嘆きの亡霊は死神と共に   作:ディーン・グローリー

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嘆きの亡霊は引退したいの世界観に黒崎一護がいる話です。

嘆きの亡霊は書籍、web共に読んでいます。BLEACHも読んでいます。

ですが一護を落とし込むにあたり、少々原作を改変したりしていますのでご容赦ください。


第1話【プロローグ】

《1》

 

「おい聞いたかよヤベーよな! 何がヤベーって!? 聞いたら分かるだろヤベー話なんだよ!?」

 

 雲一つない晴天の下、語彙力の皆無な発言をする元気溌溂な赤毛の少年が声を上げてみんなにそう言った。

 場所は木々と原っぱが生い茂る広場。小鳥がさえずり、風に揺られて草木の心地よい音が聞こえてくる。周囲に高い建築物などは一切なく、ここが自然豊かな田舎であることがよく伝わる場所である。

 

「やっぱカッケェよな! 俺も心躍る冒険ってやつをしてみたいぜ!!」

 

 赤毛の少年が手に持った木の棒をぶんぶん振り回しながら、興奮収まらぬ勢いで快活に叫ぶ。

 それを呆れた表情で聞いている少年少女たちがいた。

 

「ねぇねぇその冒険譚って前も聞いたと思うんですけどぉ?」

 

「そうだね、多分これで3回目かな?」

 

「うるせえいいんだよ! かっけぇ話って何回しても飽きねえからよ!」

 

 ピンクブロンドの髪色をした二人の少女が突っ込むも、赤毛の少年は意気揚々と語る口を閉じない。

 

「……こうも同じ話を定期的に繰り返すのは、一種の才能だと思います」

 

「……うむ」

 

 冷めた言葉を口にする黒髪の少女と、それに頷く茶髪の少年。赤毛の少年とは対照的な物静かな雰囲気がある。

 そして、そんな活舌を振りまく赤毛の少年以外は、全員原っぱの上に座って聞いており、同時に他のみんなが呆れている中で一人の少年だけが「うんうん、そうだね」と相槌をうっていた。

 

「お、クライには分かるよな!? この熱く胸躍る話をよッ! あれ、胸躍ると心躍るって何が違うんだ?」

 

「うんうん、そうだね」

 

「だよなッ、流石は俺の一番の理解者! あー、俺も早く冒険に出て最強を目指したいぜ!」

 

「うんうん、そうだね」

 

 答えになっていない答えをする黒髪の少年。だが赤髪の少年はそれで満足したのか、まだまだ語る口を止めることはなった。

 適当さが笑みに出ている黒髪の少年は、ふとこちらにやって来る少年に目が入った。

 それはオレンジ色の髪をした少年で、黒髪の少年と目が合うと手を振ってきた。

 

「よぉみんな。またここに集まってたのか」

 

「お、一護じゃねえか!」

 

 少年少女たちがオレンジ色の髪をした少年にそれぞれ挨拶する。

 オレンジ色の髪をした少年――黒崎一護は笑顔でそれに応えていった。

 

「おい一護! この俺の冒険の話聞きたいか!? 聞きたいよな! よっしゃ聞かせてやるぜ。この前、森でな――」

 

「いや、その武勇伝はまたの機会に聞くぜ。悪ぃなルーク」

 

「何だよつれねーなオイ!」

 

 赤髪の少年――ルーク・サイコルは一護の肩に腕を回しながら笑いかけた。

 

「いやー、一護ちゃんのおかげでルークちゃんの長いお喋りが終わって助かったよ」

 

「よぉリィズ、何だよまたルークの好きな英雄の冒険話でも聞かされていたのか?」

 

「そうそう、前にも聞いた話をずーっとね。いやもう飽きたっての」

 

「おいおいお前ら、この話は何度聞いても燃えるもんがあるだろう!」

 

「それはルークちゃんだけ」

 

 ピンクブロンの髪に褐色の肌をした少女――リィズ・スマートは人懐っこい笑みを浮かべるも、ルークの言葉を聞いて呆れた表情となる。

 

「一護さん、こんにちわ。今日も家のお手伝いだったんですか?」

 

