Re:ゼロから始める幻想郷生活   作:半霊

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タグにつけ忘れていたオリジナル設定タグをつけました。基本的には両作品とも原作設定を重視して書きますが、今後オリジナル設定を出すところが有ります。後付けみたいになって申し訳ございません。


S5 物言わぬ紅い館

鈴菜庵を去ってから、3人はいろいろな場所を探した。しかし、有益な手がかりは何一つ見つかることがなく、ただ時間だけが過ぎていった。結局夕方になるまで探したが、誰一人見つけることはできなかった。人間の里に来た時は真っ青だった空は、茜色に変化し、カラスっぽい鳥が鳴いている。

 

「付き合ってもらってる立場でこんなこと言うのもあれだけど、今日はここまでにしないか?」

「これ以上手がかりもないし、ね・・・。」

 

スバルの提案に賛同しようとした霊夢だったが、喋ってる途中で何やら考えてるような顔をした。

 

「何か言いたいことがありそうな顔かしら。小娘。」

 

ベアトリスはその表情の変化をめざとく見つけ、言及する。

 

「そうね・・・。里の中じゃないんだけど一箇所、珍しい人間を囲いそうな奴らを思い出したの。そんなに遠くないし、最後そこに行ってみましょうか。」

_____________________________________

霊夢の案内を受け、たどり着いたのは人間の里の外に堂々と立つ赤黒い洋館だった。暗くなってきた空も相まって禍々しい雰囲気を纏っている。下手なお化け屋敷よりよっぽど怖いそこを明らかに目指していそうな霊夢を見て、スバルは言う。

 

「霊夢さーん、もしかして目的地って、あのいかにもヤバそうな洋館のことでしょうか?」

「そうよ。紅魔館っていうんだけど。ここの主人が面白そうなものあったら拾いそうな質してんのよね。」

 

霊夢によって目的地だと明言された館は、誰が見てもわかるほど禍々しい気配を放っていた。軽く死の予感すら感じる。

 

「まあ、ヤバいっていうスバルの直感は正しいわ。普通の人間なら絶対に近づかない方がいいところなのは確かだし。」

「平然と空を飛ぶ霊夢と違って、俺は至って普通の一般ピーポーなんだが、そこんとこどうなんでしょうか!」

「まあ、別に大丈夫なんじゃない?」

「扱いが雑!」

 

いかにも人間離れしている霊夢の大丈夫は、一般人であるスバルの大丈夫と同じとは思えない。せっかく一年ほど平和に過ごしていたんだから、これ以上幻想郷で死にたくはない。というか元の世界でも死にたくない。死ぬなんてのは人生の最後に一回だけでいいのだ。

 

「そんなに心配しなくても、スバルはベティーが守ってやるかしら。」

 

怖がるスバルを見かねたのか、ベアトリスが繋いでいるスバルの手を握り直して言った。彼女の温かい心遣いを受け取り、スバルも覚悟を決める。

 

「着いたわよって、あれ?」

 

3人は紅魔館の門前に着くと、揃いも揃って怪訝な顔をした。というのも、門は普通に開いている上に、その周りに誰もいなかったからだ。

 

「おかしいわね。いつもここに門番がいるはずなのに・・・。あいつ、ついにクビになったのかしら。」

 

どうやら、普段は門番がいるらしい。しかし、今はいない上に門も空いている。入ってもいいということなのだろうか。まあ、そんなことはないよなと思いつつ、スバルはなんとなく門に近づいた。すると、

 

               バチバチッ

 

「うおいってぇ!」

 

突然スバルの体に静電気のような衝撃が走る。スバルは急いで門から離れた。

 

「なんだよ今の!こんなのがあるなんて聞いてねぇぞ!」

「不用意に近づくからかしら。全く、スバルはもう少し落ち着きを持つ方がいいかしら。」

 

ベアトリスはパートナーを窘めながら、スバルが弾かれたところを注視する。

 

「ここ、魔術的な干渉がされてるのよ。詳しくはわからないけど、生き物を通さない類のものかしら。」

「マジかよ。こんな堂々と開けておいてか?入ってほしくないなら門を閉めろよ。」

 

そのスバルの声を聞いた霊夢は、妙に合点がいったという風にし、答える。

 

「門を閉めてても入ってくる奴がいるからね。役に立たない門番を立てたり、どうせ越えられる門を閉めておくよりも全員中に入れてガッチリ閉ざしてしまおうってところかしら。」

 

言い終わるや否や、霊夢ははるか上空へ飛んでいく。そして程なくすると戻って来て、

 

「ダメね。上空まで全て閉ざされてるわ。飛び越すこともできなそう。全く、あいつら何企んでるのかしら。」

 

と言った。

 

「なんで入れてくれないのかはわからんが、こりゃどうしようもないか。」

「そうね。仕方ないけど今日は帰りましょうか。」

 

3人は収穫がほとんどないことに気を落としながら、帰路に就いた。丸一日かけて分かったことは、魔女教が来ているかもしれないという嫌な情報だけだ。幻想郷は、前の世界と同じでそんなにスバルたちに甘くないらしい。行く先々で得られたのは、謎や脅威ばかりだ。

