キャラクリTS転生者の、さいかわ衣装をハック&スラッシュ! 作:ゆめかわ!
冒険者になって、一週間が経った。
なんとなく、こっちの世界での生活が解ってきたところだ。
文化レベルは思ったより高め、高い宿なら風呂がある。
食事も思った以上に美味しいし、女性の顔面偏差値が高いおかげで私レベルのさいかわ美少女でもナンパとかに悩むことはほとんどない。
一回だけあったけど、断ったらさっと引いていった。
アレ、多分やり手なんだろうなぁ。
なにはともあれ、現在私はダンジョンに潜っている。
異世界にはよくあるダンジョンだが、この世界でダンジョンとは一言でいうと異空間に存在する不思議のダンジョンだ。
入るたびに形が変化する上、異空間にあるからダンジョンの種類は無限大。
宝箱も無限に手に入るわけで、それを使ってこの世界は発展してきたんだとか。
「やあ!」
現在私は、よくある洞窟型のダンジョンを駆けている。
ほとんど探索らしい探索はしていない。
下の階層に続く階段を見つけたら、ほとんどそのまま直行だ。
時折、見つけたモンスターは必ず倒しつつ、見つけた宝箱も回収しつつ。
現在は、コウモリ型の魔物……洞蝙蝠というなんともそのままな魔物と戦っている。
飛び回る洞蝙蝠に、剣を一閃。
思い描いた通りに描かれた軌道は、寸分たがわず蝙蝠を切り捨てた。
「次!」
キグさんの店で買った片手剣を振り抜いて、次の敵に視線を向ける。
どうでもいいけど、ギルドでは武器の貸出を行っていた。
じゃあキグさんの所で買うのはもったいなかったかと言えば、そうではなく。
壊したら弁償の上、毎日借りてたら一ヶ月で今私が使ってる片手剣を十本買える。
本当にもしもの時に借りるか、新人成り立てで借りるかのどちらか以外ではボッタクリもいいところだな。
「ゲゲゲ!」
「うわ、ゴブリン」
次の敵はゴブリンだ。
人型の魔物はやりにくい、凄いグラフィックのいいVRゲームみたいなものだと思って倒しているけど、ちょっと慣れない。
というか剣で切りたくないんだ。
返り血が酷いんだよ。
なので戦い方を変える。
「鏡よ!」
迫りくるゴブリンの前に、鏡が出現する。
私の使用する『鏡魔術』は任意の場所に鏡を出現させる魔術だ。
それだけだと微妙に聞こえるが、これには結構な使い道がある。
出現したゴブリンが鏡に棍棒で殴りかかると――
「ゲゲ!」
途端に吹っ飛ぶゴブリン。
鏡は相手を映すもの。
相手の攻撃を反射することができる。
遠距離攻撃は言うまでもなく、物理攻撃も。
ただこれには色々条件があって、ここまで綺麗に決まるのは稀。
そもそも、この鏡メチャクチャ硬いので、純粋な盾としての使い道も高かった。
他には――
「断片よ!」
鏡の破片が、吹っ飛んだゴブリンの周囲に浮かぶ。
これは実質、鋭い刃と同じだ。
射出されると、吹っ飛んだゴブリンの四肢をいとも容易く切り飛ばし、最後には首をも刎ねて見せた。
「こんなものかな」
死亡すると、魔物はダンジョンに溶けて消え、素材だけが残る。
私は素材をいそいそと回収すると、近くにあった階段を下っていく。
これでこのダンジョンは踏破だ。
時間は……一時間三分、うーん惜しい。
ゴブリンは無視してもよかったかもな。
「よし、次だ」
そうして、私はもう一度先程潜ったダンジョンに潜っていく。
周囲の視線がこちらに向いているが、気にすることはない。
一時間切りまであと少しなんだ。
ここは気張っていかないと。
――さて。
冒険者になって解ったこと。
吟味に吟味を重ねた私のスペックが、思った通り高かったこともその一つだ。
私のスキルは幾つかあるけど、その中で戦闘に使うのは『鏡魔術』と「剣術」スキル。
この内、ステータス欄で『』に覆われた『鏡魔術』はいわゆるユニークスキルに該当するらしい。
逆にただ「剣術」とだけ記載しているスキルは汎用スキル。
意外なことに、鑑定スキルと収納魔術――アイテムボックスの卵みたいなやつ――は汎用スキルなんだよな。
まぁ、このあたりは他にも使う人がいるってことだろう。
一般的にはスキルレベルは、使い続けることでアップしていく。
私の場合は、戦闘などに勝利して「経験が溜まる」行動を取るとスキルポイントが貯まるので、これを割り振っていく。
現在、『鏡魔術』スキルと「剣術」スキルはどちらもレベル2だ。
本当は『鏡魔術』スキルのレベルをガン上げしたいんだけど、「剣術」スキルのレベルがある程度ないと私は戦闘もままならないので、しばらくは並行して上げることになる。
というのも、「剣術」スキルには、
これがないと前世で喧嘩の経験もほとんどないようなパンピーの私に、戦闘なんて無理。
ただ剣術スキルのレベルが高ければ、それはもう達人みたいな動きができるらしい。
それはそれで楽しみだ。
とはいえ、『鏡魔術』スキルのレベルもできるだけ急いで上げないと行けない。
なにせ『鏡魔術』スキルのレベルを上げると、空間転移が可能になる。
こう、鏡と鏡の間を行き来できるのだ。
これ、移動にも便利だし戦闘も凄くスタイリッシュになると思う。
ぜひとも欲しい。
そして、冒険者をしていて一番気になっていること。
「それ!」
剣で魔物を切り裂き、舞うように戦いながら思う。
スカート、危うい……!
