スケバン憑依おじさん 作:百合豚丼
色々な各方面に喧嘩売った気がしますが笑って許して
セリカの端的ながら出来事の把握が容易なモモトークは直ぐに対策委員会の面々と先生を動かし、夜分ながら校舎へと集合する運びとなった。
道中はカタカタヘルメット団・カイザーPMC所属オートマタ兵士連合軍がそこかしこに潜み集合は容易ではなかったが、2つの好都合に助けられて無事に合流が叶った。
1つは、荒事屋構成員も相当な人数と兵器を動員してアビドス自治区内のそこかしこに警戒網を張っていたこと。
セリカと交友関係のある者が多い荒事屋は慌てた様子で走る対策委員会と先生に事情を聞き、警戒網の人員を割いて校舎まで護衛役を努めてくれた。
もう1つは、ホシノとシロコのみが遠目で目撃した
対策委員会の中でも戦闘能力で見れば1位2位を争う2人ともなれば薄い監視の目程度、掻い潜るなり壊滅させるなりはさほど難しい問題ではなかった。
「………筋肉だ」
先生はシッテムの箱を用いて連邦生徒会が管理するセントラルネットワークにアクセス。
タイコと誘拐犯のスマホや通信機器の位置を特定した時の画面は、赤い丸がビッシリと表示されており集合体恐怖症の人にはおよそ見せられない有り様だった。
立ち塞がる連合軍を引き続き護衛してくれる荒事屋構成員と協力して蹴散らしながら先生達は、喧騒の中心地であり赤い丸が密集していたセリカ誘拐未遂事件発生現場に駆け付ける。
そこで目にした見慣れない女子生徒を見て、先生の口にした言葉は女子相手には不適切なように思えなくもないが……相手が相手だ、最適である。
「うへぁぁ……アケミちゃん、逮捕されたって聞いたけど…まさかお昼のニュースになってた脱獄囚って、アケミちゃんのこと?」
先生にとっては初見であり、ホシノにとっては敗北を喫した苦い記憶を植え付けてきた相手である栗浜アケミが、本来ならば持ち得ない得物を乱射していた。
「行きますわよおぉぉぉ!!」
義理の妹であるタイコに破壊された重機関銃 エリザベスの後継 エリシェバを片腕で取り回すアケミが、アサルトライフルなんか非にならない威力の大量の弾丸をばら撒く。
「ぐぬうぅぅぅ!? このっ、筋肉ダルマがァッ!」
試作品ゴリアテの腕部を盾にしてカイザーPMC理事は破滅的な威力の弾幕を凌ぐが、タイコの鎖振り回しがここに来て悪さをし始めている。
擦り傷程度に抑えられているが、逆に考えれば擦り傷を
どれだけ硬い物質であろうとも傷が生じたとなれば、そこを突かれると脆い。キン〇マンの悪魔将〇戦を漫画やアニメで見て、それを知った者も多かろう。
これは試作品ゴリアテにも当てはまる。擦り傷を負った箇所にエリシェバの弾丸を浴びせられ、戦車を投げ付けられ、耐久度低下を知らせる警報が鳴り始めていた。
弾丸の嵐が途絶えるまで耐え忍び、途絶えた途端にアケミへ怒声を浴びせながら試作品ゴリアテの両腕部ガトリングガンを向ける。
「人の姉に暴言吐きかけてんじゃねぇッ!!!!」
その光景にタイコが激怒し、強烈な反動を投獄期間中の鍛錬でより磨き上げられたアケミの怪力によって抑え込まれているエリシェバを足場に跳躍。
コクピット位置の都合上、肉体が地上より高い位置にいるカイザーPMC理事とほぼ同等の高さまで飛び上がってきたタイコに、理事の注意が向く。
「飛ぶとは馬鹿なヤツだ! このまま主砲に呑まれ」
「誰の誰が馬鹿ですって?」
大切なタイコを馬鹿と呼ばれ、今度はアケミがさらに激しく憤る。
お互いがお互いを深く愛している―タイコは家族愛や姉妹愛に近しいもの、アケミはそれに恋情が混じったもの―2人にとって、銃口を向けられたり罵声を浴びせられるのは逆鱗に触れられたようなもの。
詰まるところ、けったいな兵器に乗り込んで2人の前に立っている時点でカイザーPMC理事は問答無用で2人を怒り狂わせてしまうことになる。
「軽過ぎてお話にも成りませんわ。中まで金属を詰め込んだ方が余っ程トレーニングの道具として相応しいッ!!」
エリシェバを置いたアケミが駆け出し、左足を両手で掴む。
両腕で抱えるのではなく、それぞれの両手の五指で掴む。
