貴虎Side
自宅に戻った貴虎は玄関に辿り着くと、かつて光実と交わしたやりとりの事をふと思い出していた。
貴虎(無駄な物を切り捨てる事で、お前の人生は完成されるんだ)
光実(僕の人生は…無駄だらけだからね)
貴虎(あの頃から、お前はずっと俺の事が許せなかったんだな…お前を理解してやれなかった兄が…)
貴虎は自室にて保管していた黒いケースを取り出して開くと、中には戦極ドライバーとメロンロックシードが収められており、貴虎はドライバーを見つめてふと呟いた。
貴虎「決着をつけよう…光実」
-翌日-
貴虎は自宅を出ようと玄関を出ると、そこで待ち構えていた人物を見て目を丸くした。
貴虎「水瀬…」
葉月「行かせませんよ…貴虎さん」
葉月Side
私は貴虎さんへの恋心に気付いてからずっと自宅で貴虎さんの事を考えていた。
葉月(貴虎さんはきっと光実君の事で思い悩んでた…となると、この後に必ず自分1人で光実君と決着を付けに行くに違いない…)
そう考えたら私はすぐに行動を開始していた。貴虎さんを止めるために私はロックビークルを起動させて、貴虎さんの自宅へと向かった。
-呉島邸-
私が貴虎さんの自宅に着くとまだ貴虎さんは出かけていないようで、玄関で待ち伏せる事にしてしばらくその場で待機していた。するとそう時間が経たないうちに貴虎さんが家の中から出て来たので、私は貴虎さんの行く手を遮るように貴虎さんの正面に立った。
貴虎「水瀬…」
葉月「行かせませんよ…貴虎さん」
貴虎「何故お前がここに?」
葉月「1人で光実君と決着を付けにいくつもり…ですよね」
貴虎「フッ…さすが俺の秘書だ。私の考えなどお見通しか…」
葉月「2人が戦っちゃダメですよ…」
貴虎「これは俺達兄弟の問題だ…お前には関係ない筈だ」
葉月「関係ありますよ!!」
貴虎さんが私を躱して先を急ごうとしたので私は貴虎さんの体を掴んで止めた。
貴虎「何?」
葉月「2人が戦ったら今度は怪我どころでは済まないですよ…せっかく貴方を取り戻せたのに…これじゃあ…」
貴虎「水瀬…だが…私は…光実と決着を…」
葉月「バカッ!!」
貴虎「水瀬!?」
私は泣きながら貴虎さんに抱きついて動けないようにして必死に叫んだ。こうでもしないと貴虎さんは止まってくれないと思ったからだ。
葉月「貴方は…どうしていつもそうやって自分1人で背負いこんでしまうんですか!!残された私の気持ちを考えてくださいよ…辛くて苦しいんですよ…」
貴虎「………」
葉月「私、貴虎さんの事を考えるといてもたっても居られないんです…また1人で無茶してしまうんじゃないかって、貴方が傷つくのはもうこれ以上…見たくないんです!!」
貴虎「水瀬…」
葉月「私の胸に抱えるこの思いも…まだちゃんと伝えきれてないですし、貴方に今ここで行かれてしまうは絶対嫌です!!」
貴虎「水瀬…私の事をそこまで…」
葉月「貴虎さん…行っては駄目です…」
貴虎「私の事をここまで慕って理解してくれたのはお前だけだ…こんな素敵な秘書がいる私は幸せ者だな…」
葉月「貴虎さん…」
貴虎さんは私を抱きしめ返してくれて、私の小さな背中が貴虎さんの大きい手に包み込まれた。私は涙を流しながら貴虎さんの胸に顔をうずめた。
貴虎「水瀬」
葉月「はい…?」
貴虎「すまない…」
葉月「…っ!?かはっ…」
私は突如として首後ろに衝撃を感じてその場に立っていられなくなり、地面に崩れ落ち玄関に倒れ込んでしまった。どうやら貴虎さんが意識を刈り取るためか、私の首に手刀を打ち込んだようだった。
葉月「貴…虎…さん…何…を」
貴虎「光実はオーバーロードの手先となった以上…これ以上罪を重ねないように、やはり私の手で始末をつけなくてはならない…」
葉月「そ…んな…嫌…」
貴虎「お前は私にとって希望だ…その力で葛葉達の力になってあげてくれ」
葉月「待って…くだ…さい…貴…虎さん」
貴虎「すまない…水瀬…いや…葉月。」
貴虎さんは初めて私の名前を呼んでくれたものの、その場に倒れる私をそのままにして立ち去ろうとしてしまう。
葉月「待…ってくだ…さい…私はまだ…私の気持ちを…貴方…に伝えてきれてないの…に」
私は意識がだんだん無くなってしまい、視界がグラグラと揺れて立ち去って行く貴虎さんの後ろ姿がぼんやりと浮かぶ中で、必死に手を伸ばした。
葉月「私は…貴方の事が…」
私の最後の言葉も届く筈も無く貴虎さんは立ち去ってしまい、私は意識を保つ事が出来ずに視界がゼロとなり、その場でついに気を失ってしまった。