「ああ、医者が少ねえ村だからな。親父の仕事の手伝いを少しはしねえと、仕事が回らねえからよ」

 

「立派だと思います。また新しい薬品について学びたいことがあるので、今度お邪魔してもいいですか?」

 

「そうだな、ああ……構わねえよ」

 

「少し、歯切れが悪いですね。何かありましたか?」

 

「別に、何でもねえよシトリー」

 

 ピンクブロンの髪の大人しそうな少女――シトリー・スマートは恥ずかしそうに躊躇いつつも、一護の顔を覗き込んだ。

 彼女はリィズと姉妹の間柄である。だが、性格はまさに陰と陽のように異なっている。

 

「なになにシトリー、また一護ちゃんの部屋に上がり込むつもり~。大人しいくせに、やることは超~大胆だよね」

 

「ちょっとお姉ちゃんは黙ってて」

 

 天真爛漫を絵に描いたような姉であるリィズに、口を尖らせる妹のシトリー。

 普段は内気で物静かなシトリーだが、一護が絡むと少々口数が増える。

 その光景を見た一護はその二人の兄である茶髪の少年――アンセム・スマートに声をかけた。

 

「いつも仲が良さそうだなアンセム。兄冥利に尽きるってやつか」

 

「うむ」

 

「アンセム自身も頼り甲斐があるし、いいバランス保ってそうだよなお前ら兄妹は」

 

「本当、その通りです」

 

 無口なアンセムが頷くと、黒髪ロングヘア―の少女――ルシア・ロジェが割って入ってきた。

 

「私の兄も、少しはアンセムさんを見習ってほしいです。いつもいつも、よく分からない魔法を習得してほしいと、うるさいんです。自分は何もしないくせに……。アンセムさんの爪の垢を煎じて飲ましてやりたいです」

 

「またクライに変な魔導書でも渡されたのか? あー、何だっけ、クライの考えた最強の魔導書ってやつだよな」

 

「そうです! 何なんですか、人を蛙に変える魔法って! そんなものあるわけがありません!」

 

「そうなのか? 魔法って言ったらそういうイメージのもあるけどな」

 

「一護さんまで何を言っているのです。存在しませんそんな魔法!」

 

 苦言を呈することにヒートアップするルシアを、その兄であるクライ・アンドリヒが一護に同調した。

 

「一護もそう思うよね。やっぱり魔法っていえば、こう何かを変化させるってやつだよね。水をワインとかオレンジジュースに変えたりとかさ」

 

「無理です! 兄さん!」

 

「ルシアならきっと出来るようになるさ!」

 

「パンチしますよ?」

 

 眉間をひそめ、拳を固めるルシア。

 兄であるクライはそれを確認すると、我関せずと言わんばかりにそっぽを向いて黙る。

 

「おい一護、まずは何より一本勝負だ! お互い剣を握るもの同士、こうして顔を合わせればやることはただ一つ、決闘だけだ!」

 

 ルークが手に持っている、ちょっと大きな木の棒を向けてくる。

 しかしそこでリィズが割って入った。

 

「ちょっとルークちゃん、今日は私が一護ちゃんと組み手をするんだから、我慢して諦めて。昨日も一護ちゃんとやったでしょ。だから、今日は私の番。我慢するのも修行よ」

 

「何だと! そ、そうか、我慢も修行か……ッ! しょうがない、今回は特別に譲ってやる! だが、次は譲らん!」

 

「いや、俺はやるとは一言も言ってねえよ」

 

 勝手に話を進める二人に、一護は辟易とした表情となる。

 ルークとリィズに道端で会えば勝負を挑まれ、逃げてもしつこく後をついてくる始末。リィズに関して言えばアンセムかシトリーがいれば、難を逃れることもできるが、ルークにはそれができない。

 一護は幼少の頃から剣術を嗜むが、特に流派があるわけではない。

 完全な我流、それはルークも同じだがお互い剣を握るもの同士、よく研鑽を積みあっている仲ではある。

 ただ、ルークはそれに関して度が超えており、行住坐臥の全てが剣の修行に通ずると思いこんでおり、常に鍛錬を心掛けている。そしてたちが悪いことに、同じ剣士として一護を巻き込もうとする。

