この世界で活躍しているのはアイドルだけじゃない 作:たかはすTR
イメージを壊したくないという方は、後書きを見ないことをオススメします。
俺、福島雅也は日本を代表する俳優である。
しかし、俺が望んで俳優になった訳じゃない。
2年前、俺が中学校を卒業した日、麻理がいきなり「兄さん!書類審査合格したよ!」と言ってきた。
麻理は俺に内緒で芸能事務所のオーディションに応募していたらしく、書類審査が合格するまで俺に言わないようにしていたらしい。
もちろん、俺は芸能人になる気はなかった。
今の芸能界は戦国時代と言ってもいいくらい、多くの人が芸能人、特にアイドルを目指しているのだ。
容姿は平凡。
彼女いない歴=年齢。
おまけに女子は俺にあまり話しかけてこない。
取り柄は学力と運動神経だけ。
小学生の時に聞かれた「将来の夢は?」という質問に公務員と答えた俺には縁のない世界である。
本当は面接にすら行く気がなかったが、ユーリまで俺に行くように言ってきたため、思い出作りと思ってオーディションに行くことにした。
麻理が応募した事務所はそんなに大きい事務所ではなかったが、それでもたくさんの人がいた。
そのほとんどがイケメン、美少女ばっかりだったので非常に居心地が悪かったが、俳優部門とアイドル部門でオーディション会場が別れていて、ほとんどの人はアイドル部門のオーディション会場に行った。
人数は半分以下にはなったがそれでもたくさんの人が俳優部門に残っていたので、俺が合格することはないだろうと考えていた。
オーディションは台本を渡され、物語の1部分を演じるというものだった。
試験官は五人。台本は自分の番になったら渡され、内容はそれぞれ異なる。
オーディションを受ける人は台本を覚える時間を最大5分まで与えられ、本番は台本を見ながら演じることもできるが、評価は下がる。
逆に台本無しで演技をすれば評価が上がるが、何回も失敗すれば当然評価が下がる。
オーディション会場には他の受ける人もいて、他の人達の演技を見れるようになっていた。(これは大勢の人の前で、緊張しないで演じることができるかどうかを確かめるためだと、入社後に聴いた)
他の人達は真面目に役になりきって演じる中、俺は落ちても問題ないため、台本を軽く読んですぐに演技を始めることにした。
その時、俺はせっかくの思い出作り、どうせ落ちるなら極限までかっこよくやろうと思い、中二病患者みたいな演技してみた。
言葉にするのは台本に書いてあったセリフとアドリブで付け足した中二病なセリフ。
動きはその役に合った演技を大げさにやった。
…あれ?これってよく考えたら、中二病患者みたいじゃなくて、本物の中二病患者と思われるんじゃ…
…と、とにかく俺は俳優なんて縁のない、ただの中二病患者ですよアピールをしたのだった。しかし
「君!素晴らしい演技だったよ!是非とも我が社に来てくれ!」
なんでこうなった…
ちなみに、この時俺を誘ってくれた人は、この事務所の社長の霧島大吾さんであり、俺は断ることもできずに、俳優になった。
Side. 試験官
「次、福島雅也君。」
「はい」
彼を見た第一印象は、本当は俳優になるためにオーディションを受けにきたのではないんじゃないか、というものだった。
いや、悪い意味ではなく、今の時代、というか日高舞が登場してから、アイドルを目指す若者が増え、殆どの芸能事務所がアイドルの育成を始めるようになった。
例に漏れずこの事務所も今年からアイドルを育成を始めるために、募集をかけた。
元々、この事務所は俳優の育成を主にしていたが、昨今のアイドルブームで、ドラマや映画にアイドルが主演を務めたりするため、若い子達はアイドルを目指し、俳優を目指す若者が少なくなってしまった。
大手の事務所ならばともかく、うちのような真ん中よりちょっと上位の事務所に俳優オーディションを受けにくるのは、20代後半から30代前半の人が主になってしまったのだ。
そのため、その書類には必然的に目に入った。
『福島雅也 15歳』
この年齢の子でアイドルではなく俳優としてうちに応募してくれたのは彼1人。
俳優に応募してきてくれた10代の子は、ここ数年全くいなかった。
彼はプロフィールを見てみると、学力はトップクラスで運動もできる。
髪の色はダークブルーまではいかないが、黒に少し青が混じったような色。
