Hashirama Archive   作:アテナ18号

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重圧

 

 『待ってッ!!アビドスは関係ないッ!!』

 『関係ないことはないだろう?何より君は……唯一残った───そう、対策委員会などというお遊戯会とは違った、正当な生徒会役員じゃないか。自身の行動に責任を持たなくてはな』

 『ッ、お遊戯会じゃない!!訂正しろッ!!』

 

 『……それと、少し言葉遣いが過ぎるな。もう少し自分の立場を自覚するべきじゃないかな?これ以上私の"信用"を失っては困るだろう?』

 『ッ!!………』

 『物分かりが良くて何よりだ。クク、それではな』

 

 

 「ッ、クっ…!」

 「………」

 

 ヒナのデストロイヤーから放たれる無数の弾丸が、ホシノの盾と体幹を以てして正面から受け止めることを許さない。全長1mを優に超える、常人ならば二人での運用を想定された巨大な反動を、その純然たる力によって抑え込む。もはや絶え間なく放たれる銃弾が一筋の光線と化して、薙ぎ払われた廃墟の数々がまるでバターのように斜めに分断され瓦解していた。

 高反動で機動力に欠ける、その、たった一つの欠点を、ゲヘナという魔境を文字通り掌握する───暁のホルスにも劣らない、キヴォトス最高の神秘の手によって無理やりカバーする。そんな最強に、手も足も出ないのは実力差ではなく、何かノイズが走るかのように何度も顔を顰めるホシノの心理的なストレスが影響しているのだろう。

 

 「ッ、はぁ、はぁ…!」

 「情報部時代に色々話は聞いていたけれど……少なくとも、今の貴方では、私には敵わない」

 「ッ、うへぇ、ちょっとッ、早計すぎるんじゃない?」

 「まぁ」

 「ッ」

 

 「だからと言って手は抜かないわ。気絶させてでも連れ戻せと言われてるから」

 

 パシンと、ヒナの羽が剛力によって大きく開かれ空気を叩く音が二人の鼓膜を刺激する。次の瞬間、彼女の翼が地面に突き刺さりアンカーのように彼女の体を固定すると、ヒナの愛銃の銃口が先ほどとは異なる色を宿し、その極大の神秘が出口を求めて甲高い音を鳴り響かせてデストロイヤーに収束する。

 

 「まずッ!?」

 「───フッ!!」

 

 ホシノが横に飛び身を翻すのと同時にデストロイヤーの銃口が火を吹いた。瞬間、放射状に銃弾が広がり地面は勿論、直線上に聳える家屋も、電信柱も、あらゆる物を、その原形すらとどめぬほどに粉微塵に吹き飛ばす。まるで絨毯爆撃を受けたかのように焦土と化した大地にホシノが唾を飲み込む暇もなく、情け容赦のない風紀委員長がホシノに回避されたことを確認して直ぐ様攻撃の体制に移る。

 

 「させない…!」

 「……!」

 

 当然と言うべきか、そのリーチを潰すためヒナに肉薄するべく攻撃の構えを取る彼女の愛銃、デストロイヤーの銃口目掛けて大地を駆けるホシノ。日々彼女らと相対し───捕縛されるだけのゲヘナのテロリスト達から考えれば自らあの凶弾に立ち向かうなど正気の沙汰を疑わせるレベルの蛮行だが、一方でここで前進するというホシノの判断に、なるほど強ち暁のホルスの話も嘘ではないようだと警戒レベルを一段階引き上げるヒナが牽制程度に銃弾をばら撒きホシノの接近を往なすが流石に近接戦闘ではホシノに分があるのかヒナが少々押されて後退していた。

 

 「フンッ!」

 「……ッ」

 

 密着した状態から何とか隙をついて反撃に移ろうとするが、流石にそんなことを許すはずもなくデストロイヤーを鈍器のように扱い防戦一方になるヒナ。このままではいけないと周囲の状況を確認して───何も思い浮かばなかったのか、やぶれかぶれのようにデストロイヤーを振り上げ叩きつけようとする。当然の如く盾を正面に構え、シールドバッシュを行い逆にヒナを吹き飛ばすホシノ、だったのだが───

 

 「(……?軽──)──ッ、しま!?」

 「……やっぱり、焦ってるようね。こんなミスをするなんて」

 

