機動戦士ガンダムSEEDScary   作:機械仕掛けの守護天使

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 味覚の中でも辛さというのは厳密には痛覚だそうで。


PHASE 07 拡がる可能性

 

 目を開いたトウカは、天井の明かりに目を瞬く。手足が動かない。だが痛い。久しく味わったことのない、味わえるはずのない筋肉痛のような痛み。NRPデバイス感度を最大にまで引き上げた代償。その他脳や神経の酷使を原因とする頭痛の類。

 

「……知らない天井だ。」

「2度めだよ……?」

「様式美、と言うやつなのさ。」

 

 六つに割れた腹筋を使ってなんとか身を起こす。義肢が外されていてどこにも見当たらない。

 

「オレの手足は?」

「コクピットの中だ。」

「カガリ?」

 

 カガリがキラの隣にいた。怒ったような、それでいて今にも泣き出しそうな顔でトウカに詰め寄る。

 

「姉さんはもう、戦わないでいい。」

「……先遣隊と合流できなかった。後ろにまだザフトがいるはずさ。戦力を遊ばせる余裕はないよ。」

「機体がないだろう!」

「コンテナのパーツを寄せ集めればまだ一機くらいでっち上げられるさ。コアは無事なんだからね。」

 

 技研のACM型番を持つ機体は手足や頭部が統一規格で製造されているため、他の機体の手足をくっつけても(操作感は変わるが)問題無く動く。それはトウカが提案した「コア構想」によるもので、RP(リユース・サイコ)デバイス搭載コクピットであれば操作感の変化もそこまで苦にはならない。コアボール・ブロックを取り替えればOSの設定もそのまま引き継げる仕様ゆえに、新しい機体でも前と同じように動かせる。

 

「そうまでして、戦いたいのか……?」

「──身体は闘争を求める。それ以外に役立ち方を知らない役たたずなんだよ、オレは……」

 

 役立たずによる役立たずなりの役立ち方をそれしか知らないからこそ、傭兵などになったのだ。戦えない傭兵になんの価値があるというのだろうか。

 

「──フレイさんは……どうしてる?」

「ラクスさんを人質に取るのは、フレイの発案だって……」

 

 それに関してトウカの傭兵としてのスタンスを知る一部のクルーがビクビクしていた。過去、海賊の血縁者ではあるだけの民間人を人質に取った依頼者がいた。トウカはその依頼者を追いかけ回し、護衛の私兵を叩きのめして、違約金と慰謝料をむしり取り、本来の報酬を上乗せして人質に取られた少女へと送った。トウカにとって民間人を守るということは、体に傷がつかないこともそうだが、精神だってそうなのだ。

 

 そのことを考えればフレイの行いはトウカの地雷を踏み抜く行為だろう。それがゆえに一部クルー、バジルール少尉などは離反を恐れて彼女の幽閉を進言したほどだ。

 

「全ては……オレの弱さが招いたことだ。オレが、不甲斐ないから女の子2人がひどく傷つく事になったのさ。……誰かの命を救うために泥を被った人を責める権利を持ちもしなければ、彼女に償う方法なんかもないんだよ。」

「償う必要がどこにある! 姉さんは死にそうになるまで戦い続けたんだぞ!」

 

 しかし担架で医務室に運ばれてきたトウカに、フレイは縋り付いて、そして小声で言った。

 

「パパがブルーコスモスだから守り切れなかったの……?」

 

 カガリは反射的に飛びつき、フレイの頬を打った。彼女には、修正が必要だと思った。しかしそれがまた新たな火種となり、とうとうキラにも飛び火した。

 

「──あんた、自分もコーディネイターだからって、本気で戦ってないんでしょ!」

 

 キラは絶句することしかできず、そしてカガリはますます怒り狂う。その場を納めたのは医務室を預かる男のドクターストップだった。重傷者のそばでやかましくするな、と全員まとめて叩き出されたのである。

 

