葉月「君が…オーバーロード…」
チャッキー「こんな可愛い子がオーバーロード!?」
シロ「……?」
突如としてオーバーロードを名乗った少女に私とチャッキーさんは悲鳴に近い叫びを上げるがシロと呼ばれる少女は頭を傾げていた。
葉月「え…っと…シロちゃん…はいつから沢芽市に?」
シロ「ん…1年前…ゲートが開いて私達はこの沢芽市にやって来た…」
葉月「1年前って…世界中にクラックが一斉に開いた日!?」
シロ「ん…そう」
オーバーロードの王であるロシュオが一斉に世界中にクラックを出現させて大量のインベスを解き放ったあの日にシロちゃんも一緒にやって来たのだと言う。
シロ「…お兄ちゃんと一緒にやって来たの…」
チャッキー「お兄ちゃんが居るの!?」
シロ「うん… デェジュシャシュ…私のお兄ちゃん」
葉月「お兄さんは今どちらに?」
シロ「わかんない…離れ離れになった…たぶんの沢芽市の外に居ると思う…」
チャッキー「シロちゃんは沢芽市に来てから今までどこで過ごしてたんですか?」
シロ「うーん…」
葉月「…?」
シロちゃんは何かを考えるような素振りを見せると私達に背中を向けてどこかに歩き出した。
シロ「着いてきて…案内する…」
-神社-
私達はシロちゃんに導かれるまま沢芽市の端にある神社へとやって来ていた。
葉月「そういえばシロちゃんは他のオーバーロードと違って人間の姿なんですね?」
シロ「ん…人間の食べ物を食べたら元の姿に戻れなくなった…」
チャッキー「えっ…何を食べたの?」
シロ「神社のお供物のお饅頭を食べたら元の姿に戻れなくなった…」
葉月「えっ…お供物食べちゃ駄目ですよ…」
シロ「うん…神主のおじちゃんにも怒られた…罰としてこの神社で巫女の仕事を手伝ってる…今、巫女が居ないから…」
葉月「なるほど…それで巫女装束…」
シロちゃんは白いワンピースから巫女服へと服が変わっており、自在に服を変える事が出来るようであった。
シロ「人間の洋服…凄く興味があって、図書館でいっぱい勉強したよ?今ならなんでも着れる!!」
チャッキー「いいなぁ…自在に服を変えられるの…」
シロ「でも…この巫女服が1番しっくり来る…おじちゃんから貰った物だから…」
そう言いながらシロちゃんは自身の巫女服の赤い袴をちょこんと摘み上げた。
チャッキー「似合ってるよシロちゃん!!」
シロ「うん…でもここにはあまり人は来ないから少し寂しい…レデュエ達が一回来たくらい…」
葉月「えぇ…大丈夫だったんですか?」
シロ「ん…あの時は確か…」
-1年前の神社-
シロ「こんなところまで来たんだ?」
レデュエ「いい加減に戻って来い…王がお前を待っている…」
シロ「私はあの森には戻らない…私はロシュオのやり方には納得いかない…」
レデュエ「王は禁断の果実を手に入れた…お前の力と合わせれば無能な猿どもは我々にひれ伏す事になる…」
シロ「それが納得いかないって言ってる…それに人類側の禁断の果実を無理やり奪ったのは納得いかない…」
そう言いながらシロは手を翳すとそこから銀色に輝く果実を取り出した。
レデュエ「なんだそれは?」
シロ「黄金の果実が奪われた時のための保険だよ…本物には劣るけど複製再現した禁断の果実ってやつ」
レデュエ「まさか…複製再現していたのか…?」
シロ「禁断の果実はひとつの種族に1つだけ与えられるもの…でも人間側のを無理やり奪ったのは納得がいかない…人間側にもチャンスが与えられるべき…」
レデュエ「猿どもの肩を持つのか…デェングムボシュ?」