 盾で叩きつけた瞬間、先ほどまでのヒナの剛力やマシンガンの反動を抑え込む体幹を目に焼き付けていたホシノの予感していた重さや反作用を何も覚えない触感に、違和感を覚えたのも束の間シールドを振り抜き視界が晴れた瞬間目に飛び込んできたのは上空に飛び上がるヒナ。わざと大振りの攻撃で自身の盾弾きを誘い、それによって距離を取ったことを理解するのも束の間、宙を走る電線に羽を引っ掛け宙ぶらりんとなったヒナが、ホシノの前方斜め上から、見下ろすような形でデストロイヤーの銃口を光らせる。

 

 「くそ!」

 「───ッ!」

 

 ヒナが何かを叫ぶと同時に、デストロイヤーの銃口が火を吹き、やはり放射状に弾が広がり対象を襲う。その、神秘を込めた攻撃は、遠方になるほど攻撃範囲の広がる彼女のデストロイヤーによる一撃の性質上、後ろへ後退するのは悪手だと考えたホシノがなおも前進して、何とかヒナの真下に潜り込む。瞬間、風に靡く後ろ髪が焼け落ちる音を残し、何とか回避を行なったホシノが前転して振り向くと、ほぼ垂直にヒナの攻撃を受けた大地が陥没し、小さなクレーターが出来ていた。

 

 「……ッ、風紀委員長ちゃんはどこに…」

 「…ここなら…」

 

 「ッ!どこ────あ───」

 

 ヒナの一撃に一々感服するほどの余裕もなく、直ぐ様意識を切り替え周囲を見渡す。上空を見上げると既に先ほどの位置にはおらず、どこだと視線を動かして────声のする位置が、どうにも遠いように聞こえた気がしてそちらへ顔を向ければ、どうやら聞き間違いでなかったらしい。視線の先には、はるか上空へ飛び上がったヒナの姿。考えれば当然のことだ。先ほどまで、自身支える足元の地面に亀裂ができるほど無理やり力で押さえ込んでいた銃の反動を、支えるもののない空中で撃てば当然後方へ飛んでいくのも必然で、大空を背中に背負い真下を見下ろすヒナの紫色の眼光が、ホシノを捉えて離さない。

 

 「ここなら、外さない」

 「ッ!!」

 

 デストロイヤーがホシノを捉えて離さない。苦虫を噛み潰したような表情の彼女が周囲を一瞬見渡すが、当然の如く逃げ場はない。遠方になればなるほど円形に、そして放射状に広がるヒナの銃から放たれる神秘を宿した一撃から逃れる術は、ここまで距離をとってしまうと存在しないようで咄嗟に身を低く構え上部へ盾を構える。

 

 「────ッ!!」

 「ッ、うッ、グッ!!?」

 

 未だに低く、空に昇り切っていない太陽に代わり、デストロイヤーの銃口が眩く煌めく。瞬間、ホシノを中心に捉えて半径数十メートルに及ぶ絨毯射撃が大地を均す。生活感を失い蜘蛛の巣や砂に塗れる家屋も、インフラの失われた電気設備も、あらゆる物を消し炭と化し、そこに人の文明の痕跡すらも残さないほどの破壊的な暴力で全てを瓦礫へと変化させる。

 

 「うッ…!!ぐ、あッ…!!」

 「───………ふぅ。流石ね、今のを耐えるなんて…」

 

 自身の攻撃の反動で更に上空へ高く飛んだヒナがホシノと距離を取り、華麗に宙を舞って半回転しながら地面へと着地する。彼女の視線の先には荒く息を吐いて立ち上がり盾を構えるホシノの姿。彼女の足元のみ無事───というには、些かデストロイヤーによって地面に押し込まれたことが窺えるほどの亀裂が走っていたが、少なくとも周囲の砂塵と見紛うコンクリートの粉のように粉砕してはおらず、ホシノもホシノで理外の実力を有していることが窺えた。

 

 「ッ、本当に、容赦ないね…!」

 「えぇ。どうせ聞いても、今の貴方は止まらなそうだから」

 

 確かな手応えとダメージを覚えた先の一撃を以てして、なおも攻撃の手を止めることはなく着地後直ぐに得物を構え、対象を照準に定める。急いで盾を構えようとしたホシノが腕の痺れを自覚し舌打ちをして、ヒナを中心として円形に回るように体を滑らせ彼女の攻撃をかわし続ける。

 

 「(くそ、このままじゃ……!)」

 「───なるほど、なら…」

 

 「…え!?な、なんで…!?」

 

 唐突に射撃を止めて自身に向かって走り出すヒナの姿に、困惑気味に足を止めて身構えるホシノ。何かしらの意図があっての行動だがやはり鮮明でない彼女の脳で相手の思考を読み解くことは叶わず、何か気味悪さを覚えつつも盾を構えてその脇からショットガンを覗かせる。段々とヒナがホシノに接近し、距離が十分に近づいた瞬間、