 一護も嫌ではないのだが、会うたびとなると懲り懲りする。

 

「一護は優しいから。最初は断るけど、結局は渋々二人に付き合わされてるよね。今日もそんな感じでしょ」

 

「クライ、余計なこと言ってんじゃねえよ。次はお前も付き合わせるぞ」

 

「あー、僕は遠慮しとくよ。最近、腰が痛いしね」

 

「何を言っているんですか兄さん。兄さんも、少しは鍛えてもらった方がいいです。ほら、一護さんに鍛えてもらってください」

 

 ルシアがクライの背中を押し、一護に差し出してくる。

 一護はそれを手で制する。ごめんこうむると顔に書いてあった。

 

「クライはやれば出来る奴だと思うぜ。やる気のなさが、そう見えてるだけだろ? なぁクライ」

 

「ははは、どうかな。僕はとりあえず一護に頼れば万事解決すると思ってるから、これからも頼りにさせてよ。僕は僕なりに頑張るからさ」

 

「また、そうやって有耶無耶にしないでください兄さん!」

 

「……これからも、か」

 

 一護は消えゆく声で呟くと、どこか憂いの帯びた瞳をみんなに向けた。

 それを誰よりも先に気づいたシトリーが、恐る恐る尋ねる。

 

「あの、一護さん……どうかされたんですか?」

 

「あー……そうだな。今日はみんなに大切な話があるんだ」

 

 意を決したかのように、一護は幼馴染であり親友である六人に向けて重々しく口を開いた。

 

「俺はこの故郷を離れて――帝都ゼブルディアに引っ越すことになったんだ」

 

 一護のその言葉に、全員は一瞬言葉を失った。

 さながら時間でも止まったかのように、風の吹く音だけが嫌に耳に残った。

 ずっと一緒にいた友達が、何の前触れもなく急に引っ越すと言い出したのだ。どのようにリアクションを取っていいのか、混乱も相まって口が開かない。

 しんみりした凄愴な雰囲気となりつつも、一護は続けて言葉を紡いだ。

 

「急で本当に悪い。親父の仕事で、なんだ。けど、一生会えねえわけじゃねえよ。たまにはここにも顔を出すし、引っ越し先の物件が決まったら手紙も出す。だから、そんな寂しい顔すんなよみんな。帝都は遠いけど、また帰ってはくるからよ」

 

 何とか明るそうな弁舌で吐く言葉も、しかしやはりみんな急なことで受け止め切れていなかった。

 今まで仲良く遊んでいた友達の一人が、急に遠くへ行ってしまう。言葉に詰まる、何と返せばいい。全く答えが出ない。

 その状況下に一護が困窮する。

 しかしそんな時、クライが平然と答えた。

 

「なら、僕たちから帝都ゼブルディアに行けばいいんじゃないかな?」

 

 その言葉に、寂寥感な雰囲気を一気にポカンと変えた。

 

「兄さん、何を言っているんですか? 帝都はそんな気軽に遊べに行ける距離ではありませんよ」

 

「いや、違うよ。ほら、僕たちってやりたいこと、あったでしょ?」

 

「あっ! そうか、クライ! 俺は分かったぞ!」

 

「私も私も!」

 

 クライの問いかけに、ルークとリィズが声を上げた。

 

「……うむ」

 

「あ……なるほど、そういうことですね」

 

「あれ、本気だったんですか」

 

 そして同調するようにアンセムもシトリーも、ルシアも答えを引き出した。

 それは、たった一言の言葉から始まったみんなの夢。

 

 ――トレジャーハンターになろうぜ。

 

 世界最強の英雄を目指し、数々の宝物殿を攻略して世界各地を周り富と栄光を手にしよう。

 などと言う、子供ながらの夢を7人で語ったことがあった。いや、今も語り合っている。

 最初は夢物語じみた話で終わるかと思ったが、言うや否やみんなの行動は早く、各々がそれぞれの得意分野で切磋琢磨し合ったのだ。

 今ではもう、夢で終わらせる予定などない。

 