顔のバランスは整っていて、体格もしっかりしている。
誰がどう見てもイケメンである。
書類審査に合格するには文句無しだった。
これだけのアイドルになるのに有利な容姿でありながら、何故アイドルではなく、俳優を目指しているのか疑問に思ったが、オーディションで彼の演技を見て、その疑問はなくなった。
オーディション当日、受けにきた人の大半は5分間きっちりと台本を読み、台本で指示されたとおりの演技をした。
このオーディションは本番を意識したものではなく、その人物の演技力を見るものだ。
台本どおりに演技をできるか+その物語に合ったアドリブを入れることが出来るかで評価される。
台本zどおりに演技をするだけならアイドルでもできる、という社長の考えからこの評価基準になった。
まぁ、オーディションでアドリブをいれる猛者はなかなかいないため、最高評価で入社したものはいない。
今回も猛者は現れないと思っていたとき、彼の順番がやってきた。
そして、試験官全員が彼に驚かされることになる。
何と彼は台本を30秒しか読まず、台本を私達に返し「よろしくお願いします」と言ったのだ。
これには他の受験者も驚き、本当に大丈夫なのかと疑問のこえを上げる者もいた。
しかし、その疑問の声も彼の演技が始ると無くなった。
最初は歌が得意ではないためアイドルを諦めたのだと思った。
その次に思ったのは踊ることが好きじゃないからアイドルを諦めたのではないか。
だが、そのどちらでもなく彼はーーー
俳優になるための才能が誰よりもあったから、俳優を目指したのだ。
この会場にいる全員が彼の演技から目が話せなくなった。
彼に渡した台本は、今回用意した台本の中で最もセリフが多く、1番難しい役だ。
それを彼は全部のセリフをたったの30秒で覚え、尚且つ台本にはないセリフや動作を何の違和感も感じさせずに演じたのだ。
自分のセリフを短時間で覚える記憶力、その人物の感情を相手に伝わるようにしっかりと演じる表現力。
そのどれもが他の受験者を上回っていた。
彼の演技が終わると社長が1番最初に拍手をし、それに続くように試験官、受験者、この場にいた全ての人が彼に拍手をした。
彼にはその演技ができて当たり前だと思っているのか、自分が拍手を受けているのが解らないという表情をしていた。
拍手が収まると社長は
「君!素晴らしい演技だったよ!是非とも我が社に来てくれ!」
と言った。
その言葉に誰一人反対しなかった。
こうして彼、福島雅也は芸能事務所、『霧島芸能社」に入社した。
この後、彼が出演したドラマが必ず大ヒットし、1年半後には日本を代表する俳優になり、『仕事人』というあだ名とともに世界までその名を轟かせた。
だが、彼にはいくら海外から出演のオファーがあっても受けることが無い。
彼曰く、「まだまだ未熟な自分では海外の映画に出るのはまだ早いし、海外からのオファーを受けると日本のドラマに出演できる回数が少なくなって、俺のファンの人達に申し訳がないから」だそうだ。
しかし、同じ事務所の人は海外のオファーを断る本当の理由を知っている。
「妹達が海外に行くことに反対しているから」
彼、福島雅也はシスコンであり、彼の妹達もブラコンだった。
人物紹介
福島雅也
年齢 17歳(現在)
性別 男
職業 俳優
趣味 カラオケ 妄想をノートに書く
好きなもの 家族 激辛麻婆豆腐
嫌いなもの 忙し過ぎるスケジュール 茄子
今作の主人公。
妹に言われて俳優のオーディションに行ったら受かってしまった青年。
将来は公務員などの安定した職業に就きたかったため、ノートにあり得たかもしれない、もしもの自分を想像して書く趣味があるが、俳優として濃い時間を送ってきたせいか、妄想の内容が公務員から芸能事務所の事務員という設定に変わってきている。
家族は両親に妹2人。
しかし、両親は滅多に家に帰って来ないため、ほとんど3人暮らしの形になっている。
シスコンであり、それが原因で中学校では女子にあまり話掛けられなかったが、彼の容姿はとても良かったため、ファンクラブ的なものは存在していた。
現役の高校生であるため、昨年はデビュー作と他2昨しか出演していないが、その全てが大ヒットし、去年は年間視聴率ランキングトップ3が全て雅也が出演した作品であった。
最近の悩みは俳優の仕事が忙しくて、妹達と過ごす時間が少なくなっていること。