機動戦士ガンダムSEEDScary   作:機械仕掛けの守護天使

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 オリキャラ一名追加ぁ。


PHASE 08 重力に引かれ

 

 一隻のシャトルが、アークエンジェルの格納庫に運び込まれた。

 

「迎えに来てやったぜ、レディ。」

「ジーナさん⁉︎」

 

 ネェル技研の凄腕メカニックにして、ジャグラー部隊の専属整備士「ジーナ・アスターシャ」がシャトルの中から飛び出し、その豊満な胸にトウカの頭を埋める。

 

「どうして第八艦隊に?」

「代表にね、サハク家経由でハルバートン提督に渡りをつけてもらったのさ。前々から言ってたろ、機体が操縦について来ないって。」

「あれはむしろ精神に肉体がついてこないのだと判明しましたが。」

「同じことだぜ。完成した新型なら、それはマルッと解決だからな!」

「ではすぐに初期設定を済ませなければなりませんね。」

「なんだ、もう仕事か?」

「オーブ避難民をのせたシャトルの護衛。それ以外にありますか?」

「いんや。……その感じだと、タダでも喜んでやるって感じだな。」

「友人が乗っていますので。」

「ほー。お前さんにも友人がいたんだな?」

「どつきますよ……」

 

 ジーナの腕を振り解き、トウカはむっつりと唇を尖らせた。しかし不愉快ではない。この女性の軽口は、彼女にとって心地よいラインを弁えている。

 

 ボロボロのナイトバードが解体され、シャトルに積み込まれていく。もうこの機体に乗ることはないだろう。次の機体はすでに組み上がった状態でシャトルに乗せられていて、コアボール・ブロックも新型のものが乗っている。OS周りのコンピューターとデータだけを載せ替えれば、あとは最終調整ですむ。トウカは外された頭部に手を当て、お疲れ様、と口にした。

 

 ナイトバード解体の横で、整備班は損傷したメビウス・ゼロやガンダムの調整に当たっていた。

 整備班員たちはせっかく艦隊と合流できたのに、と不満げである。キラもまた駆り出されていたので、トウカはナイトバードの解体が終わると彼の手伝いに行った。

 

「第八艦隊つったって、パイロットどもはひよっこ揃いさ! なンかあったときにゃ、やっぱ大尉が出れねぇとな。」

 

 マードックの言い分はそういうわけで、彼が整備班の長である以上、他の班員が逆らえる訳もない。それに、ムウは非常に優れたパイロットであることはキラやトウカも理解している。

 

「ガンダムのOS、結局どうするんですか?」

「今のままでは誰も乗れないんでしたよね……フラガ大尉以上のパイロットがいらっしゃるとは思えませんし……」

 

 それでもムウはわざわざ初期化してスペックを下げることを渋っていた。

 難しい顔をする3人。そこへ涼やかな女性の声がかけられる。

 

「できれば、あのままで誰か使えないか、なんて思っちゃいますよね。」

 

 一同、上を見上げればマリューがキャットウォークから飛び降りてくる。

 

「艦長?」

「あらら、こんなむさ苦しいところへ。」

 

 マリューはキラの方を見つめる。

 

「ちょっと話せる?」

「え?」

「そういえば、ラミアス大尉はキラとあまり話せていませんでしたね。……大丈夫だよ、キラ。」

 

 訝しむ彼に2人は優しく微笑む。マリューはこれまでの礼を彼に告げると、深く頭を下げるのだった。

 

「──こんな状況だから、地球に降りても大変かと思うけど……がんばって。」

 

 キラは差し出された手を握り返す。その温もりを感じながら。

 

 そこへ1人の将校が気さくな様子でやって来た。名をハルバートン。智将として名を馳せる第八艦隊の司令官である。

 クルーたちが一斉に敬礼をする。トウカもなんとなく威厳のようなものを彼から感じ、思わず胸に手を当てて頭を下げていた。

 提督はクルーたちと挨拶をすませたあとは、キラとその後ろに来ていたヘリオポリスの学生たちに目を向けた。

 

「ああ、彼らがそうかね。」

「はい、操艦を手伝ってくれたヘリオポリスの学生たちです。」

 

 ハルバートンから家族の無事が伝えられ、少年たちの表情は明るくなる。

 

