親和性が低い生命体は知的生命体にあらず」

 

 側近たちの言うとおりだ。エーテルは知的生命体ならだれでも親和性が高いエネルギーなんだ。地球から感じる太陽光くらいには普通のエネルギーだぞ? だが、それならエーテル・ビーストが襲い掛かっているのもわかる。エーテル・ビーストはエーテルとの相性が悪い存在を異物と捉え、襲い掛かる習性をしている。どっかの国ではそれを人為的に発生させて敵に襲わせる事もしたらしい。

 だが、まさか地球人がエーテルとの親和性が低いなんて……。これでは地球人は星間航行はおろか宇宙航行だって不可能だぞ。宇宙には石油や石炭などの地球でもありふれた燃料が普通に存在する。だからこそ、それらも用いて、エーテルに頼らない技術研究は行われたがどうしても星間航行に必要なエネルギーには足りず、宇宙航行も技術次第で何とかというレベルにしかならなかった。つまり、地球人ではどうしても宇宙に進出する事は出来ないという事だ。

 そのうえでエーテル・ビーストとの戦い。これはかなり大変だ。成程、地球がここまで荒廃したのは分かったし、魔法少女もエーテル・ビーストを倒すための対抗手段なのだろう。

 

「っ! この女、エーテルを消し飛ばしてやがる……! なんともったいないことを!」

「嘘だろ!? いくらありふれているからと言って消し飛ばすか普通?!」

「理解不能だ」

 

 魔法少女とエーテル・ビーストの戦いは魔法少女の勝利で終わり、魔法少女の攻撃でエーテル・ビーストは消え去った。エーテルが周囲にまき散らされるが魔法少女によってそれらは消滅していく。彼女たちにとっては毒を取り除くようなものだろう。親和性が低いとエーテルに触れているだけで崩壊してしまうからな。だが、それをエネルギー源としてみる俺たちからすれば信じられない光景だ。簡単に言えば石油をただ目的もなく燃やしているようなものか? かなりもったいないと感じてしまうな。

 

「……どうやらエーテルは彼らにとっては毒素に等しいようだ。哀れだ」

「陛下……」

「彼らの宇宙進出は今断たれた。エーテルが使えない以上彼らはこの星でただ生きる事しか出来ないだろう」

 

 しかしそうなると俺の帰還は難しいな。今の俺はエーテラン。エーテルを体内に大量にストックしている為に降りたらエーテル・ビーストに間違われそうだ。そうなっては帰還も難しいだろう。さてはてどうしたものか……。

 

 地球への帰還。目の前に見えているにも関わらずここにきて判明した予想外の事態を受け、俺の帰還は足踏みを余儀なくされるのだった。

 




読み飛ばしても問題ない設定
エーテル/邪悪エナジー
宇宙においてありふれたエネルギー。全ての動力に用いられており、宇宙統一帝国が用いる兵器もこのエネルギーで稼働している。
地球においては太古より負のエネルギーとして認識されており、人間の悪感情と共鳴して魔獣を生み出すとされている。これは地球人がエーテルに対して適合できない体をしているためである。そのため、エーテルを過度に取り込んだ肉体は崩壊する。

エーテル・ビースト/魔獣
エーテルが人間の悪感情に共鳴して実態を得た姿。獣と評されているが姿形はバラバラであり、昆虫の姿をしたものから複合的な姿まで多種多様となっている。人間を見つけると襲い掛かる習性をしているがこれは地球人がエーテルいに適合出来ない為、異物として認識されているためである。そのため、カズキをはじめとする宇宙統一帝国には一切の興味を見せないうえに調教さえすれば従順になる。
高純度のエーテルの塊でもあり、普通の人間は近くにいるだけで体調を崩し、最悪の場合肉体が崩壊する。そのため、対邪悪エナジースーツを装備した国連軍か邪悪エナジーを浄化=消滅させることの出来る魔法少女のみが接近できる。
倒されると周囲にエーテルをまき散らす。個体差によってまき散らす量は異なり、体内のエーテル量で決まる。当然ながらエーテル量が高い程強力な魔獣であり、倒した際の被害も尋常ではない。魔獣はそのエーテル量によりランクが定められており、危険度を分かりやすくしている。

宇宙戦艦
宇宙統一帝国の標準戦闘艦。ミレニアム戦争において他勢力を圧倒する力を有し、戦争の勝利へと導いた。地球相手なら一隻でもオーバーキルなレベルの戦力を有している。
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