「あー、俺やっぱちょい自信ないからベア子が喋ってくれるか?」
「スバルの頼みなら仕方ないかしら。」
ベアトリスはそう言うと、3人の魔女たちに向かって話し始めた。
「ベティーたちの世界ではまず魔法と精霊術があるかしら。どちらも元となるエネルギーは大気じゅうに満ちるマナだけど、使い方に違いがあるのよ。魔法はマナを自分のゲートで取り入れて放つかしら。そして精霊術は術者が契約した精霊を通して、行使するのよ。」
ここで、アリスが手を挙げて質問をする。
「そのゲートってのは何?」
「ゲートは人間なら誰でも持っているマナを扱う門のようなものかしら。」
続いて成美が発言する。
「それじゃ、そっちの世界では誰でも魔法が使えるってこと?」
「基本的には使えるけど、どの程度使えるかは才能によるのよ。」
二人はベアトリスの答えを聞いて納得するが、魔理沙はどこか憂鬱げな顔で呟いていた。
「才能、か。」
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもない。続けてくれ。」
スバルは取り繕うように言った魔理沙を不思議に思う。しかし、掘り下げることはしないようにした。
「魔法も精霊術も六つの属性があって、各々適性のある属性しか使えないかしら。ちなみに、ベティーとスバルは陰属性使いなのよ。他には火、水、風、土、陽があるかしら。」
「火と水と風と土はなんとなくわかるけど・・・。陰と陽はどういう魔法なの?」
「陰属性は敵の視界を塞いだり、まあ相手の妨害がメインの属性かしら。一方陽属性はその逆、味方の強化が主な役割なのよ。」
その後もベアトリスはほとんど初対面にも関わらず3人の質問に淡々と答えていった。お互い魔法を探求するものだからだろうか、心なしかみんな楽しそうである。スバルは後半になるにつれて内容がわからなくなっていったが、ベアトリスたちのそんな様子を見るだけでも嬉しくなる。
「・・・とまあとりあえず魔法についてはこんな感じかしら。」
しばらくすると、四人の話し合いに一区切りがついた。全員がメモし終えたのを確認すると、魔理沙は全員に言った。
「よし、それじゃあお互いの魔法についての知識を得たところで、比較していくか。」
この会のメインテーマである。魔理沙の発言を受けて、まずはアリスが口を開いた。
「まず私たちの言う魔力とあなたたちのマナ、これはほぼ同一のものだと考えて良いと思うわ。」
さも当たり前のように語られた割と衝撃的な話に、スバルはベアトリスを見て真偽を問う。
「それで問題ないかしら。それならベティーたちがこっちで魔法を使えるのも矛盾しないのよ。」
ベアトリスもあっさり肯定した。
「さらに言うなら、この世界の魔力は万能。つまりどの色のマナの働きもしてくれるかしら。」
「そのようだな。そっちからしたらかなり革命的なんじゃないか?」
「そうでもないのよ。多属性を使えるなら恩恵を受けられそうだけど、それができるのはごく一部かしら。」
スバルを置いてきぼりにして議論はどんどん進んでいく。仕方がないのでわかる分だけ理解するように努めた。
「
「私も成美と同意見ね。そうなると気になるのは・・・私たちにゲートがあるかどうかかしら。それはどう?」
「お前たちはおろか人間の魔理沙にもゲートの存在は感じられないのよ。というか、この世界でゲートを持つニンゲンに会ったことがないかしら。」
「じゃあ私らがそっちの魔法を使うことは不可能ってことか。逆はどうだ?」
「おそらくゲートのせいで魔力を操る前にマナを取り込んでしまうかしら。だから不可能なのよ。」
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その後も議論は続いたが、最終的に出た結論は『どちらも他の世界の魔法を扱うことは不可能』と言う残念極まるものだった。議論がひと段落したので、今はすっかり冷めてしまったお茶を飲みつつ雑談タイムである。
「くっそー。別の世界の魔法も使えたらもっと色々な攻撃ができると思ったんだがなぁ。」
魔理沙は心底悔しそうに叫ぶ。その様子に同調しつつ成美は言った。
「できないものは仕方ないね。私も治療魔法ってのはすごく気になったな。生命を操るって豪語している割にその類の魔法はできなかったからね。」
「いつぞやの異変みたいに、二人1組で行動してたりしたら使えそうよね。」
「永夜異変のときね。そういえば二人で行ったんだっけ?」
「ああ。あの時はあんまり仲良くなかったけどな。」
3人は思い出話をしている。部外者のスバルとベアトリスはなんの話かあまり分からないが、邪魔をするのも良くないのでなんとなく話を聞いていた。
「そういえば魔理沙。魔法使いになる踏ん切りはついたの?」
アリスの突拍子もない一言で、それまでなんとなく話を聴いていたスバルは耳を疑う。
『魔法使いにも種類があるのよ。それは種族としての魔法使いと職業としての魔法使い。私や成美みたいな種族としての魔法使いは定義的には妖怪に入るわ。そして魔理沙のような人間でも魔法を使う人を職業としての魔法使いと便宜上呼んでいるのね。』
