猛「久しぶりだな…葉月…と言ったかな?」
葉月「お久しぶりです本郷さん」
私の目の前にいる本郷猛さんは以前とは見た目は変わらないようで山の中で暮らしているようだった。
猛「今日は何をしにここまで来た?」
私は本郷さんの言葉に背負っていた荷物を地面に置くと深々と頭を下げた。
葉月「私…強くなりたいんです!!だから…私に修行をつけてください!!」
猛「ふむ…強くなりたいか…君はなぜ強くなりたいと思う?」
葉月「それは…」
本郷さんの問いかけに私は前回の戦いで湊先輩の事を引きずってしまいりんねさん達を危険に巻き込んでしまいそうになった事を話した。
猛「そうか…死んだしまった君の先輩の事を…」
葉月「ははっ…おかしいですよね…10年も経つのに今だに引きずっているなんて…情けないですよね私…」
猛「いや…死んだ者に囚われるのは情けない事では無い…どんなに時間が経っても死者の事を引きずってしまう人は少なくは無い…」
葉月「…でも私は…」
猛「君はそれでも尚、立ち上がり前へ進もうとしている…だからこそ私の元へとやって来たのだろう?」
葉月「はい…私は後輩を…みんなを守れるように私は精神的にも肉体的にも強くならないといけないんです…」
猛「精神的…か…俺のつける修行は過酷だぞ?」
葉月「覚悟の上です!!お願いします!!」
本郷さんは私の言葉に考えるような仕草を様子を見せると私の肩に手を置いた。
猛「わかった…では明日から修行を始める…葉月君…明日は早いぞ!!」
葉月「はいっ!!よろしくお願いします!!」
本郷さんは大きな古屋に向かい私は荷物を抱えると本郷さんの後をついていった。
-翌日-
私はスマホのアラームが鳴る前に山の中に響き渡る鳥のさえずりによって目がさめた。
葉月「今日から頑張ろう!!」
私は桃色の作務衣と呼ばれる動きやすい修行服に着替えるとさっそく表の方へと向かった。
猛「では…さっそくまずは眠気覚ましの太極拳からだ…」
まず最初に行うのが太極拳であり本郷さんの話によると日本古来の精神性や心身の健康を目指した工夫を加えたものとの事であった。
猛「ふぅ〜」
葉月「ふーっ」
私は本郷さんのお手本を見ながら同じようにゆっくりと足を開き吸って吐いてを繰り返しながら一歩一歩足を踏み出しながら手を前に出して引いての動作を繰り返していった。
葉月(冷たい…足が痺れる…)
次に座禅の時間になり私は座禅を組みじっと静寂の中で足の痺れに耐えていた。
葉月(どれくらい時間経ったかな?もう…限界…)
猛「そこまで!!」
そんな事をずっと思いながら私はじっと足の痺れに耐えていたが耐えきれずに足を崩し掛けた瞬間に本郷さんの終了の合図が響いて足を崩してしまった。
猛「いや〜いきなり1時間耐えるとは大したものだ…ハッハッハッ!!」
葉月(限界寸前でしたけど…)
その後、朝食になり少しのお漬け物にお粥が出されて私は本郷さんが見守る中で静かに食べ始めた。
葉月(物凄い見られてる…なんか食べずらいなぁ…)
本郷さんはこちらをじっと見つめながらもお粥を口にしており私はあくまで冷静を装いながら静かにお粥をかき込んだ。
猛「さぁ…いよいよ滝行に入ろう!!」
葉月「滝行…」
猛「まずは山の神様と滝の神様に挨拶をするんだ」
葉月「はい」
本郷さんはお手本として山と滝に向かって頭を下げて私もそれに倣って、山と滝に向かってそれぞれ頭を下げると次に本郷さんは桶で水を掬うと頭から水を被った。
葉月(ひぃ…寒そう…)
猛「さぁ…葉月君…神聖なる水を全身を頭から被って身体を清めるんだ。」
葉月(つ、冷たそう…)
ふと心の中で呟かながら私は桶を持つと頭から水を被り私は全身を清めていく。
葉月(っっっ!!冷たぁぁぁぁい…無理無理寒すぎ…死んじゃうもうやだ…帰りたい!!)