 

 「……フンッ!!」

 「な──ゲホッ、ゴホッ!」

 

 手に握っていたデストロイヤーを地面に走らせるように引きずり思い切り振り上げる。刹那、辺りに舞い散る粉塵が視界を奪い、思わず咳き込むホシノに煙の中から影が押し寄せる。

 

 「……!!」

 「クソッ!うぐッ!?」

 

 「……腕がまともに動かないようね。さっき盾が構えられていなかったわ。何より、逃げ回るのがその証拠」

 

 デストロイヤーを両の手で握り横に構えてそのままホシノを押し倒すヒナ。あまりの衝撃に姿勢を崩して背中を打ちつけるホシノが、ジリジリと力で押し合うが姿勢と、何より先ほどまでの攻防によりどちらが体力を消耗しているかなど火を見るより明らかで、段々と腕が下に下がっていく。

 

 「……一応、聞いておくわ。アビドスに大人しく戻る気は?」

 「……ここまでッ、やっておいてッ、いまさらッ!?」

 

 「そう……、ッ!」

 

 「そういう甘さはッ、捨てた方が良いんじゃない!?後悔するよッ、おじさんみたいにさぁッ!?」

 

 ジリジリと睨み合い言葉を交わしていた最中、唐突にホシノが頭突きをかましてヒナがよろけた瞬間、手を組み合ったまま足を絡めてヒナの姿勢を崩し、半回転するようにぐるりと位置を変える両者。先とは真逆で今度はホシノがヒナを見下ろす構図となり、彼女を地面に押し付ける。───先ほどの、頭突きからのよろけも彼女の狙い通りだということには気付かずに。

 

 「……仕方ないわ」

 「なにを───「アコ」

 

 

 「構わないわ。私ごとやって」

 『承知しました。───イオリ』

 

 「……え?」

 

 サーッと、激情に駆られていたホシノの脳が嫌な冷たさで青ざめる。自身の不安を煽るための思わせぶりな発言でないことくらい彼女の瞳を見れば理解でき───何より、この体勢から逃れたいはずのヒナが、何故か自身の手を強く握り離そうと────否、逃がそうとしない。

 

 いったい何を、と考えた次の瞬間───

 

 

 『────てェッ!!』

 

 

 

────ホシノとヒナを、迫撃砲の爆炎が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ご無事ですか?委員長」

 『──えぇ、大丈夫よ、お疲れ様。小鳥遊ホシノの無力化は成功したわ』

 「分かりました。お疲れ様です、皆さん」

 「えっと……よく分からないけど、今回は大丈夫なんだよね?アコちゃん」

 「……今回は、という言い方に含みを感じますが……えぇ、問題はありません。今回に関しては、むしろアビドスの要請による所が大きいので」

 

 発破の合図を取ったイオリが、しかし先日の件から少し訝しむ様子でアコをジッと見つめていた。アコが彼女の視線に抗議の声を上げるも自業自得に他ならないだろう。

 

───先刻。

 イオリをはじめとした風紀委員会一行に命じられたのはアビドスへの急行並びに、アビドス高校三年生、小鳥遊ホシノの捜索。文言だけ聞くとまた行政官の良からぬ暴走を勘繰ってしまう内容を疑うことなく完遂するため奔走したのは、偏にそれがアコの独断ではなくヒナの指示であったため。広大なアビドス自治区にまばらに散らばる風紀委員がホシノの外見の情報を頼りに捜索すること数十分、運良く彼女に出会ったのは空崎ヒナその人で───先の結末へと至った。

 

 「……それで、私たちはこの後どうすればいいの?」

 「ゲヘナへと帰還し、通常の業務に勤しんでください」

 「…とんぼ返りですか、仕方ありませんが」

 

 はぁ、と、ため息を隠そうともしないチナツがイオリの隣でうんざりしたように眉を八の字に曲げる。これは単にアコへの不満、というよりは息をつく暇もないゲヘナ学園の治安に対するストレスによるところが大きいだろう。確かにゲヘナからアビドスまでの距離はバカにならず、往復で帰還することを考えると中々の負担だが、その程度の疲労はこれから待ち受ける規則違反者の取り締まりと比べれば気休めも良いところだろう。逆に戦闘一つない行軍など文字通り一種の休憩とも言えるかもしれない。

 

 「……ん?……はい、私です。どうしました?……はい?」

 

 「はぁ、それじゃさっさと戻ろっか、チナツ」

 「………いえ、少し待ってくださいイオリ」

 「ん?どうしたの?」

 

