Hashirama Archive   作:アテナ18号

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過去の話にテコ入れしました。
NARUTO本編で柱間ってほとんどお前か貴様で、主ってほぼ言ってないのですが、小さな子供に対してどのような言葉遣いか分からず本編でほぼ言ってなかった、っていうか下手したら一回しか言ってないかもしれない主を採用してましたが……なんか段々エアプ柱間に感じてきて本編同様お前と貴様に変えました。
唐突な変更ですみません。
あと一部先生からハシラマ先生に変更しました。



対策委員会編
砂隠れの栄光


 

 砂漠、と言うには些か違和感の拭えない、砂に埋もれる人工物の山々。どこか彼の記憶の中にある風の国を想起させる風景だが、恵みのない荒れ果てた荒野の砂漠にてなお独自の生態系や文化を築き命の輝きを放っていた砂隠れの里を思えば、車窓の外に広がる完全に放棄された"かつて生活を育んでいたであろう残骸"を単純比較するのは失礼な話だろう。一見希望に満ち溢れているキヴォトスにおいてもこういった景色を目にすると、いつもの笑顔に陰りが生まれるのも仕方のないことであった。

 

 「砂の下に敷かれる跡にかつての営みを垣間見ると、なんともやりきれんの」

 「元々、キヴォトスでも随一の規模を誇る学園だったそうなのですが……」

 「砂嵐、か。仕方ない、で受け入れるには酷な話ぞ」

 

 アビドス高等学校の奥空アヤネより送られてきた一通の手紙。そこに綴られていたのは彼女の救いを求める声であった。暴力組織に学校を狙われ弾薬も底をつきかけ、占領されるのも時間の問題だという緊急を要する事態。そんな言葉に柱間が腰を上げないはずもなく、準備を整えシャーレを発とうとしたのだが───

 

 「しかし、すまぬなユウカよ。オレの不手際で付き合わせることになってしまって」

 「問題ありませんよ。元よりこういった事態も踏まえて契約書にサインをしたのですから」

 

────ユウカが、ついてきた。

 いや、厳密には双方───柱間がかなり渋った上で結局押し負けた───同意の上での同行なのだが何故彼女が着いてきたかの理由は明白で、補給物資の運搬が柱間だけでは不可能であった為だ。

 朝方、当番生徒であったユウカがシャーレにたどり着き、先生への挨拶もそこそこに仕事を行っていると、唐突に柱間が彼女へ謝罪を行った。というのも、緊急の案件で直ぐにでもここを発つ必要が出てきたというのだ。理由を問い詰めアビドス高校の救援要請が書き記された手紙を見ると、なるほど先生が動かないはずもないと納得するユウカ。

 しかしここからが問題で、ではシャーレの一員としてお供しようと名乗りを上げても柱間がソレを渋るのだ。オレもバカではない、他の学園の問題ごとに足を突っ込むのは不味いのではないかと。

 

 故にユウカは目をつけたのだ、手紙に書いてあった補給云々のくだりを見て───どうやって弾薬を補給するのですか、と。これはユウカにとっては半分賭けのようなものであったし、もし柱間にその当てがあったとしても別のアプローチで自分を売り込む予定であったが───やはりと言うべきか、そんな、一高校への補給物資という多量の弾薬や支援物資を運ぶ伝手や、そもそもどの弾をどれだけ持っていけば良いかの、銃種に対する理解があるはずもなく、シャーレの名の元にユウカが全て見繕ったのであった。

 そして現在、ユウカの運転する、シャーレに格納されてあった連邦生徒会支給のトラックに揺られて現地へ向かっている最中である。

 

 「それでもだ。いくらシャーレが超法規的機関とはいえ他の学園の問題に巻き込むのは対外的にも不味いだろう。オレ一人でどうにかできればよかったのだが……」

 「もう、水臭いですよ!私にとっても、見聞を広めるという意味で良い経験になりますからそんなに落ち込まないでください」

 

