スケバン憑依おじさん   作:百合豚丼

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日刊ランキング10位に居て驚いています…何かあった?


荒事屋

「あら、飲食店にオートマタとは変わったお客様ね。珍しいこともあるものだわ」

 

 ガラガラと音を立てるでもなければノックするでもなく、いきなり扉を蹴り破って飛び込んできたカイザーPMC所属のオートマタ兵士の頭部を殴り潰しながらアケミはニヤリと笑う。

 

 大切な妹にして初恋の人の読み通り、彼女は後を付けられていた。

 

「なっ、なんでアケミが!? タイコは」

「彼女に何をするつもりなのかしら?」

 

 予想外の人物からの強襲に狼狽えながらショットガンを装備したオートマタ兵士がそう叫ぶと、アケミの額に青筋が刻み込まれ怒声が放たれる。

 

 有利な立場にいるとはいえ大規模かつ多角化企業であるカイザーコーポレーションに再度宣戦布告したタイコは、カイザーPMC理事とジェネラルが派遣した隠密行動やターゲットの追跡を得意とする隠密部隊と拠点制圧を主目的とした重武装部隊の合同部隊に追跡されていた。

 

 タイコからの宣戦布告に、カイザーコーポレーションは全力で臨むことを決めた。

 今まで被った被害は総額では現在取り込もうとしているアビドス高等学校が抱える借金など雀の涙程度に思えるほどであり、今まで被ってきた屈辱感はそれすらも瑣末なモノに思えるほど根深い。

 

『奴等の全てを奪い、破壊し、取り戻す』

 

 カイザーコーポレーションのトップであるプレジデントの言葉には、冷酷な性格の彼らしからぬとも欲深い彼らしいとも言える凄まじい熱意が込められていた。

 

 その言葉には、組織のトップという彼ならではの立場が生み出す敵対心や嫉妬心、対抗意識があるのは否定しようがない。

 

 大人の自分が様々な策略を巡らせ、構想を重ね、生み出したカイザーコーポレーションという組織。

 己の欲望を叶える為に欠かせない土台を作り上げた彼にとって、荒事屋とそれを生み出したタイコは存在することすら許し難い相手だった。

 

 様々な策略や構想を行使する中で何度も味わった苦悩や苦痛を彼は一度たりとて忘れたことはない。

 忘れたくても忘れられはしない。何度も壁に当たり、取り除きようのない障害が現れ、その都度苦しめられながらもどうにか乗り越えて今に至った。

 

 それをあんな年若い少女が自分と同じように成し遂げ、何度も何度も苦しんだ末に作り上げたカイザーコーポレーションと張り合える程の巨大な組織を作り上げたのだと、認めたくなかった。

 

認めてしまえば、自分の今までの意味が分からなくなる。

 

 苦しんだ事に意味は有ったのか?

 

 苦しんだ甲斐が本当に有ったのか?

 

 自分の欲望は、本当に叶うのか?

 

 過去も、今も、未来も、アケミの存在が彼の思考回路の中にチラつく度に彼女へ対する嫉妬心や敵対心によって掻き乱される。

 自分と同じ立場に、自分よりも遥かに若造である彼女がふんぞり返る姿が、プレジデントのうちに強烈な感情のうねりを生み出す。

 

 成し遂げて来た意味があるのか、突き進む意味があるのか、成し遂げようとする意味があるのか、分からなくなってしまう。

 

『栗浜タイコを排除しろ』

 

 彼は確かに大人だ。オートマタなのだから大人も子供もあるかと言われればそれはそうだが、少なくとも外見や思考は大人のそれだろう。

 だが大人であるが故に、彼は短絡的な思考へと陥る。

 悩ませてくるのならば、排除してしまえば良い。排除さえしてしまえば、もう彼女のせいで頭を抱える必要は無い。

 

 カイザーPMC理事とジェネラルもアケミからの宣戦布告を聞いていた事だし、丁度良いと動かすことにした。

 2種類の部隊の混合部隊を結成し、闇銀行襲撃の翌日には早速アケミの追跡と排除を企てたが、それをタイコは見越した上で堂々と、それでいて無防備に人々の往来がある大通りに姿を現す。

 

 大通りは人目もあり、何よりも人混みに紛れて荒事屋構成員が潜伏している可能性がありカイザーコーポレーション側も不用意に手は出せない。

 攻撃したくても出来ないから追跡するしかない状況を作り出してわざと追跡させ、事前に柴大将と会談して了承を得た上で貸し切った柴関ラーメンへと引き寄せた。

 