この会の最初の方で言われたことだ。この言葉に従うと、魔法使いになると言うことは人間を辞めて妖怪になると言うことで。
「ちょ、アリス!なんでその話したんだよ!?」
当の魔理沙は慌ててアリスを問い詰めていた。
「あら、言っちゃいけなかったかしら?」
「当たり前だろ!?この二人は今博麗神社で暮らしてんだよ!」
「ちょ、魔理沙、落ち着いて!」
今にもつかみ掛からんとする魔理沙を成美が抑えていた。直前までののどかな雰囲気は霧散する。
「魔理沙、それってどう言うことだ。魔法使いになるってことは、妖怪になるってことだよな?」
意を決してスバルは聞くことにした。魔理沙も覚悟を決めたのか、スバルの方を見ると話し始める。
「・・・その通りだ。ただ、勘違いしないでほしいが私は人間を襲うつもりは一切ないんだよ。」
スバルは考える。幻想郷に来たとき、スバルはルーミアという妖怪に襲われた。しかし、その後に出会った妖怪たち、萃香や文などはスバルに友好的だった。ここからスバルは、妖怪と言っても一概に悪いと言えるかわからなくなってきていたのである。妖怪になるということは、幻想郷では意外とよくあることなのかもしれない。
「俺はまだ幻想郷の妖怪ってのがどんな存在か分かってないんだよな。人間の敵なのか?」
「どちらかというと共存関係っていうのが正しいわ。妖怪は、人間に存在を覚えていてもらわないと存在できないの。それで手っ取り早いのは人間を時々襲って恐怖で存在を覚えてもらうこと。だから特殊な力を持たない弱い妖怪ほど人間を襲うわ。強い妖怪は人間を襲わなくても覚えていてもらえるからね。」
スバルの疑問に答えたのはアリスだった。彼女も魔法使いだから、妖怪のことは詳しいだろう。
「食料にしてるってわけじゃないのか。」
「そうだな。だから周りから忘れられなければ、妖怪になっても人を襲う必要はないんだよ。私はそこそこ有名だからね。すぐに存在を脅かされるようなことはないはずだ。」
魔理沙の発言の意味はわかった。しかしもう一つ、スバルは気になることがあった。
「魔理沙はどうして魔法使いになりたいんだ?今でも魔法は使えるんだろ?」
その質問を聞き、魔理沙はやや下を向く。そして答えた。
「勝ちたいんだ。霊夢に。」
スバルは知ってる人物が突然出てきて驚きつつも、続きを聞いた。
「スバルは異変ってわかるのか?」
「時々起こる大事件のこと・・・だよな。」
「ああ。今まで私は異変が起こるといつも調査に出るんだ。一番に解決してやろうと思って、自慢の魔法を携えてな。ただ解決できたことは一度もない。いっつも霊夢に先を越されてたんだよ。すげぇとも思ったけど、悔しかったんだ。だから、なんであんなに強いのか知りたくて、霊夢と仲良くなった。その方法を見つけてもっと強くなってやるって。」
喋っている魔理沙から心なしか黒いオーラが出ているような気がする。そんな魔理沙を心配しつつ、スバルは話を聞いていた。
「・・・見つからなかったんだ。あいつは生まれ持った勘と、戦闘センスだけで戦ってたんだよ。地道に魔法を作って、練習していた私と違って。それを知った時、私は悟った。『無理だ』って。これからどれだけ努力しようと、あいつと同じステージに立ってちゃ一生勝てないって、そう思った。」
「だから別のステージに立つ。魔法使いになって、より深く、魔法について知って・・・そうしてあいつが死ぬまでにあいつに勝てるようになりたい。それが私が魔法使いになろうとしている理由だ。」
ただ仲がいいだけだと思っていた二人の中に、こんな複雑な事情があるなんてスバルは思ってもみなかった。聞いてはいけないことを聞いてしまったかと思っていると、成美が話す。
「でも妖怪になると、霊夢から命を狙われるでしょ?」
「そうなのか!?」
「幻想郷で人間が妖怪になるのは大罪だ。相手が私だろうと、間違いなく殺しにくる。」
急すぎる展開にスバルは一杯一杯になりつつ、話を聞く。
「だから少なくとも逃げ切れるぐらいの力はいるし、魔法使いになるのはまだ先かな。まあいつでもなれるように準備はしているが。」
話がひと段落して周りを静寂が包む。スバルは今までの情報を整理して、魔理沙に言った。
「魔理沙は霊夢と敵対することはいいのか?」
スバルはどうしてもここについて聞きたかった。今まで仲良くしていた相手に武器を向けられるということは、思っている以上に辛いことだと、実体験が言っているからだ。
「私も覚悟はできてるさ。」
はっきり答えた魔理沙を見て、スバルは複雑な気持ちになる。
「なんとなくだがわかった。ぶっちゃけ部外者の俺が口出しするようなことでもないし、周りに危害を加えないのなら、それもいいと思う。」
「そうか。ありがとな。あ、霊夢には秘密にしておいてくれ。間違いなく絞られるから。」
「わかったよ。」
しかし、それをわざわざ言うのも今の魔理沙にとっては良くないかもしれない。そう思ってスバルはその気持ちを胸に仕舞い込んだ。