やっぱり幻想入りものの始まりといえば彼女ですよね。
S1 2度目の異世界転移!?
目を覚ますと、清々しいほどの青空が見えた。
まだ目が覚めたばかりでぼんやりとした少年、ナツキ・スバルはそんなことを考えつつ、目を開けた。徐々に覚醒しつつある思考回路で、無理やり昨日の記憶を引き出す。が、昨日は変なこともせずちゃんと屋敷のベッドで寝たはずだ。にもかかわらずベッドはおろか、屋敷までなくなっている。そして一緒に暮らしていたはずの陣営のみんなも誰一人いない。
考え事をしているうちにだんだん目も冷めてきて、それに合わせて現状の異常性が襲いかかってくる。そして、スバルはとりあえず目を見開き言った。
「ーーこれって、異世界召喚ってやつー!?」
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聞く人のいない叫びがこだました後、スバルは立ち上がって周りを散策していた。
「まさか異世界で異世界召喚されることになるとは・・・。2回目なんだからいいでしょ?とか言われても困るんだけど。」
いくら2回目とはいえ、違う世界へ来るという体験は慣れないものだ。慣れないが、だからといってうかうかしているわけにはいかない。なぜなら、今回は屋敷の中から転移していたからだ。前と違って、陣営の誰かも巻き込んで転移してしまったかもしれない。差し当たっては合流するためにも、この世界の世界観をなんとか把握したい・・・のだが、
「初期位置が何もない原っぱってどういうことだよ。」
今、彼の周りには一面の草以外何もないのだ。ルグニカに転移した時は王都のど真ん中だったため、世界観の把握は容易だったが、こう何もないと情報が一切入ってこない。言葉が通じるのか、文字が読めるのかなどなど、異世界に来てから把握しないといけないことはたくさんあるのだ。
「せめて誰かいてくれたらなぁ。」
そんな呟きをこぼしつつ歩いていると、遠目に念願の第一村人となるであろう人影を見つけた。身長はスバルぐらいで、等速でゆっくり移動している。
「ちょっと話を聞いてみるか・・・。なんかすげえ等速で歩いてるな?」
やや怪しい気もするがとりあえず声をかけよう、と思って近づいたスバルは信じられない光景に息を呑んだ。というのも、
「足が・・・浮いてる?てか飛んでるのか!?」
そう、人影はド⚪︎えもんなんて目じゃないくらいに地面から浮いていたのだ。スバルくらいだと思った身長は浮いてる高さを含めたものであり、実際の身長はペトラほどだった。髪は金髪のショートで、白い長袖に黒い上着を着ている。頭と胸には赤いリボンをしてとても可愛らしいが、いろいろな面から話しかけていいかどうか悩む。
「何もしてそうにないのに見るからに空を飛んでいる不思議系少女…。いや、まあ異世界だから!ロズっちも飛んでたし!」
ルグニカでも魔法や精霊、地竜など日本にいた頃からしたら考えられないたくさんの不思議現象に出会っているため、多少飛んでるくらい今更といえば今更だろう。人間が飛ぶ世界だってあるかもしれない。そう判断したスバルは少女に声をかけるべく近づいた。
「そこの君。ここってどこか知ってたりする?」
生まれ持った凶悪な目つきを少しでも柔らかくして言う。怖がられて逃げられてしまっては困るのだ。と、そんな懸念が実現することはなく、声をかけられた少女はスバルの方を向くとおもむろに言った。
「お兄さん。人間なのかー?」
「あたかも自分がそうじゃないみたいに言ってるところが引っかかるけど・・・ああ。人間だよ。」
少女はスバルの母、菜穂子を彷彿とさせるぐらい脈絡のないことを喋ってきた。結果自分の質問が消滅したが、そんな事はこのタイプの人間と話しているとよくあることだ。気にせずスバルは対話を続けようとする。
「ちょっと遠くから来たばかりでさ、ここについてしりた・・・」
続けようとした、その時だった。
「ーーいただきます」
「へ?」
何を言ったのかを聞き返そうとした次の瞬間、スバルの右手の手首から上が根こそぎもぎ取られていた。あまりにも無惨で常人なら見るに耐えないような状態の右腕を見て、なんか見たことあるなーーそんな、現実逃避する。そして現実逃避もすぐに、終わり。
「あがあああああああああああ!!」
とんでもない激痛が生じて、スバルは草原の上をのたうち回った。痛くて動かずにはいられないが、動けば動くほど体内の血液が外に撒き散らされる。スバルの周りがどんどん朱に染まり、大きな喪失感がスバルの体を襲う。
「がっ!あががががが、いあっ、いあい!」
暴力的なまでに送られてくる痛い、という情報によって、スバルはひたすらに叫ぶことしかできなくなる。少女がどんな状態になっているかはわからない。わからないが、この場にスバルと少女以外誰もいなかった以上、そういうことなのだろう。叫び、暴れ、全力で痛みに抗っている間も、脳の冷静な部分では思考を続けていた。ーーそんな思考に何かの音が混じる。
「お兄さんあんまり美味しくないー。けどまあ、久しぶりの人間だし残さず食べよっと。」
言い終わるや否や、少女は再びスバルに近づきーー今度は左腕を貪った。痛みが倍増し、スバルはより暴れ始める。
「あがっ、うわああ!いあい、あい」
暴れながらスバルは、頭の中でとある出来事を思い出していた。一年ほど前に体験した、大量のウサギに捕食されるという恐ろしいトラウマを。あの時と違って、捕食主は一人だ。だからといって痛みも恐怖も減るわけではない。本来、人間の心は捕食されることに耐えられるようにできていないのだ。何度繰り返しても慣れることのない『死』の予感を受け、それでもスバルは懸命に抗う。そもそも、この世界では戻れるかどうかわからないのだ。そして、たとえ戻れるとしても自分の命を諦めるなんてことは絶対にしない。そんな気持ちで蠢いているとーー
腹に穴が空いた。
外に出てはいけない、スバルを構成する色々なものがこぼれ落ちていく、だいじなものをうしなってそれでもまだいきたいとねがってこんがんしておもってかんがえてあらがってみらいをみてそれでもたりなくてふそくしていてとどかなくてとどけたくてうしないたくなくてまもりたくてえみりあをれむをべあとりすをペとらをらむをふれでりかをぱとらっしゅをおっとーをがーふぃーるをみんなをささえたくてわらってほしくてそれでもたりなくていたくてつらくてかなしくていやになってよわくてこわくていたくていたいいたいいたいいたいいたいあがががががががががががーーーーーーあぅ
『ナツキ・スバル』が『ナツキ・スバル