心の中で弱音を吐き出してしまい私は実際に口に出さないように必死に歯を食いしばって必死に耐える。
猛「滝行は過酷だ…生半可な覚悟では水の勢いに負けて流されるぞ…」
葉月「は、はい…」
猛「まずは私がお手本を見せよう…よく見ておきなさい。」
目の前にはかなり大きな滝があり水が勢いよく落ちており本郷さんはお手本として滝の真下にズブズブ入っていった。
猛「ぬぅぅん…」
本郷さんは滝の真下に入り水に打たれ始めた。本郷さんは手を合わせて苦痛な表情は見せずにただじっと滝の水に打たれており私はその様子をじっと見守っていた。
猛「さぁ…次は君の番だ!!」
しばらくして本郷さんは滝から離れて私の元へとやって来ると私の肩をポンと叩いた。
猛「昨日は雨が降ったから水量が多いぞ?」
葉月「えぇっ!?」
猛「水圧が全身に襲いかかってくる…油断していると体を持っていかれるぞ!!」
葉月「わ、わかりました…」
猛「さぁ…行ってこい!!」
私は滝の下へとズブズブと近づくと物凄い量の水飛沫が襲い掛かり私の滝行のための白い行衣を濡らしていく。
葉月(覚悟を…決めなきゃ)
私は深呼吸をすると滝の真下に入り流れ落ちる水をその身で受け始めたがすぐに物凄い勢いで水圧が私の頭と肩など全身にのしかかって来た。
葉月「あああああああああっ!!」
あまりの水の冷たさと重さに私は絶叫し必死に手を合わせながら私は全身に力を込めた。
葉月(辛い…苦しい…何でこんな辛い事やってるんだろ私…)
心の中で弱音が一気に漏れ出してしまうが私は目を開けられないまま必死に耐えるしかなかった。
葉月(いや…私は強くならなきゃいけないんだ…りんねさん達後輩を支える先輩に…みんなを導く存在に…」
???「貴方じゃ無理だよ…」
葉月「えっ…誰!?」
ふと頭の中で声が響いて私は頭の中に突如響いた声の主に向かって声を掛けた。
???「未熟者の貴方にみんなを導く資格なんてない…」
葉月「なっ…何を言って…」
???「貴方は湊先輩を今だに引きずってる…それでみんなに迷惑を掛けてしまった…そんな貴方にみんなは失望したと思うわ…」
葉月「そんな事は…貴虎さんや本郷さんだって今だに引きずっているのは仕方無いって言ってた!!」
???「そんなの嘘に決まってんじゃん…貴方を傷つけまいと嘘を言ったんだよ」
葉月「そんな事は無い!!そもそもそも貴方は一体誰なんですか!?」
???「ふふふ…」
葉月「なっ…私!?」
滝の下に薄らとだがもう1人の私が笑って立っており滝の上から流れる水圧をもろともせずに私の目の前にやって来た。
葉月?「私は貴方の負の感情から生まれたもう1人の貴方よ」
葉月「負の感情…」
葉月?「こんな修行なんかしたって意味は無いよ?」
葉月「ふざけないで…この修行を乗り越えて私は…」
葉月?「貴方は今回の件で修行をしたって言う自己満足に浸りたいだけなんでしょ?」
葉月「そんな事ない…」
葉月?「修行をしたって強くなれる訳ない…貴方はまた膝をついてしまうんだから!!」
葉月「努力すればきっと強くなれる!!だからこうして努力してる!!」
葉月?「アッハッハッハッハッ!!」
突如目の前の負の私が笑い始めて私はもう1人の私を睨みつけた。
葉月「何がおかしいの!?」
葉月?「だからさ…貴方の自己満足でしょ?」
葉月「なっ…うぐっ…」
目の前の負の私は私の首を片手で締め始めて私は首を掴まれてしまい必死に首を掴む手を離そうと力を込める。
葉月?「本当に努力している人は自分から努力してるって言わないんだよ?」
葉月「なっ…」
葉月?「でも貴方は自分で努力してるって言ってる!!」
葉月「あぁぁぁぁ…」
葉月?「そんな貴方に貴虎さんや、りんねさん達後輩ライダーを導く資格なんてない!!」