「──あぁ、やはり擦れてしまったんだね……」

「擦れたっ、て……アイツの父親はブルーコスモスだったんだぞ。」

「そう? それで、それが何か問題かい? 今の彼女は、ただ父親を失った少女だよ。子供だ……ヤマアラシのようなね……それで、ラクスさんは?」

「帰してきた……アスランのところへ……」

「それは……ふふ。おまえにしては随分思い切ったことをするね。」

「嫌だったんだ。あんなふうに人質にして……」

「……おまえもアスランのところへ行っても良かったんだよ?」

「ここには、トウカがいるから……」

「! ふふ。……そうか……ありがとう、キラ。帰ってきてくれて。」

 

 トウカはキラの頭を抱き寄せ、優しく撫でた。

 

「……近くないか?」

「おや、そうかな? 昔からこうだったんだけどね。」

 

 カガリは怪訝な顔をしたが、それ以上追求しなかった。思えばトウカは誰にでも距離が近かった。別段キラだけに近いわけでもなさそうなのだ。

 ただ、カガリは姉を取られたような気がしてならなかったのである。本人は、無自覚だったが。そもそも姉妹というのも身分を隠すための仮に通しているものでしかないのだ、本人も周りもしっくり来すぎていて疑いを持てないでいた。

 

 アークエンジェルは月艦隊との合流を目前にしていた。だが、少年たちに先遣隊の時ほどの喜びはない。はしゃいでいる時に限って死神が迫ると、その身に染みて理解してしまったからである。

 

 トウカは食堂へと訪れていた。カガリを説き伏せて義肢を返してもらうのに随分と苦労はする事になった。

 だがようやくレーションが尽きたので初めてアークエンジェル食堂のメニューを口にするのだ。

 

「……キラ、何がいいと思う?」

「辛いもののほうがいいんだよね。カレーライスがあるよ。」

「今日は金曜日だったかい?」

「どうしてそう思うの?」

「海軍カレーと言ってね、長い航海に出る船の上で曜日感覚を失わないように毎週金曜日はカレーライスという文化が日本の軍にはあったんだよ。ひょっとするとオーブ国防軍ならその文化が残っているかもしれないね。」

 

 トウカはたまにそうして西暦時代の雑学を口にする。一体どこから仕入れてきたのかは皆目わからないが、昔からそうなのでキラはもう考えるのをやめていた。

 

 辛さは一番辛いものと、ミルクをトレイに乗せて席に着く。付け合わせのサラダは抜いてもらった。

 

「……卑怯もらっきょうもあるものか。」

「何だ、それ?」

「らっきょうを食べる時のお約束だよ。カレーライスにはらっきょうさ。紅生姜の方を好む人もいるけれど、オレはこちらさ。」

 

 箸でつまんで、一粒口に放り込む。シャキリ、と音を立てて噛み砕かれる。クッキータイプのレーションとはまた違った食感だ。

 

「うん。ピリ、とくるね。」

 

 らっきょうをあらかた食い尽くしてからカレーライスを口に運ぶ。

 

「……痛い……辛いというより痛い……」

 

 涙目になりながら慌てて牛乳で舌を洗う。そのどこか色っぽい表情に少年たちは少しどきりとしたのだった。

 

「そういえば、トウカは月についたらどうするの? 他のみんなと一緒に地球に降りるとか?」

「そうだね。護衛は、最後までやり通すさ。その後は、いつも通りの傭兵稼業だよ。」

 

 仕事を選んで、選んで殺す。泥と血と硝煙に塗れた暮らしを、来る日も来る日も(Day after day)。そしてそうやって自由気ままに生きて、いつか来る審判の日(Verdict day)に理不尽に死ぬだろう。

 

「……おまえに逢えて良かったよ。」

 

 この地獄のような世界で、それでも確かな優しさが失われていない印を見ることができたのだから。

 

 穏やかな時が流れる食堂。そこへフレイがやって来た。

 表面上は普段通りを装っているが、トウカは何か嫌なものを感じて心がざわつくのを感じた。

 

 だが脳裏に声が走ったりはしない。

 いや、それが、当たり前のはずだった。本来おかしいことに慣れすぎてしまったと彼女は認識を改めた。

 