 生徒を巻き込んでしまったという自責の念が柱間を支配する。彼自身は火影の頃から里の皆と手を取り、里の子らを信頼して未来を託す、決して一人で全てを背負い込むような男ではなかったのだが、にしてもここキヴォトスの子達は年齢が低すぎる。いや、容姿もかなり幼く見えるのだ。故にそこに孫娘の影を重ねてしまい、こういったいざこざから遠ざけてしまいがちなのだ。

 

 「ぬ、そうか。……いかんな、生徒を庇護対象としてしか見ておらぬ、オレの悪い癖は先日自覚したばかりなのだが……」

 「えぇ、悪い癖です!他の方がどうかは分かりませんが、少なくとも私はハシラマ先生を手助けしたい一心で声を上げたのですから、遠慮せず頼ってください。私も、先生を頼らせていただきますので」

 「そうか。……うむ、そうだの!ユウカよ、今日は色々頼る場面も多かろうが、よろしく頼むぞ!」

 「えぇ、お任せ下さい!」

 

 生徒は子供であるが、子供ではない。それを先日自覚したばかりだと自分に言い聞かせ奮い立たせる。自分で全てを片付けようとするとは、何ともオレらしくないと無意識下に感じていた焦燥感を振り払うように、笑顔を灯しながら。

 

 「しかし、アビドス高校を襲っているという暴力組織はいったい何者なのでしょうか?アヤネさんの手紙では、校舎が狙われているとありましたが」

 「弾薬等の補給が底を突きかけている、という話から一度や二度の襲撃ではないだろうのぉ。廃校寸前の学園にちょっかいをかけて楽しんでおる愉快犯ではなく、明確な目的があって事に及んでおるのは確かぞ」

 「……アビドス高校の皆さんには失礼ですが学園としての力もなく、自治区としても寂れたこの場所に暴力組織がそこまで拘る理由がわかりません。いったい何故…」

 「色々と思い当たる節はあるが……憶測で喋っても仕方あるまい、先ずは本人達に話を伺おう。……ふむ、見えてきたの」

 「っと……敷地内に駐めても大丈夫かしら…?」

 

 手紙の内容について二人が考察していた所、視界の先に目的の場所が見えてくる。レンガでできた塀は風化が進み手入れもあまり行き届いていないようで蔓が伸び、その周りにはここまで腐るほど見た砂が辺りに散乱していた。ジャリジャリとその上をタイヤが進むと砂煙を巻き上げる。運転手のユウカが車内から辺りを見渡し何処か停められそうな場所を探していた、その時───

 

 「ッ、伏せろ!ユウカ!」

 「え?なん───きゃッ!!」

 

 突如として、柱間が運転していた彼女の頭を押さえて彼女に覆いかぶさるように身を屈めさせる。瞬間、ピシッ、という嫌な音が車内に響き渡り防弾性の窓ガラスに亀裂が入った。ユウカがパニックに陥りながらも何とか車を緊急停止させると、車の外から叫び声が聞こえた。

 

 「いったた…!いったい、何よ!まさか、手紙に書いてた暴力組織…!?」

 「…いや、これは…」

 

 「また性懲りもなく来たわね!今度は白昼堂々トラックで突っ込んできて!何度でも返り討ちにしてやるんだからッ!!」

 

 あぁなるほど、と外の状況を理解した柱間が、早い所この場を収めないとまずいなと言う気持ちで、ドアを開け外に出る自身を止めようとするユウカを放置し、2階の窓からこちらを見下ろすツインテールの少女へと顔を向けた。

 

 「さぁ!かかってらっしゃ──え、誰!?」

 「───唐突に押しかけてすまぬ!オレは奥空アヤネの救援要請を受け参じた、シャーレの先生をやっておる千手柱間ぞ!!矛を収めてはくれぬか!!」

 

 柱間の言葉を咀嚼すること数秒間。

 

───彼女は顔を青ざめさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほ、本当にごめんなさい!!」

 「本当よ!!救援を呼んだのはそっちでしょ!?何を考えているの!!!」

 