 「……何か、行政官の様子が…」 「アコちゃん?……どうしたんだろ、なんか険しい顔してるけど……」

 

 目を細めるチナツの視線を追った先には、通信端末で会話を行う上司の姿。勿論二人の耳に会話の内容が聞こえることはないが、彼女の顔色を窺うに吉報でないことは確かだろう。

 

 「……代わってください。……もしもし、ゲヘナ学園風紀委員会行政官、天雨アコです、所属を尋ねてもよろしいですか?……は?」

 

 「…あまり、良くない雰囲気ですね…」

 「うん…」

 

 遠目から見ても分かる、険悪な行政官の表情。依然として何に怒りを露わにして怒鳴っているのか窺い知ることは叶わないが、もう一仕事の予感を覚えてリロードを行うイオリが、アコを横目で見ながら隊に指示を出していた。

 

 「───いえ、ですから、我々はアビドス高校に許可をいただいておりまして………あぁもう!だから!誰なんですか貴方達は!?アビドス自治区に武装大隊の無許可での侵入は明確な違反行為ですよ!?常識がないんですか!?」

 「(どの口が言ってるんだか…)」

 

 どんどんヒートアップし苛烈になるアコの口調。

 

 「……は?何を言っているんですか?そこはアビドス自治区であり、貴方達に権利はありません。訳の分からない主張をなさらないでください。場合によってはアビドスに取り次ぎ次第、武力行使も───「アコちゃん!!伏せてッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ヒナ───ちょう───しゅうげ───』

 「……アコ?どうしたの?アコ!?」

 『───……ッ……───………』

 

 「………ッ!」

 

 突如として、無線から聞こえる微かな部下の声と爆発音。直後、ノイズが走り無線に砂嵐が走ると舌打ちを鳴らしたヒナが焦りを覚えて他の人間へと自身のスマホを手に電話をかける。

 

 「……便利屋の襲撃?いや、追われている状況なら兎も角、今あっちから手を出してくる理由はない………いったい何が……)」

 

 少し焦りを覚えるヒナの想いとは裏腹に、一向に電話口に出ない自身の部下。ただただコールが鳴り続け、連絡先を変えても同様に返事が返ってくることはなく、ただただ焦りを募らせる。これがゲヘナ地区での出来事なら不良やチンピラとの抗争で電話口に出られないことなど日常茶飯事なのだが、他校の自治区となれば話が変わる。事前に聞いた限りではゲヘナとの抗争が発生する集団は存在せず、ゲヘナの厄介なテロリストならいざ知らず、地方の寄せ集めのチンピラ集団に遅れをとるような集団ではない。何より、ホシノ捜索のため各地に散らばせていた部員達のいずれとも連絡が取れないとなれば、アコだけでなく様々な地点で何か問題が発生しているということに他ならない。もしも先日のような抗争が再び発生したとなれば、アビドスには重ねて外交問題で厄介をかけたこととなる。それだけは避けなければならないため、彼女にしては珍しく心の内に微かな動揺が走っていた。

 

 

 

 そんな、水面の揺らぎよりも小さいわずかな精神のぶれが隙と化し、ヒナに意識外の一撃を浴びせる。

 

 

 「───ッ!!ほし、の…!」

 

 「……ふ、ふぅ!どうしたの、ヒナちゃん、そんな、焦ったような顔してさ……!」

 

 「(……まさか、あの状態から復帰するなんて…)」

 

 完全に気を失っていたホシノが、一瞬ヒナの目が離れた隙に立ち上がり彼女も反応できない俊速で背後から後頭部を銃のストックで殴りつける。一瞬ぐにゃりと視界の歪むヒナが、何が起きたかを把握しすぐ様得物を握り迎撃の体制を取るが──

 

 「ッ、逃がさない…!!」

 「ごめんね、これ以上は付き合ってられないや」

 

 ホシノが馬鹿正直にヒナの復帰を待つはずもなく、その場からの逃走を図る。逃げようとする彼女に照準を定めるが、先ほどとは打って変わって調子の狂うのはホシノではなくヒナ。脳裏をよぎるのはやはり風紀委員のこと。勿論彼女の判断を揺らがせるほどのものではなかったものの、ホシノの捕縛と天秤にかけ悩んでしまった一瞬のノイズが、キヴォトスの頂上を争う両者のやり取りにおいて致命的な隙であったことは言うまでもなく、ホシノがヒナとの距離をはなし、未だ浅く粉塵の舞う周囲の煙に紛れて姿を消してしまう。

 

 「ッ、どこに───くそ、逃した……」

 