葉月「やめて…それ以上言わないで…」
葉月?「貴方に付き従ってる2体のケミー達もきっとがっかりしてるだろうね」
葉月「なっ…キンキラヴィーナにギングリフォン!?」
葉月?「持ち主がこんなんじゃ力も貸してくれないよね…一ノ瀬宝太郎さんから貴重なケミーを奪った上に見放されるんだから!!」
葉月「きっと私にまた力を貸してくれる!!だって前も新しいヴィーナスに変身したんだから!!」
葉月?「あれはヴィーナスじゃないよ?」
葉月「なっ…」
葉月?「勘違いしないで欲しいんだけどさ、りんねさんの指輪を使ったんだから貴方はマジェードに変身してたんだよ…クロスウィザードの話聞いてなかったの?」
葉月「でもあれは確かにヴィーナスの力だった!!」
葉月?「でもあれはヴィーナスじゃなかった…正確にはヴィーナスの力を得たマジェードだったんだよ!!」
葉月「ヴィーナスじゃなかった…」
葉月?「未熟な貴方は新しいヴィーナスになんかなれないよ」
葉月「ヴィーナスになれない…」
葉月?「もう誰も貴方の事なんか期待はしてないよ…だからさ…諦めちゃいなよ」
もう1人の私が私の心を折りに来ており、私は首を掴まれたままだんだんと意識が遠のいて行った。
葉月?「以前凰蓮さんに言われた事をもう一度言ってあげる…」
葉月「嫌…嫌!!」
葉月?「そんな未熟な貴方には貴虎さんの秘書は相応しくないよ…その過ぎた力も手放しちゃいなよ」
直後に私は意識が無くなってしまい滝の下に崩れ落ちてしまった。
葉月「うぅ…」
どれくらい眠っていたのだろうと思いながら意識を取り戻した私は自分が古屋の中に運ばれて床に寝かされている事に気がついた。
猛「気がついたようだな?」
葉月「本郷さん…」
本郷さんが私の側で様子を見守ってくれていたようで私はゆっくりと体を起こした。
猛「初めてだからな…少し無茶をしてしまったかな?」
葉月「いえ…私が弱いんです…」
猛「何か…思い詰めているようだな…話を聞かせてくれるか?」
葉月「はい…私は…」
???「呉島葉月!!そこに居るのはわかっているぞ!!出て来るがいい!!」
猛「ぬぅ!?」
葉月「誰っ!?」
古屋の外から突如何者かの声が響いて本郷さんは私にそのままでいるように待てと手で合図を出すと古屋の外へと出て行ってしまい私は思わずカーテンの隙間から外の様子を覗いた。
葉月「あれは確か…ショッカー!?」
シオマネキング「本郷猛…呉島葉月を匿っているな?」
猛「貴様らはショッカーだな!?なぜ葉月君を狙う!!」
シオマネキング「呉島葉月…その命をとある組織に狙われている…その組織が我々ショッカーと手を組んだのだ!!」
葉月「とある組織…?まさかハンドレッド?それとも…」
シオマネキング「奴の首を差し出せば連中は我々の力を認めるだろう…協力関係を結べばこの世界を征服するのも時間の問題だ!!」
猛「おのれショッカー!!歪んだ野望のために葉月君を狙うとは…」
シオマネキング「邪魔をするならまずはお前からだ本郷猛!!」
ショッカー「イィーッ!!」
ショッカー戦闘員が一斉に本郷さんに襲い掛かり本郷さんは向かって来る敵の体を掴み放り投げると後ろに回った別の戦闘員の攻撃を躱すと武器を奪い取り武器を敵に叩きつけた。
猛「ハアッ!!」
ショッカー「イィーッ!!」
本郷さんは次々とショッカーを蹴散らしていくがたくさんの数の戦闘員に囲まれてしまい私は見ていられずに外へと飛び出した。
葉月「本郷さん!!」
猛「葉月君!!出て来るなと言っただろう!!」
葉月「敵は私を狙ってるんです!!私が戦わなきゃ!!」
シオマネキング「やはり居たか呉島葉月…いや仮面ライダーヴィーナス!!」
葉月「貴方達の相手は私がします!!」