 現在、対策委員会教室内部。柱間が何とかユウカを宥めにかかるが怒りが冷めやらない様子で、対策委員会の人間に当たり散らしていた。正当な怒りで八つ当たりでもないのだが、にしても彼女がこれほど怒りを露わにしている理由は、やはり先生。

 

 「も、申し訳ありません!!そ、その、さ、最近のか、カタカタヘルメット団の襲撃時間と、か、被っていた、もので……」

 「それが何!?貴方達もSNSを通じてハシラマ先生の存在を知ったなら、銃弾一つが致命傷になるのは把握してるはずよね!?もしものことがあったらどうするつもりだったの!?」

 

 そう、先生は───少なくともユウカ視点では───死にかけたのだ。ソレがまさか救援対象からの凶弾であるとは夢にも思うまい。少ないながらも柱間と仕事を共にこなした彼女からすれば人の良い彼の性を弄んだかのような蛮行に、勘違いから犯した悪意のない犯行だったとしても声を大にして言わずにはいられないのだ。

 

 「そ、それは……」

 「救援物資を要請したわよね!?だったらこういう形で足を運ぶことくらい分かるでしょ!?そもそもトラックには連邦生徒会の校章が──「ユウカ、やめよ」ッ、先生!でも!」

 

 最初はあまり重たい雰囲気にするのもいかがなものかと軽い口調でユウカを宥めていた彼だが、ヒートアップしいよいよ止まらなくなってきた彼女を見て仕方ないかと少々硬い口調で彼女を咎める。

 

 「オレのことをそこまで想ってくれるお前の気持ちは嬉しいが、オレのことで生徒が頭を下げる姿を見るのは心が痛い。彼女らも悪気はなかったのだ、そこまでにしてやってはくれぬか?」

 「し、しかし…!」

 「セリカ、それにアヤネよ」

 「「は、はい……」」

 「それだけお前たちは追い詰められておったのだろう。確かに、それは考慮すべき点であった。不躾にもいきなり校内へ押し入って、申し訳ない」

 「ちょ!?せ、先生は何も悪くないから!わ、私がいきなり撃っちゃったのが悪かったから頭下げないでよ!」

 「も、元はと言えば先生に連絡を取った私が責任持ってお迎えするべきでしたので、この件は全て私に責任が…!」

 

 先生に声をかけられ、怯えたように震える二人。特にアヤネに至っては顔を赤く染めて涙目になっていた。そんな二人を少しでも落ち着かせようと片膝をついて二人に視線を合わせる柱間が、謝罪を口にして頭を下げる。そんな彼の態度に驚いて自分が悪かったと捲し立てる二人。

 

 「ハッハッハ!優しい子らぞ!うむ、顔を上げてはくれぬか?オレも責任を感じておるのだ。オレが用心しておればお前たちにそんな顔をさせることもなかった。オレはもう少し我が身の儚さを自覚するべきぞ」

 「そんな、先生が責任を感じることは……」

 「では、双方落ち度があったということにしよう。なぁに、悪気がないのは伝わっておる。下を向いていてはお互い良い気にはならぬだろう?」

 「………は、はい」

 「うむ!ただ、ユウカがあぁまで声を荒げたのはオレの身を案じてのことだ。あまり悪く思わないでやってくれ。決して意地悪でお前たちを問い詰めたわけではない」

 「そ、それは勿論分かってるから!!」

 「ユウカも、これで良いな?」

 「あ、えと、その………」

 

 後ろを振り向き、ユウカへ視線を移すとばつが悪そうに視線を泳がせていた。というのも、柱間が彼女とアビドスの二人の間に割って入るようにして話が中断され、一旦落ち着き頭が冷静になるといくら憤慨していたとは言え涙目になるほど二人に怒鳴り散らしていた事実に途端に罪悪感が湧いてきたのだ。

 