 煙を払い、周囲を確認するヒナ。そこには既にホシノの人影はなく顔を苦々しく歪めるも、意識を切り替えスマホでアビドスに連絡を取りつつ、踵を返してアコの元まで走るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……そ、そうですか…あ、いえ!そ、そんな!風紀委員長さんに謝っていただく必要は!」

 

 アビドス高校、対策委員会室。そこには、いつもの面子───に混ざって、三年生の彼女と代わるように青い髪のミレニアム生徒が一人。不安に駆られる彼女達が、久方ぶりの学外の友人との再会を喜ぶ暇もなく風紀委員会からの吉報を待っていた所、届いたのは風紀委員長による謝罪。アヤネの言葉からヒナ、並びに風紀委員会によるホシノの捕縛が失敗したことを悟った一同が、揃って顔を曇らせる。

 

 「もぉ!本当にどこに行ったのよ!ホシノ先輩は!」

 「やっぱり私達も探しに行った方が…」

 「落ち着いて下さい、シロコさん。その取引先の場所も分からないのだから、今は先生に任せましょう」

 「そうですよ、シロコちゃん?焦る気持ちは分かりますけど、今は落ち着いて先生の報告を待ちましょう?」

 

 

 「……え!?」

 

 ユウカとノノミが、シロコを宥めている最中、唐突にアヤネが声を上げる。その驚愕に満ちた声色に一瞬期待したが、彼女の表情を見るにおそらくホシノの発見やそれに類する良い報告ではないのだろう。

 

 「……わ、分かりました。ホシノ先輩のことは先生にも任せてありますので、一旦風紀委員長さんはそちらに専念なさってください!何か現地で問題がありましたら連絡して下されば……はい、ではまた後ほど……」

 「…どうしたの?アヤネちゃん、なんか怪訝そうな顔してるけど…」

 「その、風紀委員長さんからなんだけど……」

 

 困惑気味に、電話口で聞いた話を皆に共有するアヤネ。何やら風紀委員会の人間達と、連絡がつながらないという状況に加え、直前に自身の側近から入った通話に紛れる爆発音。何やら嫌な予感がするとの言葉を残し謝罪の断りを入れて通話が切れたとのこと。ホシノの失踪と同時に何かがアビドスで起こっている、言いしれぬ恐怖に不気味さを覚え、皆が一様に閉口する。

 

 「……先生は…」

 「……?アヤネさん?」

 

 「……ハシラマ先生は、その……」

 「ッ、アヤネちゃん!!」

 

 「ッ、あ、いや、その……!」

 

 気まずい空気が流れる。セリカが咎めたものの、アヤネがこぼしかけた言葉はその場のアビドス生徒達の心を代弁しかけたようで───それを、必死に見ないように、意識しないように目を背けた事実。

 

 手紙に書いていた、先生とカイザーコーポレーションの繋がり。

 

 「───私は先生を信じてる!みんなは違うの!?取り敢えず周りが、先生を信じてたから、流れに乗っただけ!?」

 「セリカちゃん……」

 「大丈夫よ!先生のことを信じよう!いつだって先生は私たちの味方だったし……と、というか、もし敵だったらやり方がまどろっこしすぎるでしょ!私たちの味方しすぎよ!」

 

 セリカが声を張り上げて皆に訴えかけるように視線を泳がせると、そんな彼女の様子に面食らいつつもどこから落ち着きを取り戻したように微笑む一行。

 

 「ふふ、そうね、セリカさん…!」

 「な、なによ、ユウカさん、そんなに笑って…」

 「ん、最初はセリカが一番先生に懐疑的だったから。成長を感じて微笑ましく思っているのだと思う」

 「ちょ、シロコ先輩!?え、え、そ、そうなの!?ユウカさん!?」

 

 セリカの言葉に明確な返事を答えないながらも、さらに笑顔を深めるユウカ。それがどうやら明快な解であったようで、少し恥ずかしそうに顔を赤らめて喚くセリカの姿に、先ほどまでの憂鬱な雰囲気が霧散する。

 

 そんな、皆が気持ちを切り替えた刹那──

 

 

 

 

 「きゃあ!!」

 「な、なに!?」

 

 

 

 

───爆音と共に、高校全体が揺れた。

 

 

 

 

 

 

 




ご清覧ありがとうございます!
ちょっとストーリーが最近足踏み気味で全然進まずにすみません…!
今しばらくお待ちいただければ…!
感想についても、返信が遅れてしまい申し訳ありません…!
溜まっている感想に関しては、明日まとめて返信したいと思います!
それではまた次回

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