タイコを鍛える最中、アケミもまた鍛錬を積んでいた。
妹ばかりが強くなっては姉としての面目が立たないから。
『アケミは美人だよな。体も筋骨隆々なのに女性らしいし』
一緒にお風呂に入っていた時に言われた言葉を、投獄される以前も投獄中の生活においても1秒たりとて忘れなかった。
徹底的に己の肉体を鍛え上げながらも、見た目を大きく崩すような過剰な筋肉を搭載することは無い。
そんな今の彼女にとって、重戦車よりも遥かに重量のある試作品ゴリアテくらいなら
「…は!?」
持ち上げられる想定などしているはずが無い。100トンに迫る重量の兵器を生身の人間が持ち上げるなんて、有り得るはずがない。
カイザーPMC理事は間抜けな電子音声を漏らす。
「うはハハハハハハハハ!! デタラメだデタラメだァ! うひはははははははは!!!!」
アケミが試作品ゴリアテに肉薄する為の囮を務めたタイコは着地すると大爆笑していた。
完全に持ち上げられてしまっている巨大兵器
それに乗り込む肥満ガラクタの慌てふためく様子
軽々と持ち上げて不服そうな顔をするアケミ
絵面が滅茶苦茶過ぎて笑いが止められなかった。
「ウッソだろオイ!? アレ持ち上げてんのか!?」
「どれだけ重いと思ってんだよ!!」
「馬鹿言ってるヒマあんなら理事助けるぞ!!」
オートマタ兵士もまさかの光景に動揺しているが、自分達の雇用主を助けなければと正気を取り戻してアサルトライフルを構えようとする。
「あら、別に持ち帰ろうとは思っていませんわ。芸術性も感じなければ機能性も感じない、私の琴線にはふわりとも触れないガラクタですもの。リオさん辺りなら或いは……まぁそれはおいおい。はい、
武器を構えるよりも逃走をオートマタ兵士が選択したのは、アケミが試作品ゴリアテを軽々と軍勢に向けて放り投げたせいだ。
重い物体を力づくで投げるのではなく、ゴミでも放り投げるかのように軽々と。効果音を付けるとしたらぽいっ、だろう。
「ぎゃあああああああああ!!!!」
「うわあああ!? おっ、俺の足が!?」
「ぐぶふぅぅっぅ!?」
超重量の兵器が地面に叩き付けられる音
巻き込まれたオートマタ兵士達の絶叫
激突の衝撃でガクガクと揺られたカイザーPMC理事の声
荒事屋から見れば滑稽であり、対策委員会から見れば唖然であり、カイザーPMCから見れば絶望の光景。
「えぇい! なぜ動かん! この程度の衝撃で壊れる事など!!」
試作品ゴリアテからの警告アラートが鳴り止まない。背面からの落下は各関節部や内蔵可動部に多大な影響を与えており、姿勢制御装置もエラーを吐いてしまい姿勢のたて直しも儘ならない有り様だ。
運が良かったに過ぎない。アケミによる戦車の投擲がモロにヒットしておいて、全くのノーダメージで居られるはずがない。
タイコが振り回した鎖とは重みも、硬さも、勢いも、全てが比較にならない。そこから今に至るまで、動くことが出来ただけでも奇跡と呼べる。
重戦車がアケミと試作品ゴリアテの間に立ち塞がるが、笑顔ながらに怒り狂っているアケミを止めるには力不足だった。
「てええぇぇぇぇ!!」
各戦車の戦車長が砲撃手に指示を飛ばし、砲弾をアケミに向けて浴びせかける。
「ふんっ」
戦車の一斉射撃に対してアケミは両腕を左右へ真っ直ぐ突き出し、その場でくるりと1回転。
自身をコマに見立てて回って遊んでいるように見えながら、綺麗な金髪がヒラヒラと舞うようにも見える優雅な仕草で、アケミは自身へ迫り来る複数の砲弾を
弾かれた砲弾が直撃した数両の戦車が爆発。車内のオートマタ兵士は勿論無事では無く、燃料に引火したことで発生した火炎と爆風に呑み込まれて木っ端微塵になる。
「はあぁぁぁぁ!!?? なっ、なんだいm」
アケミの正面を陣取っていた重戦車の戦車長は、目の前で見せつけられた無茶苦茶な防御方法に声を荒らげていたがすぐに大人しくなる。
何も言わず、中腰姿勢で立ったまま固まっている。
「戦車長!? 戦車長なにが……ひいいぃぃ!?」
通信手が何事かと左後方にいる戦車長を振り返ると、頭頂部から真っ直ぐ胴体を竹刀に貫かれて機能停止している戦車長の姿に悲鳴を上げた。
「待たせたな、ショータイムだ」