 「……ご、ごめんなさい。さっきは言い過ぎたわ。頭に血が上ってた……その、悪気がないのは伝わったから」

 「あ、いや、わ、私の方こそ、ごめんなさい!いきなり確認もせず撃っちゃって…!」

 「わ、私も、先生に救援要請を送った時から懸念すべきでした……す、すいません……」

 「問題ないわ。正しい判断でしょう。地域の暴力組織に追われている状況で不審者が校内に押し入ってきたのだもの。先生という外れ値を考慮しなければ先手を打つのは当然のことよ」

 「で、でも、私は先生が来るのは分かってたことですし……」

 「…も、もう!そんなに謝らないでちょうだい!そうなるまで追い詰められていたってことでしょ!?ソレを考慮すれば全然おかしくない判断よ!ミレニアムと同じ感覚で貴方達の状況を見ていた私の落ち度よ!いいでしょ!?」

 「い、いやでも……わ、私、撃っちゃったし……」

 

 本当に申し訳なく思っているのだが、何処かぶっきらぼうに言ってしまう自身の態度が逆に相手を怖がらせてしまうのか、慰めの言葉をかければかけるほど申し訳なさそうな顔で謝罪の言葉が返ってくる。そんな状況に声を大きくしてしまうがやはり逆効果で、そんな自分に自己嫌悪してしまい、あーもう!と頭を掻きむしるユウカが唐突に矛先を変えて口を開いた。

 

 「も、元はと言えば先生が悪いんですよ!?」

 「お、オレか!?」

 「そ、そうですよ!!銃弾一発で死にかけないでくださいよ!!弱すぎません!?」

 「そ、それはそうかもしれぬが無茶を言うなユウカよ!」

 

 「……あ、あのー、どういう状況でしょうか〜?」

 

 いよいよ収拾のつかなくなった場に救いを差し伸べるが如く、困惑気味に生徒が一人入室する。扉を開けて入ってみれば見覚えのない大人と生徒が言い争いをし、その前で呆然と立ち尽くす後輩が二人。見れば少し涙目でいよいよ以てどーしてこうなっているのか訳が分からなくなっていた。

 

 「ぬ?貴様は……いや、モノを尋ねるときは自分からか。オレはシャーレの先生をやっておる千手柱間ぞ!」

 「わぁ!シャーレの先生ということは、支援要請が受理されたのですね!良かったですね、アヤネちゃん!」

 「あ、は、はい……」

 「……にしても、浮かない顔ですね?どうしたんですか?二人とも」

 「あ、それは……その……」

 「いや何、オレが"でりかしぃ"のない発言をしてな!二人を困らせ、付き添いの部員に怒られていた所ぞ!ハッハッハ!いかぬな!この歳になるとどうも若者の乙女心という奴が分からなくてな!」

 「ちょ、先生!?」

 「───まぁ!それはそれは!」

 

 ノノミの問いを受け返答に困った後輩二人が視線を泳がせ頬を掻く。そんな二人の様子を見てか───元々、そう言う予定だったのかは分からないが柱間が適当にホラを吹くと、何かしらの事情を悟ったノノミが彼に話を合わせる。

 

 「いけませんよ、先生!可愛い可愛いアヤネちゃんとセリカちゃんを泣かせた責任は取って頂かないと!」

 「の、ノノミ先輩!?」

 「な、泣いてなんかないわよ!」

 「ハッハッハ!ノノミとやら、貴様の言う通りぞ!ここは一つ、腹を切って詫びると───」

 「先生もノノミ先輩に乗らなくていいから!というか詫びの方法が怖すぎるわよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「では、改めて挨拶ぞ!オレは千手柱間。シャーレで先生をやっておる。よろしく頼む!」

 

 ノノミの介入により場が良い意味でぐちゃぐちゃになり皆の緊張感が解けたタイミングで仕切り直す柱間。彼の挨拶に続いて、今日のシャーレ当番であるため一日限りの付き合いではあるが立場を主張しておくため青髪の生徒が理路整然とした態度で口を開いた。

 

 「ミレニアムサイエンススクール二年生、セミナー所属の早瀬ユウカです。と言っても、今回はシャーレの部員として先生のお仕事の手伝いに来たので今日一日限りの付き合いにはなりますが……よろしくお願いしますね、アビドスの皆さん」