シロ「私は人間の世界で暮らしているうちにわかったの…人間はそんなに愚かじゃない…」
レデュエ「愚かな…人間の世界で生きてるうちに…人間の心を持ったか…」
シロ「愚かなのは私達だよ…争いあったせいで私達の種族の生き残りはもう僅か…」
レデュエ「猿を庇うか!!デェングムボシュ!!」
シロ「人間は傷つけさせない…私が守る!!」
レデュエは杖をシロに向かって振り翳すがシロは白い片手剣をその手に出現させて杖を受け止めた。
シロ「ふっ!!」
レデュエ「ぐあっ…」
シロ「はあーっ!!」
レデュエ「がはっ…」
シロは剣を片手で回転させながらレデュエに斬撃を与えていき、体勢が崩れたところにシロは回転しながら回転斬りを浴びせてレデュエを吹き飛ばした。
レデュエ「くっ…銀色の果実で強化された力か…」
シロ「もう諦めよ?これ以上私達が争うのは意味が無い…」
レデュエ「禁断の果実は必ず私が手に入れる…猿どもは私達に平伏するのだ…」
シロ「貴方には絶対渡さない…これは人間の為に使うって決めた!!」
レデュエ「くっ…お前達!!」
シロ「なっ…」
シロの背後にはグリンシャとシンムグルンの2体がおり一斉にシロに襲いかかって来た。
シロ「ぐっ…あぅ…」
オーバーロード3体に囲まれてしまい次々と攻撃を食らってしまい、シロは地面を何度も転がってしまう。
レデュエ「フンッ!!」
シロ「がっ…」
シロは慌てて立ち上がるがレデュエの操る植物の蔦に体を拘束されてしまいシロは動きを封じられてしまい動けないシロの元にレデュエが歩み寄った。
レデュエ「人間の姿をして…人間の服装を身に纏うとは…フェムシンムとしての誇りを忘れたようだな?」
レデュエはシロの巫女装束の袴の裾を掴むと少し持ち上げてしまい、さらに片方の手でシロの顎をクイと上げた。
シロ「私は人間のために働くって決めた…人間と一緒に未来を歩んで行きたい…そして…いつか…私も人間になるの!!」
レデュエ「そうか…ならもうお前も終わりだ…お前の持つ果実を私に寄越せぇぇ!!」
シロ「うっ…嫌だ…嫌だぁ!!」
シロの胸に杖を突き立てると胸の中から銀色の果実が現れてレデュエはそれを掴み取ろうと手を伸ばした。
神主「やめろ!!」
シロ「じいちゃん!?来ちゃ…駄目!!」
騒ぎを聞きつけた神主のおじいさんがレデュエに向かって木刀を手に立ち向かっていたがレデュエは槍を神主の顔面に叩きつけて地面に倒してしまった。
レデュエ「愚かな猿が!!」
神主「ぐふっ…逃げるんじゃ…シロ…」
シロ「じ、じいちゃん…」
神主は地面に倒れながらもシロに向かって手を伸ばすが、拘束されたままのシロを見るとフラフラの体をなんとか奮い立たせて立ち上がった。
レデュエ「まずは裏切り者のお前から始末してくれる…ヌアッ!!」
シロ「あぁっ…」
シロは蔦の拘束をなんとか振り解くがレデュエの槍の攻撃を躱しきれずに再び地面に倒れてしまいレデュエは容赦なく倒れたシロのお腹目掛けて槍を突き刺した。
シロ「ぐっ…ああああ…」
槍で突き刺されたところから緑色の血が流れてしまいシロは痛みに悲鳴を上げた。
レデュエ「今こそ…その果実は私の物となるのだぁ!!」
シロ「あ…あああああああ…」
レデュエはシロの胸に手を翳すと胸の中から銀色の林檎の果実が現れて、レデュエはそれを掴み取った。
シロ「あっ…」
レデュエ「くっ…ハッハッハッハッ…やったぞ…私も王に匹敵する力を手に入れたぞ!!ヌッハッハッハッ!!」
シロ「そ…そんな…カハッ…」
シロは口から緑色の血を吐き出すと同時にお腹を踏みつけられてしまい悲鳴を上げた。
