キャラクリTS転生者の、さいかわ衣装をハック&スラッシュ! 作:ゆめかわ!
この世界には二種類の人間がいる。
キャラクリゲーで男主人公を使うオタクと、女主人公を使うオタク。
自分は後者だ。
ゲーム中に男のケツなんて見たくねぇ、プレイするなら美少女がいい。
そういう考えに、共感してくれるオタクは結構いるだろう。
そうでないオタクも、こういう意見はキャラクリゲーの男女どっち選ぶか議論で真っ先に挙げられたことがあるはずだ。
自分は断然、美少女キャラを操作したい。
可愛い女の子を自分の手で作り、それが世界を飛び回るさまを見てみたい。
それが自分の信条だ。
だからある時、死んだと思ったら真っ白な空間にいて。
眼の前にキャラクタークリエイト画面が存在した時。
自分は真っ先に、理想の美少女を思い描き、作り上げた。
状況的に、もしそれが完成したとして、最終的に自分がその美少女になるんじゃないの?
とか、そんなの関係ない。
むしろばっちこいってもんだ。
異世界に転生するなら、いっそ美少女がいい。
今の自分は、冴えないどこにでもいるオタクだ。
そのまま転生するよりも、とびきりの美少女のほうがなんか特別感があるだろう。
だから自分は、吟味に吟味を重ねて美少女を作り。
ついでにスキル構成にも吟味を重ね――最終的に。
これだ、という美少女を作り上げて、異世界に転生した。
多分後悔はない……と思う。
=
「おお、これが……」
自分の口から、美少女の声がする。
少し特徴というか、クセのある声だ。
どこかダウナー気味な、甘ったるい声。
声に関しては、いじれない要素だったので少し不安だったが。
これなら大満足である。
「び、美少女だ……!」
わざわざ転生直後に自身の姿を確認するために取得した、「鏡魔術」というスキルによって作られた巨大な姿見。
その前には、それはもうとびきりの美少女が立っていた。
背丈はだいたい百五十ちょうど。
手足は細長く、全体的に小柄なイメージ。
ロリ、というには成長していて、少女というには幼く見える。
そんな、自分好みのスタイル。
胸は少し大きめで存在感があり、見ているとなんだかちょっと優越感に浸れる。
腰まである白髪には、少し癖があり。
その髪質は透き通るかのように美しい。
瞳は真紅に染まっていて、いわゆるアルビノみたいな感じ。
肌も白磁器のように真っ白で、浮世離れした雰囲気が強い。
「散々悩んだけど……このスタイルにしてよかった……正統派アルビノ美少女……!」
取得した「常時健常体」というスキルのお陰で、気兼ねなくアルビノ美少女を堪能できる。
まさにキャラクリ様々といったところか。
「とはいえ……なんというか、一人称が俺、とか自分……とかだと違和感あるな。口調も野暮ったいし……さいかわ美少女って感じしないぞ」
うーん、やはりここはそうだな……
「うん、私……一人称は私でいこう。頑張って意識して変えていけばいいさ。口調も……敬語なら、多少は誤魔化せますかね?」
TS転生者ってのは、自分の性別にアイデンティティを持っているものと相場が決まっているが。
自分……私は望んでこの姿に転生したのだ。
だったら、郷に入っては郷に従え、できるだけ振る舞いもそれに合わせていこう。
「……とはいえ、スキルポイント溜まったら、『瀟洒』スキルを取っておくべきですね。あんまりレベルが高すぎると貴族とかと間違われそうですし……最低限程度で」
ちょっとは取るべきかと思ったんだけど、最終的にどうしてもポイントが足りなくて取れなかったんだよな。
まぁ、スキルポイントは今後も入ってくるだろうし。
今は後悔しても仕方がない。
現在、私がいるのは森の奥。
取得した「ミニマップ」スキルで迷うことはないが、あまり悠長なことをしていると今日のうちに街へ付けなくなる。
できれば今日のうちに街へ着いて、冒険者登録をして、宿を確保したい。
冒険者がこの世界に存在するかわからないけど、流石にこれだけローファンしてる異世界で冒険者だけいないってことはないだろう。
というわけで、最後に私は自分のステータスを確認する。
名前とスキル各種が乗っているだけの簡素なものだが、名前を確認するというのは大事だ。
<NAME>
エリーシャ
<SKILL>
・『鏡魔術』Lv.1
・『常時健常体』Lv.MAX
・『ミニマップ』Lv.MAX
・剣術Lv.1
・鑑定Lv.1
・収納魔術Lv.1
エリーシャ、私が普段からキャラクリゲーで使用している名前を改めて確認し。
私は街へ向かってミニマップを頼りに前進を開始するのだった。
=
それから、順調に昼頃に大きな街へたどり着き。
しかもそこが冒険者の街で、ダンジョンとかも豊富というから大喜び。
やっぱテンプレってあるんですね、と感心しつつ町中を進む。
最初の目的地は――言わずもがな、冒険者ギルド。
ではない。
「すいませーん」
武器屋だ。
街の門番をしていた衛兵に教えてもらった、女性向けの武器屋。
この世界ではスキルがあるからか、女性でも冒険者をするものは少なくない。