「帝都ゼブルディアって言えば、確かトレジャーハンターの聖地だよね。だから僕たちも将来はそこに必ず向かう。勿論、トレジャーハンターになってね。だから一護も、帝都でトレジャーハンターを目指してよ。そこで7人そろってパーティを組んで、世界最強のトレジャーハンターを目指そう」

 

「クライ、お前……」

 

「クライ! 俺は超感動した! すげぇいいこと言うじゃねえか! そうだぜ一護、俺たち7人で最強のトレジャーハンターになろうぜッ!」

 

「うんうんクライちゃんの言う通りっ!」

 

「たまに良いこと言いますね兄さんも」

 

「うむ」

 

「はい、とてもいい考えだと思います!」

 

 クライの発言に、みんながいつもの調子に戻る。

 一護はそれを微笑ましく見守り、みんなに向けて改めて言葉を変えて言った。

 

「ああ、なら俺は一足先に帝都でトレジャーハンターになって、みんなを待ってるぜ。だから必ず来いよ。俺はいつでも待ってるからな」

 

「おう! 帝都で会う時は俺の方が絶対ぇ強い剣士になってるからよ! 一護もすげぇ強くなってろよな!」

 

「私も一護ちゃんよりも確実に強くなってる予定だから、楽しみにしててね!」

 

「一護さんにしばらく会えないのは寂しいです。泣きたいです。けど私も、私の選んだ道で成長しますので、ぜひ次に会う時は成長した私をご覧にいれます!」

 

「うん、私も兄さんの無茶ぶりな魔導書に、どこまでついていけるか分かりませんが、必ず立派な魔導士になります。だから、期待しててください」

 

「身体には充分に気を付けてくれ」

 

 熱く語るルークが、うきうきなリィズが、決意に満ちたシトリーが、憧憬したルシアが、そして無口なアンセムが、各々が一護に熱意の籠った言葉を口にした。

 そして最後にクライが、どこか気恥ずかしそうに続く。

 

「僕は、まぁうん。今よりは少しマシになってる予定だから、あまり期待せずにいてね」

 

「そこは期待させろよ。まぁクライらしいと言えばクライらしいか」

 

 などと一護は言うも、クライには一番期待していたりする。

 この男は将来大物になる。いい意味でも、悪い意味でも。そんな予感がするのだ。

 だからきっと、帝都に来てもこのメンバーなら、誰一人欠けることなく大成を成し遂げるであろうと踏んでいる。

 

「なろう、トレジャーハンターに」

 

 そうして少年少女の7人はここに誓ったのだった。

 

 

   ***

 

 

《2》

 

 

 ――トレンジャーハンターになろう、そう誓って約十年の年月が流れた。

 

 帝都ゼブルディア。

 周辺の諸外国の中でも国の領地が広く、そして中でも宝物殿の数は群を抜いていた。

 だからこそトレンジャーハンターの黄金時代と言われる今、この帝都はハンター達の聖地と言っても過言ではない。

 帝都から離れた僻地にある森。そこにはレベル3の宝物殿があった。

 

 鍾乳洞のように、中は鍾乳石が神秘的な光沢を放ち、尚且つ透明度の高い地下水が流れている。

 しかしその美しさとは相反するように、ここには絶対的な危険も伴う。

 宝物殿――マナ・マテリアルが生み出した魔窟。中には文字通りお宝が眠っているが、同時に魔物や幻影(ファントム)と言った人間に害を成す怪物がひしめいている。

 そんな危険な場所に、一人の少女が激闘を繰り広げていた。

 

 緑の肌をした人型の幻影(ファントム)。一見すると大きなゴブリンのように見えるそれは、片手に鉄製の棍棒のようなものを握っている。

 それに相対している少女は矮躯ながらも、そのゴブリンを前に余裕綽々と言った態度で翻弄していた。

 

 名はティノ・シェイド。

 帝都ゼブルディアで最も勢いのあるクラン【始まりの足跡(ファースト・ステップ)】に所属するレベル4のソロハンターであった。

 

 

   ***

 

 

