二人は咲夜に連れられて紅魔館から出る。魔法は解除されているのか、普通に門を通って外に出ることができた。二人が門から出たら咲夜は丁寧にお辞儀をして言う。
「それでは、忙しいので私はここで。」
有無を言わせないようにか、こちらの返答を待たずに咲夜は消えた。何とも言えない雰囲気に包まれている二人を見て、待っていた霊夢が声をかける。
「で、収穫はあったの?」
「あったといえばあったし、なかったといえばなかったというか・・・」
「煮え切らない答えね。どの道、あいつらが何か企んでるのは確かだろうけど。とりあえず、帰りましょうか。」
いつまでもここにいるわけにはいかないため、三人は神社に戻りながら話す。
「そういやどうしてスバルは紅魔館に来たかったの?」
いきなり紅魔館に行きたいと言ったのがやはり不思議だったらしい。霊夢にどこまで話していいのか悩むスバルだったが、まだ分からない点も多いため一旦異変のことは伏せておくことにした。
「いや。ここに同じ世界から来た仲間が居そうだと思ったんだ。実際いたし。」
「なんで分かったのか、ベティーはずっと不思議だったのよ。」
「えーと、勘かな?」
「なんて頼りない答えかしら。」
「なるほど。それでね。」
「えっ?」
あいまいな答えしか返せず、もっと追及されると思っていたスバルは拍子抜けする。まるで霊夢は勘に絶対的な自信があるかのようだ。
「仲間は何人いたの?」
「二人だけど。」
「そう。ならあと一人ね。」
「・・・なんて?」
突然知らない情報が出てきてスバルは目を丸くする。
「ああ、言ってなかったっけ。どうやらあなたの世界から来たのは五人らしいわよ。」
「そ、そうなのか!?」
何でもないような顔をして霊夢は言う。が、スバルからしたらこれ以上ないほど重要な情報だ。
「五人ってことは・・・あと一人か!」
どうやら思ったよりたくさん巻き込まれているわけではないらしい。そのことに安堵しつつ、残り一人も早く見つけたいとも思う。
「ところで、なんでそんなことが分かったんだ?」
「前に言った幻想郷と他の世界を繋ぐ奴が言ってたわ。胡散臭い奴だけど、大事なところはちゃんと教えてくれると思う。・・・多分。」
そうこうしているうちに神社に到着する。
「はー、朝っぱらから出かけたからおなか減ったわ。スバルー、朝ごはん作って頂戴。」
「もちのろんだ。俺の用事に付き合わせちゃったからな。腕によりをかけさせてもらうぜ。」
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朝食後、スバルは境内を掃除しつつ今までの情報を整理していた。今日は幻想郷に来て四日目で、一周目では魔理沙や成美、アリスと茶会をしていたころだ。そして今朝分かったことは・・・
「レムとラムが紅霧異変に加担している。」
これはもう間違いないだろう。咲夜と示し合わせたように消えたし、紅魔館から出ようともしなかった。レムはおそらく寝ているだろうから加担しているのはラムか。いずれにせよ、そうすると疑問なのは動機だ。
「・・・わかんねえな。」
そのつぶやきが聞こえたのか、傍にいたベアトリスが答える。
「あの娘はロズワール以外を簡単に信用するようなたちじゃないかしら。きっと何か理由があるのよ。」
ベアトリスが言うことはその通りだ。・・・そこにレムの名前がないことに寂しいとも思ってしまうのだが。
なんにせよまだ推理をしようにも情報が少なすぎる。しかし紅魔館からマークされた今、情報を集めることも難しいだろう。
「どうしたもんかな・・・」
そうやってスバルが掃除を再開しようとした時、神社の扉がすごい勢いで開けられた。そして中から切羽詰まった顔をしている霊夢が現れる。あまりにも見たことがない顔なので、思わず声をかけた。
「れ、霊夢?どうしたんだ?」
「ちょっと人里行ってくるわ!気にしないで!」
そのまま飛び立とうとする霊夢を引き留める。
「ちょいちょいちょい、何があったんだよ。」
「分からないわ。分からないけど、ものすごく嫌な予感がする。」
「分からないって・・・」
分からないのに行こうとしたのか、とやや呆れる。しかし、本当に何かあったのだとしたらスバルも知りたい所だ。もしかしたら異変と関係があるかもしれない。
「なあ、俺らもついていって良いか?」
「ダメよ。何があるか分からないわ。」
霊夢は即答する。霊夢なりにスバルたちのことを考えての発言なのだろうが、スバルとしてもここは譲れなかった。
「自分の身は自分で守る。俺らだって魔法を使えるの見ただろ。むしろ、手伝わせてくれよ。」
「ここはそんな甘い場所じゃないのよ!おとなしく神社で待ってて!」
ここに来て初めて二人が衝突する。しばらくガンを飛ばしあう二人だったが、時間がないこともあり霊夢が諦めたように言う。
「はあ、分かったわ。ただし、あまり私からは離れないこと。あと、自分の身は自分で守って。」
「分かった。ありがとう。」
そう言葉を交わすと霊夢が空高く飛び立つ。
「いくぞ、ベア子。」
「まかせるのよ。」
「「ムラク!」」
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「な、何が起こってんだ・・・」
人間の里についた三人は、一瞬で異常に気づいた。というのも道行く人々が皆何かに苦しみ悶えていたのである。あちらこちらから叫び声が聞こえ、まさに地獄の様相を呈していた。
「とりあえず誰かに接触してみるわよ!なんとか正気に戻さないと!」
「おう!」
三人は近くで発狂している人のところへ行き、声をかける。
「どうしたの!ねえ、落ち着いて!」
「何があったんだ!おい!」
しかし声が届いていないのか、全く落ち着く気配が無かった。
「・・・これ、おかしいわ。」
「そりゃおかしいと思うけど!」
「そうじゃなくて。スバルはわからないかもしれないけど、本来こんな異変、ありえないのよ。」
焦った声で霊夢が訴える。
「どういうことだ?」
「こんな人里丸々巻き込むようなことしたら、いろんな奴らが黙ってないはず。目的が何かわからないけど、それにしたってリスクが大きすぎる。まるで犯人が、幻想郷のことを何も知らないよう・・・」
「幻想郷のことを知らない・・・!?」
その言葉を聞いて、スバルの中に一つの答えが浮かび上がる。それは、以前も少し検討した可能性。現実になってほしくないと、そう思ったものだった。しかし、これが本当だとすると今の状態もうなずける。どちらにせよ、今とるべき行動は一つ。
「霊夢!ベア子!鈴奈庵に行くぞ!」