 フレイは2人に頭を下げて謝罪する。そこには、確かな誠意があるようには見えた。キラはそれをそのまま素直に受け取り、彼女と優しく言葉を交わす。

 だが、トウカは嫌な感覚が心に絡みつくような、何か悍ましささえ感じる。だが目に映るフレイの表情に裏があるように見えない。

 

(恨みは……消せない、か。理屈で理解していても、心はそういかない。その矛盾が人間を人間たらしめる……)

 

 頭を振って、無意味な思考を外へ押し流す。父を失い、天涯孤独の身にあって、それでもただ、優しさを見せる。見たままにそう受け取るのが誠意のはずだというのに、トウカは悪寒を振り解けずにいた。

 

 艦内に警報が鳴り響く。少年たちはビクとするが、しかしすでに慣れてしまったのかそれ以上の動揺はなく、ブリッジへと急いだ。

 キラもまた格納庫へ走り出したタイミングで入ってきた小さな少女にぶつかりそうになる。

 

「おっと。」

 

 トウカがくるりと少女を抱き上げて、衝突を回避した。

 

「先に行っておいで。」

 

 キラは促されるまま、少女に一言謝って先を急いだ。トウカは少女をフレイに預ける。

 

「──オレは守ることは不得手なようだ……殺すことばかりが、巧くなる……」

 

 誰にも聞こえないよう小さく呟いて、食堂を後にする。フレイは、トウカに複雑な思いをのせた目線を送っていたが、振り返らない彼女がそれに気付くことはなかった。

 

 艦隊との合流直前、最後のチャンス、わずか10分をものにすべく3体のGが襲来する。キラのガンダムとムウのメビウス・ゼロはすでに発艦していた。

 

「マードックさん、ナイトバードの様子は⁉︎」

「一応組みあがっちゃいるが、こんなもンで出る気か?」

「たった10分かそこら、保たせてみせますよ……!」

 

 テセウスの船の如く、取り替えられていったナイトバードの消耗したパーツや、部品どりで外装の剥がされたパーツを組み上げてでっち上げた機体。左腕の装甲は半分しかなく、右腕に関しては肘下がない。MA時の機首はミゲルに吹き飛ばされて半分しかないもので、脚部は見かけこそほとんど無傷だが、関節のモーター類は摩耗した古いものだ。内部のバッテリーも古くなって電力保存量がいくらか低下している上、出力も弱っている代物。

 武装は、背面左の接続ジョイントが破損し、右肩のバルカンと、前回の戦いが終わった後、キラが回収してきてくれたブレードシールドを左腕に装着しただけだ。アサルトアーマーは予備の発振器がないので発動不可能である。

 メインカメラも不調があるのか、モニターの映像にはわずかながらノイズが走っていた。

 

 ガンダムのパーツとの互換性が低いことが仇となった。内装面では流用できる工業パーツもあるのだが、表層に近づくにつれ独自規格になっていくのだ。

 一応ストライクのビームライフルやサーベルを使用することはできるが、副作用でシステムがダメージを負い、処理落ちでダウンしかねない。イージスのライフルを撃った時のように。

 

『J.1,、発進よろし!』

『トウカさん⁉︎ 出られるんですか?』

『合流までの時間稼ぎくらいはしますよ……! ナイトバード、出る!』

 

 カタパルトから射出されるが、しかし加速が物足りない。これはいつものような運用では簡単に死ねる、とトウカは認識を改めた。

 

『黒いのが出たぞ! クルーゼ隊長が落としたんじゃなかったのか!』

『あれは俺が貰うぞ、ディアッカ!』

 

 ナイトバードの出現に気が付いた2機のうち、イザークの駆るデュエルが迫り来る。破壊はれたはずの左腕はすでに修復されていた。しかしその屈辱を晴らすが如く、イザークの頭に怒りが充満する。

 

 ライフルのビームを縫うように接近し、トウカはシールドを振り上げる。

 

 右肩関節を狙った一撃は、微妙にずれてPS装甲に阻まれる。続け様にデュエルのシールドを蹴って、バルカンを撃ちつつ後退。ブーストを吹かせて、足元に回り込む。

 