タイコが車内に侵入してきたのだ。今回はすぐに逃げ出すことなはく、絶命した戦車長をキューポラから車外へ引き摺り出すと狭い車内に入り込んできた。
護身用のハンドガンを構えるオートマタ兵士の右手を掴み、発砲される寸前でくるりと銃口を本人に向けるように曲げる。
自身の手で頭を撃ち抜いた通信手が崩れ落ち、バランスを崩して後方にいた操縦手に倒れ込んでしまい操縦桿を誤って前進方向へと倒してしまう。
弾き返された砲弾による被害とタイコが侵入した仲間の車両の暴走。
この2つが戦車部隊に『どう対応すれば良いのか』という共通の疑問を植え付けて満足に行動出来ない状態へと追い込んでいた。
「あの戦車を狙え! 中にはタイコが居るッなんだ!!?」
長い間カイザーPMCに所属して場数を踏んでいる歴戦のオートマタ兵士は冷静に、暴走している戦車を撃破すればタイコを仕留められる可能性がある事を見抜いていた。
しかし、彼は狙っている相手を妹と呼び、姉妹愛を向けながらもそこに恋情を混ぜ込んでいる相手の、人智を逸脱した身体能力を知らない。
「こちらの方が軽そうですわね。まぁ、当たり前と言えば当たり前なのですが」
巨体であり鍛え上げられた筋肉を搭載しているアケミは一見して鈍重そうな印象を与えるが、その実はタイコ程では無いにせよ機敏に動くことが出来る。
以前は自身の持つ怪力のみでどうとでもなったがタイコと出会い触れることで相手の油断や隙を狙い撃ちする技術、一瞬にして間合いを詰めたり離すステップの技術を会得していた。
「……あらあら。思っていた以上に軽量なのですね」
タイコに注意を向けていた戦車の車線上に飛び出してきたアケミの右手五指が戦車の前方装甲に
そこから左手五指も前方装甲にめり込むと、左右へと引っ張ることで戦車を
トム〇ジェリーでムッキムキになったジェリ〇が叩きつけられた分厚い電話帳を引き千切ったように、バリバリと凄まじい音を伴いながら装甲が裂けて重戦車に搭乗していたオートマタ兵士が落ちてくる。
「な、なんだコレは……どうなっている!!」
自動修復プログラムにより姿勢制御装置が復旧した試作品ゴリアテが起き上がる頃には、派遣した戦闘車両と戦車の姿は見るも無惨なことに。
「機械仕掛けといえど所詮はこの程度……私とタイコの絆を! 彼女に向ける私の愛の深さを! 甘く見た愚行のツケと心得なさいッ!!」
暴走する戦車によって弾き飛ばされ横転した戦闘車両が、装甲の薄い車体底部をアケミのエリシェバやロケットランチャーで撃ち抜かれ爆散。
戦車は1両残らず引き裂かれ、装甲の破片を手裏剣のように投げることでオートマタ兵士を次々と粉砕し、その粉砕された兵士の残骸がまたアケミの武器になる。
「首と頭部の強度が足りてねェッ!!」
前方から迫るヘヴィタイプ・オートマタの両腕を用いた捕縛攻撃をスレスレの所でステップ回避したタイコは、顎下を狙っての捻るようなサマーソルトキックで頭を吹き飛ばす。
挟撃を狙う2機のヘヴィタイプ・オートマタも、身体の上下が入れ替わっている状態で大きく開脚した両足に顔面を蹴られて潰されてしまい大破。
ならば背後から、と忍び寄っていたオートマタ兵士は開脚蹴りの際に身体の前後を入れ替えたタイコの着地場所にされてしまう。
折り曲げた両足の膝で頭部を挟み込み、そこからバク宙。フランケンシュタイナーと呼ばれる格闘技によって巻き込まれたオートマタ兵士は、脳天から固いアスファルトの床へと叩き付けられ機能停止を起こす。
たった2人に、カイザーPMCは気圧され始めていた。
それをある程度聡明なカイザーPMC理事は理解し、理解したが故に苛立つ。
純然たる暴力と技巧による暴力に圧倒されている事を、彼は認められなかった。
「有り得ない…! このような、このような事ォ!! 有り得てはならんのだァァァァァァッ!!」
両肩部のミサイルポッドから大量のミサイルをばら撒き、周囲への被害を一切考慮しない無差別攻撃を開始。
巻き添えを食らっているオートマタ兵士の声も彼には聞こえない。
ミサイルの飛翔音と爆発音、それに紛れるけたたましい銃撃音以外は。