 「ミレニアムの方なんですね!とても頼りになりそうです!よろしくお願いしますね!あ、申し遅れました!アビドス高校二年の十六夜ノノミです!」

 「えっと、一年生の黒見セリカよ、よろしく」

 「あ、アビドス高校一年の奥空アヤネです!本日は対策委員会の支援要請を受けてくださりありがとうございます!」

 

 アヤネが腰を折り深く頭を下げる。彼女らにとって補給が切れるかどうかの瀬戸際という状況でのシャーレの救援は正しく救いの手であったようで、頭を上げるアヤネは勿論その他二人も気持ち明るい顔をしているのは気のせいではないのだろう。

 

 「対策委員会、とな?」

 「はい。正式名称はアビドス廃校対策委員会です。名前の由来は……アビドス高校の現状を見ればご理解いただけるかと。所属メンバーは私たちに加えて二年のシロコ先輩と三年のホシノ先輩がいるのですが今は留守にしてまして」

 「……え?それだけ?……ってことは、まさか全校生徒五人!?よく今まで学校存続してたわね……」

 「あはは……割とギリギリですけどね……こほん!本当に感謝してます!ただ、見ての通り学校がこんな状況ですので直様謝礼が出せず、申し訳ありません…」

 「なに、構わぬ。先ずは手紙に書いてあった…暴力組織、とやらを何とかせぬとな」

 「そうね……カタカタヘルメット団、本当にしつっこいのよね、アイツら」

 「それが、暴力組織の名前かしら?」

 

 なんとも可愛らしい名前だなとそんなことを考えながら真剣に彼女達の話に耳を傾ける。暴力組織と聞いてかなり過激な武装集団を想像していたが、どうやら割とキヴォトス全域に所属するありふれたならず者の集まりのようで、あまり勤勉でない生徒や不登校、退学になった生徒達が集団を形成しているらしい。アビドスを襲っているのが選りすぐりの戦闘組織ではないことに安堵しつつも、学校に通えていない生徒が多々いる状況は柱間にとってあまり好ましいものでもなく心を痛めていた。

 

 「…って言う感じかな──先生、大丈夫?なんか浮かない顔してるけど……」

 「…ん、すまぬ、何でもない。それで、カタカタヘルメット団の話ぞ。一度や二度の話ではない、とのことだな?」

 「はい。その度に撃退はしているのですが…この学校を占領すると言って聞かず、諦める様子も全く……」

 「本当に、困っちゃいますよねー…」

 「……その、本人達の前で言うのもアレだけど、何で占領しようとするのかしらね。メリットが見えてこないのだけれど」

 「さぁ?占領すると言って聞かないし、単純にアジトを欲してるだけじゃない?」

 

 「もしくは、何者かに指示を受けているか、だの」

 

 素っ頓狂なことを言い出す柱間の言葉に首を傾げる者や驚く者、怒りを露わにする者など、言葉の代わりに表情で多種多様な返事を返す一行。

 

 「ど、どういうことですか?ハシラマ先生」

 「いや何、ゲヘナの風紀委員に聞いた話だが、キヴォトスには傭兵というのがバイト……短期的な学生の仕事として存在するのは本当かの?」

 「え、えぇ、まぁ、それくらいなら良くある話だけど……」

 「なら、速い話がそのヘルメット団とやらを雇っている何者かがおるのだろう。もう一度聞くが、一度や二度の襲撃ではない、という話だったな?」

 「は、はい。もう随分と長いこと襲撃を受けています」

 「ならず者の集団にソレほどの継戦能力を支える財力があるとは思えぬ。アビドス高校を目障りに思う何者かが表沙汰に自身の名義で事を起こすことも出来ぬ故、傭兵を雇ってけしかけ───その、オレ達の目には見えない背後の組織がカタカタヘルメット団に資金援助をしている、と考えるのが自然だな。まぁ、確たる証拠もないため、あくまでオレの予測の域をでないが…」