 

「だから、どうした。」

 

スバルは小さく呟く。そうだ。世界が優しくないのなんて今更だ。何も変わってなんかいない。そんな世界でもスバルはみんなに助けられて多くのことを成し遂げてきたのだ。今回だって、きっとうまくいく。いや、行かせる!スバルは新たな決意を胸に、明日のことを考え始めた。

_____________________________________

深夜。客人たちが眠り、静けさを取り戻した神社の縁側に、霊夢は一人ぼんやりと座っていた。照明もほとんどなく夜には真っ暗になる神社は、物思いに耽るには最高の場所だ。お茶とお菓子を食べながら、霊夢は直近に起こった出来事を整理する。月並みな表現だが、激動の二日間だった。久しぶりの外からの来客たちーーどうやら違うみたいだけどーーはどこまでも明るくて、真っ直ぐで。感情をまっすぐ表す二人に当てられたのか、自分もここ数日は柄にもなく生き生きしていたかもしれない。ーーそこまで考えたら、霊夢は一旦思考を断ち切る。()()()用意した菓子に誰かが手を伸ばしたようだ。誰かなど考えるまでもない、と霊夢は犯人を特定し話しかける。

 

「ほんっと、言い趣味してるわよね・・・。紫。」

「あら?気づいていたのね。お見事。」

 

声の主は心にもないことを告げながら霊夢の隣の空間に開けた穴から出てくる。幻想郷を作った大妖怪の、八雲紫だ。

 

「こうやってるとあんたが湧いてくることぐらい、わかってるわ。」

「一人でいるのに二人分のお菓子を用意してるでしょ?一緒に食べてあげないとかわいそうじゃない。」

「あんたを釣るために、わざと用意してるの。」

「あらあら、釣られちゃいましたわ。それで、そんな餌まで用意して、なんの用かしら。」

 

二人はいつものように軽口の応酬をした後、本題に入ろうと紫が用件を聞いた。どうせわかっているくせに、と内心こぼしながら霊夢は言う。

 

「スバルとベアトリスの事よ。いつになったら元のところ返してあげられるの?」

 

霊夢は眠っている二人の方をチラリと見てから問いかける。その様子に紫は軽く微笑むと、

 

「こんな風に急ぐなんて珍しいじゃない。何?あの二人のこと気に入った?」

 

と揶揄うような声音で告げる。

 

「そんなんじゃないわよ。けど、幻想郷に迷い込んだ人を送り返すのが仕事なんでしょ?」

 

霊夢は不機嫌な様子を前面に出しながら紫に言い放った。

 

「ふふ。まあ、そう言うことにしておきましょうか。」

 

ふんわりと会話を続ける紫に、霊夢は辟易としながらも答えを催促した。

 

「で、いつよ。」

「そうね。その質問に対しては今のところ、わからないとしか言えないわね。」

「っ!?」

 

予想外だった返答に霊夢は少し驚きを露わにし、紫の方を見る。

 

「幻想郷の外のことはあんたの専売特許でしょ?そのあんたが分からないなんて。」

「今はまだ、よ。」

「どう言うこと?」

 

いまいち要領を得ないゆかりの話に霊夢は勢いよく追求する。

 

「あなたも、彼らがいつもとは違うってことはわかっているでしょ?」

「今までの外の世界とは違うところから来てるって言うやつね。」

 

笑いながら紫は頷き、続きを話す。

 

「私のスキマは理論上、どんなところにでも開けることができる。ただし、それには目的地がわかっているという必要があるわ。あなただって、目的地がわかっていないのに飛ぶことはできないでしょ?」

「まあ、そうね。」

 

紫の説明に納得する霊夢だったが、ここでとある方法を思いつく。

 

「それなら、スバルたちにどんな世界か聞けばいいじゃない。その情報を元に特定できるんじゃないの?」

 

しかし、その霊夢の方法はあっさり却下される。

 

「どんな場所かと言う情報なんてどれだけ集めても無駄。スキマを開ける空間を指定するにはその空間の座標がわかる必要があるの。それこそ無限にある、ね。そんな数値、普段から空間に干渉でもしてないとわかるわけないじゃない。」

 

紫にしては、具体的な話だった。霊夢は、確認の意味を込めて言う。

 

「・・・まあ、あんたの事情はわかったわ。今は、ってことはそのうちわかるのね。」

 

「ええ、必ず。だから、それまでにあの世界から来た者たち5人を全員探しておいてちょうだい。」

 

さらっとゆかりの口から出てきた新事実に再び霊夢は驚く。

 

「なんで5人ってわかるのよ。」

「空間を超えた痕跡から・・・まあ、あなたは知らなくてもいいわ。」

 

霊夢の疑問はさらりと交わされる。まあ、本気で知りたいと思ったわけでもないからいいが。

 

「ところで残りの3人はどこに・・・」

 

霊夢がそう聞こうとした時には、紫はもう影も形もなくなっていた。いつの間にか食べられていたお菓子の皿を見て、霊夢は大きいため息をつく。

 

「気に入った・・・のかな。」

 

片付けをしながら漏れたその呟きに答えるものは、誰一人いなかった。

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