「そして、きみが、ジャグラー部隊の傭兵だね。」

「はい。独立傭兵トウカ・ラナ・カミナガと申します。……オレと共に戦った機体は既に解体してしまいまして、お見せできなかったのが残念です。」

「ナイトバード……騎士の鳥であり、夜色の鳥……洒落た名前を付けるものだ。」

「ふふ……名前は親が子に授ける最初の祈りですから。ナイトバードは祈りの通りに守護者であってくれました。」

 

 マリューたちをつ連れてハルバートンは去っていく。その後ろを見送りながら、キラは独り言つ。

 

「……好きに生き理不尽に死ぬ、か。」

「何それ?」

 

 キラの声が聞こえていたようで、トール達が彼に不思議そうな表情を向ける。

 

「トウカが言ってたんだ。人は誰も生まれ方は選べないから、あとは生き方と死に方しかしか自分で決められないって。だけど二つともを選ぶのは傲慢だから、だからどちらか片方しか選べないのなら、生き方を選びたいって。」

「あの人本当に16なのか?」

 

 達観しすぎだろう、とカズイは呆れたようにそう言った。自分たちと同年代にしてはあまりにも大人びているようで、何事にも動じない。いや、正確には彼女にも年相応の部分がある。それをカガリとキラ以外には碌に見せていないだけで。

 トウカにとってヘリオポリスの避難民は守すべき民衆に他ならず、ゆえに距離を置いていた。砕けた口調ではなく、敬語で話しているのはその表れだ。トウカにとって彼らは尊いもので、自分のような血濡れの傭兵が気軽に触れるべきではない、と。

 

「傭兵は、全てを自分で選べる。受ける仕事も、殺す相手も。……生かす相手も……」

「オレ達は選ばれたんだな、あの人に……」

 

 命をかけるほどに。その意味を、重さを噛み締めるように彼らは彼女を見ていた。そしてキラが彼女と肩を並べた事実を思い出し、彼もまた命をかけていたのだと、深い、深い感謝の念を抱いた。

 

 ただ1人、フレイ・アルスターだけは、また違うことを考えていた。

 トウカはジョージ・アルスターがブルーコスモスだとは知らなかった、とそうカガリはフレイに言った。彼女は本気でモントゴメリを守ろうとしていた。彼らは民間人ではない。自ら戦場に出ることを選んだ軍人だ。守るべき義理も義務もトウカにはない筈だった。

 フレイの心を守るために彼女はナイトバードを駆った。

 

 だが守りきれなかった。フレイは父と通信機越しに会話こそできたが、彼はフレイの身を案じ続けていた。軍人ではなく、父親としてのジョージがそこにいた。

 フレイは未だ父がブルーコスモスだった事実を受け止めきれていない。だが、彼が死んだのは、トウカの手からこぼれ落ちたのは、ある種の因果応報、報いだったのではないか。

 そう考えたからこそ言ったのだ。「パパがブルーコスモスだから守り切れなかったの……?」と。守り切()なかったのではなく、守()きれなかった。彼女にもどうしようもない運命が働いてそうなってしまったのでは、と思ったのである。そしてボロボロになって帰ってきた彼女に対し、敵を一機も撃墜できず、怪我もなく帰ってきたキラに無性に腹が立ち、つい口を突いて責め立てるようなことを言ってしまった。

 しかし直ぐに激昂したカガリによって修正される。命をかけていないくせに文句ばかり言うな、と。そうするくらいなら、おまえがMSに乗れば良かったのだ、と。

 

 フレイはトウカをじっと見つめた。彼女は遺伝子編集を受けていない。それどころか義手義足で、右目は見えていないというハンデを負っている。それでありながらコーディネイターのキラと肩を並べられる。だったら、自分だってやってやれないわけはないはずだと考えた。

 

 避難民が小型艇へと搭乗してゆく。そこからハルバートンの乗るメネラオスへと移り、そこから地球へ降りるシャトルに乗り換える手筈だった。

 ジーナのシャトルもまた小型艇を先導してメネラオスへと移ろうとしていた。

 

 戦端はすでに切られていた。メビウスの群がジンの群と接敵し、次々と落とされる。しかし何よりの脅威は4機のGが瞬く間に艦隊の数を減らしていくのだ。

 ザフトの攻撃は執拗で、戦闘能力を失い離脱しようとする艦を容赦なく追撃して落とす。

 

 地球の引力に引かれるままにして、残骸が落ちて行く。

 

