茶会は程なく終了し、アリスと成美は帰っていった。夜も更けていたので、スバルは魔理沙の家に泊まることになる。
「夜の魔法の森は危ないからな。まあ私がいるし大丈夫だとは思うが、念には念を入れて明るい時に帰ったほうがいいと思うぜ。」
とのことだった。そして次の日、二人は魔理沙の付き添いのもと博麗神社に帰った。
「ただいま・・・って霊夢いないのか。」
しかし霊夢は出払っているのか博麗神社は無人だった。
「また妖怪退治かな?」
「あいつがそんなにしっかり仕事するイメージないんだが。」
そんなことを話しつつ、3人は霊夢の帰りを待っていた。しかし、待てど暮らせど一向に帰ってくる様子がない。
「帰ってきそうにないし、私は一旦帰るわ。」
痺れを切らしたのか、魔理沙は家に帰ることにしたようだ。
「おう!色々ありがとな!」
「こっちこそ楽しかったぜ!またな!」
その言葉を最後に箒に飛び乗って帰っていった。
もう日が傾こうかという頃、ようやく霊夢が空を飛んで帰ってきた。しかし、その顔には明確に影が宿っている。
「おかえり。超遅かったけど何かあったのか?」
「人間の里でちょっと騒動がね。」
いつも以上にそっけない口ぶりで霊夢は答える。どうやらあまり詳しく話したくはないらしい。今までに見たことがないような顔だったので、余計なお世話かもしれないと思いつつ何があったのか聞くことにした。
「なんか落ち込んでるみたいだけど、大丈夫か?」
「・・・あんたには関係ないわ。」
が、霊夢は頑なに答えようとしない。こうなっては深く聞くほうが失礼だろう。スバルはそれ以上話さずに、夕食の準備をしに行った。
・・・その後、霊夢は一切喋ることなく就寝した。そんな霊夢の様子はやはり気になったが、結局そのままスバルも床に着いた。
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次の日は、3人とも神社にいた。スバルは境内の掃除をのんびりやって、霊夢は縁側で何か考え事をして、とひたすら静かな時間が流れていた。しかしその静寂は、すぐに奪われることになる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「なんだ!?」
突然そんな地響きがした。どうしてか分からず周りを見渡す。
「スバル・・・アレを見るのよ!」
そばにいたベアトリスが刺した方向を向くと、そこには・・・
どんどん広がる紅い霧があった。
「あれは・・・ちっ、あいつら、なんでこんな時に!?」
霊夢は何が起こってるのかわかるのか、露骨に怒りの表情をして毒づく。その間にも霧はどんどん拡散して今にも神社にも届こうとしていた。
「急いで!二人とも神社の中に!霧が入らないように部屋を閉ざして!あれは危ない!」
「霊夢は!?」
「私はあいつらを止めに紅魔館に行くから!時間がない!早く!」
スバルとベアトリスは霊夢の指示に従い神社の中に避難する。部屋を一室閉め切ると、襖の隙間を塞いだ。
「一体どうなってやがる・・・」
何が何だかわからないままとりあえず避難したスバルは、少し前に聞いた話を思い出す。
『異変っていうのはこの幻想郷でたびたび起こる不思議な事件のことです。例えば、至る所に紅い霧が発生したり、いつまで経っても春にならなかったり。』
インタビューを受けた時に文が言っていたセリフだ。不思議な事件、紅い霧・・・どれも今の状態を表すのにぴったりである。
「これが、異変・・・」
完全に密室にしたのが功を奏したのか、二人がいるところに霧はやってこなかった。そうして30分ほど経った頃、
ドサッ
突然部屋の中にボロボロになって倒れた霊夢が降ってきた。
「霊夢!?霊夢、しっかりしろ!」
スバルは霊夢を叩いて起こそうとする。霊夢は動く力も残ってないようで、そのまま口だけ動かした。
「・・・しくじったわ。まさかあいつらに新しい仲間がいたなんて・・・。桃髪のメイドなんて、いつ雇って・・・」
スバルはその言葉の「桃髪のメイド」に注目した。言わずもがなスバルにはその特徴に該当する仲間がいるからだ。
「おい、霊夢。それってどういう・・・」
その言葉の詳細を聞こうとした時、
ガランガランガラン
そう音がしたと思うと3人がいた部屋の天井が何故か崩れ落ちる。当然、外に充満していた紅い霧もやってきた。どうにかして対処しようと頭を回したスバルだったが、紅い霧が体内に入ると同時に猛烈な眩暈を覚え、思考が止まる。
「ベア子っ!」
スバルは最後の力を振り絞って相棒を呼んだ。しかし、その返事を確認するより前に、
スバルの意識は闇に沈んでいった。
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「スバルはどうする?」
急にハッキリした意識のなかで、スバルは目の前の情景をぼんやり眺めていた。目の前には帰ったはずの魔理沙、そして無傷の霊夢とベアトリス。何事もない神社。ここから導かれる結論は一つしかない。
「また、始まるのか・・・」
襲いくる「死」を回避するためのループが、始まったのだ。
やや文字数が少ないですが、キリがいいのでここで終わりにします。