ポケモン✖︎ウルトラマン 作:Raitoning storm
Dual,stand-by!
「カナタくん。せんべい、一つ買ってもいい?」
「はい!せんべいおひとつですね!」
「カナタ!俺もひとつ!」
「わかってるよ!ちょっと待ってろ!」
ここはせんべい屋『アサミ』。エンジンシティの一角にあるしがないせんべい屋。
地元の人たちから愛される…まあいわゆる地域密着型って感じの店だ。
「カナタくん聞いた?今年のジムチャレンジ、チャンピオンダンテからの推薦が三人もいるんだって!」
「あ!それ俺も聞いた!しかも委員長からの推薦もいるし!今年は盛り上がりそうだよなぁ〜!」
…チャンピオンダンテ、委員長、ジムチャレンジか…。
「へ〜」
「反応うすっ!カナタ、お前もガラルの人間なら、もっとジムチャレンジに興味持った方がいいぞ?」
「そうよそうよ!地方を挙げてのイベントなんだから!周りの人と話が合わなくなっちゃうわよ?」
「て言っても…俺、ポケモン持ってないし。それに、俺の周りにジムチャレンジに興味ある人なんていないよ。爺ちゃんも興味なさそうだし…」
あの人は大抵のことに興味ないけどな。テレビ見てるところとか見たことないし。
「俺らは!?」
「お前らはジムチャレンジ以外のことも俺と話してるだろ」
「なんでお前はポケモン持たないんだよ!?ガラル、いや、世界中探したってそんなやつ他にいないぞ?」
「爺ちゃんは持ってないよ」
「お前の家が異常なんだって…!」
…そんなこと、言われても。
「カナタは!ジムチャレンジ出たいとか考えないのかよ!ガラルの人間なら一度は考えることだろ!?」
「いいよ。俺はこのせんべい屋継ぐって決めてるから。お前らもこのせんべい屋なくなったら困るだろ?」
「「それは…まあ、うん。」」
「ほらな?俺のことなんて気にせず、お前らはジムチャレンジ楽しんでこいよ。」
時刻は午後1時を回ったころ、奥にいる爺ちゃんに声をかける。
爺ちゃんには恩義がある。男手一人で俺を育ててくれたから。
「爺ちゃん。そろそろ休憩にしたら?かれこれ5時間くらいは作業してるぞ」
「…儂はいい。お前こそ休め。お客さんの足も少なくなってきただろう」
「爺ちゃんが休まないのに休めねぇって。」
「そういう…頑固なところは誰に似たんだ」
その恩義を果たすためにも、爺ちゃんが始めたこのせんべい屋を継ぐ。それが俺の一番の目標。
「…ジムチャレンジは、まだ好きになれんか。」
「…聞いてたのかよ。さっきの会話」
「この家も古いからな。店先の会話くらい聞こえる」
「…別に嫌いになったわけじゃない。ただ、あの人たちが…」
「…もういい。配達行ってこい」
「…うん」
「やっと着いたぜハロンタウン…自転車なかったら着かなかったな」
瞬間、小さな振動が地面から伝わる。
「…?なんだ?」
その直後、その振動が唸るような大きなものに変わる。
「うおっ…!これやばいんじゃないか!?」
街全体に警告を知らせるサイレンが鳴る。
『まどろみの森に怪獣出現!周辺住民はただちに避難を開始してください!繰り返します!まどろみの森に怪獣出現!』
「…!なんだって!?」
『ギシャアアア!ギシャアアア!』
「…あいつか!」
頭に二つの大きな角の付いた怪獣が、森の中を進んでいくのが視認できる。
「…おい!そこのあんた!何してる!危ないぞ!」
「…子供が、私の子供が!まだ森の中にいるんです!友達も一緒に!」
「…まじかよ!?ていうかなんで!?」
「…森に入っちゃったウールーを追いかけていっちゃって…このままだとあの子たちが!」
「…とりあえず、あんたが行っても危険だ!俺が探してくる!全員で何人いる?」
「あなたと同じくらいの男の子が二人と女の子が一人いて、あとチャンピオンも二人のことを探しに行っちゃって…」
「…わかった!あんたは、そいつらを出迎えられるように避難所行っといてくれ!」
「は、はい!」
自転車を起こして森の方へと漕ぎ出す。
「間に合ってくれよ…!」
「おーい!誰かいるかー!いるなら返事してくれー!」
声の出る限り、周囲への呼びかけを続けるが、答える声はない。
「…くそっ!やっぱり間に合わなかったのか…?」
『ギシャアアア!ギシャアアア!』
「…おーい!こっちー!」
「…!いた!」
「よかった。人が来てくれた…」
「あんた!怪我はないか!?ここにいる人たちのも教えてくれ!」
「いや、全員目立ったのはないはず。」
「わかった。俺、カナタ!俺はこっちの男の子を担ぐから、あんたはそっちの女の子を担いでくれ!」
「うん!僕はマサル!まかせて!」
そうして避難を始めようとしたときだった。
『ギシャアアア!ギシャアアア!』
「…!怪獣がすぐそこに…」
怪獣が暴れ出し、身動きが取れなくなってしまう。
「…どうしよう…こんな近くに怪獣が…」
「諦めんなマサル!ここで立ち止まったら、みんなを助けられないだろ!?」
「……カナタ…」
「俺たちが、今!ここで!やるしかねぇんだ!」
「…!うん!って、うわっ!」
その瞬間、突如として目の前が激しい光に包まれる。
「…これは…」
宙に浮かぶ、カードと、
「D…フラッシャー」
「…また、やれってことか。」
「…カナタ?どうしたの?」
担いでいたホップを降ろしながら話す。
「…なあマサル。今から起こること、絶対に秘密に出来るって約束出来るか?」
「…え?」
「約束!できるか!?」
「う、うん!」
「よし、掴むぜ!カナタ!」
瞬間、辺りが光に包まれる。
『ウルトラディメンション!』
「輝け…フラッシュ!」
「デッカー!」
『ウルトラマンデッカー!フラッシュタイプ!』
『デヤッ!』
光とともに現れたデッカーは、ゴモラにパンチを繰り出す。
怯んだように見えたゴモラだが、頭部の角を大きく突き出しデッカーに頭突きを繰り出そうとする。
デッカーはその攻撃を受け止めるが、止めることは出来ず後ろに後退してしまう。
痺れを切らしたのかデッカーは、片手でゴモラを抑えつつ、もう片手でゴモラにチョップを打つ。
チョップを強く打ちつけられたゴモラは、頭を大きく上げてデッカーを押し返し、デッカーにタックルを決める。
『…そろそろ活動限界か。』
胸のカラータイマーが警告を知らせるが、ゴモラは体を大きく回して、尻尾の攻撃をデッカーに仕掛ける。
デッカーはその攻撃を受け止め、尻尾を大きくスイングし投げ飛ばす。
『これで終わりだ!』
そしてデッカーは、額に両腕にエネルギーを集中し、光線によってゴモラを撃退した。
「…結局あの後、何も言わずに出てっちゃったな…」
まあ、もう会うこともないだろう。それよりも先日の配達の残りがまだ余ってる。
「…この家だな。すみませーん!」
「はーい。ありがとうございます…って」
「「あっ」」
「…カナタ」
「…ま、また会ったな、マサル…」