 なんとかメネラオスへと辿り着いたはいいが、この艦にしても狙われていない訳ではない。シャトルへの乗り換えを急ぐ中、艦が大きく揺れる。 

 

「……クルーゼ……? ──っ! ジーナさん、新型の発進準備を! 敵がもう来ています! 時間を稼がなければ避難が間に合いません!」

「……40秒待て!」

 

 そう言ってジーナは新型の仕様書を投げ渡す。機種転換訓練要らずのNRPデバイスとはいえ、操作感が変わるところはシミュレーションモードで慣らしを行うのが常だったが、今回はその時間もない。せめてマニュアルを読むくらいはするべきだろう。今回の新型はナイトバードの後継機として設計された可変機だが、これまでとは変形後の形状や運用法が異なるのだ。

 

「ヤマト少年! コンピュータ弄りは得意らしいね! 手を貸して欲しい!」

「え、は、はい!」

 

 避難シャトルへ乗り込もうとしていて、幼い少女と何やら言葉を交わしていたキラはジーナに呼びつけられて慌てて駆けてきた。手に折り紙の花を持って。

 

「俺たちも手伝います!」

 

 キラの友人たちも後を追う。工業カレッジで学んでいた彼らならば即戦力になりうるだろう。

 

「すまないね! バイト代は弾むよ!」

「ジーナさん、ここのプログラムは?」

「NRPデバイス感度は下げた方が良いね!」

 

 みんなしてコンソールを叩いていく。ミリアリアは技研シャトルの通信機の前に腰掛けた。引き続きのオペレーターを請け負うと言った。

 

「2人少なくないか?」

 

 カガリは疑問を口にしたが、今はそれどころではない。

 

「MSはこれだけですか?」

「ないことはないさ。ただ、こいつ以上の機体はない……」

 

 少年たち以外は皆避難シャトルに乗り込んだ。彼らは技研のシャトルで地球に降りることになるだろうが、どちらにせよ出発までにメネラオスが沈めば共に宇宙の藻屑だ。

 

 残骸と流れ弾の間を縫うようにいち早くメネラオスへと到達したシグーが、ビームライフルを向けて、挑発するように撃つ。

 

「君は私の邪魔になる。ここで消えてもらいたい、トウカ・ラナ・カミナガ……」

 

 そのためには避難民を逃すわけにはいかない。避難民を守って戦う理由がなくなっては彼女は離脱を迷いなく選ぶ。そうクルーゼは理解していた。

 

 ──〈執拗な事で……クルーゼ!〉

 

 漆黒の機体が、アークエンジェルのハッチより飛び出した。

 

「新型か……!」

「翔べ、ネクスト!」

 

 赤いバイザーを輝かせ、アサルトブーストでシグーに迫る。シグーの放ったビームをクイックブーストで躱し、続け様のもう一発も連続して避けた。クイックブーストを2連続で行えるのが「ACM-X008 ナイトバード=ネクスト」の強みだ。

 

「速いな……」

「ネクストの名は伊達ではない……!」

 

 左腕のブレードシールドが振り上げられると、シグーはそれをビームサーベルで受け止めた。右腕のライフルは距離が近すぎて狙いを定められないようだ。

 だが次の瞬間、ナイトバードの両肩から筒状の武装が飛び立った。

 

「ガンバレルだと……」

 

 無線式ガンバレル。優れた空間認識能力を持たなければ扱えないそれを技研が改造し、より自由度を高めた代物。無線化に伴い、機体にケーブルが絡まることを恐れずに操れる。

 

 クルーゼは即座にナイトバードから距離を取った。そこへガンバレルの弾丸が浴びせられる。

 

 射線はナイトバードを掠めるほどに近くシグーを狙っていた。しかしトウカは誤射を恐れているそぶりを見せない。

 

 ──〈オレが憎いか、クルーゼ!〉

 

 ──〈率直に言って、不愉快だとも。こんな世界を愛していると言い切れるのだから!〉

 

 ともすれば、クルーゼと同等かそれ以上の不幸を持って生まれながら、それでも世界を愛せる精神。それは恵まれた両親や友人によるものか。あるいは、彼女は知らないのか。

 

 そうだ、彼女は知らない。カミナガ夫妻に引き取られる前の自分の不幸を知らない。でなければこのように世界を愛せないはずだとクルーゼは決めつける。足の自由で、右目の視力を奪われて、そして寿命も短い。