「ちょこまかと!」

「──プライドの高いエリート……そういう動きだ。シンプルに強い。」

 

 ビームブレードは展開しないまま、シールドを実体剣として戦う。今回の勝利条件は地球軍艦隊と合流するまで持ち堪えればいいのだ。そうすればいかにGと言えども撤退を余儀なくされる。

 逆に言えば、それまでのわずかな時間でさえ、今のナイトバードではエネルギーを節約しないと保たないのだが。

 

 元来、トウカは節約が得意だ。特に実弾兵器は弾薬費が嵩む。貧乏傭兵だからこそ、格闘戦が得意になった。

 

「やってみせるさ……」

 

 バスターはストライクが受け持ち、ブリッツはムウのメビウス・ゼロが。戦況はそのまま少し膠着するかに思われた。

 

『ブリッツをロスト!』

『……ステルスだね。』

 

 ミリアリアの声を聞き、即座にブリッツのスペックを頭に浮かべる。

 ミラージュコロイド・ステルス。アルテミス要塞の監視を潜り抜けられるほどの隠密性能こそ、ブリッツ最大の強み。熱探知以外ではまともに見つけられない。

 

 わずかな殺気がムウに向けられている。

 

「そこ……!」

 

 それを感じたトウカは右肩のバルカンを一見何もない虚空へ向けて乱射する。

 そこに、ブリッツがいた。たまらずステルスを解除し、装甲に電力を入れる。ステルスとPS装甲が両立できないのがブリッツの弱点とも言えない弱点だ。

 

 間に割り込むデュエル目掛けてアサルトブーストを吹かし、直前で急上昇。デュエルを足蹴にしてもう一度加速してブリッツへ迫る。

 

「安い方から片付けよう……」

 

 ビームブレードを展開し、振り抜く。ブリッツはそれを右腕のシールドで受け止め、刃は機体に届かない。だがブリッツの特殊武装でもある武装内蔵型シールド「トリケロス」は大きな裂傷を負い、パルスビームの熱と電磁パルスが内部火器に干渉。ブリッツは爆発する前にトリケロスを手放すしかなかった。

 ブリッツの武装はほぼほぼトリケロスに集中しており、頭部バルカンすら存在しない。残った武器は左腕の有線式ロケットアンカー「グレイブニール」だけだ。それもMSや戦艦を相手にできる類のものではない。

 

 だがナイトバードのバッテリーは今の一振りでかなり消耗したほか、傷ついた機体では十分なパルス制御ができず、即座の2振り目で追撃してとどめを刺すことは不可能だった。

 迫り来るデュエルからアサルトブーストで距離をとる。しかしビームライフルが右腕に直撃した。クイックブーストの発動がいつもよりコンマ1秒遅れたためだ。

 

「終わりだ傭兵!」

 

 右腕の爆発でバランスを崩したナイトバードにデュエルのライフルが向けられる。今度の一撃は左足を破壊した。極端に推力の低下した機体では、もはや次の攻撃は躱せないことは明白。

 

「トウカ…………‼︎」

 

 その様子を見ていたキラの中で、何かが弾けた。

 

「……キラ?」

 

 『ガンダム』が、そこにいた。デュエルのライフルを撃ち抜き、バスターを格闘戦で瞬く間に撤退へと追い込む。

 

 白い装甲を輝かせ、蒼い宇宙を駆ける巨神。そのコクピットでキラは拡張する感覚のままに手足を動かす。その動きは、モントゴメリに迫るジンを1人で全滅させたトウカのそれより遥かに優れていたと、ムウは思わざるを得なかった。人体感覚の延長で動かせるはずのナイトバードより遥かに的確な動きを、操縦桿とペダルだけで可能にしているとは、とても信じられなかった。

 

 ダメージを負って沈黙したデュエルをブリッツが抱えるように下がっていき、最もダメージの少ないバスターが殿を務める。

 キラもムウもそれ以上追撃することなく、見送った。地球軍の艦隊がすぐそこまできてくれている。

 