 ティノは敬愛するますたぁの指示のもと、このレベル3の宝物殿に赴いていた。

 認定レベル3の宝物殿。ティノのレベルを鑑みると、困難と呼べるほどではないが、自分たちのクランマスターが指示したということは、難色を極めるかもしれない。

 案の定、宝物殿の中は魔物で溢れかえっていた。しかし、そこまでマナ・マテリアルを吸収していないのか大したことはない。

 自分の得意とする体術を駆使して、迫りくする様々な魔物を屠っていった。

 

 ――だめ、この程度では全然成長できない。またお姉さまに怒られる。

 

 それでもティノは不安に駆られていた。

 ティノには師匠と呼べる方がいる。盗賊(シーフ)としてのスキルは勿論、体術の面においても度外れした高いスペックを誇る師匠が。

 彼女はそんな師匠の下に弟子入りし、それはもう血反吐を吐く訓練をさせられていた。

 それに耐え抜き、今なお成長しようと頑張るティノには、大切な夢がった。

始まりの足跡(ファースト・ステップ)】のクランを創設した、大好きなますたぁがリーダーを務める『嘆きの亡霊(ストレンジ・グリーフ)』に入ることである。

嘆きの亡霊(ストレンジ・グリーフ)』はますたぁと5人の幼馴染で結成したパーティであり、ティノがトレンジャーハンターになる切っ掛けにもなった尊敬すべき方たちである。

 一人一人が様々な分野で桁外れの実力を持つため、ティノがそこに入るためにはそれに見合った力がいるのだ。

 

 ――ますたぁは神。ますたぁの命令は絶対っ!

 

 そんな彼女は今、大型のゴブリンの見た目をした幻影(ファントム)と戦っていた。

 盗賊の名に恥じない俊敏な動きでゴブリンの攻撃を全て躱し切り、徒手空拳により反撃を繰り広げている。まさに力の差は歴然。勝敗を決するのも、そう遅くはないだろう。

 

 ――お姉さまなら、既に一撃のもとで倒している。こんなところで、もたもたしている場合じゃない!

 

 乾坤一擲の勢いで、ゴブリンの脳天めがけて蹴りを放つ。

 ズドンと、重い音が響いたかと思うと、そのまま大型のゴブリンは突っ伏すように倒れた。

 

「よし、これで――」

 

 勝利を確信した、次の瞬間だった。

 ティノの背後から、気配を消して現れた赤い肌をした大型のゴブリン。それが剣呑とさせる程の膂力と速さで棍棒を振るってきたのだ。

 恐らく先のゴブリンよりも圧倒的に格上の存在。

 

「ッ! いつの間に!?」

 

 ティノは間一髪で躱し、距離を取って難を逃れる。

 だが赤いゴブリンは、その体躯には見合わない捷い動きでティノの眼前に肉薄していた。同時にゴブリンが手に持った棍棒を振り下ろしてきた。

 

「――しまったッ!」

 

 ティノは腕で守りの態勢に入る。

 重い一撃を喰らっても致命傷は避けられる。その後に攻撃に転じる、と考えた……

 その時である。

 

 ガキンッ、という金属音が響いたかと思うと、ティノに衝撃が全くこなかった。

 一体なぜ、そう思い前を見据えると、そこには一人の男が立っていた。

 

 黒い着物に身を包んだ、巨大な出刃包丁のような大剣を携えた一人の男。

 オレンジ色の髪が特徴的なその男が、易々とゴブリンの一撃を受け止めている。

 

「大丈夫か? 間に合って良かったぜ」

 

 赤いゴブリンはティノから見ても凄まじい腕力を有しているだろう。

 それを全く意に介さずに、目の前の男は受け止めつつ気軽に話しかけてきた。それだけで、並大抵の力の持ち主でないのは確かだ。

 そして男は出刃包丁で受け止めている棍棒を弾き、袈裟懸けの要領でゴブリンを斬り裂いてしまった。

 まさに鎧袖一触。果物でも切るかのような気楽さで、倒してしまったのである。

 ティノは呆然としながらも、声をかけた。

 

「……えっと、あなたは?」

 

「俺は黒崎一護。――《死神代行》だ」

 

 こうしてティノは、黒崎一護と邂逅したのだった。




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ちなみに作者は豆腐メンタルです
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