「有り得るのです。ひとえに、アンタが私たちより弱いから!!」
荒事屋とカタカタヘルメット団、駆け付けて傍観している対策委員会と先生、アケミとタイコに直撃や爆風の影響が見込まれるミサイルをオペレーター総出で算出し、それを聞き取ったアケミによるエリシェバの掃射。
ミサイルは次々に迎撃され、無駄足に終わった。
弱い。その一言が、理事の心をエグり苛立ちを更に募らせる。
「舐ァめるなぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁァァァァァァッッ!!!!!!」
実弾兵器では無い、対象を超高温でもって焼き溶かすレーザーを放つ主砲をアケミへ向ける。
まずは自分をバカにしたあの筋肉ダルマを……
機械仕掛けであり感情の宿る余地など無いはずの彼の瞳から、そんな意思が手に取るように分かった。
「………スゥ……フゥ……よし」
本来ならば巨体なのだが隣にアケミがいることで小さく見えるタイコが、姉から模倣したスケバンの真髄を込めた呼吸法をしながら頷く。
決意したように呟くとアケミの顔を見上げた。カバンと竹刀を繋ぐ鎖を手渡し、ニコッと笑う。
「アケミ、『アレ』を使うぞ」
「ええ、良くってよ」
手渡された鎖を左手首に巻き付けると、アケミは両手を組む。
膝を落とし、組まれた手の位置を下げるとそこにタイコが足を乗せる。
「悠長な真似をぉぉぉぉぉぉぉぉッ!! 消し飛べぇぇぇぇぇぇッ!!!!」
捕縛するという話はどこへやら。
怒りで協力者との約束が頭からすっぽ抜けたカイザーPMC理事の怒りの咆哮と共に、主砲がレーザーを放つ。
「行きなさいッ!!」
それよりも早く、アケミもスケバンの真髄を込めた呼吸法を用いながら全力でタイコの肉体を
真っ直ぐに飛び上がったタイコと地上のアケミを繋ぐ鎖が瞬時に伸び切り、次の瞬間には
「「「飛んだあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?〇△□✕!?!?」」」
生身の人間が空高くへと打ち上げる光景に対策委員会と先生の声がハモる。
その声を聞きながら上空で、タイコが己の得物を手放す。
栗浜姉妹は両手を繋ぐと、そこから肩組みへと移行。
アケミは右足、タイコは左足を伸ばして互いに密着させ、もう片方の足は折り曲げて逆三角形のような形を形成すると、地上の試作品ゴリアテ目掛けてドリルのように回転しながら落下していく。
「「うわ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!!!!!」」
落下に怯えるものとは違う、気迫を宿した絶叫を放ちながら、最強の栗浜姉妹が放つ最強の合体技。
「ウルトラァァァァァァッ!!」
「スパイラルゥゥゥゥゥッ!!」
「「ラァァァァブラブゥゥゥッ!!」」
2人の強い愛情が可能とするその技の名が、闇夜に包まれたアビドスに響き渡った!!!!
「爆散・スケバンシスタァズ・キィィィィック!!!!!」
直撃を察知したカイザーPMC理事が咄嗟に緊急防衛機構を作動させ、自身の身体を分厚い金属板に包む。
封鎖が終わったと同時に二人の蹴りが試作品ゴリアテへと直撃し、あまりの威力の強さに守られているカイザーPMC理事のコクピットだけを試作品ゴリアテから
脱出機構が作動してではなく、力技でのコクピットの離脱。
それが試作品ゴリアテを無傷でいさせる訳でも無く、蹴りの威力で後方へと転倒。
硬い地面をガリガリと足底で削り取りながら着地した二人は火花を散らす試作品ゴリアテにも、吹き飛ばされた衝撃で気絶したカイザーPMC理事に目もくれない。
左手と右手を繋ぎ合うと空いているもう片方の腕を空へ突き上げ、声を張り上げたッッ!!!!
「「ヒィィィィト・エンドォォォッ!!!!!!」」
その声と同時に、試作品ゴリアテは木っ端微塵に爆散した。
最高に楽しい悪ノリでした。
明日明後日は旅行に行くので投稿されないかもしれません。
茨城県大洗町を全身黒森峰で歩き回る家元に頭焼かれた男がいたら作者ですので、見掛けたら『スケバン!!』と声掛けてください。
『スケバンはいいぞ!』と返ってきますので