 ボロボロのナイトバードは自力でアークエンジェルの甲板にたどり着く。しかし片足では自立できず、転びそうになるのをキラのガンダムによって抱き抱えられる。

 

『……結局、足を引っ張ってしまったね。』

『そんなこと……』

『おまえを守りたかったはずなのに……いつしかおまえに守られるようになっていた。……不甲斐ないさ。』

 

 智将ハルバートン率いる地球軍第八艦隊。ゆっくりと近づくにつれ、その威容が明らかとなる。ゆっくり、とは言ったがあまりの規模感にそう錯覚していたのだとアークエンジェルが艦隊に迎えられてトウカは理解した。

 

「しっかし、いいんですかね、メネラオスの横っ面なんかにつけて。」

 

 操舵士を務めるアーノルド・ノイマン早朝の質問に、マリューは旗艦メネラオスに乗るハルバートン提督こそがアークエンジェルとGの開発を推し進めた人だと語る。技術者であるマリューにとって直属の上司でもある彼は、きっとアークエンジェルを間近で見ることを望むだろう。

 

 艦の速度が安定すると、マリューはブリッジを後にしてエレベーターに乗り込んだ。その後ろからナタルも追いかけて来る。

 

「ストライクのこと、どうするおつもりですか?」

「どう、とは?」

「あの性能だからこそ──()が乗ったから我々はここまで来られたのだということは、すでにこの艦の誰もがわかっていることです! ……彼も、艦を降ろすのですか?」

 

 密室のエレベーターでナタルはキラを手放すリスクをマリューに訴えた。キラがOSを書き換え、彼が操縦したからこそストライクは幾度もの襲撃からアークエンジェルを守り抜いたのだ、と。

 

「──キラ君は軍人ではないわ。強要はできない。そもそもオーブ国民である以上徴兵も不可能よ。」

「彼の両親は地上にいます。それを地球軍で保護すれば……」

「それを実行に移せば、トウカさんが黙っていないでしょうね。……技研があれほどのMSを造れることは彼女のナイトバードを見るまで誰も知らなかった。」

 

 だからこそ技研にはまだ隠し球があるのではないかとマリューは危惧する。それをトウカが駆れば、単独でアークエンジェルを墜とせてしまうかもしれないほどの暴力になりうるのでは、と。民間人が降りたならば、彼女がこの船の守護者であり続ける理由もない。

 

 技研は「枯れた技術の水平思考」を謳っている。販売する商品の信頼性は高く、コストは低く。その反面中堅にはなれても最高たりえない。それが以前のマリューが

技研に対して抱いていたイメージだ。

 だが、ヘリオポリスで回収したコンテナに収められた武装の仕様書、それを見て驚愕することとなった。枯れた技術どころか、最新鋭の技術だ。製造はモルゲンレーテとはいえ、設計は間違いなく技研だろう。技研の代表、「ディエゴ・トレギア」の署名があった。

 

 それを知っていたならば、ハルバートン提督はモルゲンレーテだけではなく技研にもGの共同開発を持ちかけていたかもしれない。特にOSや武装面でだ。OSに自己進化による最適化を可能とさせる教育型コンピューターや、既存の対ビーム装甲を貫く高威力のパルスビーム。果ては傷痍軍人を優れたパイロットにしてしまうリユース・サイコ・デバイス。

 モルゲンレーテは半ばオーブの国営企業ゆえに中立の理念に抵触するリスクがあったが、技研は本社がオーブにあるというだけで、トレギア博士の個人的な会社だ。その点も、取り込むハードルが低いと言える。

 

 だが現実はそうならなかった。なぜかといえば、「誰も技研の技術力の高さを知らなかった」からだ。たかが中小企業が、ある分野においては天下のモルゲンレーテを超えるなどと誰が想像し得るだろう。

 

 未知数。ゆえに恐ろしい。トウカにしろ、技研にしろ。知名度がそのまま脅威度とは限らないのだ。

 





 ようやくトウカのマスターの名前が判明しました。第一の転生者ですね。本編への登場は、もう少し先の予定ですが、彼の過去編を閑話でやろうかと思っています。そちらは一人称の予定ですが。
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