私みたいな絶世な美少女を見ても門番が「君みたいな可愛い子が冒険者になってくれると、俺達も彩りになってありがたいよ」で済ませるくらい顔面偏差値も高いのだろう。
少なくとも、町中を歩いている女の子が全員ゲームのヒロインかってくらいには美少女だった。
まぁ、私が世界で一番かわいいけど。
「あいよー」
店の奥から、ちょっと酒やけした女性の声が聞こえてくる。
どうやら何か作業をしているようだ。
その間に、私は店の武器やら防具やらを見て回る。
店に入ってすぐにわかったが、この武器屋の武器は非常にデザインが凝っている。
町中を歩く冒険者らしき人が帯剣している剣や防具は、ここまで凝ったデザインのものはなかった。
ただ、女性の防具は結構色んなデザインがあったし、中にはソシャゲかこれ? みたいな露出度ものものも。
店の装備を見ている限り、この世界の女性は露出もそこそこ許容するようだ。
何度、デカパイの谷間を生で拝みながら街をあるいたことか。
「ん、見ない子だね。新人冒険者?」
「あ、はい。エリーシャといいます。冒険者になりたくて、この街にきました」
「はは、顔がとびっきりの美少女ってこと以外は、いかにも新人って感じだ」
奥から、一人の女性がやってくる。
身長は百八十あるかないかくらいの、なかなかに大柄な女性。
赤い髪をポニテでまとめて、胸を思い切り露出した職人気質という感じの人。
当然でかい。
「アタシはキグ、このキグ屋本店の店長をしている」
「支店もあるんですか?」
「ない」
「ないんですか……」
「本店って書いとけば、なんか老舗っぽいだろ」
いいのかなぁ、それで。
と思いつつ。
店の装備は充実していて、ちらほらと他にお客さんも見える。
繁盛しているんだろう。
「それで、エリーシャはどんな装備が欲しいんだい?」
「今はまだ新人なので、新人でも使える剣が欲しいんですけど……」
「ふむ、それだったらあの辺り。でも、その顔だと将来的に欲しい装備もあるみたいだね」
「はい」
私は、つったかたーと店の一角へと進む。
実は店に入った瞬間から、どうしてもきになっていた装備があるのだ。
それは白を基調としたコートと鎧が一体化みたいな感じの装備。
いかにも凛とした女性剣士が着そうな服、ソシャゲだったら絶対最高レアなデザイン!
多分、この店で最高に可愛いと思うし……何より、きっと
今の私が着ている服は、いかにも初期装備って感じの無地の服とスカート、そして胸当て。
こんな装備じゃ、エリーシャが可愛そうというものだ。
できる限り早く、さいかわ衣装に身を包みたい。
「あ、あの……いきなり不躾なんですけど。このさいかわ装備……取っておいてもらえませんか!?」
「さい……かわ?」
「最高に可愛い、って意味です!」
「おおう……なんか女子力に差を感じるな」
それはまずくないですか? 私女の子一日目のTS転生者ですよ?
と思うものの、口には出さず。
ちょっと食い気味にお願いしてしまったので、距離を取る。
「しかしね……剣を買うのも初めてってあたり、本当に新人なんだろ? その装備は、新人のあんたがそうやすやすと買えるものじゃ……」
「一ヶ月、一ヶ月で買ってみせますから!」
「……へぇ」
明らかに無茶だろ、という金額と時間設定だが。
実際は、そこまで無茶ではないと私は考えている。
街に来るまで、道端のアイテムを鑑定してお金になりそうなものは集めながらやってきたのだ。
私の鑑定スキルはレベルが低いので、まだアイテムの平均相場しか鑑定できないものの。
その相場と、この店にやってくるまでに見かけた屋台の料理の値段。
それからこの店の装備の値段で、おおよその相場は把握できた。
というか、冒険者になる前にこの店にやってきたのはさいかわ装備探しというだけではなく。
この世界の物価を把握するためでもある。
それらを計算にれて、まぁざっくり一ヶ月アレば生活費を気にしなければ貯められるだろうという計算。
冒険者になればもっと稼ぎはよくなるだろうから、生活費もなんとかなるだろう。
「冒険者になりたての新人が、言うじゃないか」
「あ、いえ……まだ冒険者登録はしてないので、冒険者になるのはこれからです」
「……!」
「冒険者になる前に、欲しい装備を見つけておきたくって」
私の言葉に、何故かキグさんは目を見開いた。
うん?
「そうかい……そういうことかい」
あ、何か勘違いされてる?
転生者特有の勘違いされてる?
「あ、いえ本当に欲しい装備を見つけたかっただけで……」
「いいよいいよ、解ってるわかってる……はは、あんた面白いやつだね」
これどういう勘違いされてるんだ!?
何なの!? 怖いよお!
「よしわかった。このキグ店長のプライドに誓って、アンタにこの装備を取っておこう」
「あ、ありがとうございます」
「ただし……一ヶ月だ。自分の言った期限は、きちんと守ってもらうからね」
「はい!」
まぁ、なんというか。
キグさんの勘違いは怖いものの。
とりあえず、最初の目標が定まったということで。
私の異世界生活は、順調なスタートを切ったのではないだろうか。
切ってるといいなぁ。
キャラクリで美少女作るタイプのオタクなので書きました。
対戦よろしくお願いします。