神主「やめろー!!」
神主が倒れ込むシロに向かって駆け出すと同時にレデュエは槍をシロの体から引き抜くと神主に向かって振り上げた。
レデュエ「ヌッハッハッハッ猿めが!!」
シロ「…!?やめて…やめてぇぇ!!」
神主「ぐふっ…」
シロは叫ぶがレデュエの槍は神主の腹を貫通してしまい神主は赤い血を吐き出しながらシロへと手を伸ばした。
神主「シ…ロ…すま…ぬ…ぐほっ…」
シロ「じいちゃん…?ねぇ…じいちゃん…?」
シロは神主が刺されて倒れ込んでいる様子を見ると言葉を失ってしまい動きを止めた。
レデュエ「無能な猿どもと我々とでは命の重さが違う!!ハッハッハッハッ…」
シロ「あ…あああああああっ!!じいちゃん!!」
シロは倒れた神主へと慌てて駆け寄るが神主は既に虫の息でありシロは神主へと縋りついた。
シロ「じいちゃん…死んじゃ嫌だ…ねぇ…」
神主「シロ…頼む…あの果実を奴に渡してはならん…奴があれを手にすると世界が滅びる…」
シロ「何言ってるの…?じいちゃんが死んじゃう…そんなの嫌だ…」
神主「頼む…奴を止めてくれ…お前の手で…」
神主はそのまま目を閉じてしまい動かなくなってしまい、シロは必死に冷たくなっていく神主の体を揺さぶった。
シロ「う…ううううう…うわあああああ!!」
シロは空に向かって叫ぶと雷が落ちて一瞬で辺りは雨が降り注ぎ、レデュエは慌ててシロの方へと向いた。
レデュエ「何だ…果実を失った筈だが…この力は?」
シロ「レデュエエエエ!!」
シロは顔を涙と雨でぐちゃぐちゃに濡らしながらも絶叫するとシロの髪が銀色に変化して空中に浮かび上がった。
シロ「よくも…よくもぉぉぉ!!」
レデュエ「ぐあっ…」
シロは手から電撃を繰り出すとレデュエに浴びせてさらに地面に降り立つと白い剣が黄色に変化して電気を帯びた剣で他の2体のオーバーロードを何度も斬りつけた。
シロ「うああああっ!!」
レデュエ「ぐああああっ…」
レデュエと2体のオーバーロードは派手に吹き飛び、同時に手に持った銀色の果実を手放しまい、果実はシロの元へと自動的に引き寄せられていき、シロの胸の中に再び吸い込まれた。
レデュエ「くっ…そんなバカな…いずれまた…お前の果実も必ず奪う…」
シロ「はあっ…はあっ…はっ!?じいちゃん…!!」
レデュエは2体のオーバーロードと共に退散してしまい、シロは銀色の果実を取り出して神主の胸へと当てると神主は僅かに息を吹き返して目を開けた。
シロ「…っ!?傷が塞がらない…何で…この果実じゃ命を助けられない!!」
神主「もう…いいんじゃ…シロ…こうして最後に話せる時間が与えられただけでも…わしは嬉しい…」
シロ「そんな…じいちゃん…」
神主「お前さんが前に話してくれた黄金の果実の伝説…お前の持つ果実はそれには遠く及ばないが手にした物に強大な力を与えてくれる…筈じゃ…」
シロ「う…うん…」
神主「その果実はお前が渡すべきと判断した人間に渡してくれ…それまではその果実を誰にも渡してはならん…」
シロ「渡すべき人間…?」
神主「お前はまだ…ワシ以外の人間とはまともに話せておらんじゃろう?お前が心から信頼出来る人間にもし出会えたらその者に渡してやってくれ…」
シロ「うん…うん!!わかった!!」
神主「頼んだぞ…人類のため…に…」
シロ「じいちゃん…?じいちゃあああああん!!」
そう言い残すと再び神主は目を閉じてしまい神主の力が無くなった手をシロはいつまでも冷たくなるまで泣きながら握り続けていた。