 クルーゼの知らないところでは、血のバレンタイン時の放射線被曝が原因で時折血反吐を吐くようにすらなっている。

 

 クルーゼより遥かに多くを奪われて、それなのに、クルーゼと違って愛するものがいる。帰るべき場所がある。世界を愛し、人々を守ろうとする心がある。精神感応によってそれが解ってしまった。理解できてしまった。誤解一つなく。

 

「クルーゼぇええええ!」

「死んでもらおう、トウカ・ラナ・カミナガ!」

 

 ゆえに2人は殺し合う。近くて遠い存在ゆえに、絶対に相容れないと理解できてしまうから。

 クルーゼからすればトウカの全てがかんに触った。一歩間違えれば自分はああなれた。あるいは彼女はこちら側にあってくれた。しかしそうはならなかった。それが、どうしようもなく腹立たしい。

 トウカからすれば、裁定者を気取りながらも当事者として賽を投げる傲慢さが気に入らない。裁く権利があると宣うのなら、黙って見ていれば良いのだ、と。

 

 ──〈今なら理解できる……貴方こそ、コズミック・イラの戦火そのもの。人類種の天敵だ……!〉

 

 ──〈そうだとも。そして私を産んだのはこの世界だ……! 人類は自らの選択で己の天敵を生み出したのだよ!〉

 

 パイロットとしては間違いなくクルーゼの方が上。しかし機体性能はナイトバード=ネクストの方が上だろう。向上したレスポンス速度は、彼女に更なる自由をもたらしていた。

 

 2人は何度も切り結び、撃ち合う。相手を今ここで確実に葬るために。どちらかが斃れ、どちらかが生き残る。それ以外は認めぬとばかりに機体を駆る。

 

 そこへ、一条のビームが水を差した。

 

「……ガンダム?」

 

 地球へ降下しようとするアークエンジェルから見慣れたトリコロールの機体とムウのメビウス・ゼロが飛び出していた。しかしキラはメネラオスにいるはずだ。ガンバレル付きのメビウス・ゼロに乗れるのはムウ・ラ・フラガ1人だけ。アークエンジェルに追加の人員はいなかったはずで、だとすればガンダムのパイロットは誰だと言うのか。

 

 ストライクのビームライフルはシグーに向けて放たれていた。しかし距離も遠く、狙いもあきらかに甘い。当然それは当たらない。

 

「……!」

 

 そういえば、カガリが先ほど2人いないと言っていた。思い返せばサイ・アーガイルとフレイ・アルスターを避難シャトルの付近で見かけていない。

 

「バカな……!」

 

 仮に2人が残ったのだとして、それでもガンダムのOSはキラに合わせたもののはず。ナチュラルである2人のうちどちらかが操れるわけもない。

 

 と言うより実際に操れていないのだ。動きはあきらかに精彩を欠くようで、地球の重力に引っ張られているように見受けられた。ムウのメビウス・ゼロはそれをカバーするように動いている。

 

 ──〈よそ見をしている余裕があるのかな?〉

 

 振るわれたサーベルをすんでのところで躱し、反撃のビームライフルを放つ。しかしあえなく避けられた。

 

「そこっ!」

 

 だがその移動先を読んでガンバレルの弾幕を張る。シグーはたまらず後退した。そこにヴェサリウスの部下から通信が入る。

 

『隊長、退避を……ガモフが……』

 

 ザフト艦隊の一隻であるガモフが突出して第八艦隊へ突っ込んできていた。艦長のゼルマンは幾度となくアークエンジェルを取り逃してきたという汚名を雪ぐべく、覚悟を決めていたのだ。

 メネラオスと差し違えるようにしてガモフが沈む。メネラオスも同じく炎上し、母なる地球の大気へと引き摺り込まれて行く。

 

 避難民のシャトルと技研のシャトル、それから「翼のついた幅広のサーフボードのようなもの(フライングアーマー)」に乗った1機のMSが轟沈の直前に放出された。

 

(燃えていく……憎しみも、希望も、絶望も……安堵しているのは、提督か。避難民を最期まで案じて下さった。──アスラン、おまえも感じているのか? これらの想いが灼けて、消えゆくのを……)

 

 技研のシャトル内では、カガリのポケットの中でお守りが淡く光る。それに気づくものはいないが、しかしシャトル内部の皆が、沈みゆくメネラオスに、夥しい死の気配に思いを馳せる。

