はじめてのキヴォトス   作:みやびさん

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プロローグ
ようこそ!キヴォトスへ!


タタン……タタン……

 

朝焼けの空の下を列車が走っていく

私の住んでいた街から、キヴォトスへ向けて

 

"ふわぁ……"

 

「ふふ、大きな欠伸ですね」

 

"失礼、早起きだったからね"

 

キヴォトスは私の住んでいた街からは遠く離れていた

なので空が暗い内から待ち合わせ、始発列車に乗ったのだ

 

車両はまるで貸し切りのよう

オレンジ色の朝日が差し込み

聞こえてくるのは電車が発する規則的な振動音

 

「ふふ、キヴォトスに着くにはまだ時間がかかります」

「少し寝ますか?」

 

たおやかに微笑み、私の腕を抱き、身を寄せてくる

なんか知らんが懐かれちゃったな

立場が無ければ天真爛漫な妹みたいな女の子なのかもしれない

 

"ああ、そうさせてもらうよ……"

 

少女の腕から伝わる温もり、やわらかな感触、良い匂い

それらが寝不足と長時間の乗車ですっかり疲れた私を眠りへと誘う

 

「……せい?」

 

「先生、そろそろ到着しますよ、起きてください」

 

少しだけ目を閉じた次の瞬間

私は彼女に身体を揺さぶられていた

 

荷物の置き忘れが無いか確認して列車から降りる

 

ここがキヴォトスか……二人で軽く伸びをする

澄み渡る空、高く昇った太陽、光り輝くプラットフォーム

そして横にはとびきりの美少女

 

今日は何か良い事が起こりそうな気がする、確率的に?

 

----

 

──D.U. 連邦生徒会ビル前

 

私達を冷たい表情の美人が出迎えてくれた

 

「リンちゃん、出迎えありがとね」

 

「……リンちゃんはやめてください」

「……で、そちらが?そうは見えませんが」

 

「うん、キヴォトスの救世主、先生だよ!」

 

「だと良いのですが……」

 

目の前のリンという生徒は

一度だけ私の方に視線を向けたきり

二度とこちらに視線を向けることは無かった

 

中々にご挨拶ではあるが

例えば指輪物語みたいなファンタジー世界のエルフの里があったとして

何の能力も持たない一般人が紛れ込むとこんな扱いになるのかもしれない

 

こんな有様で会話に混ざれというのは中々無理がある

やれやれ、前途多難だ

 

「ううん、私が案内するよ」

 

「そうですか……でしたら、ついでに一仕事お願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「脱獄したワカモ達七囚人と、スケバン連合との交戦及び捕縛ね」

「規模が大きいから時間掛かって面倒なんだよね」

 

まるで見てきたかのように言っているが

彼女は過去へ飛び、体験を持ち帰る能力がある……らしい

人為的にタイムリープを起こす技能ってわけだ

 

この事件も体験済みなのだろう

 

彼女はキヴォトスの滅亡に立ち上がり何度も戦った結果

自分一人ではどうにもならないという結論を出した

外部から人を誘致する事にしたとのことだ

 

選ばれて光栄ではあるのだが

私は何処にでも居る非常勤講師だぞ?

もっとマシな人材は居なかったのか?

 

当然彼女に聞いた

 

実はタイムリープの時に波長が合う人ならば

一緒に過去へ連れて帰ることが出来るらしい

この人間の選定に途方も無い時間をかけたとのこと

 

それにキヴォトス人はエルフのような種族で美少女が多い

しかし住人は血の気が多く治安が絶望に悪いと聞く

 

過去何百、何千人もが渡航しては命を落とした記録があり

政府から名指しで注意喚起されるレベルだ

今ではキヴォトスという名前を聞くだけで眉を潜める人は多い

 

移住して活動するとなれば

乗り気になる人は更に数が減るだろう

 

かくいう私も当初は首を縦に振る気は無かった

多くの人に袖にされ、気丈に振る舞う彼女が見ていられなかった

 

また契約金も魅力的だった

丁度非常勤講師の契約が切れ、貯金も心許なかった

次の学校を探していたという理由も大きい

 

"私でよければ、よろしく頼むよ"

 

そう言葉と共に右手を差し出すと

彼女は満面の笑みを浮かべ、私の手を両手で握り返してきた

 

彼女の美貌とたわわな胸に負けたわけではない、断じてない

 

-----

 

──現場へ向かう装甲車

 

話には聞いていたが、心の準備も出来ないまま実戦とはね

 

「これを渡しておきましょう」

「本当は十分な射撃練習をしてからお渡ししたかったのですが……」

「まぁ、無いよりはマシです」

 

彼女から金属で出来た拳銃が渡される

 

その本物の重さが、冷たさが

私の勇気の灯火を削っていく

 

「あっ、ついでにこれも」

 

皮で出来たホルスターを見せられる

 

「先生は右利きですね、でしたら……失礼します」

 

急に私に身を寄せてきて、腰回りでガチャガチャし始める

確かに私は教師で、これまで女子の生徒とも触れ合ってはきたが

急に抱きつかれるのは流石に照れる……

 

未知の戦闘の恐ろしさと、美しい少女との触れ合い

それがごちゃまぜになって、私の感覚を鈍らせていく

 

装甲車から出ると、そこは地獄だった

 

横たわる自動車、煙を噴いて捨てられる戦車

傷付いた腕を押さえて遮蔽物へ身を隠すヴァルキューレの生徒達

 

呆然と立ち尽くす私の手を、彼女が握る

 

「行きましょう、先生……」

 

私はその手を握り返して駆けだした




わざわざ読んで下さってありがとう御座います

前作「シャーレにお迎えしたハナコさんが何か違う」にて
整合性が合うよう自分なりに繋ぎ合わせた所謂原作先生をお出ししました

その彼の半生は描き切れておらず、ふわふわしたものだったので
タイムリープができる連邦生徒会長と、先生の成長の記録
ここにフォーカスして言語化してみようと筆を取りました

遅筆となりますが、エタらないようボチボチ続けていければと思います
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