「彼女への暴行は万死に値する行為よ。死して詫びなさいッ」

 

 頭部を殴り潰したオートマタ兵士の残骸をショットガン装備のオートマタ兵士へと投げ付けて怯ませたところに、アケミが突進。

 鍛え上げられた屈強な肉体を勢いのままに叩き付けて壁に打ち付けると、頭頂部を掴んで強引に頭部パーツを引き抜いた。

 

 柴関ラーメンを取り囲むオートマタ兵士の総数、実に300機。

 そのうちの2機を仕留めたと聞けばまだまだ壊滅には程遠い被害だが、それでも遠距離から状況を随時視認している理事とジェネラルは油断を捨てている。

 

「「総攻撃せよ!」」

 

 荒事屋は少しでも緩みを見せると、そこへ押し寄せてくる。タイコが切込隊長として突っ込んできた時なんて、その後の結果は目も当てられない惨劇だ。

 

 タイコでそうなるのだから、今回のようにタイコより上の立場である大頭目のアケミが先手を打ったとなればどんな被害を被るかは想像すら付かない。

 ヴァルキューレ警察学校の生徒を相手に甚大な被害を叩き出した実績を持つ彼女が居て、敵対姿勢を取っているとなれば最初から全力で行かなければ確実に押し負ける。

 

 理事とジェネラルの思考回路は完全にシンクロしていた。

 双方からの総攻撃指示が下り重武装部隊が正面、隠密部隊は正面以外から柴関ラーメンへ突入し入店したのを確認しているアケミの排除に臨む。

 

「蜂の巣にしてやらァ!」

 

 重火器の扱いにも耐えられるよう設計されているヘヴィタイプ・オートマタがガトリング砲を柴関ラーメンに向けて乱射する。

 店の入口も正面の壁もあっという間に風穴だらけの蜂の巣にされてしまい内装が丸見えの状態となるが、弾幕を真正面から浴びたはずのアケミには傷一つない。

 

 衣服は流石に破れているものの、肌には擦過傷どころか痣すら出来ていない。

 

「あら、その程度? まだタイコの打撃の方が威力が有りましてよ」

「ウッソだろお前!?」

 

 装甲車すらスクラップにするガトリング砲を真正面から生身で受け切った彼女の姿に動揺する重武装部隊に、肉体に付着した火薬による黒い汚れを払い落としたアケミが微笑む。

 

 優しい笑みだが、それに怒りが多分に含まれているのは誰が見ても簡単に読み取れた。

 怒りを向けられている混合部隊にも、それを見ている()()()()()()()()()()

 

「皆様。ご覧の通り、カイザーコーポレーションは私達荒事屋へ暴力を振るうつもり満々でございます。ならば、我々も武力と結束でもって立ち向かうのが筋ではありませんこと?」

「「然り! 然り! 然りィッ!!」」

 

 床下に身を潜めていた荒事屋構成員達がアケミの言葉に声を張り上げながら姿を現し、弾薬の装填が済まされている各々の得物を構えて引き金を引く。

 

 最初に浴びせられた弾幕のお返しとばかりに柴関ラーメン内部から浴びせられる弾幕に、重武装部隊が停滞を余儀なくされる。

 それを打開すべく正面以外から店内への侵入を始めた隠密部隊の前にも、荒事屋という組織ならではの迎撃部隊が姿を現す。

 

「驚いた。タイコの読み通り、裏からも回って来たわ」

「敵拠点に乗り込む時に裏から回るってのは定石ではあるが、それにしてもまた大勢だな」

 

 ゲヘナ学園風紀委員会 委員長 空崎ヒナ

 

       並びに

 

 トリニティ総合学園 正義実現委員会 委員長 剣先ツルギ

 

「空崎ヒナに剣先ツルギ!?」

 

 カイザーPMC理事は立ち上がって叫ぶ。

 

「キヴォトス内の最強は誰かという議論で、特に名が上がる二人が何故ここに!?」

 

 ジェネラルも頭を抱えて叫ぶ。

 

「栗浜……タイコッ!!」

 

 プレジデントはタイコの思惑を読み取り、苛立ちを隠せない。

 

「それだけ俺が恨まれてるってこった。ま、それだけ荒事屋がデカくて強い組織になったって証明だから嬉しくはあるがな」

 