 

 残骸は地球の重力に惹かれ、歪んで、燃える。これだけの死者を連れていくには、無数の死神が列をなすことだろう。

 

「時間切れ、か……」

 

 クルーゼはそう呟いた。これ以上の戦闘は完全に地球の引力にのみ込まれるだけ、と判断し、離脱を開始する。トウカも、それ以上の追撃は行わなかった。それよりも、射出されたシャトル2機に追いつくのが先だ。

 

「どこか……いた、がしかし……」

 

 MSのコクピットでキラはどうしようもない思いに駆られた。ガンダムが、戦っている。しかし、誰が乗っていると言うのか。

 もうじきに大気圏へ突入すると言うのに、ガンダムも、メビウス・ゼロも艦内に戻れずにいる。

 デュエルが執拗なほどにストライクを攻め立てていた。メビウス・ゼロが援護をしなければ、あっという間に落とされるであろう動き。

 

『カタログペック上なら、ガンダムは単独で大気圏を突破できるけど……フラガ大尉のゼロは……』

『あれでは燃え尽きてしまう……!』

 

 ストライクからは、あきらかな怯えが発せられ、デュエルからは対照的な、怒りや恨みが感じられた。 明らかな苛立ちと憎悪。肥大化したプライドを傷つけられた怒りに端を発し、それを晴らさんと突出してストライクに迫る。

 しかし動きが明らかに違う。パイロットが変わったか、舐めているのか。ますます激昂するイザーク・ジュールの視界に、フライングアーマーに乗ったカーキ色のMSが映る。右腕に小型のビームライフルと思わしき銃を持ち、左腕にシールドと、両肩に大口径キャノンを備えたバイザー顔のMSだ。

 

『フラガ大尉は艦に戻ってください。ガンダムの援護はぼくが引き受けます!』

『坊主……⁉︎ すまん、任せる……』

 

 避難シャトルは、このまま進むと戦いの中に突っ込んでしまう。だから両者を退けるしかない。キラは「ACM-NX002-C ガンキャノンG36」の肩部キャノンをデュエルへと向けた。

 

「退いてもらわなければ……」

 

 同じ頃、トウカもナイトバードを2機の方へ向け、ペダルを踏み込む。オープン回線を開き、民間人が通る、と忠告を行おうとしたその時だった。

 

 ──逃げ出した腰抜け兵があ!

 

 トウカの脳裏に言葉が走った。

 その場の誰もが、にわかには信じられない思いで一杯だった。避難民のシャトルは、民間人が乗っている非武装船舶である証明信号を発していた。それが、ナイトバードのモニターにも記されていた。当然ガンダムにも、メビウスにも、アークエンジェルのブリッジでもその信号をキャッチしていた。

 

「やめろおぉぉぉぉっ!」

 

 キラの絶叫も虚しく無惨に貫かれ、亀裂から炎上し、瞬く間に燃え尽きたシャトル。最後に、窓から覗いていた幼い少女の顔が脳裏に浮かぶ。

 

「は──?」

 

 デュエルは次に技研のシャトルへと銃口を向けた。その行動が、ほとんど八つ当たりに近いことをトウカは感じ取った。キラのガンキャノンがやたらに射撃を行うが、それらの武装は追加装甲を施したデュエルにダメージを与えられない。

 

「ええい、鬱陶しい!」

 

 それでも、ビームが放たれるより先に、ナイトバードが前へと躍り出ていた。

 

「──新型……! 邪魔を、するな!」

 

 ビームが放たれる。しかしそれはナイトバードの直前で不意に軌道を逸らし、宇宙の闇の中に霧散した。ありえない挙動にイザークは頭が追いつかず動きを止める、止めてしまう。デュエルの目の前では黒いはずのナイトバードが、何やら()()()()を発していた。それは錯覚だったのか、すぐに分からなくなったが。

 

『──力を持ち過ぎるものは、全てを滅ぼす……』

 

 なぜなら急接近したナイトバードのブーストキックで地球へ向かって吹っ飛ばされたからだ。デュエルの推力全てを持ってしても、もはや重力を振り切れないところへと落ちてしまった。その一瞬、()()()()()()()()()()()かのように防御が間に合わなかった。

 

『──私の手で、地に堕ちろ……!』

 