 「な、なるほど……」

 「なにそれ!?一体どこのバカよ!!ウチに喧嘩ふっかけてきてるのは!?」

 「ま、まぁセリカちゃん!まだ先生の憶測ですから!ね?」

 

 憤慨するセリカを宥めるノノミを他所に、腕を組んで考え込む柱間。解決策や打開策を考えるなら兎も角として、同じような案件なら自身が過去に携わってきたことなど忍五大国の創世記にて火影の座についていた自分は腐るほど携わっており、過去の経験則から同じ匂いを感じとり推測を立てる。

 

 「……まぁ、背後の組織か、もしくはカタカタヘルメット団の自力かはこの際置いておくとして、アビドス高校を狙う理由は何でしょう?」

 「いくら力を失ったと言っても学校はこのキヴォトスにおいて各自治区の要なのだろう?アビドス高校が衰退したと言っても、ここに来るまでに都市部の方を見てきたが未だ活気は残っていたからの。ここを落とせば周囲の開発や利権の話も有意に進むだろうぞ」

 「そんな…!」

 「……そう言えば、お前たちはここで寝泊まりしておるのか?」

 「い、いえ?皆夕方から夜には自分達の家に帰宅して毎朝登校してますよ?」

 「……ふむ」

 「あの、それがどうかしたのですか?せんせ──「…え?」──……えっと、ユウカさん?どうかされましたか?」

 

 「…じゃあ、なんで占拠されてないのよ」

 

 「……?……あ」

 「……あ、確かに!」

 「え、ちょ、ちょっとちょっと!何が、確かに、なの?ノノミ先輩」

 

 ノノミの声に被せるように、ユウカが驚いたような、呆れたような声色で疑問を口にする。ユウカに言われた言葉で何かに気づいた二人が声を上げるが若干一名理解が及んでいないようで、自身の先輩に尋ねていた。

 

 「セリカ。単純な話ぞ。この学校を占拠したいのならお前たちが去った後……具体的に言えば夜の間に押し入ってしまえば良い」

 「あ、そっか!」

 「そうなっておらぬから、オレはてっきり代わる代わる立て籠っておるものかと思ったが……確認するが、夜間に占領されたものの奪い返した、ということもないのだな?」

 「は、はい。特には……」

 「なら先のオレの予想は外れておるかもな」

 「先の予想……えと、背後の組織がいるって話?」

 「いや、その後の、この学校を狙う理由ぞ。開発だの利権だの口にしたが……」

 「……そもそも、学校の占領が目的じゃないかもしれない?」

 「あぁ、ユウカの言う通りぞ」

 「な、何よそれ!?学校を占拠する以外ここを襲う理由なんてないじゃない!!」

 

 バンとセリカが机を叩く音が室内に反響する。ただ物悲しく静まり返った室内に重たい癇癪の音が響き渡るだけで、帰ってくる言葉は何もない。

 

 「占拠以外でこのアビドスを狙う他の理由……何でしょうか」

 「……仮にシャーレの救援がなかった場合の事を考えるとしよう。お前たちはどうするつもりだった?」

 「ど、どうするって……例え弾がなくなったって拳で最後まで足掻いてやるわよ!」

 「ハッハッハ!勇ましいの!今まで耐え抜いてきたことだけのことはあるの!流石ぞ!」

 「ふふん!当たり前でしょ!」

 「せ、セリカちゃん!先生が聞いてるのはそう言うことじゃなくて……!」

 「なぁに、構わぬ、アヤネ。まぁそうだの。先の先を今考えても仕方ないか………よし!この話は一旦しまいにして外に置いてある救援物資の回収に向かおうぞ!皆、手を貸してくれるか?」

 

 救援物資、と聞いて目を輝かせる一同。セリカの返事で当初尋ねようとしていた話が途切れてしまったが、それも良かったかもしれないと、彼女らの明るい顔を見ているとそのように考えてしまう。あのまま会話の軌道修正を行い彼女らの口から───今正に彼女らが対面しかけて、脳裏をかすりながらも口にしない、していない───自主退学という言葉を引き出すのは、あまりにも酷なことだろう。