 2人の間でひと暴れする前の腹ごしらえとばかりに骨付き肉を食いちぎるタイコは、今回の襲撃を予見して協力者を呼び寄せた。

 

 それもただの協力者ではない。

 廃校対策委員会第1章及び第2章においてアビドス高等学校と関係を持った学園であり、それでいてキヴォトスの地で絶大な影響力を持ち、更にそれでいて荒事屋と良好な関係を築いている学園。

 

 これ等の条件を満たしており尚且つ、荒事屋がどれだけのパイプを持っているのかを証明するにも足る協力者。

 それがゲヘナ学園とトリニティ総合学園、その中でも特に高い実力を持つ空崎ヒナと剣先ツルギであり、両名がそれぞれ所属する風紀委員会と正義実現委員会だった。

 

「大人は武力で荒事屋を叩き潰し、搾取しようとする。ならば我々荒事屋は、学生達なりの武力と結束でもってそれに抗い、学生の居場所と青春を守る為に進む。手を貸してくれるよな?」

 

「無論だ」「勿論よ」

 

 ゲヘナ学園もトリニティ総合学園も、どちらも荒事屋とは交友関係がある。

 特にトリニティ総合学園は陰湿なイジメや迫害が蔓延る校風がタイコを寄せ付けないと思われがちだが、だからこそ彼女は敢えて関係性を構築している。

 

 表出化しにくいからこそ、より注意して関わることで落伍者や追い出されてしまった生徒を受け止める為に。

 

 学生が生きるには便利なようであり生きにくくもあるキヴォトスの地で懸命に日々を過ごす生徒を一人でも助け、救う為に活動するタイコは決して諦めることは無い。

 

 彼女が諦めず、避けず、熱心に足を運び手を貸してくれているからこそ学園に居続けられなくなった生徒が出ても、彼女達が深い絶望に足を取られて歩みを止めることなく生きていられる。

 それを理解している二人には、反目し合う学校の生徒という立場を無視してまでもタイコと荒事屋に手を貸すだけの動機が既に出来ていた。

 

「ゲヘナの風紀委員会にトリニティの正義実現委員会!?」

「あの二校は不仲なんじゃなかったのか!!」

 

 まさかの協力者に隠密部隊にも動揺が広がる。

 

 そんな部隊を前にして肉を食べ終えたタイコが、獰猛な笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「テメェ等ァァァァ!! 撃鉄を起こせェェェッ!!」

「「「了解(ヤァァァ)ァァァッ!!!」」」

 

 彼女の号令に合わせて潜伏していた荒事屋構成員が次々に姿を現し、発砲を開始する。

 

「この場は私とツルギが守るから、イオリ達は店内の警備に回って。カイザーコーポレーションのオートマタは全て撃ちなさい。正義実現委員会は撃っちゃダメよ、味方なんだから」

「正義実現委員会は風紀委員会とは逆回りで警備しろ。風紀委員会所属の生徒は撃つなよ、仲間だからな」

 

 最重要護衛人物であるタイコを守る為にもヒナとツルギは残り、他の生徒達を店内の警備に回す。

 

 手薄にはなるもののキヴォトス最強の座を争う数名の内の2名が手を組むという光景は、隠密部隊に凄まじい絶望と動揺を植え付けた。

 

「行くわよ、ツルギ」

「言われずとも。恩に報いる為にも、タイコには傷一つ負わせない」

 

 ヒナとツルギも各々の得物を握り締め、荒事屋構成員達による濃密な弾幕を背に飛び出して行った。

 

「こんな雑魚共じゃ話にも時間稼ぎにもならねぇぞッ!!」

 

 鎖を振り回し、両端に取り付けたカバンと竹刀でオートマタ兵士を粉砕・両断するタイコを守る為に。

 

 心強い協力者であり友人でもある2人が守ろうとしてくれる事がタイコには嬉しく、より力を与える。

 一人の元大人として、生徒に己の生き様を示す為にも。

 

「恐るるに足らん!! 俺は荒事屋頭目! 栗浜タイコだァァァッ!!」

「お遊びにもなりませんわ!! 私は荒事屋大頭目 ! 栗浜アケミですわッ!!」

 

 

 荒事屋のツートップは怒声を放ちながら、押し寄せるカイザーコーポレーションが差し向けた混合部隊を荒事屋構成員達や協力者の力を借りて押し返す。

 

 柴関ラーメンの外にも控えている協力者達の尽力もあって、総勢300機にもなる混合部隊は僅か1時間前後で壊滅させられるのだった。

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