何いってんだと思うかもしれないけど、仕方ないんですよ。
私の今身につけている服のスカートは短い。
派手に暴れたら頻繁に中の地味パンが見える。
金がなくて、高いショーツなんて手が出ないし、なにより恥ずかしいしで。
今はこう、三角形の白い何かみたいなパンツしか履けていないのだ。
そんなものを他人に見られてみろ、さいかわ美少女が死ぬぞ。
尊厳の死だ。
世の冒険者女子はどうしているんだろう。
端から観察している限りだと、解決策は3つ。
ズボンを履いている。
スカートが長い。
インナーを着ている。
概ねこれだ。
ズボンはなし、いずれデザ秀装備を手に入れたらありかもしれないけど、今は地味な服を何とかスカートで美少女っぽくしているだけなので、ズボンにしたら本当に美少女が死ぬ。
スカートを長くするのもだめ、こういう対策を取るのは主に後衛の魔術師。
つまりそもそもあまり動かないタイプだ。
インナー、これはありだけど、今はとにかくお金がない。
あと見せる分にはパンツよりはマシだけど、地味冒険者装備の下がぴっちりインナーって、それはそれで何か恥ずかしくない!?
やっぱ装備を更新してから考えるべきだな。
ただ中にはなぁ、どう考えてもインナー付けてないミニスカで戦ってる前衛美少女冒険者もいるんだよなぁ。
彼女たちはどうやってパンチラを対策しているんだろう。
まさか見られてもいいと思ってる?
胸元をあけっぴろげにすることが普通の世界だし、そういう人もいるかもしれない。
こわいなー、戸締まりしとこ。
とか言っているうちに、ダンジョンを駆け抜けて踏破した。
記録は……五十九分! しゃい!
満足したので、集めた素材や宝箱の中身をギルドに売却して今日はお仕事おしまいだ。
このまま行けば、宣言通り一ヶ月で目当ての防具を購入できる。
相変わらずキグさんの勘違いがなんなのか解ってないけど、彼女の期待に答えることはできそうだ。
=
エリーシャ。
そんな名前の冒険者がギルドへやってきたのは、今から一週間程前のこと。
最初彼女がやってきた時、多くのものは思った。
これはまた、随分と場違いな美少女がやってきたものだ、と。
確かにこの世界は美少女が多い。
しかしそれにしたって、エリーシャのそれは群を抜いていた。
どこか人間離れした容姿に、伝説にある白夜の吸血鬼を思い出す者もいたとかなんとか。
ただ、話してみるとその対応は存外普通だった。
ちょっと掴みどころはないというか、むしろ軽い感じの。
一見すれば、普通の少女だ。
どうみてもビジュアルが普通の少女じゃないだけで。
それだけならば、多くの男性冒険者を魅了する少女になっていただろう。
実際、普段の彼女は何かと隙が多いし、男性に対しても遠慮なく話しかけてくる。
勘違いするものが発生してもおかしくはない。
が、エリーシャはおかしかった。
冒険者になる人間には、普通の人間とそうでない人間がいる。
エリーシャは、残念ながら後者だ。
というか、こういうとびきりの顔のいい少女はたいてい後者であることが多い。
ギルドの中では普通にしていたらから、多くの冒険者もギルド職員も、気付くのが遅れた。
そうこうしているうちに、彼女はダンジョンを狂ったように周回していた。
周回だ。
ありえないことだ。
基本的に、ダンジョンとは慎重を重ねて何日もかけて踏破するものだ。
そのために、中断クリスタルというアイテムは存在する。
ダンジョンの座標を記録しつつダンジョンを脱出、次に侵入する時同じ位置から便利できる冒険者の必需品。
エリーシャも当然、ギルド職員に勧められてこれを購入しているのだが。
使っているところを見たことがあるものはいない。
どころか、中にはすごい勢いでダンジョンを爆走しているところを見た冒険者もいるほどだ。
基本的にダンジョンは異次元にあって、入るたびに姿を変える。
だが、ダンジョンごとの特性みたいなものはあって、同じ特性を選んで侵入すると冒険者同士がブッキングすることもある。
そのエリーシャとブッキングした冒険者のすべてが、ダンジョンを爆走していると証言したのだ。
当然のようにユニークスキルと思われる鏡を生み出すスキルを使って敵をなぎ倒し。
初心者とは思えない速度でダンジョンを踏破していく。
せめてもの救いは、剣術のレベルが低いらしいということ。
おかしいのは本人だけで、スペックに関しては新人相応ということだ。
なおこれも、度重なるダンジョンタイムアタックによりエリーシャのレベルが人外の域で成長したことで、後に打ち砕かれることになるが。
ともかく。
だが、何よりも冒険者たちが恐れるのは、エリーシャの目だ。
真紅としか言いようのないその瞳は、あまりにも力強く輝いていた。
エリーシャはキャラクリの際、目には相応に拘るタイプだ。
結果として、バチバチに仕上がった目力が周囲を威圧しているのである。
彼女の瞳には、覚悟がある。
多くの冒険者は、そう勘違いした。
狂ったようなダンジョン周回もあわせて、彼女には人とは違う譲れないなにかがあるのだろう、と。
まぁ、決して間違ってはいないのだが。
まさかそれがシリアスな理由ではなく、さいかわ衣装が欲しいというだけの理由とは、ついぞ誰も思わないだろう。