 

 「(確定してもいない憶測で彼女らの顔を曇らせることはないの)」

 「ちょっと先生!早く行こ!救援物資持ってきたんでしょ!」

 「……ハッハッハ!そう急くな!救援物資は逃げもせぬ!」

 

 我先にと外へ向かうセリカ。彼女を追いかけるように他の四人も部屋を出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやー食った食った!こんなに食べたの久しぶりだなぁ!──けぷ」

 「ねぇ、それ一口ちょうだいよ。私のもあげるから」

 「ミートボール一個とエビフライ一本で釣り合うわけないだろ!ちょ、こら!」

 

 場所は変わってカタカタヘルメット団アジト。と言ってもアジトを名乗れるほど立派なモノでもなく、言ってしまえば人が去り老朽化も進んだ、荒れ果てた廃墟の一室を不法占拠しているだけの仮小屋だ。天井には一部穴も空き、吹き抜けとなった屋根から天然のライトが室内を薄暗く照らしていた。

 彼らは謂わゆる不良。いや、学籍を持たないという意味では一般的なそれらのイメージよりも更に酷いかもしれない。銀行口座も作れず、証明書としての学生証も持たない彼女らは定職につくことすら不可能である。それがどれだけ低賃金のものであろうと。短期のアルバイトすら表のものではなくブラックマーケット案件のものが殆どだ。

 

 そんな彼女らだが最近運が良いことが二つあった。というのも一つは長期的な依頼である。自分達はたかだか寄せ集めの傭兵、品格もなく依頼相手───クライアントからの扱いも、自分達が切り捨て可能な駒であることは電話口の態度から伝わってきたが、今更そんな扱いに堪えるほどでもない。そんな些細な問題よりも、彼らから支援を受けられるのだ。加えてアビドス高校に圧をかけているだけで報酬も受け取れる。いつまでこの関係が続くか分かったものではないが、その場しのぎの生活を送っている自分達からすれば有難い話である。

 

 そしてもう一つが───今ありついている弁当の山である。山、というほど多く積まれているものでもないが、少なくとも明日の分に残しておく量を考慮せずに腹に飯を収められるのは久方振りの経験で、味も含めて余計な考えを挟まずに、気にすることなく飯をかきこめるというのがこの上ない至福であることは確かだ。こんなボーナスをくれた───よく分からない変な大人には頭が上がらない。これがキチンとした生徒ならガキの頃に習う、知らない人について行ってはいけない、という言葉にあるような不信感を抱くのかもしれないが、日がな一日腹をすかして寝込むこともある自分達にとって、この天の恵みを手放す選択肢など存在するはずもなく、満足した顔で感謝を述べていた。

 

 「よく分かんねぇけど、サンキューなおっさん!」

 「あ、ごちーっす!」

 「ごっそさーん!!」

 

 その言葉を受け───変な大人も、言葉を返す。彼女らに負けず劣らず、満足そうな顔で。

 

 「───ハッハッハ!満足したようで何よりぞ!!」

 

 

 




ご清覧ありがとうございます!
いきなりごりっごりのオリジナル展開ですみません!
基本的にはブルアカ原作の各シナリオで活躍した主役達は変わらず登場させる予定ですが、折角なら人を惹きつける柱間の能力という点を推していきたいと考えているため、ちょくちょく原作では全く関係のない他の生徒達も、主役を食わない程度に絡ませていけたらなと考えております。シャーレが柱間一人の組織ではなく、多くの生徒が所属する超法規的組織、という柱間の成せる人の繋がりを表現できたらな、と……。
事前説明もなくいきなり話が変わって申し訳ありませんが、次回も読んでいただけると幸いです。
ちなみに、今回の話で原作と乖離している理由というか言い訳というかこじつけですが、原作では先生が手紙を受け取って直ぐ様出発した後、数日間彷徨った挙句アビドスに辿り着きましたが、今回はアビドスで遭難することがなかったため原作と乖離が起こっている……という想定です。
それではまた次回

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