ふと懐からゲネシスドライバーを取り出そうとしたが私はドライバーがない事に気がついて唇を噛み締めた。
葉月(そうだった…今回私…ゲネシスドライバーとロックシードを持ってきて無かったんだった…)
シオマネキング「どうした?ヴィーナスに変身しないのか?」
葉月「だったら…新しく手に入れた錬金術師の力で!!」
葉月?(貴方に付き従ってる2体のケミー達もきっとがっかりしてるだろうね)
葉月「っ!!」
頭の中でもう1人の私の声が響いて私は思わず手が止まるがショッカーがゆっくりと私に迫って来て私はすぐに指輪をはめ直してドライバーを出現させようと2枚のケミーカードを構えるが私の腰にドライバーが出現する事は無かった。
葉月「なっ…どうしてドライバーが出ないの!?」
私は何度も指輪をはめ直すがドライバーは出現せずに思わず2枚のケミーカードに向かって必死に呼びかけた。
葉月「キンキラヴィーナ…ギングリフォン…私に力を貸して!!」
しかしいくら呼びかけても2体のケミーはカードのまま動きを見せずにイラストが動く事も無く私は再び唇を噛み締めた。
葉月?(未熟な貴方は新しいヴィーナスになんかなれないよ)
再び響いたもう1人の私の言葉に私は再び心が折れそうになってしまった。
葉月「変身出来ない…これじゃ私、弱いままだ…」
シオマネキング「ん〜変身出来ないようだな?ならば死ねぇぇ!!」
気づけばショッカーに距離を詰められており私に向かってショッカー怪人の鋭い爪が振り下ろされようとしていた。
葉月(私…また負けるの?何も成し遂げられないまま…)
もう何度目かわからないが私は再び心が折れ掛けてしまいそのまま迫り来る衝撃に思わず目を閉じた。
猛「馬鹿者!!」
突如本郷さんの声が響いて目を開けると私に迫る怪人を殴り飛ばす本郷さんがおり、その腰には変身ベルトが装着されていた。
葉月「本郷…さん」
猛「君はまだ修行を始めたばかりだろう!!こんなところで諦めるつもりか!?」
葉月「本郷…さん…私また…弱気に…」
猛「何度挫けてもいい…倒れてもまた立ち上がれはいい…今回の修行はまだ始まったばかりだろう!!」
葉月「無理ですよ…私…変身も出来ない…強くなんかなれないんです!!」
猛「信じろ!!君は今回の修行で必ず心に熱い命の灯火を宿せる筈だ!!」
葉月「熱い命の灯火…」
猛「必ず君は強くなれる…自分を信じろ!!」
本郷さんの言葉に私はふとこれまで出会ってきた仲間の顔が脳内に浮かび上がって来た。
葉月「貴虎さん、チャッキーさん、沢芽市の皆さん…りんねさん…そして…湊先輩!!」
私は再び立ち上がると本郷さんの背中に向かって声を絞り出した。
葉月「私はもう二度とあんな奴らの言葉で折れたりしない!!」
シオマネキング「何だと!?」
葉月「私は…強くなりたい…強く…なるんだぁぁぁぁ!!」
私はショッカーへと駆け出すと必死に拳を戦闘員に繰り出していき次々と地面に倒していった。
シオマネキング「バカな…奴の心は折れた筈!?」
猛「ショッカー!!貴様らの野望もここまでだ!!」
本郷さんは両手を正面に翳すとすぐに片手を腰に当ててもう片方の手を正面に素早く出して変身のためのポーズを取った。
猛「ライダー…変身っ!!」
ベルトのバックルが開いて強風が巻き起こりベルトの中央から光が溢れて私は思わず強い強風に思わず目を閉じた。
猛「とおっ!!」
直後に本郷さんが跳躍する音が響いて思わず視線を向けるとそこには本郷さんが変身したであろう仮面ライダーの姿があった。
シオマネキング「貴様〜!!」
それはまさしくシロちゃんが言った通り始まりのライダーにふさわしく首元のマフラーが風によりバタバタとはためいていた。
葉月「仮面ライダー…1号…」