 デュエルは、イザークは足掻き、もがく。しかしどうしようもない。母なる地球の腕から抜け出すには、彼はあまりにも矮小だった。

 

『トウカ! ガンダムが!』

 

 キラが泣きそうな声で通信を入れる。

 

『オレが拾いに行くよ……キラは……シャトルに戻るには時間ぎれだ。フライングアーマーでタンデムはできない。突入姿勢をとるんだ……離れすぎないようにね。』

 

 ナイトバードを変形させ、ウェイブライダー形態にすると、トウカは落ちてゆくガンダムをその背で受け止めた。ナイトバード=ネクストはWR形態となることで単騎での大気圏突入が可能だ。またサブフライトユニットとして背中に他のMSを乗せることができ、大気圏突入の際に他機体を大気の熱から庇うことも可能だ。

 

『接触回線で聞こえているな、ガンダムのパイロット……』

『トウカ……さん?』

『フレイ・アルスター⁉︎ 随分な無茶を……!』

 

 仇討ちのつもりか、あるいは他に人がいないかったのか。サイ・アーガイルは止めなかったのか、さまざまな想いが脳裏を駆け巡るが、今はそれどころではない。

 

『アークエンジェルへ、こちらJ.1、聞こえていますか?』

『聞こえているわ、トウカさん……機体をこちらに寄せられるかしら……』

『もう突入が始まっています、これ以上角度を変えられません。』

 

 このまま降下を続ければ、ガンダムとアークエンジェルは離れ離れとなってしまう。突入角度が異なるせいで、降下地点に大きなずれが生じるのだ。

 

 マリューは手ぶらでアラスカに行ったところで無意味だと判断し、艦全体をトウカ達の方へと寄せてきた。そのアークエンジェルの後ろに技研のシャトルが付き、その横にフライングアーマーに乗ったガンキャノンが。

 

『……デュエルも同じところに落ちますね……』

『Gは生身での大気圏突入も可能よ……パイロットが耐えられるかは別として……』

『ならば、なおさらオレがガンダムを放り出すわけには行きませんね。フレイさん……しっかり掴まって、ナイトバードの影から出ないように……』

 

 哀れなデュエルにトドメを刺したいとも考えたトウカだが、落下地点を同じくするのだから、降下後に回収できればアラスカへの手土産が増えると考え直す。デュエルの武装はストライクと同じく大気摩擦で燃え尽き、頭部バルカンくらいしかまともに使えるものはない。それではナイトバード=ネクストやガンダムを傷つけることも敵わないだろう。念の為シャトルはアークエンジェルの影に隠れ、キラのガンキャノンがシールドを構えているが。しかし角度的にビームガンで狙いをつける事は叶わない。

 

『トウカ……』

『今は生きて地球に降りることだけを考えるんだ……常に計器に目を配って……気を確かに持つんだ……今持ってオレ達が命懸けであることに変わりはない……』

 

 何せ降下位置は連合制空権を離れた、アフリカ北部。ザフトの勢力圏内なのだから。

 




オリジナル機体
「ACM-NX002-C ガンキャノンG36」
 技研の第二号試作MS。初の二足歩行を成功させた「NX002 ガンキャノン・イミテーション」シリーズのジーナ専用機。ジーナさんじゅうろくさい。
 カーキ色で、迷彩柄。CEナイズドされたガンキャノンといった形状。

「ネェル・フライングアーマー」
 外見はまんまZのフライングアーマー。これの運用データでナイトバード=ネクストのWRが完成した。

「ACM-X008 ナイトバード=ネクスト」
 新型の生体(バイオ)センサーで脳波コントロールを補助に使用することでレスポンス速度が大幅に向上したほか、MAではなくWR形態となることで大気圏内での飛行能力を獲得している。またバッテリーを試作品の大容量バッテリーとしたことで継戦能力も増加。反面最新技術を次々投入したことでコストと整備性はやや悪化した。
 逆脚(正確には獣脚)であり、跳躍力が高いが、全体的にナイトバードから大型化し、頭頂高はストライクガンダムと同じ程度になった。
 変形機構はギャプランやナインボール=セラフのものが近い。それらにZガンダムのウィングをつけたイメージ。なお変形にシールドは必須ではないが、大気圏降下には必須。



 少女は犠牲になった。迷いましたが、こうでもしないとトウカが戦ってくれないので。
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