文が帰った後、程なくして霊夢も帰ってきた。行く時は一人だったが、なぜか魔理沙も一緒にいた。
「ただいま。早速だけど魔理沙からあんたらに話があるって。」
「話?」
藪から棒な霊夢の発言にスバルたちは首を傾げ、魔理沙の方を見る。
「なあ二人とも。今夜、私の家に来ないか?」
「・・・は?」
「なあ二人とも。今夜、私の家に来ないか?」
「わからなかったわけじゃねぇよ!?てかそれ、はいって言わないと永遠に続く選択肢かよ!?」
一言一句声のトーンまでわざわざ揃えてボケる魔理沙に勢いよく突っ込む。そんなスバルを見て、魔理沙は声をあげて笑っていた。どうも確信犯らしい。というか幻想郷にゲームはあるのか。あるなら後でやりたいと思いつつ、魔理沙の話を聞く。
「まあ、用があるのはベアトリスの方なんだけどな。」
その突然の指名にベアトリスは目を丸くして聞き返した。
「ベティー、なのよ?」
「そうそう。今夜、幻想郷で魔法を使っている奴らと茶会をするんだよ。ベアトリスたちの世界の魔法についても知りたいし、そっちだってこっちの魔法について知れば、有効利用できるかも知れないだろ?有益な情報交換ってやつだ。」
「情報交換ってより、いつもの好奇心でしょ。」
「バレたか。」
魔理沙はウキウキの様子で自分の目的を喋り始めた。言ってみれば魔女の茶会・・・いや、この言葉には碌な思い出がないからやめておこう。スバルは益体もない思考を断ち切ると、ベアトリスを見た。
「ま、まあ行ってやることもやぶさかではないかしら。」
相変わらずのツンデレ発言だ。それすなわち行きたいということだろう。魔理沙もそれがわかったのか、視線をスバルに移すと、
「スバルはどうする?」
と聞いた。もちろんスバルの答えはイエスだ。
「ベア子が行くなら俺も行くよ。ってか俺がいないとベア子は魔法使えないしな。」
だが、答えた後にスバルは今日の家事のことを思い出した。当たり前だが、魔理沙の家に行くなら神社での家事はできない。どうしたものかと霊夢に視線を移すと、
「別に家事のことなら気にしなくていいわ。まだあなたたちを帰す目処もついていないし、行ってきたら?」
と言ってくれた。
「それじゃ、今から行くか!」
「おー!」
「おー!かしら。」
こうして、3人は森の中の魔女の家を目指すことになった。
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出発してから30分ほど。スバルたちは鬱蒼とした森の中を進んでいた。光はほとんど届かない上、地面は湿っている。果たしてこんな所で人間が暮らせるのだろうか。
「すげぇ薄暗い所だな。魔理沙はこんなところに住んでるのか?」
「魔法の材料となるキノコとかがたくさんあるんだよ。案外、住めば都だぜ?」
意外といける、とでも言いたげな魔理沙の様子に、スバルは待ったをかける。
「住めば都は俺も大方賛成なんだが、限度があると思うぞ。心なしか、空気も悪いし。」
それがスバルの正直な感想だった。実際、スバルの周りには時々、空気が紫色のところがあったりするのだ。かなり体に悪影響がありそうだ。
「それ、気のせいじゃないかしら。この辺のマナは汚れているのよ。」
「マナが汚れてる?」
突然ベアトリスの口から出た謎の事象にスバルと魔理沙は揃って首を傾げた。
「空気が汚れてるって解釈でいいかしら。なんにしろ、長居はしたくない環境なのよ。」
「光化学スモッグ的なあれか。」
「光化学すもっぐが何かはわからんけど、多分そうかしら。」
そんな雑談をしつつ歩いていると、やがて森が開け、木造の立派な一軒家が姿を現した。周りの木が狩られているのか、それまでとは違って光も差していて、風通しも悪くないだろう。思ったより住み心地は良さそうだ。家の側にはパラソルにテーブルといった野外の茶会では必須とも言える道具があり、すでに二人ほど座っていた。魔理沙以外の参加者だろう。
「おーい、アリス!成美!」
魔理沙がテーブルの方に向かって走り出す。二人も急いで追いかけた。
「遅かったわね。魔理沙。準備はもうできてるわよ。」
「そっちの二人が見たことない魔法を使うっていう人たち?ここら辺じゃ見ない姿してるね。」
そこには、二人の女性がいた。一人は、ウェーブのかかった金髪で、青いノースリーブにロングスカートを履いている。特筆すべきなのは周りに数体の人形らしきものを浮かべていることだ。人形たちは普通に浮いたり自動で動いたりしている。どういう原理なのだろうか。もう一人は長い黒髪をおさげにしていて、頭に大きな傘をかぶっている。服装も灰色のロングコートで、まるで地蔵のような色合いをしている。というか、地蔵なのだろう。幻想郷だし、地蔵が動いていてもなんら不思議ではない。
魔理沙はスバル達用の椅子も用意して、二人に座る様に勧める。そうしてテーブルの周りに全員が座ったところで、
「それじゃ、時間も惜しいし早速始めるか!」
と楽しみで仕方がないといった風に告げた。